*天皇家の食事に「マクロビオティック」を提唱した桜沢如一氏の理論が取り入れられているという話を聞いたことがある。食育に興味のある方は、一度は聞いたことがあると言葉ではないか。

提唱者である桜沢如一氏は、石塚左玄氏の「食物養生法」を、古代中国で生まれた「易」という概念から再構築し、宇宙万物に通ずる「無双原理」を唱えた。その原理が、マクロビオティックの基礎となっている。

そのため、巷にあふれる「健康法」とは全く異なるものとなっている。

「身土不二」という基本原則により、野菜や穀物を中心とし、アクを抜かず、皮も剥かずに丸ごと食べるという、「一物全体食」が特徴である。

「身土不二」について、サンマーク出版『新編集版 無双原理・易』(桜沢如一著、岡田定三編集・解説)には、”「人間が最も広い意味での環境の産物である」ことを意味する言葉である。その土地、その気候、その自然産物である人間は、それらに適応するとき生を全うし、それに反逆するとき悩み滅ぶということだ。”とある。

さらに”万病の原因は、例外なく陰または陽の過剰である。””動物である人間は陽性だから、その病の治療は、主として陰性である植物の力によるべきである”と記している。

難しく感じるかもしれないが、簡単に言えば、「遠く離れた海外から輸入した食べ物ではなく、今住んでいる場所で取れる旬の野菜を丸ごと食べなさい。そうすることが人間にとって最も理にかなったありかたなのだから。」ということだと考えて、まず間違いはないだろう。現在で言う「地産地消」である。

その土地によって、暑かったり、寒かったり、乾燥していたり、湿っていたりというのは様々で、それによって育つ作物も異なってくる。

日本の場合は四季があるから、時期によって育つものが異なる。現代では、日本のどこにいても、一年中トマトやキュウリが買えるが、冬に食べるより、夏の方が断然美味しい。やはり、「旬」というものが間違いない。

熱帯には、熱帯に適した、身体を冷やす食べ物が取れ、寒帯には、寒帯に適した、身体を温める食べ物が取れる。それと同様、乾燥地帯では、身体を潤す食べ物が取れ、

湿潤地帯には、身体を乾かす食べ物が育つ。

これらは、人間が食を通じて経験的に蓄えてきた先人の知恵。その中でも、特に日本の食文化に大きな影響を与えた人物がいる。

「食養」という言葉の生みの親である、石塚左玄氏である。天皇家の食事は、石塚氏の理論に基づいていると言われている。

石塚氏の大きな功績は、温める性質を持った(陽)元素の代表、冷やす性質を持った(陰)元素の代表が、それぞれ、ナトリウムとカリウムであるという発見をしたことである。 

つまり、身体を温めるものには、ナトリウムが多く含まれていて、身体を冷やすものには、カリウムが多く含まれているというのだ。 

以上の事実から、寒い地域に住む人は、塩気が多い食事となるのは自然なことだといえる。北の住人は、南の住人に比べ、昔から高血圧の割合が 高いと言う事実もある。

今、減塩が叫ばれていますが、時と場所と場合によるはずだ。

「もし北に住む人がナトリウムを減らせば、 高血圧は減るでしょう。 しかし、他の病態が増えるでしょう。」という研究者もいる。

カリウムと聞いてイメージしやすいのは、バナナだ。屋久島などでは夏にバナナが育つのは珍しいことではないが、北海道でバナナができたら少し違和感がある。

つまり、私達は、わざわざサプリメントなどで栄養分を補わなくとも、その土地に、その時期にとれるものを、丸のまま食べることで、深く考えなくとも、必要な栄養分を摂取する事ができ、なおかつ、最もバランスの取れた状態を維持することが出来るという考えなのである。このことを実践している元気な女性の本を今回は紹介させていただく。

                                    

(以下引用)

 

「日の丸弁当は貧乏ではなく、実は豊かさの証」

~福島原発事故は、日本に伝わる食文化を学び直す好機~

川嶋 諭

<川嶋 Satoshi Kawashima

早稲田大学理工学部卒、同大学院修了。日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社。1988年に「日経ビジネス」に異動後20年間在籍した。副編集長、米シリコンバレー支局長、編集部長、日経ビジネスオンライン編集長、発行人を務めた後、2008年に日本ビジネスプレス設立。

最近は「夏痩せ」という言葉が死語になりつつあるようだ。政府と電力会社から過度な節電を強要された今年は例外だったかもしれないが、エアコンの効いた快適な部屋で過ごしていると暑い夏でも食が進み、涼しさを感じるお彼岸の頃、決まってお腹の周りの脂肪が気になり始めダイエットを志す、というのが年中行事のようになってしまっている。

