4月 022013

 戦後史を見直し、独立自尊の国を目指すべき時がきている。そのためには、私たちは、日本国憲法、サンフランシスコ講和条約、日米安保条約、日米地位協定、日米原子力協定について本当の事実を知る必要がある。そして、現在、話題になっているTPPも、マスコミが報道しない本当の事を知る必要があることは言うまでもない。だが、その前に、決して、西洋のエリートがおくびにも出さないが、腹のなかで、日本人に対して抱いている観念を知らなければ、この状況を打開することなどできないだろう。私たち日本人は、高度成長後、「名誉白人」扱いされて勘違いしてきたが、西洋のエリートの根強い黄色人種に対する偏見を今一度、冷徹に見つめる時を、迎えているような気がしてならない。

「我々は西洋のエリートからこのように見られている!?」 

 

 チャールトン・ヘストン主演の「猿の惑星」というSF映画をご覧になった方も多いのではないか。実はあの映画に登場する猿たちはどうも日本人のことらしい。日本人が白人捕虜を虐げていたかのような妄想を映画化し、それをさらに妄想を広げて、今度は日本人が地球を支配してしまったらどうするという根も葉もない白人の中にある恐怖心を煽るために作られた映画だった。ご存じだろうか。

原作者はピエール・ブール(Pierre-François-Marie-Louis Boulle, 1912年2月21日 – 1994年1月30日)。彼は名作と言われている「戦場にかける橋」という早川雪州氏が出演していた白人美化プロパガンダ映画の原作者でもある。現実には、日本軍は、木製の橋を現地では築造していない。コンクリートの橋を自前で造ったようである。

また、フランシス・コッポラの有名な「地獄の黙示録」に登場するマーロン・ブランド演じるカーツ大佐のモデルはマッカーサーだということをお聞きになったことがあるだろうか。東アジアの奥地で原住民(=日本人)の王となったカーツ大佐なる狂気の人物を、本国に強制送還するか射殺してこいという物語である。



以前のレポートでも指摘させていただいたように、一部の欧米のエリート白人たちには、普通の日本人が意識していないこの日本人の独自性というものがどうにも我慢ならない。

彼らから見ると、「原始の尻尾」を引き摺っている野蛮人の日本人がハイテク技術の最先端を行っているのが許しがたいというところだろう。それは当然カラードピープル全体に向けられた根深い歴史的背景を持つ偏見でもある。20世紀、黄色人種、日本人が西洋人からどのように見られていたか。尊敬する松岡正剛氏が良い評論を書いているのでご紹介させていただく。そして現在もその本質は全く変わっていないことを我々は忘れてはならない。

*松岡正剛氏のブログより 

「黄禍論とは何か」ハインツ・ゴルヴィツァー 

Heinz Gollwitzerr : Die Gelbe Gefahr 1962 瀬野文教[訳]草思社 1999

編集/加瀬昌男・碇高明 装幀/間村俊一

 

 20世紀初頭の黄禍論(イエローペリル)が世界にまきちらした問題について、簡略に案内しておきたい。なぜなら黄禍論という前代未聞の奇怪な“イエローピープル大嫌いムーブメント”には、そもそもは中世のモンゴルとその亜流のすさまじい動向が、そのぶりかえしともいうべき20世紀初頭の汎モンゴル主義の運動が、さらには今後の日米同盟関係や日本と東アジアのグローバリゼーションとのぎくしゃくしていくだろう関係などについての、すこぶる重要な“予言”がいくつも含まれているからだ。
 本書はそういう黄禍論の近現代史を、めずらしくコンパクトにまとめた本である。ただし、その観察はあくまでも欧米側からのものなので、今夜はテキストとして本書のほかに、橋川文三の『黄禍物語』(岩波現代文庫)などをところどころとりまぜて案内する。
 ヨーロッパ、ロシア、アメリカで19世紀末から20世紀初頭にかけて、ほぼ同時に沸き上がった黄禍論は、中国人と日本人が白色人種に与えた脅威のことをいう。
 当時、3つの現象が欧米の脅威になっていた。①安価で忍耐強い黄色の労働力が白人の労働力を凌駕するのではないか。②日本製品の成功が欧米経済に打撃を与えるのではないか。③黄色の国々が次々に政治的独立を果たして近代兵器で身をかためるのではないか。
 まるで今日にも通じそうな話だが、黄禍論はそのころのアジアの力が急激に増大してきたことへの過剰な警戒から生まれた。それは中国や日本からすれば黄禍ではなくて「白禍」(ホワイトペリル)というものだった。どんなふうに黄禍論が沸き上がっていったのか、重要なのはその異常発生の背景なので、そのアタマのところを紹介しておこう。

 日清戦争が勃発した1894年、ジョージ・ナサニエル・カーソンというイギリスの政治家が『極東の諸問題』という本を世に問うた。イギリスこそが世界制覇をめざすというジョンブル魂ムキムキの本で、斯界ではこの手の一級史料になっている。
 カーソンは、イギリスがこれから世界政策上でロシアと対立するだろうから、その激突の最前線になる極東アジアについての政治的判断を早くするべきだと主張して、それには中国の勢力をなんとかして減じておくことが必要だと説いた。対策は奇怪なもので、ロシアを抑えるには中国を先に手籠めにしておくべきで、それには日本を“東洋のイギリス”にして、その日本と中国を戦わせるほうにもっていけば、きっと日本が中国に勝つだろうというものだった。「タイムズ」の編集長のバレンタイン・チロルも『極東問題』を書いて、この路線に乗った。
 カーソンやチロルの期待と予想は当たった。日清戦争で日本は勝ったのだ。しかし、これで問題が広がった。ひょっとしたら中国だけではなく、日本こそが世界の脅威になるのではないか。いや、日本は御しやすい。むしろ中国が戦争に負けたからといって中国の経済力が衰えることはないのではないか。さまざまな憶測が広まるなかでの1895年、イギリスの銀行家トーマス・ホワイトヘッドは『アジア貿易におけるイギリスの危機的状況』という講演をロンドンでぶちあげ、中国の銀本位制にイギリスの金本位制が、たじたじになっていることをこそ解決すべきだと訴えた。

 一方、こうした極東状況を横目で見ていた二人の皇帝が、まことに勝手なことに、突然にあることを示し合わせた。
 有名な話だが、“カイゼル”ことドイツ皇帝ヴィルヘルム2世がロシア皇帝ニコライ2世に手紙を書いて、そこで「黄禍」という言葉を使い、ポンチ絵で黄色人種を揶揄ってみせたのだ。「黄色い連中を二人で叩きのめそうよ」というポンチ絵だった。
 これが「黄禍」という言葉の誕生の現場だが、むろん言葉だけが一人歩きしたのではなかった。実際にも、まずは日本にちょっかいを出して、牽制することにした。ドイツとロシアがフランスを誘って「三国干渉」に乗り出したのである。
 翌年、ベルリンの雑誌「クリティーク」は「黄色人種の脅威におびえる白色人種」という特集を組んだ。2年後には東アジアの経済事情を調査するドイツ委員会が結成され、むしろ伸長する日本の経済力をうまく巻き込んで利用すべきだという報告がなされた。



義和団の乱に出征するドイツの東アジア遠征軍に演説するヴィルヘルム2世>


 
  ヴィルヘルム2世の中国侵略への野望は、日清戦争後の三国干渉、日露戦争後の黄禍論となってあらわれる。ここで事態はアメリカに飛び火する。イギリスに始まった優生学がアメリカに飛び火して断種政策の拡張になっていったのと同様に、アメリカはしばしばこのように、最後尾から登場してまずは自国の情勢をまとめあげ、ついではあっというまに事態を全世界化してみせるのだ。 

すでにアメリカは移民問題に悩んでいた。アメリカがサラダボウルの国で、どんな移民も受け入れる“自由の国ユナイテッドステート・オブ・アメリカ”だというのは、今も昔も半分でたらめで、アメリカほど移民問題をたくみに国際情勢の天秤目盛として活用してきた国はない。この時代もすでに中国移民のコントロールが問題になっていて、カリフォルニアでは中国移民制限と中国人排斥の機運が高まっていた。そもそも帝国主義大好きの大統領セオドア・ルーズベルトが、中国人追放には手放しで賛成している始末だった。
 そこへジャパン・パワーの噂が次々に届いてきた。折しも多くの日本人たちがカリフォルニアに次々に移住もしていた。問題はイエロージャップらしいという声が高まってきた。とりあえずルート国務長官と高平駐米公使のあいだで日本人のアメリカ入植を自発的に縮小することになったのだが、コトはそれではおさまらない。1900年、カリフォルニア州で日本人排除法が提案された。
 加えて名門兄弟のヘンリー・アダムズとブルックス・アダムズが『文明と没落の法則』と『アメリカ経済の優位』をそれぞれ刊行して、次のようなロジックを提供した。
 ①文明化するとはすべてを集権化することだ。②集権化とはすべてを合理化することだ。③集権化と合理化を進めれば欧米の品物よりもアジアの品物のほうが安くなる。④世界は集権化と合理化に向かっている。⑤だからアジアが生き残り、これに気が付かないヨーロッパは滅びるにちがいない。⑥アメリカはここから脱出しなければならない。

 アダムズ兄弟のロジックは強力だった。すでに『海上権力史論』を世に問うて、アメリカ中で万余の喝采をもって迎えられていたアルフレッド・マハン提督は、⑥の「アメリカはここから脱出しなければならない」を達成するための、新たな方針を打ち出した。
 中国を門戸開放させ、その管理を列強が示しあわせてコントロールするべきだと言い、今後のパワーポリティックスは「北緯30度から40度のあいだ」に集中するだろうから、トルコ・ペルシア・アフガニスタン・チベット・揚子江流域の中国・朝鮮半島・日本、および南米のとくにアマゾン河流域のブラジルに注意しなければならないと力説したのだ。けっこう当たっている。
 ところが、そこへおこったのが、世界中を驚かせた日本による日露戦争勝利だったのである。イギリスがちゃっかり日英同盟を結んでいたことが、アメリカには癪のタネだった。
 1905年にカリフォルニアに反日暴動がおこり、アメリカはロシアに勝った日本と反日の対象となった日本とをどうあつかうかという二面工作を迫られた。その工作がポーツマス条約に対するアメリカの斡旋というかっこうをとらせた。
 しかしむろんのこと、アメリカはこのまま日本をほうっておくつもりはない。血気さかんな将軍ホーマー・リーはさっそく悪名高い『日米必戦論』と『アングロサクソンの時代』を書き、これからは、ロシアはきっと中国と手を結ぶだろうから、アングロサクソン連合としては中国と同盟を結び、将来における日米決戦に備えておかなくてはならないと“予言”した。
 当時、京都大学で比較宗教学を講義していた親日派のシドニー・ギューリクはさすがにこの“予言”に呆れて、急遽『極東における白禍』を執筆したが、もう焼け石に水だった。このあとアメリカの排日主義はますます強固に、ますます拡大のほうに向かっていった。



