日本という国の中で、1985年9月のプラザ合意、1989年11月のベルリンの壁の崩壊、その裏で、米中によって行われた日本封じ込めのための中国の通貨、元の大幅切り下げ、いまだにそれらの本質が理解されていないのは、あまりに残念なことである。

冷戦が存在したことによって米国によって事実上、占領されながらも、ある意味保護され、自由主義陣営のショーウインドーの中にその目玉商品として陳列された日本という国の立場が冷戦終了後、全く変わってしまったことをもっと冷徹に国民一人一人が認識すべきであろう。

中国の元は、1980~1994年の間に、何度も切り下げられ、対ドルで累計82.6%の非常に大幅な減価となった。80年にわずか1.5元だった1ドルは、94年には8.7元となった、つまり大幅なドル高・元安となったのである。対円で見ると、80年の1元=151円が94年にはわずか1元=12円となり、92.2%の減価となっている。もちろん、これは自然現象ではない。日本パッシングのための米国の意図した戦略の結果である。そして、このことが、中国経済の急成長=日本製造業の空洞化とユニクロのような産業の隆盛をもたらしたのである。




1945年、我々の先人達は、戦略思考の欠如から、見事、アングロサクソンの罠に嵌って戦争に負けてしまった。その結果、現在まで、日本は、残念ながら米国に占領されているのである。米国の基地が国内にこれほど存在する国を、独立していると主張するのは、マキャベリーの君主論を読むまでもなく、詭弁であろう。また、このことを前提にしない政治・経済論議は、現実的には、ほとんど無意味である。

日本人の視聴者や読者に本当の事(日本が現在、独立国ではないこと)を言えないために、日本のマスメディアでは、延々と不毛な論議が、繰り返されることになる。

今春の普天間基地問題、韓国哨戒艇撃沈事件、鳩山、小沢辞任騒ぎ、菅直人政権成立、それらも、日本のマスコミが報道するようなものではないことは言うまでもない。 すべてに米国の意向が働いているのである。そして、あまりに拙い民主党の「政治主導」に抵抗する官僚の思惑が働いていることも間違いないだろう。だから、菅総理は、デフレギャップが40兆円もあると言われる日本経済の現状を無視して財務省の言うがままに消費税10%導入を言い始めたのである。

大きな文明史から見れば、明らかに衰退過程に入った米国の顔色ばかりを伺ってなすがままになっていたところで、これからの日本の未来を切り拓くことは、決してできないことは、明らかである。フランスの碩学エマニュエル・トッド氏が指摘するように現在は、「帝国以後」の歴史過程:米国の覇権が衰退していく過程に入り始めているのだから。以前、村山 節氏の文明800年周期説をご紹介したことがあった。 明らかにアジアの時代がこれから始まるのである。そう言えば、このことをもっと詳細に解説した「ガイアの法則」という大変興味深い本が最近出版された。

「人類の文明の焦点は、地球上を1611年に22.5度移動する。」という法則を紹介した本である。 もし、そうなら、人類文明の焦点は、現在の日本の状況からは、信じられない人が多いかもしれないが、今後、わが日本に移ることになる。おそらく、そのための大混乱がこれから、世界中で起きてくるのであろう。

現在、これからの政局を左右する参議院議員選挙が始まっている。おそらく、民主党政権は、単独過半数を獲得することは、ないだろう。その結果、部分連立、大連立政権が発足し、政界再編に進む事になるのではないか。その場合のキーパーソンは、いい悪いは別にしてやはり、小沢一郎氏である。

小沢氏に関しては毀誉褒貶が激しいが、今、しばらく彼を中心に日本の政治は動いていくことになる。また、これから、米国の衰退がはっきりするような事件が起きてくるのではないだろうか。以前にも、指摘したように中国経済のリセッションもはっきりと目に見えてくるのではないだろうか。多数ある資料の中から興味深いものをピックアップしたので是非、お目通しいただきたい。

<参考資料>

*田中紹昭氏の国会探検より

「政界再編が準備されつつある」

菅政権がスタートして「脱小沢」ばかりが注目されているが、私には「政界再編」の準備が進行しつつあると思えて仕方がない。それが成功するかどうかは不明だが、政局の雰囲気が3年前の「大連立」の時と似ているのである。

前回の記事は外国でインターネットで見た日本の新聞情報を元に書いたが、今回は帰国して日本の空気を吸いながら書いている。その事で考えの前提が変わった。前回は「小沢氏が鳩山氏に辞任を迫り、それに抵抗した鳩山氏が小沢氏を道連れにした」との新聞情報をそのまま判断材料にした。

ところが帰国して日本の空気の中にいると考えが変わった。小沢氏が鳩山氏に辞任を迫ったのは事実だろうが、「道連れ」にされたのではなく、小沢氏の方から「自分も辞める」と言って鳩山氏に辞任を迫ったのではないかと思うのである。何のために。参議院選挙に勝つためにである。

