過去に何度か、CO2による地球温暖化説の怪しさをレポートで指摘してきたが、もしかするとその決定打とも言える事件がついに発覚しました。



現在、日本ではほとんど報道されないが、欧米のテレビニュースでは「クライメイト・ゲート事件」が世間を騒がしている。

ところで、米国では巨大な政治スキャンダルのことを、「~ゲート」と呼ぶことが多い。有名なところではリチャード・ニクソン大統領が関与したウォーター・ゲート事件。ヒラリー・クリントン女史が関与したと言われるホワイトウォーター事件も記憶にある方もいるかもしれない。最近のニューヨークタイムズに掲載された「言語コラム」では、「~ゲイト」(-gate)に対応するコトバとして、権力犯罪に対して真相究明を求める「真実言論派」を意味する言葉として、trutherというコトバが登場したことを指摘している。

それでは、この最新の「クライメート・ゲート」がいったいどのようなスキャンダルなのかというとそれは国連の地球温暖化を研究する部門で、ノーベル平和賞も受賞したIPCC(気候変動に対する政府間パネル)も依拠している地球の気温の変化の調査を行っているイギリスのイーストアングリア大学の気候研究ユニット(CRU)のコンピュータにある電子メールなどのデータが流出した事件である。11月20日ころから、イギリスのBBCが先んじて報道を始めており、イギリスだけではなくアメリカにも広がっている。

問題なのは、流出した電子メールのやり取りからは、CRUに所属する科学者たちが、二酸化炭素などの排出による人為的活動の結果による地球温暖化の根拠とされる、気象データに、作為的な加工が施されていたことが含まれていたり、気候変動予測につかう予測モデルの不正確さを科学者たちが嘆く内容が含まれているということだ。



この件に関して日本で唯一新聞報道した「朝日新聞」の記事から引用。



(貼り付け開始)

~盗まれたメール、COP15控え波紋 研究者「気温の低下隠した」 英米メデ

メディア加熱~                    2009/11/26朝日新聞夕刊

【ワシントン=勝田敏彦】

気象研究で有名な英イーストアングリア大のコンピューターにハッカーが侵入し、研究者が地球温暖化を誇張したとも解釈できる電子メールなどが盗み出された。12月の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)を控えた陰謀との見方もあり、英米メディアはウォーターゲート事件をまねて「クライメート(気候)ゲート事件」と呼んで報じている。

メールには、国際的に著名な気象研究者同士のやりとりが含まれ、イーストアングリア大のフィル・ジョーンズ教授が米国の古気候学者らに出した「気温の低下を隠す策略(trick)を終えたところだ」などと書かれたものもあった。

この記述に対し、地球温暖化やその人為影響に懐疑的な人たちが飛びつき、ネットなどで批判が相次いだ。ジョーンズ教授は声明で自分が書いたことを認める一方、「誤った文脈で引用されている」などと反論。木の年輪のデータから推定されるが信頼できない気温のデータを使わなかっただけで、科学的に間違ったことはしていないと主張している。

公開を前提にしない私信とはいえ、ほかのメールで懐疑派を「間抜けども」などと呼ぶなど研究者の態度にも関心が集まっている。

米国の保守派シンクタンク、企業競争研究所(CEI)は20日、「『世界一流』とされる研究者が、科学研究より政治的主張の流布に集中していることは明らか」とする声明を発表。23日には、急速な温暖化対策に批判的な米上院のインホフ議員(共和党)が「(感謝祭の議会休会が終わる)来週までに真相が明らかにならなければ、調査を要求する。この問題は重大だからだ」と述べ、「事件」が議会で問題にされる可能性も出てきた。

COP15を2週間後に控えた時期の発覚で、世論への影響も懸念される。21日付米紙ニューヨーク・タイムズは「(COP15直前の)時期のメールの暴露は偶然ではないだろう」との研究者の見方を紹介している。

米国では今年に入り、温暖化の科学的根拠に対する信頼感が下がっている。

世論調査機関ピュー・リサーチ・センターが9~10月に実施した世論調査によると、「ここ数十年、地球の平均気温は上昇していることを示す間違いない証拠がある」と答えた人は57%で、08年調査の71%、07年、06年調査の77%から大きく下落した。

同センターは、景気の落ち込みのほか、今夏は例年より寒かったことが理由ではないかとみている。

(貼り付け終わり)



「日経エコロミー」の記事から

「環話Q題:地球温暖化データにねつ造疑惑(09/11/26)」



(貼り付け開始)