風刺画「Japonは悪魔」
日露戦争に勝利した日本がヨーロッパのキリスト教社会を守る天使に手傷を負わせた悪魔として表現されている。

 “The Yellow Terror In All His Glory”, 1899
中国人が西洋の婦人を犯して殺すというイメージを吹聴している。

 日露戦争に破れたロシアでは、かなり複雑な反応がおこっている。この国はもともと徳川日本に関心をもっていて、プチャーチンをはじめ何度も日本沿岸に出没し、折りあらば、交易や開港を迫るつもりだったのだが、それをペリーとハリスのアメリカに先を越されたわけだった。

 つまりロシアには「ロシアのアジア主義」ともいうべきものがあったのである。けれども、その外交政策がなかなか軌道にのってこない(今はなお北方領土問題がくすぶっている)。そういうロシアにとって、それを邪魔するのは仮想敵国のイギリスだった。それゆえ19世紀末、ブルンホーファーやウフトムスキーといった言論派は、たえず「ロシア・アジアの統合」というお題を掲げ、ときにはなんと、「仏教世界制覇の計画が日中韓の連合によって進むことがありうるかもしれないから、ロシアはそれに遅れをとってはならない」というような、やや誇大妄想なアジア対策を練ったりもしていた。
 それがニコライ2世のころから黄禍に走り、そうこうしているうちに日露戦争で辛酸を嘗めた。ほれほれ、だからロシアン・アジアを早く確立すべきだったじゃないかと言ったのは、ウラジミール・ソロヴィヨフの『汎モンゴル主義』だった。

 ドイツはどうか。アーリア神話や優生学や断種政策でもそうだったように、おっちょこちょいのカイゼル(ヴィルヘルム2世)こそ黄禍のお囃子の先頭を切ったものの、国全体としてはあいかわらず微妙な立場にいた。三国干渉、膠州湾占領、義和団事件への出兵までは、まだ日本をからかっていればよかった。だからドイツ財界の重鎮で社会進化論者でもあったアレクサンダー・ティレは1901年の『黄禍』では、黄色人種によって「ドイツの労働市場が水びたしになることはないだろう」とタカをくくっていた。しかし日露戦争以降、どうも雲行きがあやしくなっていく。
 アウグスト・ベーベルは中国に莫大な地下資源が眠っている以上、ドイツはこれを取りに行く列強との競争で遅れをとってはならないと警告し、フランツ・メーリングは中国や日本の脅威を防ぐには、もはやかれらの資本主義の力を社会主義に転じさせるしかないだろうと弱音を吐いた。しかしドイツの黄禍論が他の列強と異なっていたのは、やはりそこに反ユダヤ主義がまじっていったことだった。ドイツの黄禍論はしだいに民族マキャベリズムの様相を強くしていった。

「ル・ガトゥ・チノイス」(中国の分割)1899
左よりドイツ皇帝ヴィルヘルム2世、フランス大統領ルーベ、ロシア皇帝ニコライ2世、日本の明治天皇、アメリカ大統領T=ルーズヴェルト、イギリス国王エドワード7世。

「ル・ガトゥ・チノイス」(中国の分割)1899
左よりドイツ皇帝ヴィルヘルム2世、フランス大統領ルーベ、ロシア皇帝ニコライ2世、日本の明治天皇、アメリカ大統領T=ルーズヴェルト、イギリス国王エドワード7世。

T・ビアンコ「黄禍論―ヨーロッパの悪夢」

ざっとは、こんなふうに列強世界を黄禍論が走ったのだ。
 では、ここまであれこれのイジメを受けた日本はどうだったのかというと、黄禍論は当然、明治の日本にも衝撃を与えた。ただし、当時の日本人は黙っているわけではなかった。たとえば象徴的には鴎外、天心、漱石が反論していた。
 鴎外については、明治36年11月の早稲田大学課外講義『黄禍論梗概』の記録がのこっている。そのなかで鴎外は、黄禍論は「西洋人が道徳の根幹を誤って社会問題を生じて、商業・工業の上で競争ができないようになりそうだと、不安がっているにすぎない」と断じ、「西洋人は日本と角力を取りながら、大きな支那人の影法師を横目で睨んで恐れて居るのでございます」「所詮黄禍論というものはひとつの臆病論なのです」と言った。鴎外はジョセフ・ゴビノーの人種差別論にもかなりの批判を展開した。
 天心は『日本の目覚め』の第5章を「白禍」とし、「東洋民族が全面的に西洋を受け入れたのは問題だった。帝国主義の餌食になった」と述べ、「かれらの渇望の犠牲になってはならない」と強く訴えた。
 漱石が『それから』の代助に言わせたセリフは、まさに黄禍と白禍の問題の本質をついていた。こういうものだ。最近のニートやフリーターにも聞かせたい。

 
 
 

 



 「なぜ働かないって、そりゃ僕が悪いんじゃない。日本対西洋の関係がダメだから働かないんだ。第一、日本ほど借金をかかえて貧乏震いをしている国はありゃしない。この借金が君、いつになったら返せると思うか。そりゃ外債くらいは返せるだろう。そればかりが借金じゃありゃしない。日本は西洋から借金でもしなければ、到底たちいかない国なんだ。それでいて一等国を以て任じている。無理にでも一等国の仲間入りをしようとする。だから、あらゆる方面に向かって奥行を削って、一等国だけの間口を張っちまった。なまじ張れるから、なお悲惨なんだ」。



ニュージーランドの風刺画「黄禍論」(1907)
アヘン吸引、貪欲、不道徳などの悪徳をふりまく蛸の姿のアジア人がニュージーランドの女性を襲っている。

パラマウント社制作「The Return of Dr. Fu-Manchu
Part Six – “The Silver Buddha”」(1929)

英国の作家サックス・ローマーが義和団の乱の影響を受けて、西欧による支配体制の破壊と、東洋人による世界征服を目指す怪人ドクター・フーマンチュー(傅満洲博士)を主人公とするスパイ小説『怪人フーマンチュー』(1916)を発表。これは“黄禍”を警告する意図で1920年代から1930年代に連続してトーキー映画化された。

  田口卯吉のように黄禍に対抗するあまり、敵のロジックをむりに日本にあてはめた例もある。田口は『日本人種論』『破黄禍論』において、なんと「日本人=アーリア人」説を説いたのだ。これが『日本開化小史』を書いて、福沢諭吉や天野為之と並び称された自由主義経済学の導入者とは、とうてい思えない。そこには「史海」の発行者であって、『国史大系』『群書類従』の編纂に当たった田口のほうの顔が強く出ていた。
 もっとも、このように日本人を優秀化するためにアーリア人やユダヤ人をその流れに牽強付会させようというめちゃくちゃな論陣は、この時期は田口だけでなく、黒岩涙香、竹越与三郎、木村鷹太郎、小谷部全一郎などにも共通していて、かつて長山靖生の『偽史冒険世界』を紹介したときにもふれておいたように、それ自体が黄禍に対する過剰防衛になっていた。小谷部は、例の「義経=ジンギスカン」説の発案者である。
 いずれにしても、当時の日本人にもたらした黄禍論の影響は、かなり面倒なものとも、危険なものともなっていったと言わざるをえない。
 橋川文三は、日本に「国体」論が浮上し、天皇唯一主義が受け入れやすくなったのも、また孫文に代表される大アジア主義が流行して日本の国粋主義者がこれに大同団結しようとしたのも、どこかで黄禍論に対する反発がはたらいていたと見た。この見方、いまこそ肝に銘じておくべき見方であろう。

 黄禍論。まことに厄介な代物だった。それは今日のアメリカのWASP主義、中国や韓国の反日感情、インドとパキスタンの憎悪劇などの厄介さを思えば、想定がつくだろう。
 しかし、ほんとうに厄介なのは、アーリア神話、ゲルマン主義、優生学、断種政策、黄禍論が、すべて一緒くたに20世紀の劈頭を荒らしまわっていたということだ。
 ぼくはこのあと、ユーラシアにおける民族の交代劇をその制覇と没落を通して案内していくつもりだが、そしてそこにイスラム主義やモンゴル主義やトルコ主義がどのような光と影をもたらしていったかを、できるだけわかりやすく、できれば順よく案内し、そこから東アジアの盟主となった中国という国がどんな民族ネクサスを演じてきたかを書くつもりだが、それにあたって、スキタイから派生したアーリアン・コメディの長期にわたった脚色劇が20世紀にまで続行していたことを、あらかじめ伝えておきたかったのである。 

日米地位協定入門

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3月 182013

*今回は本の紹介です。

「本当は憲法よりも大切な~日米地位協定入門」

(前泊博盛編著 創元社)

 

 はっきり言って日本人としては読みたくない本である。日米地位協定>日米安保条約>サンフランシスコ講和条約(日本国憲法)、この図式をいろいろな文献をあたって見事に証明し、1945年以降、私たちの住んでいる日本が米国に軍事占領され続けていることを見事に実証しているからだ。日本を愛する国民の一人としては、そんな事実を突きつけられれば、おもしろくない気分になるのは当然だろう。

