4月 202012

「マインドコントロール」

 ビル・トッテン

2012年04月20日 

~アメリカ国籍を棄て、自分自身の意志で日本に帰化したためか、この国に住み幸せな生活を享受できるのは日本という国の「お蔭」だと思う気持ちは、日本で生まれ育った人よりも強いかもしれない。また、さらにいえば、私がアメリカで生まれ育ったということも大きい。なぜならアメリカは、愛国心を教えることに関して日本よりもはるかに長けているからだ。~ 

私が子どもの頃は、幼稚園から高校まで、朝礼にあたる時間に星条旗に対して忠誠を誓う言葉を述べさせられた。大半のアメリカ人がアメリカは世界一だと信じているのは、愛国心を持つような教育がなされているからなのだ。だからこそ、先進国の中で最も貧富の差が激しく、貧困やホームレスが最も多く、犯罪や麻薬が蔓延した国になっても人々はアメリカンドリームを信じた。

しかしそういった洗脳も、インターネットを通して真実の姿を知る人々が増えるにつれて徐々に解け始めている。アメリカという国がいかに自国民を搾取し、また他の国に対しては二重基準をもって接しているのか、気づき始めたのである。それが昨年ウォール街から始まった占拠運動であり、メディアが報道しなくとも、その運動の勢いは衰えをみせてはいない。

そのようなアメリカ国民の反発に対してか、オバマ大統領は今年、国防権限法に署名した。これはテロに加担していると疑われている人を、罪状や裁判がなくとも無期限に政府が拘留できるというものである。アメリカ政府は2001年9月11日からの有事体制を利用して、テロ対策の名目でアメリカ国民の人権の抑圧政策を強化しているのだ。

さらに今、アメリカの国家安全保障局(NSA)では、巨大な「スパイセンター」をユタ州ブラフデールに建設中だと米Wirec誌が報じた。このセンターの目的は、電子メールや電話など世界中のあらゆる通信網を解読、分析、保存することである。

洗脳、教育、マインドコントロール、なんという名称で呼ばれようとも、これまで少なくとも国家として国民をうまく統制してきた方法が利かなくなれば、あとは権力を使って言うことを聞かせようとする。それがアメリカである。

一方、いまの日本で最も強力なマインドコントロール機関もテレビである。政府の流したい情報だけを伝えるNHKと、広告主が流したい情報を流す民放放送が日本の「世論」を形成している。従ってこれらのメディアがアメリカの真実を報じない限り、日本人はアメリカを崇め続けるのだろう。

社会や国家に奉仕することの大切さではなく、自分の利益をいかに増やすかを教えられてきた人々が今の日本の社会の中心にいる限り、日本の現状を変えることは容易ではないかもしれない。教育がいかに大切であるか、すなわち国にとって重要であるかを熟知していたからこそアメリカは戦後日本から、その精神の根底にあった古神道、仏教、儒教、武士道などを一掃させる教育制度をとらせたのだ。時間はかかるかもしれないが、日本の国の成り立ちとその歴史を思うと私はいつも楽観的になる。そして日本人が崇めるアメリカの本当の姿をできるだけ多くの人に知ってもらいたいと思うのはそのためである。

<ビル・トッテン プロフィール>(Bill Totten, 1941年 -)は株式会社アシスト社長・評論家。2006年9月、日本国籍を取得。カリフォルニア州に生まれる。学歴は南カリフォルニア大学大学院。学位は経済学博士(南カリフォルニア大学)。

カリフォルニア州立大学卒業後、ロックウェル社、システム・デベロップメントに勤務する。在職中に南カリフォルニア大学の経済学博士号を取得し、1969年に来日した。1972年、パッケージソフトウェア販売会社「アシスト」を日本で設立。

1990年、日米の経済摩擦の激しいさなかアメリカの姿勢を厳しく批判した処女作『日本は悪くない』を上梓。以後も日米問題についての著書を精力的に執筆。その姿勢がアメリカ政府の嫌悪感を招き、ブラックリストに載せられたことから、アメリカ国籍を捨てて、日本国籍取得を決意。

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