昨年あたりからウィキリークスの情報が日本を含めた世界のマスコミを賑わし、実際に世界情勢を動かしている。「ジャスミン革命」もその一つであろう。

NHKのクローズアップ現代で「機密告発サイト・ウィキリークスの衝撃」が2010年11月4日に放送されたのでこの番組を視聴された方も多いのではないか。

そして311以後、日本に関するウィキリークス情報がいよいよ公になりつつある。

たとえば、ウィキリークスから提供を受けた朝日新聞が下記のような情報を公開している。

(以下引用)2011年5月4日

「米軍グアム移転費水増し 日本の負担軽減装う 流出公電」

 

米両政府が在沖縄米海兵隊のグアム移転について合意した2006年春のロードマップ(行程表)で、米政府が、関連費用の総額を水増しして日本側の負担割合を見かけ上減らし、日本政府も08年に追認していた。海兵隊の移転人数については、削減をアピールしやすいよう実態より多い数字を挙げていた。

約25万点の米外交公電を入手した内部告発サイト「ウィキリークス」から、朝日新聞が日本関係の公電約7千点の提供を受け、分析する過程で判明した。

海兵隊のグアム移転は、在日米軍再編の中で、沖縄・普天間飛行場の移設と一体となった形で進められる計画。普天間移設は地元の根強い反対で決着しておらず、再編計画全体の数字の粉飾が米公電に明記されていたことで、反発が強まることは必至だ。

 

問題の公電は08年12月、在日米大使館から国務省あて。日米両政府は当時、06年5月に両国がまとめたロードマップに基づき、具体的な資金負担の進め方などを決める「グアム移転協定」の交渉をしていた。公電は暫定合意の妥結を報告、経緯を詳述している。

公電によると、ロードマップ作成時に日米の負担額を決める際、米側が「実際は必要ではない」軍用道路の建設費10億ドルを再編費用に盛りこんだ。08年の交渉では米側が、軍用道路を盛りこんだのは総額を増やすことで日本側の負担比率を相対的に低く見せることが目的だったと説明し、日本政府もその点を了承した。

92億ドルだった総額を10億ドル増やすことで、3分の2だった日本側の負担比率が60%を切るように操作していたことになる。06年当時は負担割合をめぐって日米間で激しい駆け引きが行われており、日本側が受け入れやすくするための措置だったとみられる。実際には軍用道路も含めて、グアム移転全体が進んでいない。

移転対象の海兵隊員8千人と家族9千人についても、公電は「日本での政治的効果を上げるため」実数を水増しした、と記した。

沖縄の海兵隊は1万8千人が定数で、うち8千人が移転するというのが公式説明だった。だが公電によると、実際には沖縄の海兵隊は06年時点で「1万3千人水準」だった。これに対応する移転の実数が、8千人を下回るのは確実だ。

これまでも、沖縄県などが実数は約1万2千人だけだと指摘。「ロードマップによる移転でこれだけ負担が減る」とされた人数は誇大と批判してきた。国会でも取り上げられてきたが、日本政府は確認を拒んできた。

 今回、沖縄県などが指摘していた実態に近い数が米外交公電に記されていたことがわかったことで、その疑念が裏付けられた形だ。



*ウィキリークスウオッチジャーパンより

2011年2月22日火曜日

「東京公電2010年:日本企業によるイランとのウラン取引疑惑

 

要件:イランとのウラン取引の可能性について、日本への調査要請

代理EMIN(恐らくEconomic Minister Counselorの略 経済担当公使)は外務省、軍縮不拡散・科学部の中島明彦氏に1月4日、外交政策に関するメッセージを渡した。

そして、カザフスタン政府とのアスタナでの議論についての詳細には立ち入らずEMINは12月30日付のカザフスタン政府による公式表明のコピーを彼に渡すことにより、この問題についてのカザフスタン側の断固とした否定について知らせた。



中島氏はこの情報について感謝の念を表して、外務省はこの取引について調査をするとのことで、経済産業省にも相談してみると言った。

さらに彼はアメリカ政府がこの問題について、取引の状態や出荷予定日などのさらに詳しい情報を提供できないかと聞いてきた。

中島氏によると、日本政府はイランの天然ウランがもうすぐに底をつくというのを知っていて、イランが他の入手元を探すものと考えていた。今後、この種の取引について警戒し続ける必要性があると彼は提案した。