 ただ、不思議なのは、1960年安保、1970年安保の時にこういった本が出版されなかったことだ。(もっとも不勉強なので、見落としているのかもしれないが、)冷戦という僥倖に恵まれた時代、経済的成功を手にすることができれば、国としての安全保障上の主権の放棄も仕方がないと、時の為政者は考えて、かつての敵国であるアメリカが日本を軍事占領し続けることを容認する道を選んだのであろうか。また、官僚は官僚で、米国の後ろ盾で、政治家をコントロールできることを歓迎したのかもしれないが、しかし、そのツケを冷戦終了後、日本は、米国に払い続けている。

現在、話題になっているTPPは、その仕上げというべきものであり、実際には日本に経済主権の放棄を求めているとしか思えないものだ。考えてみれば、愛国者を自称する安倍氏が米国の圧力でその決断をしなければならないことは、あまりにも皮肉ことである。

しかし、不可思議なのは、大手新聞の世論調査で、TPP参加表明を評価するという国民が過半数を軽く超えていることだろう。「その国の国民が、その国の主権を放棄する政策に賛成しているとしたら、その国は、国民国家としての存在理由を失いつつあることになってしまう」のだが、

 この原因は、本当の事を言わないマスコミと政治家が真実を言わないことにあることは確かである。その意味でも是非、読んでいただきたい本である。



この本を読むと、戦後日本体制はサンフランシスコ講和条約とともに生まれ、講和条約(憲法を含む)―日米安保―日米地位協定という「三重構造」によって形作られていることがはっきりとわかる。そして、吉田茂首相の元部下の外務事務次官で吉田茂首相と対立して罷免された、寺崎太郎氏(寺崎英成氏の兄)は、この日米地位協定の前身の日米行政協定こそ、米国の「本能寺(=本当の目的)」であったと見抜いていた慧眼の持ち主だったようだ。

 

一言で言うと日米地位協定とは

「はっきりした言い方で日米地位協定を定義すると、こうなります。

<アメリカが占領期と同じように日本に軍隊を配備し続けるためのとり決め>のである。」『日米地位協定入門』(17ページ)



 多くの方は、日米地位協定というのは、「米軍兵士の日本国内に於ける地位を取り決めたもの」であり、だから、米兵が犯罪を日本国内で起こした時の裁判権をどっちが持つかという、日本で司法権が米兵に及ばないという問題のことだけの問題と勘違いしているかもしれない。

 しかし、この地位協定は、米兵の地位を定めた17条(刑事裁判権)に関するもの以外に合わせて全部で28条もある。その中には、「基地の提供と返還」「基地内の合衆国の管理権」「航空・通信体型の協調」「軍隊構成員の出入国」「免許」「関税」「調達」(注:武器輸出3原則の抜け穴になっている)「経費の分担」やそれらの米軍駐留に関して日米が協議(注:命令を伝達される)する機関についての取り決めもある。



 そして、このようなとりきめは他の国が結んでいる米軍駐留協定と合わせて考えても異様であるという実例が、本書では詳細に説明されている。日米安保体制が極めて特殊な同盟関係であることは、他の国の安保条約や地位協定を研究すれば簡単にわかるものようだ。

 

 本書の構成は、次の通りである。



1: 日米地位協定って何ですか?

2: いつ、どのようにして結ばれたのですか?

3: 具体的に何が問題なのですか? 

4: なぜ米軍ヘリの墜落現場を米兵が封鎖できるのですか? その法的根拠は何ですか?

5: 東京大学にオスプレイが墜落したら、どうなるのですか?

6: オスプレイはどこを飛ぶのですか? なぜ日本政府は危険な軍用機の飛行を拒否できないのですか? また、どうして住宅地で危険な低空飛行訓練ができるのですか?

7: ひどい騒音であきらかな人権侵害が起きているのに、なぜ裁判所は飛行中止の判決を出さないのですか?

8: どうして米兵が犯罪をおかしても罰せられないのですか?

9: 米軍が希望すれば、日本全国どこでも基地にできるというのは本当ですか?

10: 現在の「日米地位協定」と旧安保条約時代の「日米行政協定」は、どこがちがうのですか?

11: 同じ敗戦国のドイツやイタリア、また準戦時国家である韓国などではどうなっているのですか?

12: 米軍はなぜイラクから戦後八年で撤退したのですか?

13: フィリピンが憲法改正で米軍を撤退させたというのは本当ですか? ASEANはなぜ、米軍基地がなくても大丈夫なのですか?

14: 日米地位協定がなぜ、原発再稼働問題や検察の調書ねつ造問題と関係があるのですか?

15: 日米合同委員会って何ですか?

16: 米軍基地問題と原発問題にはどのような共通点があるのですか?

17: なぜ地位協定の問題は解決できないのですか?



PART2 「日米地位協定U.S. – Japan Status of Forces Agreementの考え方」とは何か 



資料編 「日米地位協定」全文と解説 

〇日米地位協定 〇日米安保条約(新) 「PART1」…「日米地位協定Q&A」(全17問)

 ※「PART1」は、前泊氏はじめ4人の執筆者が分担。



ところで、日本国憲法においては、98条第2項に「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と書いてある。国内法よりも上位概念が条約や国際法規ということを憲法で規定しているのだ。だから、憲法以外の国内法は条約などの下に存在することになる。



「現在の世界において超大国が他国を支配する最大の武器は、軍事力ではなく法律だからです。日本がなぜアメリカに対してこれほど従属的な立場に立たされているかというのも、条約や協定をはじめとする法的な枠組みによって、がんじがらめに縛られているからなのです。」本書90ページ

 

「憲法を頂点とする表の法体系の裏側で、米軍基地の問題をめぐってアメリカが日本の検察や最高裁を直接指示するという違法な権力行使が日常化してしまった。それが何度も繰り返されるうちに、やがて「アメリカの意向」をバックにした日本の官僚たちまでもが、国内法のコントロールを受けない存在になってしまいます。そのことが現在の日本社会の最大の問題となっているのです。」本書233ページ



「国際政治に関して、かなりの事情通を自認する方でも、アメリカの『圧力』はもっと間接的なものだと思っていませんでしたか? 違います。最高検察庁の陳述も、最高裁判所の判決も、非常にダイレクトな形でアメリカの国務省から指示されていたのです」(250ページ)

その具体例として米軍立川基地の問題をきっかけに、在日米軍を違憲とした「伊達判決」が、最高裁で覆った「砂川裁判」の経緯が取り上げら、解説されている。



衝撃だった記述以下。



「ダレスの補佐役だったアリンソン(のちの駐日大使)は、もし、安保条約が(実際に)署名されたら、日本側代表団の少なくともひとりは帰国後暗殺されることは確実だと語っている。(195173日)

 真の独立を求める心情が日本人にあるなら、安保条約は簡単に認められるものではないということを、吉田もアメリカも知っていたのである。」本書59ページ

             (三浦陽一「吉田茂とサンフランシスコ講和条約」より)

 

「いまから5年前に発見され、昨年も重要な発見がつづいて証明されたその秘密とは

「日本は法治国家ではない」という身も蓋もない事実です。(略)

 われわれ国民は「法律」を犯せば、すぐにつかまったり、罰せられたりしています。しかし、その一方、日本では国家権力の行使を制限すべき「憲法」が、まったく機能していないのです。ですから「法治国家ではない」というのです。本書238ページ

 

「なにしろ米軍基地をめぐる最高裁での審理において、最高検察庁がアメリカの国務長官の指示通りの最終弁論を行ない、最高裁長官は大法廷での評議の内容を細 かく駐日アメリカ大使に報告したあげく、アメリカ国務省の考えた筋書きにそって判決を下したことが、アメリカ側の公文書によって明らかになっているので す。」本書239ページ





ここから、私たちの欺瞞の戦後史が始まったのである。誰でもこの本を読めば、現在の日本が独立国と言えないことがわかってしまうだろう。悲しいことだが、属国であるということは、すなわち「不平等条約を背負わされていること」であるということが『日米地位協定入門』を読むと本当によく分かる。それにしてもさらに不平等を背負うTPPに参加表明とは、、、





<参考資料>

【日米地位協定 入門】 天木直人・前泊博盛の対談 2013/3/5 【1:18:36】

http://www.youtube.com/watch?v=krV62aIe1_M

 福島第一原発の事故から2年。実は今、同原発の「4号機」が、さらなる放射性物質を地上に撒き散らし、人類を未曾有の危険にさらそうとしています。それなのに国と東電にはまるで危機感がありません。外交官時代から脱原発の志を貫いてきた信念の人・村田光平さん(元駐スイス大使)が、豊橋でその空恐ろしい実情を語ります。



<村田光平(むらた・みつへい)プロフィール>

1938年、東京生まれ。61年、東大法学部卒業、外務省入省。駐セネガル大使、駐スイス大使などを歴任し、99年、退官。99年~2011年、東海学園大学教授。現在、同大学名誉教授、アルベール・シュバイツァー国際大学名誉教授。外務官僚時代、チェルノブイリ原発事故をきっかけに「脱原発」をめざす活動を開始。私人としての活動だったにもかかわらず、駐スイス大使時代の99年、当時の閣僚から「日本の大使が原発反対の文書を持ち歩いている」と批判され、その後日本に帰国となり、辞職。さまざまな圧力に屈せず、脱原発の主張を貫いて「反骨の外交官」と呼ばれた。以後、現在まで、主に原子力問題やエネルギー問題などをテーマに言論活動を続けている。著書に『原子力と日本病』、『新しい文明の提唱 未来の世代に捧げる』など。 

「村田光平講演会」~原子力と日本病~

日      時    平成25年 3月17日(日) 午後13時30分~15時30分

場      所    豊橋市民文化会館 リハーサル室

資  料  代     1,000円

主      催    「浜岡原発の危険性を考える会」

問い合わせ先     090-8556-8301(林)

*多くの方のご参加をお待ちしております。

<参考資料>

2012年のアメリカを象徴する30の事実

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3月 072013

評論家の増田悦佐さんが「デフレ救国論」という本で素晴らしいアメリカの現状についてのまとめをしているので紹介します。

2012年のアメリカを象徴する30の事実」 

 

 

 

 

 

 

 