74歳で老眼鏡要らず、縄跳びは100回以上跳ぶ

 さて、今年はどんな方法でダイエットに取り組むか。そう考えていた矢先、とてつもなく元気なスーパーおばあちゃんに出会った。74歳にして豊かな頭髪に白髪はほとんどなく、新聞や本を読む時に老眼鏡のお世話になることもない。

 スクワットは平気で70回以上こなし、縄跳びは100回以上連続して飛ぶことができるという。お年寄りになると会話のスピードが落ちがちだが、早口が“自慢”の私の2倍以上の速さで言葉が飛んでくる。

 医者に全くかからないのでデータで証明はできないものの、「体にはひとつも悪いところがない」と言い切る。健康料理研究家の若杉友子さん。見るからに逞しいおばあちゃんである。

 健康の秘訣は食だという。若杉さんが主催する料理教室はいつも満杯。京都駅からクルマで3時間ほど走らないとたどり着けない交通の便の悪い京都府綾部市で開いているにもかかわらず、日本全国から受講者が集まってくる。

 連休の狭間の今週は、このおばあちゃんのお話にお付き合いいただきたい。

 若杉おばあちゃんは言う。「健康になりたかったら、そして痩せたいんだったら、あなたのお母さんが小さい頃に作ってくれたはずの日の丸弁当を見直しなさい」

 日の丸弁当って、アルミ製の弁当箱の真ん中に大きな梅干が1つ。日本の国旗の形と色をしたやつでしょうか。

 「そうよ。日本人なんでしょ。有難くそのお弁当をいただきなさい。もったいないからご飯つぶ1つも残しちゃダメよ。日の丸弁当を食べていれば日本人は健康になれるの」

でも、日の丸弁当というのは、小さいときの記憶では貧乏の象徴だったような・・・。「米と梅干とそして漬物だけかよ。お前の家は貧乏だな」。当時の漫画ではそのように揶揄される対象だったと思いますが。

最高の贅沢は銀シャリに梅干

 

「完全にアメリカのプロパガンダに洗脳され切ってしまっているわね。戦後66年も経っているのにこれだものねぇ。アメリカ人がカロリー、カロリーと叫んで、日本人のカロリー摂取量を上げようとしたのは、農産物を売り込みたいからじゃない」

 「2000年以上日本に住んできて、日本の食生活に合った形に体の構造がなっている日本人は肉ばっかりの食生活を送ったら、体に良いことはひとつもないわ。口に極楽、腹地獄というやつね」

 そういえば、JBpressで日本の中小企業の強さを連載してくれていた岡野工業の岡野雅行さんは、何よりのご馳走が銀シャリと梅干、そしておいしい緑茶をかけた茶漬けだと言っていました。

 お会いすると決まって高級なお肉をご馳走になりましたが、ご自身はほとんど口にされず帰ってから梅干と茶漬けを楽しんでいる。

「あなた、ご馳走という漢字は書けるわね。どういう意味か分かるかしら。馬に乗って三里四方を走り、苦労して食材を集めてお客さまに出す。そのおもてなしの心をご馳走と言ったのね」

地元で採れた食物を食べるように人間の体はできている

 「ただ自分たちは普段からご馳走は食べられないから自分の畑なら畑、野山なら野山から採れる範囲の食材を採って食べていました。実はそれが健康の秘訣だったのです」

 「身土不二という言葉が日本にはあるでしょう。人間が生まれ育った風土で育った食物は体に順応し、適応してくれるということを表しています。つまり、地元で採れた食べ物を食べているのが健康のためということ」

 小さい頃、背が高くなりたくて牛乳をたくさん飲みました。残念ながら並みの高さにしかなりませんでした。でも、やっぱり背を高く体格を良くしようとしたら、地元で採れた食べ物だけでは限界があるのではありませんか。

 「日本のお米には栄養素がいっぱい詰まっているのよ。欧米人が食べている麦から作ったパンに比べたらはるかに栄養価が高い。何より昔のお相撲さんはお米を食べて大きくなったじゃないの。それから、お子さんの背を高くしたいなら良い日本の食材があるのよ」

「それは筍。この食材は上に向かって伸びる力が強いでしょう。食材は陰性と陽性の2つに分かれるんだけれども、上に伸びるということは非常に陰性が強いことを表しているの。旬の季節にこれを陽性が強い子供に与えると背を高くする働きがあります」

陰性の強い筍が子供の身長を伸ばす

 「ただし、食事の陰陽のバランスを取るために陽性の海草、例えばヒジキやアラメなどと炊き合わせるのがいいわね。ヒジキやアラメは骨の再生にも効くので骨折したときなどにも筍との炊き合わせを食べると効果があります」

