米格付け会社フィッチとS&Pが、ドバイ政府がドバイ・ワールドの債務を保証しないとの発言を理由にドバイ関連企業の格付けをさらにジャンク債までに引き下げた。

フィッチは、ドバイ・ホールディングの格付けを「BBBマイナス」から2段階下の「BB」に引き下げた。また、S&Pはドバイ政府関連企業6社のうち5社をジャンク等級への格下げし、ドバイの銀行4行の格下げも示唆している。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-12750720091203

ここで浮かび上がってきているのは、アメリカの格付け会社によるドバイへの追い込みであり、あえて危機を助長させる動きに出ていることである。当然、ドバイと深い関係を持つ欧州にもそれは飛び火することは読み込み済みだ。

案の定、S&Pはその欧州をも攻撃している。



(引用始め)

10年に欧州ジャンク級企業で最大75社がデフォルトの恐れ=S&P

スタンダード&プアーズ(S&P)は2日、最悪シナリオによると、2010年に欧州の投機的格付け(ジャンク級)企業のうち最大75社が債務不履行(デフォルト)となる恐れがあり、自動車・消費関連セクターのリスクが最も高いとの見方を示した。

S&Pは年次欧州企業信用見通しのなかで、高レバレッジで業績が悪化している多くの企業を救えるほど、経済回復は強くない可能性が高いと指摘した。

同社のブレーズ・ゴーギャン欧州最高信用責任者は「リセッション(景気後退)の最悪期は過ぎ去った可能性があるなか、企業のデフォルト率もピークに達したとみられるものの、回復の程度は極端に浅い公算が大きい」とした。

企業の年率デフォルト率は09年第3・四半期に13.1%でピークに達した公算が大きいが、過去の平均で比較すると、10年にかけて倍以上の水準で推移することが予想されるとした。企業75社がデフォルトとなった場合のデフォルト率は11.1%になる。

こうしたなか、基本シナリオでは、10年に欧州のジャンク級企業のうち55社がデフォルトとなる恐れがあり、この場合のデフォルト率は8.7%となる。

【ロイター】

(引用終わり)

ここで、S&Pがいう最悪のシナリオ 基本シナリオというのは、本当は、一部の国際金融資本の頂点に位置するエリートの戦略であり計画であろう。

国際金融資本家らの息のかかったS&Pが欧州の危機をわざと演出しているわけである。

おそらく、欧州はダメだという印象を与え、注視させている内に、米国そのものに第二次の金融危機を引き起こすための高等戦術だと考えられる。その意味で今回のドバイショックも彼らの演出であり、おそらく、米FRBの思惑も働いている。

だからこそ、米国市場が休場となる祝日を狙い、ドバイショックの一報を全世界に報じ、当事者であるドバイ政府が慌てふためいて、”そんな大げさなことじゃない”と弁明している状態のである。

<参考資料>

*大変興味深い指摘です!

「ドバイからアメリカへ」

1                                                               徳川家広

12月1日、ドバイ政府が「ドバイ・ワールドの債務は保証しない」という声明を出した。今一つ言葉使いが不明瞭だそうだが、確かに法的にはドバイ・ワールドは政府系ではあるが、一私企業である。アメリカのファニー・マエ、フレディ・マックのようなものだ。とはいえ、もともと天然資源のないドバイだからこそ金融センター立国を目指したわけで、金融センター化の博打が失敗に終わりつつある以上、保証しようにもその資金がないのは明瞭である。

いっぽう、ドバイのお隣りの金満国家アブダビは、自国の銀行に流動性を供給し、優良資産は買い取る余地があると、危機の悪化は回避したいが、自分が損をかぶるつもりはないという立場をはっきりさせた。これもまあ、当然と言える。ドバイ・ワールドは、まだ再建計画を発表さえしていないので、資産のどれだけが腐っているのかも不明だ。とはいえ、いちおう危機的な状況が明らかになっているところからのスタートだから、いきなりデフォルトとか破綻という、かつてのアジア通貨危機や、記憶にまだ鮮明なリーマン・ショックのようなショッキングな結末には取りあえずならないだろう。