考えてみれば鳩山氏一人が辞めて小沢氏が辞めないのは最悪の判断である。メディアに洗脳された国民は小沢氏をここぞとばかり叩くだろう。大衆は判官贔屓で下衆だから、辞めた人間には同情するが辞めない人間は叩きまくる。正しいかどうかなど考えない。理屈もへちまもない。仮に小沢氏が辞めないつもりだったら二人揃って強行突破するしかなかった。しかし普天間問題を見て小沢氏は鳩山氏に辞任を迫った。それなら自分の辞任を条件に迫るのが政治家らしいやり方である。

では何故「俺も辞めるから」という話ではなく「道連れ」にされた話が表に出たのか。そこに今回の政局のカギがある。一つは小沢氏に自分から辞める理由はないからである。検察と戦っている人間が非を認める訳にはいかない。だから他人から辞めさせられる形にした。しかし辞任を迫ったら逆に辞任させられたというのは実に「しまらない」話である。そして「道連れ」は小沢氏を決定的に悪役にする。それが狙いだったのではないか。

普通の人間は自分の正当性を主張する事だけを考える。しかし政治家は自分のことより政治的成果を考える。感情や名誉欲に捕らわれたら政治家など出来ない。政治的な勝利を得るためには不名誉や屈辱も厭わない。それが政治家である。目的さえ達すれば不名誉や屈辱などいつでも回復出来る。

そこで目的の参議院選挙である。二人とも辞めずに強行突破したならどうなるか。私は実はメディアの言うほど「民主党惨敗」になるとは思っていなかった。投票率は下がるから組織選挙となり、無党派の票は大きな影響力を持たない。すると小沢氏の力で業界団体を味方につけた民主党がそこそこの票を取る。ただ影響力は小さいと言っても無党派層は民主党ではなく第三極に向かう。第三極が伸びる可能性はある。創価学会と業界団体の支援がなくなった自民党はやはり厳しいが、それでも強行突破してくれれば戦いは有利になる。民主党単独過半数は無理で、選挙後は第三極と公明党が自民党につくか民主党につくかの政局になる。自民党につけば「ねじれ」が起きて民主党は解散に追い込まれる可能性がある。しんどい政権運営が続く。

一方、鳩山・小沢の二人が辞めれば野党は攻めの材料を一気に失う。参議院選挙は民主党に有利になるが、さらに単独過半数を確実にする方法がある。かつて自民党の小泉氏が使った手である。党内を分裂模様にして国民の目を引きつけ、野党の存在を見えなくするのである。そのため小沢氏が悪役になった。小泉時代の「抵抗勢力」の役回りである。「道連れ」は実は小沢氏が考えた知恵ではないかと私は思う。鳩山氏の意向を受けた菅氏が「脱小沢」の姿勢を見せると、民主党内反小沢派が一気に活気づいて「脱小沢」の流れが固まった。

「脱小沢」をやっている人たちは本気で「脱小沢」を図っているかも知れない。小沢氏が追い込まれる可能性もある。しかし本当にそう思われないとこの仕掛けはうまくいかない。窮地に陥っても参議院選挙の目的さえ達すれば、そこから先はまた新たなステージが生まれる。そこで別のシナリオを用意すれば良い。

民主党が「脱小沢」に衣替えしたことで、国民の目は民主党だけに注がれている。昨日までの「新党」など目に入らなくなった。国民には「ニュー民主党」の方が新党よりも新鮮に見える。こうなると無党派層は「ニュー民主党」に向かう可能性が高い。

小沢氏の力で組織票を固めた民主党がさらに「ニュー民主党」の力で無党派層も引きつければ民主党の単独過半数獲得が現実的になる。そこで何が起きるか。次の衆議院選挙で自民党が政権を奪っても、参議院の過半数を民主党に握られている限り全く無力の政権になる。それが参議院選挙の時点で分かってしまう。自民党に政権交代を実現しようとする意欲が失せる。

自民党から離れる政治家がまた出て、イデオロギー的に民主党と相容れない政治家だけが自民党に残る。自民党にイデオロギー色が強まるとかつての「国民政党」的性格は弱まり、政権交代の可能性が遠ざかる。二大政党の一方の軸が消滅していく。

かつての万年与党と万年野党の時代が再来する。社会党が政権政党になり得なかった時代の自民党は党内で政権交代を繰り返した。党内には官僚出身VS党人派、成長・緊縮財政路線VS分配・積極財政路線、反共親米イデオロギーVS経済中心の現実主義という色分けで概ね二つの勢力が存在した。「角福戦争」は有名だが、福田派と田中派はこの二つの流れを代表していた。そしてこの党内対立こそが自民党の活力の源泉だった。

今、見えてきたのはそれに近い状況である。民主党の中が「政治は生活が第一」を掲げた分配・積極財政路線と「最小不幸社会」を掲げた成長・緊縮財政路線になんとなく別れている。これで政権交代を繰り返せば、自民党は万年野党のままか、或いはどちらかの側に吸収されていく。そこで民主党を二つに割れば「政界再編」である。自民党対民主党ではない新たな二大政党が生まれる。

そう考えると3年前の「大連立」を思い出す。あれは読売新聞社の会長が仕掛けたと世間は思っているが、そう思わせておいて仕掛けたのは小沢氏である。新聞社の会長は自民党の延命のために「大連立」を考えたが、小沢氏は「政界再編」が目的だった。