そこで注目されたのが有名な「ホッケースティック曲線」だ。過去1000年間にほぼ横ばいだった気温が、温室効果ガスの排出が増えた20世紀後半に急上昇したことを示す。IPCC報告書でもたびたび引用されたが、あいまいなデータ処理が以前から問題視されていた。メールの中で、フィル・ジョーンズCRU所長は1960年代からの気温下降を隠すことで、80年代からの上昇を誇張するデータのtrick(ごまかし)があったことを示唆している。

ジョーンズ所長らは流出した電子メールが本物であることを認めたうえで、疑惑について24日に声明を発表。「trickとは新データの追加を意味する言葉で、ごまかしではない」などと釈明している。

*http://eco.nikkei.co.jp/column/kanwaqdai/article.aspx?id=MMECzh000025112009

(引用終わり)

このホッケースティック曲線こそが、人類の経済活動による、地球温暖化現象という図式を決定付けたものだ。





しかし、このホッケースティック曲線を世に出した気候学者のマイケル・マンという人物に対しては、別の科学者から疑問が投げかけられていた。例えば、中世の温暖期などは木の年輪の調査によって存在が分かるらしいが、これをマンが過小評価したために19世紀以降、突出して気温の上昇が進み、そのグラフがまるでアイスホッケーのスティックのようになったのではないかと批判されたわけだ。マンの提示したホッケースティック曲線が作為的に作成されたものだとすれば、これが国連のIPCCの報告書にも使用されていることを考えても、そのインパクトは気象学者の間だけにはとどまらない。

IPCCは、2007年のノーベル平和賞をアルバート・ゴア米元副大統領と一緒に受賞しているからだ。地球温暖化問題の中心的な活動であるゴアとIPCCの議長であるインド人のラジェンドラ・パチャウリが、この国際的な(ヨーロッパの貴族たちによって決められている)賞を受賞したことで、「地球温暖化対策の解決策はアル・ゴアに聞け」という流れが創ってきたのは紛れもない事実だ。

アル・ゴアはCO2による地球温暖化に対する”啓発活動”を本格化させ、それと同時に、ゴールドマン・サックス(GS)の元資産運用責任者のひとりと一緒に環境投資会社「ジェネレーション・インベストメント」社を設立し、大儲けをした。

ところで、地球温暖化が本格的に議題に上り始めたのが、1992年のリオデジャネイロで開催された「地球サミット」である。この地球サミットや京都議定書の仕掛け人であり、デイヴィッド・ロックフェラーや、エドマンド・ロスチャイルドとも昵懇の仲である、カナダ人のモーリス・ストロングという国連に非常に強いコネを持つ、パワーエリートがいる。この三人(ストロング、ロックフェラー、ロスチャイルド)が1980年代の末に、米コロラド州の山のふもとに集まって、「地球温暖化をどのようにしてビジネスが解決するか」という会合を開いている。(この会合については、中国人が書いた、反国際金融資本のテーマを扱った『通貨戦争』という本にも詳しく書かれている)

さらに、アル・ゴアの『不都合な真実』というドキュメンタリーを装った政治的な宣伝映画が公開されてから、イギリスでは『地球温暖化詐欺』(Global Warming Swindle)というテレビ番組がBBCで放送された。この中では、さまざまな”非主流派”の科学者たちが登場し、地球温暖化について、「仮に温暖化が進行しているとしても、それは、太陽の活動が原因であるかもしれない」という新しい視点を提示したり、「CO2による温暖化が進んでいるから気温が上昇しているのではなくて、逆に気温が上昇しているのでCO2が増えているに過ぎない」という別の意見も提示されていた。

ところが、このような批判に対しては、人為的温暖化派の論客からは、「ゴアの映画を見なかったのか。石油政権であるブッシュ政権では、温暖化懐疑論を否定するために石油業界からさまざまな圧力がかかっていたではないか」という彼らに都合の良い批判が投げられるのが常であった。ゴアの映画では、ゴアがわざわざ再現VTRに出現し、ブッシュ政権が温暖化議論に対して加えた圧力について報じる、「ニューヨークタイムズ」の記事を映し出すシーンまである。

ここで、クライメートゲートの二番目の大きなスキャンダルが浮上してくる。それは、つまり、ブッシュ政権がやってきたのと同じような圧力を当の温暖化の専門家たちである気象学者や科学者たちが行ってきた可能性が浮上しているからだ。前に引用した、「日経エコロミー」の記事には次のように書かれている。

それは、つまり、「メールでは、2001年にまとめられたIPCC3次報告書の代表執筆者のひとりだったジョーンズ所長が、懐疑派の学者に対して「報告書に論文を掲載しない」「論文誌の編集からはずす」「CRUのデータにアクセスさせない」といった圧力を加えたことがつづられている」のである。