とはいえ、ちっぽけなドバイでこれだけの危機となると、海外への波及も相当なものである。欧州銀行が向う見ずにドバイ・ワールドに貸し付けた巨額資金は、結局、ドバイ国内のとんでもない建設プロジェクトだけでは吸収できなかったようで、アメリカに相当な額が流れていたと思われる。

2007年に、ドバイ・ワールドはニューヨークのマンダリン・オリエンタルを3.8億ドルを出して購入。

2008年、リーマン・ショック前夜、フレディ・マックとファニー・マエの経営危機が顕在化した後になって、フォンテンブロー・マイアミ・ビーチ・ホテルの所有権50%を、3.7億ドルで買収。ちなみに、マイアミのフォンテンブロー・ホテルというのは、1960年頃にサム・ジアンカーナとサント・トラフィカンテの二人のマフィアの巨頭が、CIA主導のカストロ暗殺計画の本部にしたこともあるという「名門」である。

ドバイ・ワールドは、このほかにもアメリカ西部時間の今日開業予定の、ラス・ベガスの「シティ・センター・カジノ・リゾート」のオーナーでもあるが、開業にこぎつけるまでに投じた資金は、全部で54億ドルになるという。

高級ホテルにカジノ・リゾートと、まるきりかつての日本のバブル紳士と同じというのがおもしろい。結局、巨額資金を安全に投入できそうで、流動性も高い物件となると、アメリカの商業不動産ということにならざるえないのだろう。

だが、そのアメリカ商業不動産こそが「次なるサブプライム」と噂される不良資産の大海なのだ。アメリカ各地で零細銀行がばたばた潰れていく大きな理由が、商業不動産の不振である。 ドバイの危機がアメリカの高級商業不動産物件の投げ売りに繋がれば、本当に「第二のサブプライム危機」になっていくだろう。

ところがオバマ政権は、住宅ローンの融資条件を緩和しようと住宅ローン業者に圧力をかけるという、すでに起きてしまった危機の後始末で手いっぱいである。

ドバイから商業不動産経由アメリカへ。この危機の波及経路は、まだ世間の耳目をあまり集めていないだけに、危険千万だと言えよう。

徳川家広、翻訳・著述業

1965年東京生まれ。慶応義塾大経済学部卒業後、ミシガン大学にて経済学修士号を取得。国連食糧農業機関(FAO)勤務を経て、コロンビア大で政治学修士号を取得。その後帰国して、フリーの翻訳家に。なお、2009年10月に経済評論『バブルの興亡』を講談社より刊行、肩書きも「著述業」に変更する予定。

訳書

『新上海』 パメラ・ヤツコ 集英社インターナショナル

『戦争で儲ける人たち』 ダン・ブリオディ 幻冬舎

『ドル暴落から世界不況が始まる』 リチャード・ダンカン 日本経済新聞社

『新世界戦争論』 ジョージ・フリードマン 日本経済新聞社

『豊かさの誕生』 ウィリアム・バーンスタイン 日本経済新聞社

『ワイルド・グラス』 イアン・ジョンソン NHK出版

『中国 あやうい超大国』 スーザン・シャーク NHK出版

『ラスト・ブレス』 ピーター・スターク 講談社(文庫)

『ヒトラー・マネー』 ローレンス・マルキン 講談社

2009 11/27

「ドバイの破綻

田中 宇

11月26日、中東アラブ首長国連邦(UAE)を構成する首長国の一つであるドバイで、政府の投資機関として機能してきたドバイワールド社の資金繰りの行き詰まりが表面化した。ドバイワールドは、不動産事業などの資金調達のために発行した債券の満期償還ができなくなり、12月14日に満期を迎える35億ドル分の債券(イスラム債)の満期を半年延期させてくれと債権者に要請すると発表した。

ドバイワールドは、ドバイの首長(君主)であるシェイク・マクトゥームが株式の大半を持ち、事実上ドバイの政府投資機関である。同社は持ち株会社で、傘下に20社以上を保有する。その中の一つが、不動産事業を手がけるナキール社(Nakheel)で、ドバイ市の前面のペルシャ湾の海上に、椰子の木や世界地図をかたどった巨大な人工島をいくつも造り、リゾート風の高級マンションを無数に建てて世界中の金持ちに売ったり、世界一の高層ビルを建てたりする派手な不動産事業を展開してきた。米国のラスベガスで、カジノ事業を買収したりもした。ドバイワールドが抱えている債務(590億ドル)の大半は、ナキール社の不動産開発のためのもので、12月14日に満期がくる35億ドルの債券も同様だ。