(1)延滞中のローン600万件

(2)90年代に1時間の労働で買えたガソリン10ガロン:今は6ガロン

(3)全米世帯の43%が収入を上回る支出を継続中

(4)オバマ在任期間中に長期失業者は260万人から560万人に増加

(5)平均失業期間は、アメリカ史上最長に近づきつつある

(6)アメリカの労働力人口2370万人が失業ないし、不本意な就業中

(7)労働力年齢人口8800万人が就業せず求職もしていないが、この数は史上最高

(8)2000年に全雇用の約20%が製造業だったが、現在はわずか5

(9)2001年以降、56000カ所以上の製造業事業所が閉鎖された

(10)4990万人が健康保険未加入で、企業の提供する保険への加入者は11年連続で減少中

(11)NYタイムス推計では、1億人が貧困レベルかそのわずか上の暮らし

(12)企業利益率は史上最高で、極度の貧困状態で暮らす人数も史上最高

(13)現代アメリカ社会では、上から1%の保有資産額が、下から90%の保有資産総額よりも大きい

(14)下から50%の保有資産総額は、全米家計資産のたった2.5

(15)子供の貧困率:フィラデルフィア36.4%、アトランタ40.1%、クリープランド52.6%、デトロイト53.6

(16)フードスタンプ受給者は、オバマ政権下で3200万人から4600万人に拡大

(17)65歳以上の世帯主の世帯の35歳以下の世帯主の世帯に対する保有資産倍率は1984年の10倍から47倍に急拡大

(18)インフレ率調整済みの全米学生の借金は、10年前に比べて倍増した

(19)アメリカ人全体の46%がクレジットカードの負債を翌月以降に持ち越し

(20)残高の持ち越しがあるクレジットカード負債の平均金利は13.1

(21)アメリカ国民全体で7980億ドルのクレジットカード負債を抱えている

(22)自動車ローン総件数の45%は、サプライムローンを抱えた世帯へのローンだ

(23)1970年当時なら20ドル分の購買力を得るのに、今は116ドル必要

(24)連邦所得税を払っていない国民の数は史上最高に達している

(25)全米世帯の48.5%が政府支援受給中:1980年には30%未満だった

(26)オバマ政権下だけでも、政府が国民に直接支給する金額は32%増加している

(27)米国債総残高は、カーター大統領就任時の22倍以上になった

(28)オバマ就任以来の政府債務は、ワシントンからクリントンまでの総増加額以上の伸びとなっている

(29)今、米国債残高は、1時間に15000万ドルのペースで増えている

(30)1800年にはGDP2%だった連邦政府支出が今は、23.8%、2040年には36.8%に達すると予測されている

怖い話~世界の食を支配する者たち~

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3月 042013

 現在、「モンサントの不自然な食べ物」というドキュメンタリー映画が食に対する意識が高い人の間で話題になっている。今、日本でも上映されている。ところで、欧州委員会(European Commission)は、遺伝子組み換え(GM)作物の承認を2014年末まで凍結することを決定。ところで日本は、GM(遺伝子組換)作物については市民レベルでの抵抗はあるものの、基本的にはアメリカの言いなり。TPPはさらにそれを加速させることになる。TPPに参加するということは、米国がつくった脅威のシステムに組み込まれ、食品安全など米国の言いなりになることを意味する。そのウラには世界の食を支配しようと考えているグローバルエリートがいる。今回は、少々古くなってしまったが、そのことを的確に指摘したウイリアムエンダールのインタビューをお届けする。

「怖い話~世界の食を支配する者」

                                                                2008年6月

            The Seed Barons (種子ビジネスで暗躍する大物たち)
~巨大な農業ビジネス関連企業、巨大な石油企業と大きな政府が世界の食料供給を支配している~


                                                    F・ウィリアム・エンダール
 

 

<F・ウィリアム・エンダール>
 は、アメリカに拠点を置いているが、現在、ドイツに在住している。エンダールは、遺伝子組み換え食品に関する記事やレポートを積極的に執筆している。このインタヴュー記事の中で、彼は次のように語っている。「歴史、科学、そしてエネルギー政治、特に多国籍石油企業などの取材に長年携わっているうちに、遺伝子組み換え食品(GMO)というテーマに行き着いた」と。 2004年に出版された彼の著書『戦争の世紀-アングロ・アメリカン主導の国際政治と世界新秩序』はベストセラーとなった。(この本は2年前に日本で出版された本だが、多くの日本の将来を憂慮している日本人が読むべき名著である。近いうちに詳細に紹介したい。)エンダールは多くのメディアで記事を書いている。

それらは、アジア・タイムズ、ファイナンシャルセンス・ドットコム、アジア・インク、グローバルリサーチ・ドットコム、321ゴールド・ドットコム、日本経済新聞、そして雑誌「フォーサイト」などである。

 エンダールは、エネルギー分野の専門知識を長年にわたって培ってきた。このことによって、彼は生物工学分野での「戦争」を取材する上で理想的とも言える準備をすることが出来たと言えるだろう。生物工学分野は、エネルギー分野と同じく、巨大であるが、表に出ない、多国籍企業など、グローバルなプレイヤーたちが支配している分野である。彼らは、世界中の、数百万、数千万の人々の生命に影響を与えるほどの力を持っている。 アメリカ国内の活動家たちやリベラルな人々とは一線を画しながら、エンダールは活動している。エンダールは、世間で受け入れられた言説や主張とは違う考え方を述べることが多々ある。例えば、彼は、「地球温暖化が進行している」というコンセンサスには与しない。この地球温暖化というテーマをエンダールと議論することは次の機会に譲るとする。

 今回のインタヴューでは、遺伝子操作と石油価格に集中して議論を行うこととする。





A(質問者、以下A):あなたのこれまでの経歴、そして、あなたがどのようにして遺伝子組み換え食品をテーマとするようになったのか教えて下さい。

エンダール(以下、E):私は35年間、経済リサーチャー、歴史家、そしてフリーのジャーナリストとして活動してきました。私はニューヨークに住んでいたのですが、最近の5年ほどはヨーロッパに在住しています。1973年から1974年にかけての第一次オイルショック、1970年代終わりの第二次オイルショックをアメリカではエネルギー危機と呼びますが、このエネルギー危機をアメリカが経験しているとき、私は、巨大な石油企業の力に興味を持ち、セヴンシスターズ(Seven Sisters)が持つネットワークの影響力を調べ始めたのです。
 私は巨大石油企業の影響力の調査に没頭し、テキサスを頻繁に訪れました。アメリカ南西部にある中小の石油企業(非セヴンシスターズ系)からの招待も受けました。それは、彼らが、私が書いた、非セヴンシスターズ系中小石油企業と巨大石油企業との力のバランスに影響を与えるような記事に注目したからです。
 こうした経験から、私は「歴史を通して諸問題を理解する」という手法を確立しました。1990年代初め、ドイツの小さな出版社から、石油に関する歴史についての本を書くよう依頼されました。正確に言うと、この依頼は、第一次イラク戦争の起きた1991年になされました。私は、その本の構想を練り、調査を始めました。そして、後にそれが、『戦争の世紀』(A Century of War、ア・センチュリー・オブ・ウォー)となりました。私は1880年代にまで遡りました。この時期、英国海軍(the Royal Navyザ・ロイヤル・ネイヴィー)が、石油内燃機関を使った戦艦で構成される艦隊を創設しました。このプロジェクトはウィストン・チャーチル(Winston Churchill)によって始められました。その時、チャーチルは英国海軍省の第一海軍卿(First Lord of Admiralty、ファースト・ロード・オブ・アドミラルティ)でありました。
 『戦争の世紀』の中で、私は「生死の境目(thin red line、シン・レッド・ライン)」という概念を使って、石油の歴史を説明しました。ここ数百年間、過去から現在にかけて、歴史上の重要な出来事の多くが「生死の境目」によってつながっているのです。
 具体的に言うと、アメリカとイラクの関係、イランに対する脅威、スーダンのダルフールでの大虐殺に関する中国とアメリカの緊張関係などです。これらは全てつながって起きているのです。
 石油をコントロールすることは、第二次世界大戦後のアメリカの世界戦略、または軍隊の駐留戦略の中心となってきました。1970年代半ば、ヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger)は次のように述べています。
「石油をコントロールすることで、世界中の国々をコントロールすることが出来る。食料をコントロールすることで、世界中の人間をコントロールすることが出来る」と。


A:生物工学(バイオ・テクノロジー、biotech)というテーマにはどのようにしていきついたのですか?

E:1980年代半ば、私は、関税と貿易に関する一般協定(GATT、ガット)を取材し、疑問を持ちました。私は何度も何度もブリュッセルを訪れました。ブリュッセルには、ヨーロッパの農業団体の多くが本部を置いていましたし、ヨーロッパ経済共同体(EEC)、後のヨーロッパ連合(EU)も本部を置いていました。
 私が石油の取材を通じて行った手法を使って、穀物市場がどのように機能しているのかを取材しました。そして、私は驚愕の事実を突き止めたのです。
 それは、「国際穀物市場とヨーロッパの農業政策は、アメリカの外交政策をコントロールしている人々によって、コントロールされている」というものでした。ヨーロッパの農業政策は、ヨーロッパの農業従事者と消費者の利益を促進すべきものであるべきなのにもかかわらずです。
 国際穀物市場を支配する人々は、穀物カルテル(grain cartel、グレイン・カルテル)と呼ばれていました。5つの大企業のうちの、4つの企業がこの穀物カルテルを形成しているのです。それらの企業とは、ミネソタ州にあるカーギル社(Cargill)、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド社(Archer Daniels Midland)、その当時のコンティネンタル・グレイン社(Continental Grain、現ContiGroup Companies, Inc)でした。
 穀物カルテルは、重要な農業政策を彼らの利益に沿うように変えるくらいの、大きな影響力を持ち、ロビー活動を行っていました。ガット・ウルグアイラウンドと農業ビジネスについての疑問についても私は長年取材していました。〔注:ADM社は、以前は、ネルソン・ロックフェラー未亡人が取締役会メンバーの公然たるロックフェラー系企業だった。今も関係はあるだろう〕5、6年前から私が1980年代に取り組んだ仕事、農業ビジネスの取材を再び開始しました。私は遺伝子操作作物と植物の特許についての疑問に取り組むことから始めました。