現在の自民党と民主党には考えの異なる政治家が混在し、何をやるにも党内で足の引っ張り合いになる。それが日本の政治を著しく停滞させている。これを解消してすっきりさせないとイギリスのような二大政党制は生まれない。そこで一時的に自民党と民主党を合体させて巨大与党を作り、次にその中の政治家を二つの路線に収斂させ、それが分裂するテーマを選んで選挙をやれば、国民の手によって新たな二大政党の勢力分布が決まる。

ところが「大連立」は「大政翼賛会的で民主主義を冒涜する」と轟々たる非難を浴びた。一時は小沢氏の辞任騒ぎになった。そこで違う方法での「政界再編」を小沢氏は考えたのではないか。選挙に勝つ事によって民主党を肥大化させ、自民党を二大政党の軸ではなくなるほど追いつめる。一方で肥大化した民主党に分裂の芽を作り「政界再編」に持ち込む。そのためには何としても参議院選挙で民主党は単独過半数を獲得しなければならない。

小沢氏は「大連立」の時も非難轟々だったが、現在はそれ以上の悪役である。しかし私の想像通りなら、成功すれば政治史に残る大事業を成し遂げた事になる。どんなに非難されようとも本望であるに違いない。

思い起こせばかつて小泉純一郎氏も「政界再編」を仕掛けようとした事がある。郵政選挙で自民党が大勝した後、盟友の山崎拓氏を小泉氏とは対極の路線に向かわせた。山崎氏は靖国問題で小泉氏と距離のある議員を集め、民主党も巻き込んでグループを作った。一方で小泉氏は公明党と連携し小選挙区制を中選挙区に戻す作業を始めた。1993年に小沢氏が実現させた小選挙区制を葬り去ろうとしたのである。しかし小泉氏は総理の座を安倍氏に譲り、裏から操ろうとしたがために失敗した。安倍氏が小泉氏の思い通りにならなかったからである。

小泉主導の「政界再編」が潰えた後、小沢氏が取り組んでいるのも「政界再編」だと私は思う。他の政治家は目の前の課題だけしか見ていないが、小沢氏はその先を見ているためになかなか他人に理解されない。あえて民主党に分裂の芽を作るのも、強気の候補者擁立を図るのも、全て「政界再編」を考えた上での事だと私は想像する。その小沢主導の「政界再編」が成功するかどうか、まずは参議院選挙の結果が第一条件となる。

*佐藤優氏の眼光紙背より

「小沢一郎が『平成の悪党』になる日」

近日中に民主党の小沢一郎幹事長が「平成の悪党」になるような予感がする。ここで筆者が言う「悪党」とは、犯罪者という意味でない。南北朝時代の南朝の忠臣・楠木正成が「悪党」と呼ばれたことを念頭に置いている。手元にある『岩波古語辞典』(1974年版)で「悪党」を引くと、<中世、荘園領主や幕府の権力支配に反抗する地頭・名手などに率いられた集団。>(13頁)と説明されている。「悪党」とは、既成権力に対抗する強い武士の集団のことだ。

南北朝時代、日本国家は南朝と北朝の2つに分裂した。足利尊氏によって代表される武士(軍事官僚)による北朝が、京都に偽王朝を置いていた。これに対して後醍醐天皇によって開始された建武の中興(国家の建て直し)を断固支持する集団は、奈良の吉野に南朝(吉野朝)を置いた。武士では新田義貞が、後醍醐天皇側について戦ったが、足利尊氏によって打ち負かされた。そこで、悪党の楠木正成が登場し、大暴れする。

5月28日、鳩山由紀夫総理は、沖縄の米普天間飛行場の移設先を名護市・辺野古周辺とすることを明記した閣議了解を行った。それに先立ち、日本の外務大臣、防衛大臣、米国の国務長官、国防長官による日米安全保障協議会の共同発表が行われた。鳩山総理は、移設先について「最低でも(沖縄)県外」としていた約束を反故にした。

沖縄のマグマがこれに対して爆発している。このマグマは、これまでと質が異なる。産経新聞の宮本雅史那覇支局長の以下の記事が状況の深刻さを鋭く指摘している。

<ある県会議員は「県民の大半も国外・県外はありえないと感じていたが、鳩山首相は裏付けのないまま期待を持たせ、簡単にほごにした」と指摘した上で「首相が県内移設を言うようになってからは一般県民のマグマをも動かしてしまった」と話した。

約束を守らなかった鳩山首相の“裏切り”が県民の怒りを招いたのだ。

困惑も広がる。「(結果は)基本的には予想通り」とする財界関係者は「本心では賛成だが、県内情勢をみると賛成とは口に出せない」といい、「経済援助の条件闘争という声もあるが、今は条件面の話し合いをできる状態ではない。それをすると、県民から沖縄を売ったと批判される。自分の意見を言えなくなっている」と説明した。

ある革新系議員は過去に一般住民が武装闘争を展開したことをあげ「活動家は排除できても、一般の県民は排除できない。沖縄の保守のマグマは革新よりも過激だ。鳩山首相が議員辞職しても、このマグマを消せない」と語った。

また、保守系議員は鳩山首相の議員辞職を最低条件にあげ、「責任を取ろうともしない民主党政権は言語道断。普天間問題の早期解決には今こそ原点に戻って防衛議論を重ね、県民に理解を求めるべきだ」と訴えた。>(5月29日産経新聞)