だが、一旦日本の企業がこの問題に関与している可能性について気が付くと、安全保障貿易国際室長の高畠昌明氏は速やかに調査を開始すると言った。 

彼が言うには彼の部署はこの問題に関連しているこれらの企業については余り詳しく知らないとのことで、そのため経済産業省の原子力部門と協力してこの問題に取り組むとし、恐らくこの部門はすでに今回必要とされている情報を持っているであろうとのこと。

(原文:http://www.xs4all.nl/~aebr/wl/aftenposten/10TOKYO11.html



「東京公電:電力会社や経済産業省による原子力についての隠蔽

 

 アメリカで学び、働いた経験のある河野太郎氏は優れた英語会話力を持ち、農業、原子力、外交問題に興味があり、大使館との頻繁な接触を保っている。

 彼は日本の原子力産業に対して強い反対を表明しており、核燃料の再処理化に関してはコスト面や、安全面、また警備などの問題を上げて特に反対している。

 河野氏の主張によると日本の電力会社は原子力に関するコストや安全問題を隠しながら、核燃料の再処理を「ウランのリサイクル」との名で日本世論に上手く売り込んでいるとした。

 電力会社の影響力について河野氏によると、日本のテレビ局は核問題について3部にわたるインタビューを彼と行う予定であったが、最初のインタビュー後に取りやめを決定し、その理由は電力会社が主要なスポンサーを取りやめると脅しをかけたためであるという。

 河野氏によると、実は北海道電力網と本州の電力網間には使用されていない接続ラインが存在していて、電力会社によって非特定の非常時のために備えられているという。

  また彼は経済産業省による原子力事故の隠ぺいについて非難しており、これは原子力産業の実際のコストと問題をあいまいにしていると言った。

 河野氏は放射性廃棄物の保管問題についても言及し、日本は非一時的な高レベル放射性廃棄物保管場所はなく、それがゆえに保管問題に対しての解決策をまったくといって持っていないとした。

 そして日本の頻繁な地震活動や豊富な地下水などを理由として上げて、火山の国である日本に放射性廃棄物を貯蔵する上で本当に安全な場所など存在するのであろうかという疑問を上げた。また六ヶ所村は高レベル放射性廃棄物において一時的な保管場所という意図で計画されていたと付け加えた。

 (原文:http://213.251.145.96/cable/2008/10/08TOKYO2993.html

(引用終わり)

 ちょっと垣間見るだけでも如何に興味深い情報か、おわかりいただけるのではないだろうか。

 ところで、このウィキリークスについて日本の元外交官二人が対照的な見方をしている。まず、はじめに天木直人氏の考え方を紹介する。

*天木直人氏のブログより(引用始め)

20111026

「米国のウィキリークス潰しとアサンジュの反骨魂」

 ウィキリークスウォッチャーである私には、このニュースは見逃せない。ウィキリークス代表のアサンジュ氏が24日声明を発し、資金不足のため米外交公電の公開を停止する、と表明したという。

 資金不足に追い込まれた理由は米国が資金源を断ったからだ。数千万ドル(数十億円)の寄付金が入らなくなくなったからだ。クレジットカードやネット決済による資金集めの手段が打ち切られたからだ。

 米国がテロ対策や金融制裁に使う常套手段だ。どこまでも卑劣な米国だ。資本主義の世の中ではカネの流れを止めるのが最強の弾圧手段である。北朝鮮を締め上げ、ヤクザの活動を封じ、そして今度はウィキリークス潰しである。

 米国にとっては、アサンジュ氏はテロやヤクザに劣らない外敵であるということだ。

さすがのアサンジュ氏も活動を停止せざるを得なかった。しかし記者会見でアサンジュ氏は明言したという。

 公開停止は口座閉鎖に対抗するためだ。今後は資金集めに集中する。必ず米外交公電の公開は再開する。米国の卑劣な圧力に屈しない、と。

 私はここにアサンジュ氏の真骨頂を見る。反骨魂をみる。

 米国の不正義に、姿を見せてここまで挑戦する一人の人間を私は見た事がない。

私は繰り返し書いてきた。アサンジュ氏の言動をどう評価するかによってその人間の本質が分かる、と。

 権力側に立つか、権力の犠牲になった弱者の側に立つか、そのリトマス試験紙である、と。

 米国はアサンジュ氏に勝つことはできないだろう。米国がアサンジュ氏に勝つためには不正義を止めるしかない。不正義がなくなればその瞬間にアサンジュ氏の活動は終わる。

 私はアサンジュ氏の側に立つ。(引用終わり)