<モンサント、デュポン、ダウ社の企業ロゴ>

 その当時は生物学について全くの素人でしたが、私が直感的にこれは大変なことだと感じたのは次の事実を掴んだときでした。それは、決定的に重要な特許は、4つの世界的大企業のうちの3つが所有していて、重要な飼料用穀物、大豆、とうもろこしなどがそれらに独占されている、ということでした。その3つの大企業は、米ミズーリ州セントルイスに本社があるモンサント社(Monsanto)、デラウェア州にあるデュポン社(DuPont)、ミシガン州にあるダウ・ケミカル社(Dow)です。そして4番目は、スイスのバーゼルに本社を置く、シンジェンタ社(Syngenta)である、と言われていました。このシンジェンタは、スイス、スウェーデン、そしてイギリスの生物工学企業が合併したものでした。

 私が農業ビジネスの取材を再開したのは5、6年前です。その時、農業ビジネスの流れを改めて見てみました。私が述べた3つの大企業は、特許を独占し、この10年間、全人類にとって必要不可欠な世界の種子の在庫(ストック)をコントロールしている構図は全く変化していないどころか、その度合はますます酷くなっていました。
 3つの大企業は農業ビジネスをコントロールする力を強めていっています。デュポン社、ダウ・ケミカル社、そしてモンサント社は人々の安全に関する限り、後ろ暗い歴史を背負っています。一例を挙げます。それはヴェトナム戦争の頃まで、さかのぼります。これら3つの企業は、オレンジ剤(Agent Orange)やダイオキシン(dioxin)を使った「枯れ葉剤」を製造していましたが、従業員たちはそうした物質を浴びてしまっていたのです。それから数十年にわたり、彼らは裁判で争っています。その他にも多くの事件が隠されているのです。
 こうした大企業は、植物の遺伝子操作に関するアメリカの政策に大きな影響力を持っています。この事実を知り、私はこうした事実を白日の下にさらさねばならないと考えました。そして、本を出版しました。題名は『破壊の種子:遺伝子操作の隠された真実』(Seeds of Destruction: The Hidden Agenda of Genetic Manipulation、シーズ・オブ・デストラクション:ザ・ヒデュン・アジェンダ・オブ・ジェネティック・マニュプュレーション)です。この本は、カナダのグルーバル・リサーチ社から刊行されました。アメリカでも販売されています。

A:世界市場をコントロールしようとする、モンサント社とデュポン社の企みによって、私たちの生活は一体どうなっているのでしょうか?あなたの本ではどこまで書かれていて、本の出版以降、どのようなことが起きているのでしょうか?

E:私の本の刊行以降で、最も劇的な出来事は、デュームズディ・シード・ヴォウルト(黙示録の日に備える種子バンク、Doomsday Seed Vault)とBBCが呼んだ、プロジェクトが実行されたことです。
 これは、ノルウェイ政府主導で、北極圏に近いスピッツベルゲンの山の中で行われているプロジェクトです。彼らは、世界種子銀行(global seed bank、グローバル・シード・バンク)を創設しようとしているのです。この銀行は、地上に存在する全ての植物の種を山奥深くの貯蔵庫に貯めておくことを目的としています。この貯蔵庫は、核攻撃のような未曾有の大災害や大惨事にも耐えられるほどの強度を持っています。
 この種の貯蔵庫について興味深いことは、このプロジェクトがある企業によって支援されているということです。こうした企業を私は、「遺伝子の巨人たち」(gene giants、ジーン・ジャイアンツ)、もしくは「ヨハネの黙示録の四騎士」(four horse-men of apocalypse、フォー・ホースメン・オブ・アポカリプス)と呼んでいます。これらの企業は、遺伝子操作作物(GMO、Genetically Modified Organism、ジェネティカリー・モディファイド・オーガニズム)という形で、生命を特許の対象にすることを推進しています。こうした企みに、何も裏がないなんてことはない、と私は疑っています。
 
 世界中の重要な地点の数々に、種子がそのまま保存されている、種子銀行が設置されています。その一つは、イラクのアブ・グレイブ周辺にありました。しかし、米国の占領直後、それは姿を消しました。イラク国民は、そこで何が起きたのか調べることは出来ません。この種子銀行はおそらく、爆破されてしまったのでしょう。しかし、こうした種子銀行は世界中の重要な地点に存在しているのです。世界にとって重要な、小麦の種子が保存されている銀行はシリアにありますし、トウモロコシの種子は、メキシコのオアカサ地域で保存されています。
 
 私の本『破壊の種』は2006年に出版されました。その際、私はある情報を新たに書きました。それは、モンサント社がミシシッピー州の小さな会社、デルタ・アンド・パイン・ランド社(Delta and Pine Land、DPL)を買収したというものです。これは劇的な出来事でした。それは、DPL社を手に入れたことで、モンサント社は、世界的に重要な、ある権利を手に入れることになったからです。それは大手メディアが「破壊者の技術」(”Terminator Technology”、ターミネーター・テクノロジー)と呼ぶものです。
 この技術が施された種子は、1年経って収穫された作物の種子は発芽しない、つまり種子が自殺してしまうというものです。つまり、農民が収穫をしても、収穫したものから取れる種を蒔いても、発芽せず、作物が再生産されないのです。農民がこれまで数千年間にわたっておこなってきた、収穫した一部を種として取っておく、という行為が不可能になってしまったのです。このことは、農民たちが、特許商品となったとうもろこしや大豆など、モンサント社の種を永久に使い続けねばならないように、取り込まれてしまっていることを意味します。そして、農民たちは、何かを栽培する際には、モンサント社に使用料を払わねばならなくなってしまったのです。


A:しかし、モンサント社はそうした技術は使用しないと発表しましたよね?

E:モンサント社は私たちをだましています。彼らは「破壊者の技術」を商品化しないと発表したに過ぎません。DPL社は「破壊者の技術」の特許を持っていました。しかし、注意を払わねばならないのは、この特許の共同所有者が、アメリカ農務省、つまり、アメリカ政府であるということです!〔注:この破壊者の技術を「農業ビジネス版の核兵器」だと理解すれば、それを使用せずとも、周囲の国々に与える抑止力が絶対的なものであると理解できるだろう〕
 モンサントは、1999年にDPL社を買収するつもりである、としおらしく記者会見を行い、その中で、「破壊者の技術」は商品化しないと発表しました。その時、アメリカ農務省の高官は挑発的に、次のように述べました。「そうだな、私たちは研究を継続するし、DPL社と今後もしっかりと協力していく」と。皆さんは次のような疑問を持たれるでしょう。「2000年から現在に至るまでの、アメリカ政府の意図は一体何なのか」と。何と言っても、アメリカ農務省は「破壊者の技術」を支援する研究プロジェクトを積極的に進めているのですからね。

A:それでは、アメリカ政府の意図とは一体何なのでしょうか?

E:私を始め、多くの人々が次のように考えています。世界中に、遺伝子操作された種を普及させることに関して、邪悪な政策意図があると。1970年代からのキッシンジャーの様々な発言を遡って調べてみるとそれがよく分かります。
 アメリカ政府の政策意図とは、人間の食物連鎖の中の致命的に重要な部分をコントロールする能力を持つということなのです。大豆は肉牛や畜産における、重要な飼料用作物ですし、とうもろこしもそうです。米(こめ)に関しても同様に、遺伝子組み換え操作が行われ、特許が取られている品種があります。そうした米はアジアを中心として、世界の人口の40%の人々の生活を支えているのです。食物連鎖の中で、こうした穀物は大変重要な役割を果たしています。
 そうした穀物の種をコントロールする動きはそれ自体も大変なことです。しかし、次の事実を合わせて考えると、その深刻さがよく分かると思います。1992年、当時のジョージ・H・W・ブッシュ(父親)大統領はモンサント社の幹部たちとホワイトハウスで非公式に会談を持ちました。その直後、ある行政令(directive、ディレクティヴ)に署名をしたのです。それは、遺伝子組み換え食品と非遺伝子組み換え食品を区別してはならない、というものでした。これが悪名高き「実質的同等原理」(substantial equivalence doctrine、サブスタンシャル・イクイヴァレンス・ドクトリン)です。
 これは次のことを意味するのです。それは、遺伝子組み換え食品は普通のとうもろこし、大豆、綿と全く同じであるので、遺伝子組み換え作物に対する、政府による特別な監視も、第三者機関による安全性実験も必要ではないということです。この決定は、アメリカの歴史の中で、政府によってなされたことの中で、最も狂っていて、危険なものなのです。
 少し考えてみたら分かることです。モンサント社などは、特許を取ったとうもろこし、大豆、牛乳の生産量を増大させるためのrBGHホルモンは特殊である(unique)と発表していました。彼らによれば、遺伝子組み換え操作を細菌や菌類に施し、問題の植物のDNAを変化させていました。従って、彼らの行った遺伝子操作によって、そうした植物は通常とは異なる、特殊なものとなりました。しかし同時に、彼らはこのようにも述べています。遺伝子組み換え作物は特殊ではない、他のとうもろこしや大豆と同じ、だと。モンサント社などの言っていることは矛盾しています。この矛盾の中に、モンサント社と政府が一体となって推進してきた、遺伝子組み換え食品に対して一切の規制や監視を行わないようにしてきた、大変に後ろ暗い、暗黒の歴史が垣間見られるのです。この遺伝子組み換え食品は、現在の人間の食物連鎖にとって重要な部分を占めているのです。

A:ブッシュ政権下で、生物工学企業は、規制がかけられないようにするための方策を採ることが出来た、ということなのですか?

E:遺伝子組み換え食品について、規制やコントロールは存在しません。1992年以降、政府はいかなる規制も行っていません。アメリカ食品・医薬品局(FDA)もアメリカ農務省も規制を行っていないのです。遺伝子組み換え食品を監視し、安全性に関する実験を行うべき、政府機関はどれも規制や監視を行っていないのです。
 モンサント社は、幹部社員たちを政府機関に送っています。彼らはFDAや重要な政府機関の中心的なメンバーとなっています。彼らはモンサント社の意向に沿うように政府機関で働き、その後、モンサント社に帰るわけです。クリントン政権下でアメリカ通商代表部代表(U.S. Trade Representative、ユー・エス・トレイド・レプリゼンテイティヴ)だった、ミッキー・カンター(Mickey Kantor)は、国際貿易交渉で、モンサント社の利益実現に多大な貢献をしました。彼は、アメリカ通商代表部を離れた後、モンサント社の取締役になりました。〔注:現在は退任している〕

A:それでは、ブッシュ政権下で、モンサント社などは、政府の規制がない状態を保ち、推進してきたということでしょうか?