沖縄で一般住民による武装闘争が展開されたことに言及し、「沖縄の保守のマグマは革新よりも過激だ」という沖縄の政治エリートの発言に注目した宮本支局長の記事は問題の本質を衝いている。沖縄の地元紙を読むと事態の深刻さがよくわかる。これまで、最終的には基地問題で東京の中央政府の意向を受け入れた沖縄の経済界が次のような反応をしている。

<普天間飛行場移設問題 県内経済界、実現不可能で一致 普天間固定化を懸念

日米両政府が米軍普天間飛行場の移設先を名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部と隣接する海域とする共同声明を発表したことに、県内経済界は高まる県民の反対運動から「実現は不可能」との見方で一致した。基地受け入れの見返りとされる経済振興策については「基地に依存して飯を食おうとは思っていない」など強い調子で否定する声が相次いだ。一方で移設作業停滞による普天間飛行場の固定化への懸念も出た。

県商工会議所連合会の国場幸一会長は「反基地運動は今まで以上に激しくなる。嘉手納基地の返還運動にまで発展する可能性を米国も恐れているはずだ」と指摘。沖縄観光コンベンションビューローの平良哲会長も「9万人が集まった県民大会や名護市長や関係市町村長の反対でも県民の意思は明らか。翻すことは厳しい。日米両政府の進めるこの計画はお先真っ暗だと思う」と話す。

振興策がリンクされることについては、異口同音に強く否定した。

県建設産業団体連合会の呉屋守将会長は「変な経済振興策に妥協すると、現在のウチナーンチュが次世代のウチナーンチュに批判される。県民のプライド、自尊心、自立にかかわる問題で、妥協するわけにはいかない」と強調。国場会長は「以前は北部の土建業者のメリットになるとして工法の話も出たが、今度はどんな工法であっても受け入れとはならない」と拒否の姿勢を強調した。

知念栄治県経営者協会長は「基地に依存して飯を食おうとは思っていない。沖縄は基地依存、財政依存を経て自立経済を考える時期だ。基地建設は一時的には潤うかもしれないが長期的には生産性を落とす」と説明。「嘉手納より南の基地の返還が遅れることのほうが経済損失は大きい」と述べ、「移設先が定まらず普天間が固定化されるのが最も問題だ。政府の認識を問いたい」と懸念を示した。>(5月29日琉球新報電子版)

これはかつてない事態である。それは、沖縄が普天間問題を東京の政治エリート(国会議員・官僚)による沖縄に対する差別を象徴する事案と認識しているからだ。そして、差別に対する怒りと悲しみが沖縄全体に広がっている。この状況を、政治エリートは客観的に認識すべきだ。かつてのような「アメとムチの政策」で、基地問題を軟着陸させる可能性はない。辺野古への基地建設を強行すれば、反対派の住民が座り込みをする。それを強制排除すれば、負傷者が出る。そうなると基地反対派だけでなく、保守派を含め、沖縄のマグマが噴き出す。そして、日本の国家統合が危機に瀕する。

閣議了解には、閣僚の署名が必要だ。福島瑞穂少子化担当大臣が署名を拒否したので、罷免された。この結果を受け、30日、社民党は連立政権から離脱することを決定した。

筆者は、社民党が沖縄のためだけに行動したとは思っていない。もし、社民党が沖縄の負担軽減を真剣に考えているならば、福島氏や辻元清美国土交通副大臣(衆議院議員)らの社民党議員が、普天間の移設先を探すために、死ぬ気で努力したはずだからだ。その形跡は認められない。さらに社民党は、沖縄に対する東京の政治エリートによる差別の問題に言及しない。沖縄の立場を代弁して筋を通したという要因よりも、福島氏が罷免され、連立を離脱した方が参議院選挙で少しでも得票を上乗せできるという計算によってとられた行為と筆者は見ている。社民党は、沖縄のためでなく、自分のために目的合理的に行動しているだけのことだ。

5月31日から政局が流動化する。この原因を社民党の連立離脱に求めては、事態の本質を見失う。今回、なぜこのようなことになってしまったのか? 筆者の見立てでは、起きている国家権力内部の権力闘争で、鳩山総理が官僚に譲歩しすぎたからだ。

現下の日本には、目に見えない2つの国家が存在する。一つは、昨2009年8月30日の衆議院議員選挙(総選挙)で、国民の多数派によって支持された民主党連立政権の長によって国民を代表する国家が存在する。もう一つは、官僚によって代表される国家だ。

内閣総理大臣の職に就いている鳩山由紀夫という1人の人間に、国民の代表という要素と官僚の長という要素が「区別されつつも分離されずに」混在している。官僚と国民の利害相反が起きるときに、総理のアイデンティティー(自己同一性)の危機が生じる。