 食物の陰陽ですか。それを知っているか知らないかで健康に大きく影響がありそうですね。これは古来から研究されていたのでしょうか。

 「江戸時代中期のお医者さんで思想家の安藤昌益は次のように言っています。『一本の草木の中にも陰と陽が完璧にあるように、人間の体の中にも陰陽は完全にある』。そして、この秩序法則を尊敬してこそ幸福があると言っています」

 

 「また、明治時代の人で食養の元祖と言われる石塚左玄という人がいます。明治維新で日本の食文化が大きく崩れ、日本人の健康が害されることを懸念して『食物養生法』という食物と人間の体の関係を深く研究した人です」

 「その石塚左玄によると食養には次の5原則があります」

食養の5原則とは

(1)食物が健康と幸福の基礎である

(2)ナトリウムとカリウム、陰と陽の2つの拮抗が基本的要素

(3)穀物が人間の一番正しい主食である

(4)一物全体(食物を丸ごといただくの意)の完全な調和のあるものでなければならない

(5)身土不二、三里四方に採れるものがよい

 「石塚左玄は『食育』という言葉を最初に使った人でもあります。また、『食養道歌』というものをつくっています。その中に、春苦味、夏酢の物、秋カラミ、冬は油と合点して食えというのがあります」

「夏の暑いときは陽性の臓器である肝臓がますます強くなる。だから陰性の食物である酢の物を食べて調和を取りなさいという教えです。このように食べ物の陰と陽は常に意識していないと体に良いと思っていたのに、全く逆ということもあるんです」

若林さんはお塩の効用についても強調されています。しかし、日本ではお医者さんの指導で高血圧予防のためにお塩をできるだけ控えるように指導されています。お塩を取って大丈夫なのですか。

体に十分な塩分がないと病気になりやすい

 「塩梅(あんばい)という言葉があるでしょう。人の体を気遣うときに使いますね。お体の塩梅はどうですか、と。人間にとって塩気のバランスがとても大事なことを言っています。最近、日本人で腑抜けの人が増えているでしょう。みんな塩気が足りないんですよ」

 「お塩をちゃんと取らないと体温が上がらないんです。だから最近の若い人たちには冷え性や貧血、便秘症が増えているんです。そして気持ちも暗くなって覇気がなくなってしまうんですよ」

 「昔の人は1日に30グラムほどお塩をとっていました。陰陽で言えば、塩気を持っている陽性の魚にも陽性であるお塩を振って、それを陽性の火で焼いて陽性の醤油をかけて食べていた。みんな陽性だから、それを食べている人は元気だったんですよ」

 「貧乏人の子沢山という言葉もあるでしょう。たとえ貧乏でもみんな明るく元気で、今の男性のように精子が少ないなんていうことがなかったから元気な子供がいっぱい生まれた。人間の元気の源がお塩であることを再認識すべきだと思いますよ」

 でも、そんなにお塩をとったらやっぱり高血圧が心配でしょう。

高血圧は塩分ではなく肉食に起因する

体温を上げる料理教室』(致知出版、若杉友子著)

「高血圧になるのは、お肉を食べ過ぎるからなのよ。お肉をいっぱい食べるとその副作用として甘いものが欲しくなる。これがいけないんですよ」

「お塩をたっぷり使った味噌や醤油、梅干には体温を上げ、新陳代謝を活発にする作用があります。また造血作用もあるから人間を元気にするんです。高血圧が塩分のせいというのは間違いなのよ」

「それからこれは大切なんだけど、日本で作られている野菜など多くの食物はその種がF1と呼ばれるもので、1代限りの種になっています。こういう種からは非常にたくさんの野菜や果物が取れます」

「例えばピーマンなんか1本の苗から300~400個も採れるの。しかし、日本の在来種のピーマンの種から作った苗からはせいぜい数十個しか採れません。工業化された野菜を食べるのは体に良いわけがありません」

このほかにも、若林さんのお話には今まで常識だと思っていたこととは違うことが多い。例えば小さい頃から体に良いから食べなさいといわれてきたピーマンは決して子供に良いものではないとか・・・。

油断大敵、冬に油をとらないと病気になりやすい

「先ほど、石塚左玄の『食養道歌』で冬は油と合点して食えというのがあったでしょう。体をあまり使わずにいるから陰性になってしまっている。そのときに油を絶ってはいけないという戒めです。油断大敵という言葉があるように冬に油を絶ってはいけません」

 京都の山の中で築160年の古民家に住み、一汁一菜にこだわり、日本原種の種から育てた野菜や穀物だけを育てて暮らしている。お風呂は昔ながらの五右衛門風呂だそうだ。私たちはいつの間にか、日本の知恵を忘れていることに気づかされた出会いだった。

 福島第一原子力発電所の事故で、日本の食料の健康と安全性が脅かされたが、それは逆に私たちが日本の良さを再認識する好機を与えてくれたと言えるのかもしれない。

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