一般的に学者の世界では、自分の研究業績が学会に認められるためには自分の論文が「専門誌」に掲載される必要がある。ピアレビュー(査読)とは学者同士の検証を経ているという意味である。この種の学会誌に掲載されないということは、学者としての業績が認められないということであり、学者としては「死の宣告」に等しい。

今回の「クライメート・ゲート」事件で流出したメールの一通には、ある雑誌が、温暖化に対する懐疑派の学者による論文を掲載されたことに対して、IPCCの報告書の執筆者でもあるCRUのフィル・ジョーンズ所長らの間で、「あいつの論文はもう査読誌には載せない」とか「この雑誌の査読誌としての権威を失墜させよう」といったやり取りが行われたことが記録されている。

IPCCの報告書こそが、CO2の排出により、地球温暖化が進み、世界中で甚大な被害を与える気象変動が起きると警鐘を鳴らした資料だが、そのIPCCの報告書に参加していたCRU所長や、CRUの提供するデータが、改ざんされていた可能性が極めて高いということは何を意味しているのか。

すべてのデータが根源から操作された可能性があるということだ。このIPCCの報告書を根拠にしたものはすべてを再検証する必要があるということを意味しているのかもしれない。

このクライメート・ゲート事件が、そのインパクトの割には米国の主流メディアでも軽い扱いにとどまっているのは、12月にデンマークのコペンハーゲンで開催される、COP15(気候変動枠組み条約第15回締約国会議)が近いことを配慮しているからだろう。この会合には、オバマ米大統領や中国の温家宝首相らが参加するが、鳩山由紀夫首相や小沢鋭仁環境大臣も出席する。さらに、日本の経団連の代表団も出席するし、世界じゅうのエネルギー企業や環境関連企業もそのトップが出席するとみられている。コペンハーゲンでの会議を前に、世界中の企業が、会合での何らかの国際的な枠組みの策定を期待するコミュニケに署名している。例えば、FT紙(2009年11月26日)によれば、金融機関では英HSBC、蘭ING、仏ソシエテ・ジェネラル、独アリアンツなど、財界では、ヤフー、ペプシ、アディダス、ネスレ、キャセイ・パシフィック、ルサール(ロシア・アルミニウム)、日本生命などの企業である。

それだけではない。アメリカでは、グーグルと組んで、先端的な送電網(スマート・グリッド)を開発しているジェネラル・エレクトリック社が環境部門に比重を置いているし、ドイツではシーメンスが、スイスではABB(アセア・ブラウン・ボヴェリ)が、フランスでは、原子力発電のアレヴァ、アルストムといった企業が、環境関連の需要を前提にして、企業戦略を立案している。日本で検討され始めた、「環境税」も、従来のガソリン税の暫定税率からの”付け替え”とはいえ、根底には京都議定書やCOP15に向けた、グローバルな地球温暖化対策の枠組みの進展の期待がある。

要するに、この世界的な大不況の真っ只中、世界経済の浮上の期待が望めるのは、中国やインドなどの新興国の経済成長(圧倒的な人口を前提にした内需)であり、まったく新しい発電、送電、エネルギー消費の発明である。ちょうど100年前に、ロックフェラー石油帝国が出現したが、それに変わるエネルギーの覇権をための競争が始まっている。アメリカはIT先進国であることから、効率的な送電線によるエネルギーコストの削減を目指し、フランスは原発大国であることから、国営企業に近いアレヴァなどの主要エネルギー産業を国家による「産業政策」で育てる戦略を打ち出している。日本は、しいて言えば、トヨタやホンダなどが開発している「エコロジー・カー」が成長株だが、大きな発電のところはGEやアレヴァといった欧米系に押さえられている。

だから、このクライメート・ゲート事件は、意図的にFT紙などのロスチャイルドの息がかかった新聞ではほとんど報じられないし、リベラル派で温暖化問題の脅威を主張してきた、「ニューヨークタイムズ」でもアフガン問題などに比べると、まったく扱いが小さい。それは、日本の新聞においても同様で、広告主のエコ企業の意向があるので、このエコ企業の基盤を揺るがしかねない大スキャンダルを大々的に報道するわけには行かないのだろう。

オバマ政権で「環境女帝」とのあだ名がつけられている、キャロル・ブラウナー女史は、COP15にオバマ政権のほかの環境関連閣僚と一緒に出席することが決まっているが、その彼女も、「ワシントンタイムズ」の取材に対して、「この問題に時間をかけて取り組んできた2500人の科学者が言うのだから、地球温暖化問題は真実なのよ」と、「科学者のコンセンサス」を盾に政府の方針の見直しを拒否したという。(ワシントンタイムズ、2009年11月25日付)