官僚は、国民を無知蒙昧な有象無象と考えている。有象無象によって選ばれた国会議員は無知蒙昧のエキスのようなものと官僚は見下している。そして、国家公務員試験や司法試験に合格した偏差値秀才型のエリートが国家を支配すべきだと自惚れている。自民党政権時代は、「名目的権力は国会議員、実質的権力は官僚」という実質的な棲み分けができていたのを、民主党連立政権は本気になって破壊し、政治主導を実現しようとしていると官僚は深刻な危機意識を抱いている。この危機意識は、実際は官僚が権力を大幅に削減されることに対する異議申し立てに過ぎないのであるが、官僚の主観的世界では「このような輩が国家を支配するようになると日本が崩壊する」という「国家の危機」という集合的無意識になっている。

官僚は、現在、2つの戦線を開いている。第1戦線は、検察庁による小沢一郎潰しだ。第2戦線は外務官僚と防衛官僚による普天間問題の強行着陸だ。特に外務官僚は、「アメリカの圧力」を巧みに演出しつつ、自民党政権時代に官僚が定めた辺野古案が最良であることを鳩山総理が認めないならば、政権を潰すという勝負を賭けた。鳩山総理は、現状の力のバランスでは、官僚勢力に譲歩するしかないと判断し、辺野古案に回帰した。鳩山総理の認識では、これは暫定的回答で、段階的に沖縄の負担を軽減し、将来的な沖縄県外もしくは日本国外への模索を実現しようとしているのであろう。しかし、この状況を官僚は「国家の主導権を官僚に取り戻した象徴的事案」と受けとめている。

しかし、この象徴的事案は、官僚勢力に対する敗北になり、民主党連立政権が政治生命を喪失する地獄への道を整える危険をはらんでいる。筆者は、小沢幹事長がそのような認識をもっているのではないかと推定している。

小沢幹事長が「鳩山総理が平成の新田義貞になった」という認識をもつならば、自らが悪党になり、政局をつくりだそうとする。小沢氏が直接政権を握ろうとするか、自らの影響下にある政治家を総理に据えようとするかは本質的問題ではない。小沢一郎氏が「平成の悪党」になるという決意を固めることが重要だ。小沢氏が「平成の悪党」になる決意を固めれば、官僚に対する決戦が始まる。参議院選挙はその露払いに過ぎない。今後、天下が大いに乱れる。

*ダイヤモンドオンラインより

「増税論議が示すジャーナリズムの貧困」

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

いよいよ7月11日の参院選に向けた選挙戦が始まりました。

選挙戦での一番の争点は消費税増税と財政再建になりそうですが、それに関しては、政治の主張のレベルもさることながら、それを報道するメディアの側にも問題が多いと言わざるを得ません。

論外なマニフェストの主張

二大政党である民主党も自民党も消費税増税をマニフェストで訴えています。民主党はマニフェストでは明示していませんが、菅総理が10%という数字も含めて明言していますので、公約に含まれると考えるべきです。

しかし、先週も書いたように、両党の主張は明らかに間違っています。繰り返しになるのでポイントだけ書くと、二つの問題があります。

一つは、デフレ下での消費税増税は更にデフレを悪化させるという、マクロ経済運営の観点からは最悪の選択肢であるということです。デフレが更に悪化すると、増税に伴う税収増は期待ほど増えませんので、更に増税が必要になります。増税→デフレ→増税、という悪循環に陥る危険性が高いのです。

もう一つは、公務員給与の削減もせずに消費税増税を目指すのは、国民に対する背信行為だということです。財政再建は当然必要ですが、消費税増税は最後の手段のはずです。

まずは公務員や国会議員の給与削減、政府資産の最大限の売却、埋蔵金の最後の一円までの発掘など、やれることはたくさんあるのに、それらが不十分なままで消費税増税を訴えるのは、キャリア官僚べったりだった自民党と、今や政治主導から官僚主導へと路線変更した菅民主党らしい主張と言えます。

消費税増税の主張の背景には、ヨーロッパでの財政再建・増税ブームがあるはずです。そうでないと、二大政党が両方とも消費税増税を強く主張することなどあり得ません。世界の流行に弱い日本らしいと言えばそれまでですが、ここでも留意すべきは、流行の表面しか追っていないということです。

例えば財政危機のギリシャをはじめとするヨーロッパの幾つかの国は、消費税に相当する付加価値税の税率を上げましたが、同時に公務員の数と給与の削減、年金削減などの厳しい歳出削減を行なっています。英国は大規模な財政赤字の再建に乗り出しましたが、その8割は歳出削減で賄うと言われています。かつ、もっとも重要なポイントとして、“増税ブーム”の元であるこれらの国の経済はデフレではありません。日本の経済状況とは根本的に異なるのです。

これらの点を考えると、政策としては、1~2年でデフレ克服と公務員給与削減などの政府の無駄削減を行ない、その両者が達成された段階で消費税を増税する、という順番が不可欠です。

大新聞の社説から分かるジャーナリズムの貧困

さて、前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。以上から明らかなように、政治の側の消費税増税という主張には問題が多いのですが、メディアの側でそれを正しく批判しているところがあまりに少ないのです。

先週の17日(木)に民主党と自民党のマニフェストが発表されましたが、その翌日18日(金)の主要紙の朝刊を読んで、心底びっくりするとともに呆れました。大半が消費税増税を歓迎しているのです。