椰子の木をかたどった人工島の一つ、パームジュメイラのプールつきの高級アパート(4ベッドルーム)の平均的な価格は、2001年に売り出しを開始した時には150万ドルだったものが、07年には400万ドルまで高騰した。世界的な金余り現象の中、欧米の投資家や著名人らがこぞって購入していた。だがその後、リーマンブラザーズ倒産を皮切りとした金融危機によって世界的な資金収縮が起こり、分譲価格は半年間で半値になり、その後さらに下がって、今では往時の10分の1の価格である40万ドルで投売りされている。

パームジュメイラは全体としてまだ未完成で、ナキール社の不動産開発事業は全体で今後さらに200億ドル以上の資金が必要となっている。だが、ドバイの不動産価格は、今後さらに下落する。ドバイは中東の国際金融センターとなることを目指し、金融関係者の人口増加を見込んで高級住宅の建設を進め、パームジュメイラなど4つの人工島に合計200万人が住める住宅を新築する計画だった。しかし、昨秋以来の世界危機で金融商品の取引は激減し、ドバイは金融センターになれず、外国人の人口は減少し、来年にはドバイの住宅の25%が空き家になり、不動産価格はさらに3割下がると予測されている。ナキール社がこれ以上の住宅やオフィスビルを作っても売れないのは確実で、同社の資金調達は難しい。

ドバイ首長国は総額800億ドルの債務がある。ドバイワールドの590億ドルが、その大半を占めている。ドバイが属するアラブ首長国連邦(UAE)の中では、アブダビ首長国が世界第6位の埋蔵量を持つ産油国であるが、ドバイ首長国には油田やガス田がない。ドバイは、世界的な金余りの中、欧米など世界からの投資金を集め、地元や世界中で不動産、港湾、物流などの事業を買収し、その収益で負債を返済しつつ儲けていた。ドバイ(UAE)の通貨ディルハムはドルにペッグしており、欧米の投資家はドル建てで投資する感覚でドバイに投資できる。

○突然起きた危機の顕在化

借金で派手な事業をまわしていたドバイとは異なり、ドバイの隣のアブダビは、豊富な石油輸出の代金をアブダビ投資庁などの政府投資機関が運用している。ドバイは11月25日は、アブダビの政府系銀行から50億ドルを借り、当座の運転資金を確保した。12月末までに、さらに50億ドルを借りる予定だという。ドバイは今年2月にもアブダビから100億ドルを借りている。その時も、直前にドバイの債務不履行がうわさされ、ドバイの債券のCDS(破綻保険)の料率が上がっていたが、アブダビからの借金で破綻のうわさは一掃された。今回は二度目の救済金なので、アブダビはドバイに、他の債権者にも延滞をお願いせよと条件をつけ、それが履行され、11月26日の事態になったのかもしれない。

ドバイはアブダビに助けてもらっているが、もともとアブダビ首長は、隣のドバイ首長が金融バブルに乗って派手な事業を展開することを快く思っていなかったふしがあり、延々とドバイを救済するつもりはなさそうだ。来年にかけてドバイは債務不履行に陥る可能性が増える。海外の投資家が金を出してくれなくなったら、ドバイは不動産や事業を切り売りするしかないが、世界不況の折、買い叩かれることは必至だ。

ドバイは最近まで飛ぶ取り落とす勢いの成長をしており、日本でも金満アラブのイメージがあった。観光地としても有名で、エミレーツ航空会社の評判も良かった。ドバイが破綻すると、イメージ的な衝撃が大きい。

今回のドバイの負債総額800億ドルは、2001年に破綻したアルゼンチンの負債総額950億ドルに匹敵する。アルゼンチンは人口3700万人だが、ドバイの人口は220万人で、しかも移民以外のもともとの人口は40万人しかいない。ドバイが債務不履行に陥った場合、アルゼンチンに比べて一人当たりの負債額が膨大になる。今年初めに破綻したアイスランド(人口10万人)の負債額は95億ドルだった。