しかし、今回の問題で論点になっているのは、「コンセンサスの作られ方」であり、IPCCの使用しているデータがその論点になっているのである。

科学者が気候変動について予測するためには、コンピューターを駆使した「予測モデル」が重要になってくるのだが、今回、流出した電子メールの中には、科学者が自分たちの使っている予測モデルの信頼性に疑問を投げかける内容のものを含まれている。さらに問題なのは、科学者たちがこれらの「温暖化派」にとって都合が悪い内容を含んだメールを削除することを話し合っているやり取りも含まれている点だ。

これとは関係ないが、温暖化問題の火付け役であるアル・ゴア自身が、最近のインタビューや著作の中で、「私がCO2による温暖化の脅威を訴えてきたことが間違っていない」としながらも、「包括的に気候変動による危機に対処するには、NASAの報告で取り上げられている原因物質の全てをカバーするようにフォーカスを広げなければならない」と述べるようになっている。ゴアが示している最新の研究では、CO2が温暖化に与える影響は40%であり、そのほかにも、メタンガスや、石炭を燃やすことによって出るススなどの影響もあるという。(英ガーディアン、2009年11月2日)



世界の有名企業が、舵を切ったように新エネルギー競争に乗り出したことが示すように、地球温暖化問題は、地球破滅の危機の問題ではなく、台頭する新興国(中・印)による大量エネルギー消費時代の到来を受けて、欧米を支配してきたG-7諸国がどのように対抗し、相対的な優位を保つのかという戦略になっている。だから、この「いい加減な前提」に基づいているかもしれない温暖化対策のイニシアチブを誰が握るかという”競争”は当分終わらないだろう。それは、今到来している世界恐慌の中で、世界経済がひとつの方向に向けて、秩序だって競争するために不可欠だと世界の支配者たちが考えているからである。来月に行われるCOP15は大きくいえば、そのような「共同謀議」の形成の場である。



19世紀の戦争は、帝国主義を掲げた欧米諸国や遅れてきて登場した日本による領土の分捕りの形を取り、20世紀の戦争は総力戦による民族同士の争いという世界大戦の形をとる。そして21世紀の戦争は、核兵器があるために実際には銃弾が発射されることのない「世界のエネルギー覇権」をめぐる制度やイノベーションをめぐった争いになる。欧米諸国でもアメリカはあえて原子力発電には手を出さず、スマート・グリッドなどのITと融合したやり方をとる。(そして、原子力産業は、日本企業の東芝や日立に一時的に預からせている)また、歴史的に原子力産業が強い、EUの主要国であるフランスは、国家を挙げて原子力産業をサポートしている。



欧州のエネルギー政策を決めているのは、ビルダーバーグ会議の名誉議長である、エティエンヌ・ダヴィニオン子爵を中心にした人的ネットワークの集合体だと言われている。ダヴィニオン子爵が取締役を勤める、水資源や原子力も含む仏総合エネルギー企業の「GDFスエズ」の取締役会には、アレヴァの会長兼CEOであるアンヌ・ローベルジョンという女性経営者が参加している。フランスでは半ば政府の容認する形でエネルギー企業間の取締役の兼任が多層的に行われているのでこれが事実上の「産業政策」となる。スマート・グリッド構想にも参加している、グーグル社のCEOであるエリック・シュミットもビルダーバーガーであり、ビルダーバーグの内部では、「競争する手段」の違いはあるけれども、「温暖化対策」を名目とした「欧米諸国主導のエネルギー標準の形成」という点では共通した目標が設定されていると見て間違いない。

しかし、クライメート・ゲート事件が、イギリスのメディアで主に騒がれているのは、EU主要国であるフランスの環境政策に対するイギリスの反発が強いことを示しているのだろう。また、ニュージーランドにもこの疑惑に関連した「気象データ操作」が波及しているのが現在の状況だ。オーストラリアやアメリカでは、保守派の議員を中心に左翼リベラルの一種である「進歩主義者」が推進するこの地球温暖化をテコにした増税プラン(排出権取引も含む)に対する反対が広がっている。

この温暖化をめぐる疑惑は、これまで国連がまるで、ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟に登場する異端審問官のように、異端者を沈黙させてきた構図が存在していることを私たちの目の前に明らかにした。