18日(金)主要紙の社説を見てみると、日経は“消費税を含めた税制の抜本改革は自民党政権が先送りを続けてきた難しい課題である。参院選の前に増税への基本的な考え方を表明した首相の決断を歓迎したい”と、朝日新聞は“消費税率は単なる財政再建の手段ではない。(中略)国の基本設計にかかわる課題だ。選挙後ただちに超党派の検討の場を設け、早急に方向を定めるべきだ”と、産経新聞は“菅首相は消費税について「今年度中に税率や逆進性対策を含む改革案をとりまとめていきたい」と踏み込んだ。財政再建路線に転じること自体は好ましい変化と言えよう”と、主張しています。読売新聞は18日(金)の社説では主張を明確にしていませんでしたが、20日(日)になって“国民に痛みを伴う増税であっても、必要性を堂々と訴えることが政治の責任である。選挙戦での活発な論争を期待したい”と、他紙と同様に消費税増税に前向きになっています。

つまり、主要紙がすべて消費税増税に前向きな評価をしているのです。唯一、東京新聞だけは18日(金)の社説で“消費税よりも、まず行政の無駄をなくすことに、党派を超えて力を合わせるべきではないか”と主張しており、部分的(デフレ下での消費税増税は論外という論点がない)ではありますが、正しい批判を行なっていました。

この日本の大新聞の社説のレベルの低さは何なのでしょうか。私が最初に説明した消費税増税の問題点は決して難しいことではなく、ちょっと考えればすぐに分かることです。単にそれが分からなかったのか、または敢えて捨象したのかは定かではありません。しかし、仮に消費税増税という間違った主張に新聞社として賛成であっても、その問題点を明らかにして国民が主体的に考えられるようにすることは、ジャーナリズムの担い手としての新聞の使命ではないでしょうか。

新聞によっては、国民の多くが消費税増税に賛成という世論調査の結果も発表していますが、上記のような偏った論調を読まされていては、国民だって判断を間違えてしまうのではないでしょうか。

ついでに言えば、22日(火)には“財政運営戦略”が閣議決定されましたが、その翌日の大新聞の社説を見ると、各紙とも財務省の説明どおりに“財政再建は大変、消費税増税は必要”というトーンになっています。批判的な論評どころか、従軍記者そのものです。

日本の新聞メディアのレベルについては当然以前からよく知っていますが、今回の消費税増税を巡る社説を見て改めて愕然としました。戦時中に軍部の方針の追認という間違った政策判断をした大政翼賛会と、それを正しく糾弾しなかったメディアとの関係に似ているのではないでしょうか。

私は、これまでどちらかと言えばマスメディアの応援団でした。ネットがマスメディアを崩壊させかねないけど、マスメディアはジャーナリズムを支える存在なので、ネット時代を生き残れるようにビジネスモデルを進化させようと主張してきました。

しかし、今回のような程度の社説しか書けないようなら、日本の新聞メディアはジャーナリズムを支えているとは到底言えません。ジャーナリズムを貫いている欧米の新聞メディアは生き残るべきと言えますが、今の日本の新聞メディアは違うのかもしれません。それでも生き残りたいなら、ビジネスモデルの前にまず社説や記事のクオリティを上げることから始めないといけないのではないでしょうか。

*ダイモンドオンラインより

元CIA顧問の大物政治学者が緊急提言

「米軍に普天間基地の代替施設は必要ない!日本は結束して無条件の閉鎖を求めよ」

独占インタビュー チャルマーズ・ジョンソン 日本政策研究所(JPRI)所長

普天間基地問題の決着期限が迫るなか、鳩山政権は辺野古沿岸につくる桟橋滑走路と、徳之島の既存の空港を併用する移設案を提案した。しかし、地元や米国側の同意を得られる見通しは立っておらず、日本国内は鳩山政権批判一色に染まっている。しかし批判するだけでは何も変わらない。そもそも同基地の代替施設の不要論は米国内にもある。東アジア研究の大家で、CIAの顧問を務めた経験もあるチャルマーズ・ジョンソン 元カリフォルニア大学政治学教授は、日本国内にはすでに十分すぎる米軍基地があり、日本国民は結束して普天間基地の無条件閉鎖を求めるべきだと提言する。

(聞き手/ジャーナリスト・矢部武)

チャルマーズ・ジョンソン

Chalmers Johnson

著名な国際政治・東アジア研究者。米国の覇権主義、軍事優先主義を厳しく批判した著書が多く、東アジアにおける米国の帝国主義的政策は必ず報復を受けると分析した”Blowback”(邦題「アメリカ帝国への報復」(2000年、集英社)はベストセラーに。カリフォルニア大学で政治学博士号を取得し、同大学で教授、政治学部長、中国研究センター所長などを歴任。その後、日本および環太平洋地域の国際関係を研究する民間シンクタンク“日本政策研究所”(JPRI)を設立。

―鳩山政権は普天間問題で窮地に立たされているが、これまでの日米両政府の対応をどう見るか。

まったく悲劇的だ。両政府は1995年の米兵少女暴行事件以来ずっと交渉を続けてきたが、いまだに解決していない。実を言えば、米国には普天間飛行場は必要なく、無条件で閉鎖すべきだ。在日米軍はすでに嘉手納、岩国、横須賀など広大な基地を多く持ち、これで十分である。