E:そうですね、今は政府による、遺伝子組み換え食品に関する規制は何もありません。それに加えて、現ブッシュ政権は、この状況を外国にも適用しようとしているのです。イラクがその良い例です。2003年にポール・ブレマー〔注:キッシンジャー・アソシエーツ元パートナー〕が、イラクの「植民地総督」(proconsul、プロウコンサル)に就任した際、モンサントは「オーダー81」(Order 81)と呼ばれる書簡をブレマーに送りました。アメリカ政府は、イラク国民に対し、多くの命令を発しました。これをアメリカ政府は寛大さを現わした、と考えているようですが。とにかく、それらは「命令」ですから、実行されねばなりません。
 オーダー81は、特許の取られた作物に対する企業の権利をイラク国内法で認め、イラク国内でモンサントの種を使用する際には、強制的に使用料を徴収する、というものでした。このオーダー81はイラクの憲法に反している内容なのです。2004年、イラクでは、遺伝子組み換え種の存在が国内法で認められました。これはアメリカの後押しがあったためです。

A:先ほどお話しのあった、北極圏の種子貯蔵庫の創設についてお聞きします。これに、巨大穀物種子企業や食料生産大国の、どのような地政学的な意図が隠されているのでしょうか?





ノルウェーにある「種子銀行」にはロックフェラー財団も資金提供(地図中、Svalbardとあるのがその種子銀行の場所)





E:「黙示録の日に備える種子貯蔵庫」(デュームズディ・シード・ヴォウルト)は、遺伝子組み換え食品に、人々の注意や関心を集めるのに役立つと思います。このプロジェクトは、僻地で行われている、何の役にも立ちそうもない計画なのです。それに巨額の金が投入されているのです。
 人々は次のような疑問を持つに違いありません。ビル・ゲイツ財団(Bill Gates Foundation)はとロックフェラー財団(Rockefeller Foundation)は、ノルウェー政府と「持続可能な農業のためのシンジェンタ財団」と共同して、北極圏で一体何をやっているのだ、と。彼らは何の目的でこれらの種を貯蔵しているのかと。
 または、遺伝子組み換え作物を取り扱う大企業が、人類のこれまで築きあげてきた財産である種を利用するためなのか、もしくはそれらの穀物の特許を取り、食料供給を実質的に支配しようとしていのか、という疑問が浮かびますね。そうした種子には、メキシコでだけ栽培されている、バスマティ米やとうもろこしがあります。こうしたことを批判することは厳しく制限されています。
 今この時点では、こうしたことは推察の域を出ません。
 しかし、ロックフェラー財団は遺伝子革命を推進し、それに1970年代から1億ドル以上の資金を投入してきました。また、ロックフェラー財団は優生学(eugenics、ユージェニックス、優勝劣敗の思想=社会ダーウィン主義に基づいた「劣悪遺伝子排除」の思想)に肩入れし、人口抑制を押し進めてきました。これはつまり、ロックフェラー財団が人間の群を間引いていて、望ましくない人々、例えば少数民族を抹殺しようとしているのです。1930年代にロックフェラー財団はナチス(Nazis)に資金提供をしていました。それは、優等民族(master race、マスター・レイス)を創造するためでした。これは何の誇張もなく、事実なのです。私は『破壊の種子』の中で、もっと詳しくこのことを書いています。

A:ロックフェラー財団は確かに、その事実を否認し、隠蔽していますね。これは企業の広報のイロハです。「自社が過去にナチスと関係があったことを否定せよ」ですね。

E:彼らは、過去を否認していませんよ。これは大変に面白いことです。彼らはただそれを無視してきました。
 ロックフェラー家はアメリカ優生学学会で、積極的に活動してきました。優生学という学問は、ヒトラー率いるナチスの保護下で、ドイツの医学者たちが発展させた学問です。その究極的な形がガス室となったわけです。こうした事実がニュールンベルグの軍事法廷で明らかとなったとき、アメリカ優生学学会は名称を変更することにしたのです。そして彼らは優生学の部分を「遺伝子(genetics、ジェネティックス)」に変更したのです。
 世界中にある生物学研究センターの設置と、遺伝子組み換え作物を発明した研究への資金提供はロックフェラー財団が直接的に関わって始めたプロジェクトなのです。別に鋭い人ではなくても、ロックフェラー財団の意図には簡単に気づくでしょう。ロックフェラー財団は優生学の発展のために資金提供してきました。それは「劣った民族や人々」(inferior peoples、インフェリア・ピープルズ)を抹殺するためのものでした。
 そんなことをしてきたロックフェラー財団が、遺伝操作された種子の研究に資金を出しているのです。こうした事実を合わせて考えると、ロックフェラー家は、世界中の民族グループや人口への食料供給をコントロールする計画を持っているということになります。これは地政学的に、大きな武器となります。これを私は『破壊の種子』の中で書いています。そして残念なことなのですが、これは私の想像の産物などではないのです。

A:力が衰えつつある超大国(superpower、スーパーパウア)であるアメリカに本社を置く多国籍企業(multinationals、マルタイナショナルズ)はいまだに世界の食料供給に対して巨大な力を持つことが出来るのでしょうか?また、そうした企業は言うことを聞かない国々の態度に影響を与えることが出来るのでしょうか?

E:私は今2冊の本に取り組んでいます。これまで書いた、石油をテーマにした『戦争の世紀』、この『破壊の種子』を入れて、これらを三部作(trilogy、トリロジー)としたいのです。私は今三部作の3冊目の本に取りかかっています。キッシンジャーの規則の3番目は、金(かね)をコントロールする者が、世界をコントロールするというものです。そして、種子の供給をコントロールすることは想像を絶するほど強力な武器となります。〔注:エンダールは現在自分のウェブサイトで、現在の金融危機についいてのコラムを書いている〕
 中国はアメリカから、少しずつですが独立し、距離を取ろうとしています。そしてジョージ・ブッシュ、ディック・チェイニーや、ワシントンの政治家たちの要求を全て呑むということをしません。そしてアジア地域における、自国の利益を確立しようとする動きに出ています。
 そうした中国の動きに対して、アメリカは次のように言うことができます。「種子の供給をストップしますよ。私たちの言うことを聞かないと、翌年に米を収穫できませんよ。イラン、スーダンやアフリカ諸国の石油の供給を実力で阻止しますよ。あなた方は私たちの望む通りに動いて下さらないし、アメリカ国債に充分投資して下さらないし、ニューヨークにある大銀行群がサブプライム問題で困っていますが、そこから手を引こうとなさっているし」これは単純な話なのです。世界の食料や種子供給をコントロールする人間や国は、信じられないほど巨大な力を持つのです。
 世界の4大種苗企業のうちの、3つの企業は、軍産複合体(the Pentagon-military-industrial complex、ザ・ペンタゴン・ミリタリー・インダストリアル・コンプレックス)と深く結びついています。これは人々に注意を喚起しなくてはならないことです。

A:ここ数年、ヨーロッパ連合を中心として、食料の遺伝子操作は、阻止され、邪魔されてきていますね。あなたは現在、ドイツに住んでおられます。ヨーロッパでは、遺伝子操作作物はその存在の可否が問われていると思いますか?

E:ヨーロッパでの状況は複雑になっています。ヨーロッパの人々は遺伝子操作作物に反対しています。これは明らかなことです。ドイツやオーストリアなどの国々の国内法では、遺伝子組み換え作物の栽培を禁止しています。スイスでは、5年間の猶予期間が設定されていますが、遺伝子操作作物は禁止されています。私が個人的に知っている農民たちがその禁止措置の中心的な役割を果たしました。
 ギリシアでも同じ状況です。ポーランドでは、国会が遺伝子組み換え作物に対する厳しい制限を加えようとしています。それは、ポーランドの国会議員たちが自国の小規模農家が、巨大な農業ビジネス・コングロマリットの支配によって破壊されてしまうことを憂慮しているからです。

エンダール(以下、E):・・・・ドイツでは、農民と消費者による、草の根の、反遺伝子組み換え作物運動が組織されています。ドイツでは、農薬や化学薬品を使用しない場所がたくさんあり、そうしたところでは、無農薬、有機作物が収穫されています。こうした作物には厳しい規制がかけられているのです。ドイツでは、無農薬・有機作物というのはただラベルに書いてあるだけのものではなく、実体が伴っているのです。ドイツの人々は遺伝子組み換え作物に強く反対しています。
 ドイツでは、遺伝子組み換え作物を栽培する農家には多少のペナルティを課しています。しかし、風に運ばれた種で、自分の農地が汚染されてしまった農家にはペナルティを課されることはありません。
 ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)政権は、現在、アメリカ政府との関係修復への努力を行っています。しかし、メルケル政権は「誤った政策を行っている」アメリカ政府との関係修復を目指しているのです。メルケル政権は、ブッシュとチェイニー率いるアメリカ政府が望むこと全てを行うことで緊密な関係を築こうとしています。その中に、遺伝子組み換え作物の栽培の認可も含まれています。
 フランスでは、1ヶ月前、政府の科学機関が、モンサント社のMON810を禁止することを支持すると発表しました。このMON810は、遺伝子組み換えとうもろこしで、フランスでは、数年前から安全性のテストが行われ、導入がストップされていました。フランスの政府機関が、モンサント社が安全で、健康に問題のないと主張した、とうもろこしが不安定で、安全ではなく、健康に問題を与えると発表したのです。その結果、ヨーロッパにおいては、MON810の導入が議論されることはほとんどなくなりました。
 モンサント社にとって最も重要な目標は、ヨーロッパにおける遺伝子組み換え作物に対しての抵抗をなくすことであると言えるでしょう。モンサントをはじめとする農業ビジネスの大企業は、ブリュッセルにおいて、ヨーロッパ議会やEUの農業機関に対し、ロビー活動を展開し、大きな影響力を行使しています。そうした機関へのロビー活動は、より簡単であるためです。それは、そうした大企業が数十年にわたって、ブリュッセルにおいてロビー活動を展開してきた実績があるからです。
 ヨーロッパ各国の国内法では、食料品の内容物の1%以上が遺伝子組み換え食品である場合にはそのことを表記するように義務づけています。アメリカでは、1990年代以降、その逆の政策が行われています。これは最も馬鹿げた政策です。
 食料品に遺伝子組み換え食品が含まれていることを表示することは、アメリカでは違法なのです。従って、アメリカ人は次の事実を全く知らされていないのです。彼らの食べる食品の60%から70%は、遺伝子組み換え食品だということを。ケロッグのコーンフレーク、ケンタッキー・フライド・チキンの付け合わせのとうもろこし、そして、マクドナルドのチーズバーガー1個の容量に3分の1含まれている大豆などは遺伝子組み換え食品なのです。そして、アメリカで、アレルギー患者が激増していることと、遺伝子組み換え食品との相関関係があるのです。

A:それでは、フランクフルトのスーパーに行けば、遺伝子組み換え食品が含まれている食品にはそのように表示されていることが分かるようになっているのですか?

