「本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること」

-沖縄・米軍基地観光ガイド-

前泊博盛(沖縄国際大学教授・前琉球新報論説委員長)・監修 

須田慎太郎・写真 矢部宏治・文

*本の紹介です。画期的な本です。ガイドブックの体裁をとって日米関係を見事に浮き彫りしている本です。わかりやすい、ご一読を勧めます。

 沖縄・米軍基地観光ガイド ‘というサブタイトルが付いているが、とても、そんなに軽いものではない。わかりやすく戦後の日米関係の歪みをほぼすべて書き解いたとも言える画期的な本である。また、日米関係を勉強するには格好の入門書にもなっている。

ともすれば、日本国憲法・日米安保~日米地位協定・昭和天皇・CIA・日テレ・司馬遼太郎・普天間・沖縄少女暴行事件・法務官僚の暴走・東大教授&評論家「舞台装置論」・・・といった別々に論じられがちなこの国の問題を、通底的・包括的・横串的に簡明かつしっかりと整理し、解説しているところが素晴らしい。

この本の文章を書いている矢部宏治氏は、鳩山民主党の「迷走劇」を目にし、「なんでこんな問題でやめてしまうんだ」と単純な疑問を抱いた。それまで沖縄の基地問題についての関心などなかったと正直に告白する彼は、沖縄取材で聞き取った市井の人々の声にこそ、その疑問の解があることを発見し、目からウロコが落ちるのだ。さらにそのウラを取るために様々な文献(この文献の選択が良い)にあたり、一つの核心をつかむ。

日米安保条約についての真実という核心を。

占領軍から名前が在日米軍と変わっただけで実質的に米軍の占領が現在まで継続されていること、絶対平和主義にもとづく日本国憲法と、国内に米軍の駐留を認めた日米安保条約は表裏一体の関係にあることに彼は、気がつくのである。

基地問題を中心とした「沖縄問題」は決して沖縄の問題などではない。戦後日本を規定し呪縛し続け、日本永久占領を可能にしている日米安保条約が核心としてある。このことは、日本人全体として共有し、第一に解決すべき問題である。日本を独立国にするかどうかの問題である。そのことを『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること』であることが致命的に大問題であることを矢部氏は奇跡的に知りえた。

そもそも「普天間移設問題」などと短い見出しで報じるマスコミの姿勢、何も知らないのに分かった様な気になっている大多数の「日本人」こそ、この世で一番無知な状態に置かれている人々であることを彼は知ってしまったのである。

極東最大の嘉手納基地、移設問題が取りざたされる普天間基地、普天間基地の移設候補地キャンプシュワブなど沖縄本島と周辺離島の28米軍基地・施設を歴史的背景も含めて解説している。

もちろん、取り上げた基地・施設のページには地図と見学のポイント、周辺の関連施設を掲載し、ドライブやフィールドワーク用としても使うこと

ができる。若い人に是非、読んでいただきたい本である。



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