そもそもこの問題は少女暴行事件の後、日本の橋本首相(当時)がクリントン大統領(当時)に「普天間基地をなんとかしてほしい」ということで始まった。この時、橋本首相は普天間飛行場の移設ではなく、無条件の基地閉鎖を求めるべきだったと思う。

―普天間を閉鎖し、代替施設もつくらないとすれば海兵隊ヘリ部隊の訓練はどうするのか。

それは余った広大な敷地をもつ嘉手納基地でもできるし、あるいは米国内の施設で行うことも可能だ。少なくとも地元住民の強い反対を押し切ってまでして代替施設をつくる必要はない。このような傲慢さが世界で嫌われる原因になっていることを米国は認識すべきである。

沖縄では少女暴行事件の後も米兵による犯罪が繰り返されているが、米国はこの問題に本気で取り組もうとしていない。日本の政府や国民はなぜそれを容認し、米国側に寛大な態度を取り続けているのか理解できない。おそらく日本にとってもそれが最も簡単な方法だと考えているからであろう。

フランスならば暴動が起きている

―岡田外相は嘉手納統合案を提案したが、米国側は軍事運用上の問題を理由に拒否した。

米軍制服組のトップは当然そう答えるだろう。しかし、普天間基地が長い間存在している最大の理由は米軍の内輪の事情、つまり普天間の海兵隊航空団と嘉手納の空軍航空団の縄張り争いだ。すべては米国の膨大な防衛予算を正当化し、軍需産業に利益をもたらすためなのだ。

米軍基地は世界中に存在するが、こういう状況を容認しているのは日本だけであろう。もし他国で、たとえばフランスなどで米国が同じことをしたら、暴動が起こるだろう。日本は常に受身的で日米間に波風を立てることを恐れ、基地問題でも積極的に発言しようとしない。民主党政権下で、米国に対して強く言えるようになることを期待する。

―海外の米軍基地は縮小されているのか。

残念ながら、その動きはない。米国は世界800カ所に軍事基地を持つが、こんなに必要ない。世界のパワーバランス(勢力均衡)を維持するためなら、せいぜい35~40の基地で十分だ。米国政府は巨額の財政赤字を抱え、世界中に不必要な軍事基地を維持する余裕はないはずだ。

―日本では中国や北朝鮮の脅威が高まっているが。

日本にはすでに十分すぎる米軍基地があり、他国から攻撃を受ける恐れはない。もし中国が日本を攻撃すれば、それは中国にこれ以上ない悲劇的結果をもたらすだろう。中国に関するあらゆる情報を分析すれば、中国は自ら戦争を起こす意思はないことがわかる。中国の脅威などは存在しない。それは国防総省や軍関係者などが年間1兆ドル以上の安全保障関連予算を正当化するために作り出したプロパガンダである。過去60年間をみても、中国の脅威などは現実に存在しなかった。

北朝鮮は攻撃の意思はあるかもしれないが、それは「自殺行為」になることもわかっていると思うので、懸念の必要はない。確かに北朝鮮の戦闘的で挑発的な行動がよく報道されるが、これはメディアが冷戦時代の古い発想から抜け出せずにうまく利用されている側面もある。

―米軍再編計画では普天間の辺野古移設と海兵隊のグアム移転がセットになっているが、辺野古に移設しない場合、グアム移転はどうなるのか?

米国政府はグアム住民の生活や環境などへの影響を十分に調査せず、海兵隊の移転計画を発表した。そのため、グアムの住民はいま暴動を起こしかねないぐらい怒っている。グアムには8千人の海兵隊とその家族を受け入れる能力はなく、最初から実行可能な計画ではなかったのだ。

―それでは米国政府が「普天間を移設できなければ議会が海兵隊のグアム移転の予算を執行できない」と強く迫っていたのは何だったのか。

自らの目的を遂げるために相手国に強く迫ったり、脅したりするのは米国の常套手段である。

―海兵隊をグアムに移転できない場合、米国政府はどうするか。

おそらく米国内に移転することになろう。それでも海兵隊部隊の運用上、問題はないはずだ。

―日本では普天間問題で日米関係が悪化しているとして鳩山政権の支持率が急降下しているが。

普天間問題で日米関係がぎくしゃくするのはまったく問題ではない。日本政府はどんどん主張して、米国政府をもっと困らせるべきだ。これまで日本は米国に対して何も言わず、従順すぎた。日本政府は米国の軍需産業のためではなく、沖縄の住民を守るために主張すべきなのだ。

日本人が結束して主張すれば米国政府も飲まざるを得ない

―米軍基地の大半が沖縄に集中している状況をどう見るか。

歴史的に沖縄住民は本土の人々からずっと差別され、今も続いている。それは、米軍基地の負担を沖縄に押しつけて済まそうとする日本の政府や国民の態度と無関係ではないのではないか。同じ日本人である沖縄住民が米軍からひどい扱いを受けているのに他の日本人はなぜ立ち上がろうとしないのか、私には理解できない。もし日本国民が結束して米国側に強く主張すれば、米国政府はそれを飲まざるを得ないだろう。