E:はい、もちろん、小さな表示ではありますが、表示されているのですよ。遺伝子組み換え食品を1%以上含まれている食品にはそのように表示するように法律で決まっているのですから。モンサント社やその他の大企業が今行っているロビー活動の中心テーマは、遺伝子組み換えの大豆やとうもろこしを飼料として与えられた肉牛から取れた牛肉を、その様な飼料が与えられたことを示さないように出来るようにすることです。
 
 しかし、すでに多くの農民たちは、証明書付きの遺伝子組み換え作物ではない大豆をブラジルのような国から輸入し、使うようになっています。ブラジルでは遺伝子組み換え作物は栽培されていません。つまり、そうした農民たちは、遺伝子組み換えではない作物を輸入し、そうした大豆の種を第三者機関による試験に出しているのです。

A:世界的な遺伝子組み換え作物の流行や拡がりに対して、人々の抵抗はどれくらい成功しているとお考えですか?

〔注:この8月になって、イギリスのチャールズ皇太子が、遺伝子組み換え作物の安全性について、宗教的な「神の領域をひとが侵すべきではない」という理由と、「史上最悪の環境災害を招く」という理由から、同食品を推進している大企業などを批判した。疑念を呈したが。
参考URL:http://sankei.jp.msn.com/world/europe/080815/erp0808150942006-n1.htm


E:大変に成功していると考えます。メルケル政権は、この2年半の間、アメリカ政府が熱望しているにもかかわらず、遺伝子組み換え食品をドイツに導入することが出来ていません。ドイツ政府はあらゆる努力を行っていますが、成功していないのです。
 
 ドイツでは、政府がエタノールや生物燃料をガソリンの代替物として導入することを支援するという、馬鹿げた政策を採ることで、遺伝子組み換え作物の導入を行おうとしているのです。これは、ブッシュ政権がアメリカ国内で補助金をたくさん出すことで生物燃料を支援し、遺伝子組み換え作物を導入したのと同じ方法です。
 アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)社のような、種子を支配する大企業と石油企業はブッシュの政策を支持しています。〔注:バイオエタノール自動車の政策は、このADM一社を儲けさせるための政策と良く批判される〕それは、そうした政策を採っても、環境問題は解決しないと分かっているからです。そうした政策によって、世界中で食料品の値段が高騰しています。そして、農地はもはや農業生産のためでなく、燃料生産のために使用されているのです。〔注:民主党の大統領候補も農業が盛んな州への配慮から、表だってバイオエタノール政策を批判できないのが実情である〕

A:生物燃料の拡大によって起きる最大の問題や失敗は何だとお考えですか?

E:最大の失敗は、アメリカ国内で生物燃料向けに栽培されたとうもろこし畑の総面積が、輸出向けに栽培されたトウモロコシ畑の総面積と同じになったことです。
 アメリカは世界最大のとうもろこし輸出国です。簡単に申し上げると、広大な面積の土地が、ただ燃やされるためだけのとうもろこしの栽培に使われている、ということなのです。
 こうした事実を踏まえた上で、アメリカ政府は、ブラジルやヨーロッパ連合に対し、アメリカと同じように生物燃料のためのとうもろこしを栽培するように促したのです。その時のアメリカ政府の理屈は、生物燃料によって、外国から輸入する石油に頼らなくてもよくなり、石油価格の高騰にも悩まされなくなる、というものでした。現状は、原油価格によって、穀物価格が決定されています。そして両方の価格とも天井知らずの高騰を続けているのです。
 もっと危険なことは、国際連合食糧農業機関(FAO)によると、世界の農業生産において、穀物のストックが減少しているということなのです。それは洪水被害や飢饉に対するためのストックも含まれています。穀物のストックの減少の程度は1970年代初めと同程度だと報告されています。当時は石油危機とあいまって、穀物が不足し、価格が急騰したのです。現在の穀物ストックの程度は1972年以来、最低である、と私は考えます。

A:どうしてそのようなことが起きてしまったのでしょうか?

E:穀物のストックが激減したのは、部分的には、アメリカとヨーロッパ連合の意図的な政策によるものです。彼らの政策によって、誰が利益を得るかお分かりでしょうか?穀物ストックはカーギルやADMによってコントロールされているのです。従って、私たちの税金がそうした穀物ストックのために使われずに済んでいるという主張があります。ブッシュ政権になって、政府が穀物ストックへの税金投入の殆どを廃止しました。そして、同政権は、生物燃料を推進しました。その結果、生物燃料向けの農作物作付け総面積は激増しました。
 カリフォルニア州立大学バークレー校の調査によると、アメリカで生産される、とうもろこしと大豆の全てを生物燃料に振り向けると、アメリカ国内のガソリン需要の約12%を賄えるということです。昨年、アイオワ州とサウス・ダコタ州で生産されたとうもろこしの約半分がエタノール精製工場に運ばれたと思います。農民たちはこの生物燃料に魅力を感じてもいるのです。それは、彼らは長年、とうもろこしの低価に苦しんできたからです。
 生物燃料の導入によって、とうもろこしの価格は上昇しました。その結果、農民たちは、年によって作物を変える、伝統的な方法を捨て去り、大豆やとうもろこしばかりを作るようになりました。そうして、土地はどんどん痩せていき、農民たちはますます化学肥料や農薬〔注:もちろん、モンサントやデュポンの商品である〕に頼るようになってしまったのです。これは正に悪循環と言えます。アメリカ国内で使用される除草剤の総量の40%がとうもろこし畑に使用されているのです。


A:あなたがなさっている主張に対して、よくある反論としては、近い将来には、そこら中に生えている雑草(weedy plants)を刈り取って燃料にする技術が開発されるから問題がないのだ、というものがあります。だから、たくさんの農薬や肥料は必要なくなるだろうというわけです。この主張はどう間違っていると思われますか?

E:セルロース・エタノールですね。〔注:オバマ陣営の選対幹部であるトム・ダシュル元上院議員は、セルロース・エタノールの推進者だ〕昨年、ヨーロッパ連合は、ドイツのような加盟国が、ブラジル産の安い甜菜(てんさい)に対して、国内市場保護を目的とする輸入制限を課すことを禁止しました。しかし、大事なことは、生物燃料というものは、経済にマイナスの効果を与え、決してプラスにならないということです。
 
 石油はまだたくさんあるのです。ブラジルはつい最近、海底油田を発見しました。予想埋蔵量は何十億バレルという規模です。この発見は、アラスカ油田や北海油田の発見に匹敵するものです。世界的に見て、石油不足は起きていません。従って、世界中で食料が不足しているこの時期に、食料を燃やして燃料にしてしまうというのは、余りにも馬鹿げていて、奇妙なことだと私は考えます。

A:あなたのご意見は驚くべきものです。多くの人々は次のように考えています。映画「シリアナ」〔注:ハリウッドでも有名なリベラル俳優のジョージ・クルーニーが主演している、反ブッシュ映画。石油企業の陰謀で中東戦争が起こされるという筋書き〕で描かれているように、石油埋蔵量は枯渇しつつあり、また埋蔵されている石油も採掘しにくい、と。しかし、あなたは石油の埋蔵量は豊富だと主張されています。

E:そうです。疑いようもありません。

A:それでは、ピークオイル(peak oil)説の欠陥や不備とはなんでしょうか?

E:ピークオイル説は欠陥だらけです。ピークオイル説は、確かに、それは2003年に起きたアメリカによるイラク占領を説明できるものです。私も当初、アメリカのイラク侵攻をその観点から説明しました。それはそれ以外の説は説得力がないと思われたからです。
 しかし、それ以降、私はピークオイル説に反対しているのです。私はピークオイル説に反論を加える文章を発表しました。タイトルは「かつてピークオイル信者だった男の告白」(“Confessions of an Ex-Peak Oil Believer”、コンフェッションズ・オブ・アン・エックスピーク・ビリーヴァー)というものです。それによって論争が起こり、私に敵意に満ちた手紙がたくさん送られてきました。
 