もう一人の元外交官が原田武夫氏である。天木氏の「人のよい日本人」らしい素直な意見と趣が違う欧米基準?の「人の悪い見方」を原田氏はしている。そんな彼の新著「アメリカ秘密公電漏洩事件 ウィキリークスという対日最終戦争」からそのユニークな分析を今回は紹介させていただく。

 2011年9月2日、ウィキリークスは入手したアメリカ外交公電25万1287本すべてを、なぜか一気にサイトで暴露しはじめた。「資金難」を理由に現在閉鎖中。

ところで、9月2日とは、日本で野田佳彦内閣が誕生した日である。

単なる偶然だろうか。もちろん、暴露された中には5697本もの東京・アメリカ大使館発の秘密公電が含まれている。この日本関連の公電を、「対米論で最も危険な日本人の一人?」とアメリカに評価されている元外交官 ・原田武夫氏がすべて読破し、世界の中枢で進行する大きな構図を推理していく。大変興味深い。



○以前のレポートでも紹介したように米国は不可思議なことに、東日本大震災が起こることを予測していたかのようなのである。なぜ米国は震災前から「死活的利益」として、日本のヨウ素鉱山などに着目していたのか。また、日本の重電メーカーの水力発   電、火力発電のタービン技術に注目していたのか。



○日本の政治リーダーは「親米派」で固められるようにコントロールされていることが、公電からはっきり読み取ることができる。



○「アラブの春」「Facebook革命」は、仕組まれたデキレース? 中東の独裁者は欧米にとって用済みになって捨てられただけなのか。



○いま世界中で起きている異常気象、特にヨーロッパの寒冷化による将来的な民族大移動に備えて中東の民主化という策を欧米は弄している? 以前のレポートで紹介したペンタゴンレポート(An Abrupt Climate Change Scenario and Its Implication for United States National Security”(急激な気候変動とそれが米国国防に持つ意味)が大きな意味を持っていることがわかるのである。

そしていよいよ世界最大の債権国である日本マネーが簒奪される最終ステージに入る? ウィキリークスですら、そのために利用されているかもしれない。



 <本書の内容>

 ・震災で日本がどうなるか知っていたアメリカ

・アメリカが着目した日本の「死活的利益」

・金融メルトダウンの真っただ中にリークが起きた謎

・情報工作機関同士の暗闇

・日本人外交官が世論操作を手引き

・「ニューヨーク・タイムズ」が斎木元局長を狙い撃ち

・アメリカがしてやったりの民主党“親米”政権

・捨てられる独裁者たち

・オバマが仕掛けた「体制転覆」の罠

・絶妙のタイミングで拡散される「不都合な真実」

・オバマの狙いはイスラエルの暴発?

・「寒冷化」がヨーロッパを動かす

・「変えられなければならない」中東・北アフリカ

・アメリカの日本マネー簒奪史

・自作自演の「秘密公電漏洩」

・史上空前の日本バブルが来る?

・野田政権誕生直後に全文公開の意図

 



昨年11月末から突如としてアメリカ秘密公電をリークし始めて一斉を風靡したウィキリークス。いまだにその実態は謎に包まれている。

 その一方で欧州を中心に「政府が持つ情報の全面開示」を求める動きが世界を席巻しつつある。Open Government Data、略して「OGD」という考え方である。

ドイツ・ベルリンではこれを強く掲げる「海賊党」がいよいよ大量の議席を獲得。かつて平和運動と脱原発を掲げて登場した緑の党のデ・ジャ・ヴが見え隠れしている。

フェイスブックといったソーシャル・メディアは単なる「社交ツール」などでは決してなく、一国の社会を完全に転覆するためのツールとして拡散されている情報兵器という一面を持っていることを原田氏は鋭く指摘している。

 

そしてその大きなターゲットの一つが世界一の債権国である日本だと原田氏は分析しているのである。



よくできた推理小説の一つとして一読をおすすめしたい。

Sorry, the comment form is closed at this time.

© 2011 山本正樹 オフィシャルブログ Suffusion theme by Sayontan Sinha