―今年は日米安保50周年だが。

日本にはすでに世界最大の米海軍基地(横須賀)があり、各地に空軍基地も存在する。これ以上の基地は必要ない。東アジアのどの国も日本を攻撃しようなどとは考えないだろう。日本政府は巨額の「思いやり予算」を負担している。自国の外交・防衛費をすべて負担できない米国のために、日本が同情して払っているのだ。

―普天間問題を解決できなければ両政府がどんなに同盟の深化を強調してもあまり意味がない、との指摘もあるが。

それは米国が軍事力優先の外交を展開しようとしているからである。一般の米国人は日本を守るために米国がどんな軍事力を持つべきかなどほとんど関心がないし、そもそも米国がなぜ日本を守らなければならないのか疑問に思っている。世界で2番目に豊かな国がなぜこれほど米国に頼らなければならないのか理解できない。それは日本人があまりに米国に従順で、イージーゴーイング(困難を避けて安易な方法を取る)だからではないか。

中国経済は9~12カ月以内に「クラッシュ」も-投資家ファーバー氏

投資ニュースレター「グルーム・ブーム・アンド・ドゥーム」を発行する著名投資家のマーク・ファーバー氏は、中国経済は減速し、今後9~12カ月以内に「クラッシュ」する可能性があるとの見通しを示した。ファーバー氏は、香港からブルームバーグテレビジョンのインタビューに答え、「さまざまなシグナルがある。大規模バブルのあらゆる兆候が見られている」と指摘。「いずれにせよ中国経済は減速する。そればかりでなく、今後9~12カ月以内にクラッシュする可能性もある」と語った。

中国株の指標、上海総合指数は、年初来騰落率がマイナス12%と、ブルームバーグが集計する92の世界株価指数でワースト4位。政府の不動産価格抑制措置や預金準備率引き上げがマイナス要因となっている。ファーバー氏は、政府の不動産投機規制を受けて投資家の資金は株式市場に向かうかもしれないが、株価には割高感があると指摘。その上で、国内投資家は金への投資を積極化する可能性があるとの見方を示した。(中略)同氏はさらに、1873年にウィーン万国博覧会が開催されたものの、1870年代が株安と不況に見舞われていたことを引き合いに出し、上海万博の開幕を「特に明るい前兆」とは言えないと指摘した。【ブルームバーグ】

*原田武夫氏のブログより

「オバマを再び追い詰めているのは誰か?」

米ハワイ州で2008年の大統領選挙に際し、「選挙管理委員会」の一員を務めていた人物が突如、「オバマ大統領がハワイ州で誕生したという出生証明書は存在しなかった」旨、間もなく裁判所で証言することが公表されたというのである(6月13日付米国「WND」参照)。実はこの問題、すなわち米大統領職に就く大前提としての「米国籍保有者」であるという条件をオバマ大統領が満たしていないのではないかという問題は、大統領選が始まる前から噂されていた。しかし結果として、オバマ陣営は「出生証明書」を提示。これによって沙汰やみになったのである。ところが大統領選挙そのものを公的に監視する立場の人間が、今度は裁判所における「証言」という法的な拘束力を持った形で暴露しようというのである。「果たしてオバマは米国人なのか」――日本勢の伝統的な大手メディアは一切黙殺したままだが、全世界の関心が再びこの問題にそそがれ始めている。

この関連で大変気になることがある。それはこの人物が、ヒラリー・クリントン候補(当時)の支持者として知られていた人物であるということだ。もちろん政治的な発言ということであれば「また例によってポジション・トークか」ということになろう。しかし、今回はそうではない。なぜならば裁判所における「証言」という形をとる予定だからだ。仮にそこで虚偽を述べるならば、当然、それは「偽証罪」に問われてしまう。確信犯にしても、もはや決着がついた話をここまで蒸し返すような愚行を行う人物はそうそういないであろう。ということは、考えられるのはただ一つ、すなわち「仮に“偽証”とされたとしても、彼の人生の行く末を見守ってくれる大物がバックにいるからこその蛮行なのではないか」ということである。――ここに再び、ヒラリー・クリントン国務長官の例によって得意げな笑みが見え隠れし始めるのだ。

降って湧いたようにして始まりつつある、古くて新しい話としての「オバマ大統領の非米国人疑惑」。その今後の展開から目が離せないことは言うまでもないが、それにしても気になるのはイラン問題、あるいは北朝鮮問題も同じく降って湧いたようにしてここに来て「沸点」を新たに迎えつつあるという事実である。これらは外交案件であるため、当然、その所管である国務長官=ヒラリー・クリントン女史が連日の様に全世界のテレビで映し出されるようになっている。その一方でオバマ大統領といえば、メキシコ湾で英系BP社が発生させた原油流出事故という、ある意味、完全にドメスティックな案件の処理に終われ、なかなか自らの快活さをアピールできず苦しんでいる感がある。

対照的な両者を取り巻く国際環境が次々に激変していく中、結局のところ、本当に「ヒラリー・クリントン大統領」が誕生することはないのか。――その“可能性”が極めて乏しくとも実現してしまう悲劇、あるいはそれが「未遂」になるにせよ途中まで駒が進められた時のあり得べき惨劇を、私たちはあらかじめ念頭においておくべき時が徐々に到来しつつある。

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