 そもそも、ピークオイル理論は、石油は化石燃料であるという考えに基づいています。この考えは、世界中の殆ど全ての大学の地質学科で宗教ドグマのように受け入れられています。問題は、石油は化石燃料ではないということです。
 つまり、恐竜の死骸(しがい)、海底の藻類(そうるい)の残骸、鳥類の糞(ふん)などの残骸から、石油ができるのではないということです。石油は生物由来のものではないのです。〔注:これが、いわゆる石油無機説といわれるもの。生物の死骸に由来するという通説的な石油有機説に対する意見〕石油はもっと深い地中で生成されているのです。地球が地核までどのような構造になっているかを示す模型や、火山がどのように爆発するかを示す模型をご覧になったことがあるでしょう。それらをご覧になると分かりますが、地球の中心部はマグマがあり、いつも燃えたぎっている状態にあります。そして、地表近くで、断層や破裂、プレート移動が発生します。それによって、地球の中心部にある高温のマグマが吹き出すのです。クラカトラ山やエトナ山の大爆発がその例です。
 石油は地球の深部で、どのように生成されるか、考えてみましょう。石油は炭化水素です。ロシアの科学者たちは、炭化水素石油の生成実験に何度も成功しています。実験は常温で、海抜レベルの気圧の中で行われました。石油は、あらゆる角度から考えて、地中深くで恒常的に生成されています。決して、動物の死骸が地中で圧力をかけられた結果、生成されるものではないのです。地質学者は、もっと地中深くに関心を払うよう、教えられる必要があります。サウジアラビアのガワールにある断層やその他、中東各地にある断層などは私の主張の好例となるものです。そうした断層地帯から、石油が多く採掘されています。
 1年前に、私はアイスランドに行き、私の書いた本に基づいた講演を行いました。その時、アイスランドの外相だった人物が、私に、アイスランド政府が、アイスランドに石油が埋蔵されているか、第三者機関による、地球物理学的な調査をし、その結果がちょうど出たばかりだ、と述べました。その人物は続けて、「調査結果によると、アイスランドには石油が多く埋蔵されており、それは、北海油田の規模になることも可能だ」とも述べました。
 

 一体誰が、世界の石油供給に関する情報をコントロールしているのでしょうか?誰がピークオイル説などを流布させているのでしょうか?それは、マット・シモンズ Matt Simmons というヒューストンの石油銀行家です。彼は、ディック・チェイニー副大統領の長年の友人でもあります。
 1バレルあたり107ドル〔当時〕にまで高騰した石油価格によって、誰が利益を得ているのでしょうか?エクソン・モービルがどれほどの利益を出しているのか、私には分かりません。しかし、彼らは、巨額の利益を得ていて、それらは正しい商取引の結果だと正当化されているのです。こうしたことを問題提起する人は誰もいないのです。

 〔注:さらにいえば、ゴールドマン・サックスとエクソン・モービルの取締役兼任によって、意図的に原油の高騰が演出されたという園田義明氏の説もある。参考URL:http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2008/08/14/3689777

A:罪のない、アメリカのドライバーたちは、近い将来、大量の石油が発見されることで石油価格が下落すると信じ、枕を高くして眠れるようになるのでしょうか?石油価格の下落によって、食料価格も下落し、生活は少しでも楽になるのでしょうか?

E:私もそうであれば、と願っています。しかし、石油価格は2つの要素によってコントロールされているのです。1つは、石油精製をコントロールしている、3つから4つの世界的な巨大多国籍石油企業です。そのうち2つはイギリスの、もう2つはアメリカの企業です。2つ目の要素は、ウォール街の金融企業です。
 石油取引の投機的デリヴァティヴ市場は、石油の価格決定メカニズムを革命的に変化させました。中東の石油輸出国が原油1バレル107ドルの原因ではありません。
 ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、そしてその他、石油への投資を中心に活動している3つの投資銀行が石油価格に影響力を持っているのです。
 イラクのバスラでテロリストが輸出用の石油パイプラインを爆破した、などとロイター通信が報道すると、これらのヘッジファンドとオイルへの投機筋は5分以内に、石油価格が10ドル上昇する方に賭けるわけです。これでは石油価格が安定することはありません。これは大変なことです。〔注:最近では「ナイジェリアの武装勢力がパイプラインを破壊した」という報道が良く行われる〕
 石油企業は、ここ数十年の間に、石油を即座に出荷できる体制を整えてきました。〔注:彼等は意図的に精油所のキャパシティーをギリギリにすることで市場に精製された石油を放出しないことで価格を統制しているのである〕
 これによって、彼らは、石油価格を上昇させることが出来るようになりました。石油市場は、統制された市場となってしまっているのです。これは、自由市場などではありません!エネルギー市場は世界で最も統制された市場です。そして食料市場はそれに次いで二番目に統制されているのです。

A:それでは、石油の供給は、少なくともこれから数十年、大丈夫だということですか?

E:いいえ。この問題を研究している人々の間では、これから数世紀間は大丈夫だと言われています。ワシントンにあるシンクタンクと深い関係を持つ、ある人物が私に次のように言いました。「アメリカの軍事衛星から撮った写真などの証拠によると、サウジアラビアとイエメンの間にある、未確定の国境地帯に、石油が多く埋蔵されている。ここが開発されれば、これから50年間の、世界の石油需要を全て賄うことが出来る」と。これは10年前に聞いた話です。それから何かなされたという話はありませんから、まだそこに石油は残っているのです。
 ロシアの地球物理学者たちは、その石油がどこにあるか、正確な位置を発見する方法を知っているのです。ロシアは、冷戦期、シベリアにおいて、自力で石油を発見した実績があります。その時期、ロシアは中東地域から石油を輸入することが全く出来ませんでした。それはNATOがロシアへの石油輸出を禁止していたからです。ロシアは、地球物理学を発達させ、ヴェトナム沖の海底油田を発見し、ロシア国内で多くの油田を発見しました。現在、ロシアは、サウジアラビアに次いで、世界第二位の産油国となっているのです。〔注:ロシアの石油埋蔵量に関しては、イギリスのロイヤル・ダッチ・シェルやイギリスの金融紙「フィナンシャル・タイムズ」などが、期待するほど多くないという情報操作を行っている〕

A:地球温暖化の話はおいておきます。ですが、環境に対し、現在の石油使用法は直接的な影響を与えています。太平洋上にはプラスティックやビニールのごみが多く浮いている状態です。その広さはテキサス州の広さの2倍に達しています。石油によって、世界は苦しめられてもいます。

E:そうした問題は、各国政府の環境部門が解決する必要がある問題です。経済を活性化させるには、効率的なエネルギーを使う必要があります。そしてそのエネルギーは安価で、経済を活性化させることが出来るものでなければなりません。しかし、だからと言って、私は、地球上をビニール袋であふれるような状況にしようなどとは思っていません。環境問題は解決されねばなりません。

A:石油が枯渇し始めると、石油価格が高騰する。結果、研究が進み、現在の生活様式が変わり、環境への負担が減るのではないか、という希望を持つ人々がたくさんいます。地球温暖化ガス、ヒューストン、ロサンゼルス、そしてリオデジャネイロの車社会の弊害などは強調してもし過ぎることはありません。

E:あなたがおっしゃりたいのはSUV(Sports Utility Vehicle、スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)のことですか。私はSUVがあまりにも肯定的に受け入れられ、多く売れている、という主張に賛成です。家族の移動や買い物には適切な大きさで、燃費の良い車があると思いますね。1ガロン(3.97リットル)あたり、100マイル、200マイル、そして300マイル走るエンジンは開発されています。しかし、これらの特許はジェネラル・モーターズ(General Motors)をはじめ、巨大自動車企業によって買われています。

A:人々はそういった話は都市伝説(urban legends)だと考えています。

E:都市伝説などではありませんよ!私はそういったエンジンを開発した人々に会っています。そういった人々は、自分だけで企業をやっていて、創造的な能力を持っている人々です。彼らの発明は大企業によって買収され、市場に出ることはありません。私の本『戦争の世紀』のアラビア語版の版権は、サウジアラビアの大手出版社によって買われたのですが、訳本が市場に出ることはありません。ですから、私の本にアラビア語版は存在しないのです。〔注:翻訳権を入手しても市場に出さないというのは典型的なグローバリストの手先による情報統制のやり方である。ただし、違約金を出版社は支払うことになる〕

A:2008年3月現在、たくさんの事件が起こっています。ドルの価値は下がり続けています。イラクでは争いが続いています。アフガニスタンの状況は好転していません。エネルギーに関して、ロシアの重要性は増加し続けています。ヴェネズエラもそうです。OPECは以前のようには調停者としての役割を果たしていないように思われます。それでは、これから数年間の間にどんなことが起きると予想されますか?

E:これは大きな質問ですね。控えめに言って、世界の勢力図、パウアについて、根本的な大転換(paradigm shift、パラダイム・シフト)が起きると思います。私たちは歴史的に重要な時代に生きているのです。そのような大転換は1870年代から1914年にかけて起こりました。大英帝国が衰退し、2つの帝国が出現し、あい争いました。1つはドイツ帝国で、もう1つはアメリカ合衆国です。1914年から1945年にかけて争いは続き、最終的にはアメリカが勝利し、世界の超大国(superpower、スーパーパウア)となりました。
 私の次の本のタイトルは仮ですが、『アメリカの世紀の興亡』(The Rise and Decline of the American Century)となるでしょう。このタイトルは「タイム」誌のヘンリー・ルース(Henry Luce)が、1940年代にアメリカの覇権が確立される時期に使った言葉です。現在のサブプライム問題は、残念なことに、そして悲劇的なことに、アメリカの銀行制度や金融制度の根本的な危機となっています。

 サブプライム問題は本来なら起こらないはずの問題のはずです。議会や新大統領が何か劇的な変化が起きるように手を打たなければ、アメリカは1930年代の大恐慌の時代と同じような状況になると思います。アメリカ中で、家屋の差し押さえ(home foreclosure、ホーム・フォークロージャー)で頻発しています。郊外の住宅地が、ギャングが抗争を繰り返すゲットー地区のようになっている場所があります。打ち捨てられた家屋が多数を占める場所もあります。そんな場所に住んでいる人々は、2、3年前には美しい住宅地であった場所で、一体何が起きているのか不安に思っています。しかし、こうした流れはますます加速します。それは住宅ローンのシステムはサブプライムを含む構造となっており、消費者に対し、詐欺的に勧められていたからです。これは大規模な金融詐欺と言えるでしょう。

 サブプライム問題について、私はいくつかの記事を書きました。そしてこの問題を「金融津波」(the Financial Tsunami)と呼んでいます。それらの記事に興味がある方はインターネットで読むことが出来ます。あらゆる局面で、住宅ローンの証券化と、この手法の拡大を推し進めた人物こそ、前連邦制度準備理事会議長(the former chairman of the Federal Reserve)アラン・グリーンスパン(Alan Greenspan)です。彼は議長職を退くその日まで、住宅ローンの証券化を進めたのです。
 当然のことながら、グリーンスパンは、自伝の中で、2005年から200

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