国連IPCCの異端諮問官とその取り巻きの気象学者が握り締めた気象データという利権が存在する。異論を唱える学者は、論文発表の場を奪われ、具体的には、予算の配分を受けられなくなって、社会的に抹殺されるのである。そして、グローバル・エリートといわれる金融家や産業家たち、すなわち現在の貴族階級は、その”教義”によって生み出された新ビジネスを推進することによって、世界経済という大きなエンジンを動かしている。そのエンジンを実際に回すのは、地球温暖化というという教義に一切の疑いをさしはさまない「迷える子羊たち」なのだ。



地球温暖化というストーリーをわざわざ用意したのは、圧倒的な危機を大衆に信じ込ませなければ、彼らは新しい秩序には従わないとエリートたちが考えたからである。 哲学者プラトンは、支配のやり方を「高貴なる嘘」と呼んだ。地球温暖化というのは、世界経済発展のための「高貴なる嘘」なのだ。残念ながら、私たちはもう少し、我慢強くこの嘘に付き合っていかなければなるまい。



<参考資料>

「選択」2008年02月号より

~InterView巻頭インタビュー~

「CO 2温暖化主犯説」に物申す

丸山茂徳(東京工業大学教授)

1949年徳島県生まれ。名古屋大学大学院博士課程修了。地球変動や惑星科学などの分野で業績を挙げ、2002年に日本地質学会賞、06年に紫綬褒章を受賞。編著・共著に『プルームテクトニクスと全地球史解読』『生命と地球の歴史』等。



──CO 2が温暖化の大きな要因との見解が定説になりつつあります。



丸山 CO 2問題と温暖化は切り離すべきです。確かにこの百年間温暖化傾向にありましたが〇・五℃に過ぎず、地球の歴史上、全く異常ではない。化石燃料を最も焚いた一九四〇年から八〇年に気温は下降しており、CO 2主犯説は崩壊しています。大気の気温を決める最大の要因は雲です。雲が一%多ければ気温は一℃下がります。



──雲の量を決めるのは何ですか。



丸山 最大の要因は宇宙線の飛来量です。宇宙線が雲の凝縮核となる。これに最も影響を与えるのは太陽の活動です。活動が活発だと宇宙線は地球内に入って来なくなる。活発だった太陽の活動は二年前から減衰しています。もう一方で宇宙線飛来量を強い地球の磁場が遮断する。地球の磁場が弱くなると飛来する宇宙線量が増えますが、この磁場も弱くなっている。したがって温暖化ではなく、これから寒冷化が始まるでしょう。

──気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の見解をどう見ますか。



丸山 今後の温暖化は無いし、CO 2の温室効果は微小です。IPCCの見解の歪みは評価報告書を出すたびに大きくなり、昨年の第四次評価報告書では、温室効果ガスとしてCO 2の十倍以上の効果を持つ水蒸気の記述が消えました。そして「過去一千年の気候は一定だ」と論じています。しかし地球の気温は変動を繰り返している。この説はスベンスマークが提案しましたが、「生成のメカニズムがわからない」とIPCCは却下しました。



──誤解の原因は。



丸山 組織ができると、構成員は個人の幸せを求め始めます。IPCCも健全な目的で生まれたが、CO 2主犯説で食っていこうという方針を守り始めた。「CO 2は固定できる」「コンピューターを使えば解決策も出せる」と訴えれば研究費も下りる。科学はしばしば政治に利用されます。「地球のために」というのは受けが良い。アル・ゴアはそれを知っています。組織がある方向に走り出すと止まれない。社会が科学の質を変えてしまう。ガリレオやダーウィンへの迫害と同じ現象です。



──そもそも地球のことはどれだけわかっているのでしょう。



丸山 これまで地球(気象)しか見てこなかったから、暖冬か否かの予測すら外れてきました。地球環境は銀河の中の相互作用で決まるのです。この点に関する知見は現在、どんどん蓄積されています。二〇二〇年に温度は一℃から二℃上がるなどと言っても、二十年もしないうちに温暖化が否定されれば科学への大きな不信が生まれる。これがCO 2主犯説の最大の罪です。



──ただしエネルギー危機に関する覚醒効果はありました。



丸山 確かに低炭素社会に移行する必要があります。それは温暖化するからではなく、人口増に耐えられないからです。二〇五〇年に世界人口は百億に近づき、人類史で最大の悲劇の時代が始まるでしょう。六十億以上の人口を現在賄えるのは化石燃料という貯金を食い潰しているからです。石油はどんどん掘りにくくなる。それ以前に食糧が足りなくなる。人口を計画的に減らして食料を増やす必要があります。日本は諸外国に省エネの技術援助を行い、人口減少社会のお手本になるべきです。地球温暖化の狂想曲に踊らされれば本質を見誤ります。

〈インタビュアー 編集長・惠志泰成〉

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