ドバイが債務不履行になるとしても、800億ドルの債務残高の全額が不履行となるわけではないだろうが、その一方で「ドバイ政府は帳簿外にも巨額の負債を抱えているはずで、それを含めた総額は、もっと大きくなるはず」との指摘が、スイスの大手銀行UBSから出されている。

今回のドバイが、アルゼンチンの破綻時と異なる点は、アルゼンチンは4カ月かけて国債の価値が4割下落した挙げ句に債務不履行に陥り、市場は破綻を予測できたが、今回のドバイワールドの行き詰まりは突然の発表だったことだ。ドバイワールドの債券は、危機が発表される前日まで額面を10%上回る価格で取引されており、市場は今回の破綻を予測していなかった。危機の発表とともに、債券は額面より30%低い値段まで急落した。先月のドバイ政府の債券販売では、19億ドル分の起債に対し、63億分の入札があった。ドバイは、1年ほど前から不動産価格の下落など「経済難」だったが、債務不履行という「破綻」は予測されていなかった。(

ドバイの危機の顕在化が突然だった理由は、ドバイを世界に売り込んだのが英国の金融界だったことと関係があるかもしれない。ドバイの事業戦略はドバイの首長や市民が創案したのではなく、英国が得意とする宣伝作戦に乗って儲けを拡大していた。FTなど英国系の金融紙は、さかんに「イスラム金融」をもてはやした。イスラム教では金利の授受を禁じているので、イスラム債券は、金利ではなく配当などの形で投資家に利益を分配する。イスラム金融は斬新で清廉なイメージを投資家に与えるが、一般の金融とたいした違いはなく、ドバイの例を見れば、欲得ずくで近視眼的な金融バブルへの便乗そのものであることがわかる。

世界に向けたイスラム金融の巧妙な販売促進は、ドバイの人々にできることではない。おそらくロンドンの人々の仕業である。英金融界は、多極化や資源価格の長期的な高騰を予測し、イスラム世界の投資家からうまく金を集めることを考え、その一環としてドバイの繁栄を、首長を巻き込んで構想したのだろう。英国は諜報の分野でもドバイを拠点として「アルカイダ」と接触(扇動、加担)してきた歴史があり、オサマ・ビンラディンは911以前、ドバイとアフガン・パキスタンを行き来していた。 ドバイワールドの債権者には、英国の銀行が多く名を連ねており、危機の顕在化を受け、ロンドン株式市場は急落した。ドバイの危機を機に、イスラム金融はもっと地味なものになっていくかもしれない。

ドバイの周辺では、アブダビやサウジアラビアも政府投資機関を持っている。中国やロシアなどの新興市場諸国でも、政府投資機関の設立や拡大がさかんだ。ドバイの政府投資機関の破綻は、アブダビやサウジ、ロシア、東南アジア、中国などの政府投資機関の連鎖的な破綻を引き起こすかもしれないという指摘がある。各国のうち、ドバイのように世界からの投資を集めて回している政府投資機関は、連鎖破綻するかもしれない。だが、アブダビやサウジ、中国などは、いずれも巨額の黒字を投資に回すために政府機関を作っており、ドバイとは状況が異なる。

また、ドバイが破綻していくと、連鎖的に新興市場諸国の株式市場から国際資金が逃避して急落するという予測もある。1997-98年のアジア通貨危機の際には、新興市場の連鎖破綻が起きた。しかし当時は、ドルや米英経済が隆々としていた。今は、米英が財政破綻に瀕しており、ドルは基軸通貨の地位を失って崩壊しかけている。新興市場を嫌って米国の短期国債に逃避する資金の流れは確かに起きており、米短期国債は高騰し、マイナス金利になっている。しかし、これは投資家の旧来の直感(あるいはプログラム)に基づく動きであり、米国の財政赤字の急増やドル崩壊感の強まりといった危険が勘案されていない。資金逃避先として金地金の上昇傾向は続きそうだが、他の投資先のどこが安全かについては、極めて判断が難しくなっている。

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