*非常に鋭い指摘です!

自由民主党を含め、戦後、日本には本当の意味での保守政党が、(戦争に負けたために)残念ながら存在せず、官僚がある意味国益を忘れ、省益だけを考える傾向が非常に強いことが今回の騒動の大元であることをそろそろ日本国民も理解すべき時に来ていると思われます。

米国に近いと思われるマキンゼーの大前研一氏ですら、グアム移転の可能性を指摘しています。今回の問題を日本のマスコミは大騒ぎしていますが、米国にとって沖縄の普天間基地の問題は、大した問題ではありません。米国政界のメインストリームの中では「普天間のFの字も語られてはいない」というのが実態であるとのことです。

それよりも、ホワイトハウスの主・オバマ大統領には気にするべきこと、為すべきことが山のようにあります。「ヘルスケア改革」「金融規制改革」「中東和平」、そしてもっと頭の痛い問題としては、かつては全く相手にもならなかったはずの“ペイリン前共和党副大統領候補”がCNN等の報道でわかるように支持率で強烈に追い上げていることです。

おそらく、民主党政権内で沖縄のカジノ特区構想が急浮上しているのもこの事に関係しているはずです。

今回の田中氏の指摘は大変鋭いものです。是非、ご一読下さい。       正 樹



「官僚が隠す沖縄海兵隊グアム全移転」

2009年12月10日  田中 宇



沖縄県宜野湾市の伊波洋一市長が11月末から、在日米軍に関する常識を覆す非常に重要な指摘をしている。

沖縄の海兵隊は米国のグアム島に移転する計画を進めている。日本のマスコミや国会では「沖縄からグアムに移転するのは、海兵隊の司令部が中心であり、ヘリコプター部隊や地上戦闘部隊などの実戦部隊は沖縄に残る」という説明がなされてきた。しかし伊波市長ら宜野湾市役所の人々が調べたところ、司令部だけでなく、実戦部隊の大半や補給部隊など兵站部門まで、沖縄海兵隊のほとんどすべてを2014年までにグアム島に移転する計画を米軍がすでに実施していることがわかった。普天間基地を抱える宜野湾市役所は、以前から米軍に関する情報をよく収集し、分析力がある。ヘリ部隊や地上戦闘部隊(歩兵部隊)のほとんどがグアムに移転するなら、普天間基地の代替施設を、名護市辺野古など沖縄(日本国内)に作る必要はない。辺野古移転をめぐる、この数年の大騒ぎは、最初からまったく不必要だったことになる。

米軍が沖縄海兵隊をグアムに全移転する計画を開始したのは2006年である。日本政府は米軍のグアム移転に巨額の金を出しており、外務省など政府の事務方は米軍のグアム移転計画の詳細を知っていたはずだが、知らないふりをして「グアムに移る海兵隊は司令部などで、沖縄に残るヘリ部隊のために辺野古の新基地が必要だ」と言い続けてきた。(宜野湾市「普天間基地のグァム移転の可能性について」)   http://www.city.ginowan.okinawa.jp/2556/2581/2582/37840/37844.html

伊波市長は11月26日に上京し、この件について与党の国会議員に対して説明した。同市長は12月9日には外務省を訪れ、普天間基地に駐留する海兵隊はすべてグアムに移転することになっているはずだと主張したが、外務省側は「我々の理解ではそうなっていない」と反論し、話は平行線に終わった。(伊波市長が与党議員に説明した時に配布した資料) http://www.city.ginowan.okinawa.jp/DAT/LIB/WEB/1/091126_mayor_4.pdf



司令部は移転する8千人中3千人だけ



「米国は、沖縄海兵隊の大半をグアムに移そうとしている」と伊波市長が主張する根拠の一つは、米当局が11月20日に発表した、沖縄海兵隊グアム移転(グアム島とテニアン島への移転)に関する環境影響評価の報告書草案の中に、沖縄海兵隊のほとんどの部門がグアムに移転すると書いてあることだ。環境影響評価は、軍のどの部門が移転するかをふまえないと、移転が環境にどんな影響を与えるか評価できないので、米軍が出したがらない移転の詳細を報告書に載せている。(Guam and CNMI Military Relocation Draft EIS/OEIS) http://www.guambuildupeis.us/documents

8100ページ、9巻から成る環境影響評価の報告書草案の2巻や3巻に、沖縄からの海兵隊移転の詳細が書かれている。そこには、海兵隊のヘリ部隊だけでなく、地上戦闘部隊や迫撃砲部隊、補給部隊までグアムに行くことが書いてある。第3海兵遠征軍(MEF)の司令部要素(3046人)だけでなく、第3海兵師団部隊の地上戦闘要素(GCE、1100人)、第1海兵航空団と付随部隊の航空戦闘要素(ACE、1856人)、第3海兵兵站グループ(MLG)の兵站戦闘要素(LCE、2550人)が、沖縄からグアムに移転する。4組織合計の移転人数は8552人であり「沖縄からグアムに8000人が移転する」という公式発表と大体同じ人数である。「グアムに移転する8000人は司令部中心」という外務省などの説明は明らかに間違いで、司令部は3046人で、残りは実戦部隊と兵站部隊である。

米国側が、沖縄の海兵隊の大半がグアムに移る計画内容を発表したのは、これが初めてではない。2006年9月に米軍が発表した「グアム統合軍事開発計画」に、海兵隊航空部隊とともにグアムに移転してくる最大67機の回転翼機(ヘリコプター)などのための格納庫、駐機場、離着陸地(ヘリパッド)を建設すると書いてある。普天間に駐留する海兵隊の回転翼機は56機だから、それを超える数がグアムに移転する。普天間の分は全部含まれている可能性が高い(残りは米本土からの前方展開かもしれない)。

この「グアム統合軍事開発計画」は、グアムを世界でも有数の総合的な軍事拠点として開発する戦略だ。米国は「ユーラシア包囲網」を作っていた冷戦時代には、日本や韓国、フィリピンなどの諸国での米軍駐留を望んだが、冷戦後、各国に駐留する必要はなくなり、日本、韓国、台湾、フィリピン、インドネシアなどから2000海里以下のほぼ等距離にあるグアム島を新たな拠点にして、日韓などから撤退しようと考えてきた。(グアムの戦略地図http://posts.same.org/JEETCE2007/presentations/2.3Bice.pdf)  その具体策として、海兵隊の全構成要素を沖縄から移すだけでなく、海軍と空軍の大拠点としてグアムを開発し、米軍の全部門が連携できる体制を作る計画を打ち出している。沖縄の海兵隊は、小さな出先機能が残存する程度で、残りはすべてグアムに移る方向と考えるのが自然だ。







一週間で消された詳細なグアム計画



米軍の「グアム統合軍事開発計画」は、06年7月に策定され、9月に発表された。策定の2カ月前の06年5月には、米軍再編(グアム移転)を実施するための「日米ロードマップ」が日米間で合意され、この時初めて、日本政府が沖縄海兵隊グアム移転の費用の大半(総額103億ドルのうち61億ドル)を払うことが決まった。米軍は、日本が建設費を負担してくれるので、グアムに世界有数の総合的な軍事拠点を新設することにしたと考えられる。

とはいえ、米軍の「グアム統合軍事開発計画」は、国防総省のウェブサイトで公開されて1週間後に、サイトから削除されてしまった。「日米ロードマップ」にも、沖縄からグアムへの海兵隊移転は「部隊の一体性を維持するような形で」行うと書いてあり、司令部だけではなく実戦部隊も移転することがうかがえるが、同時に「沖縄に残る米海兵隊の兵力は、司令部、陸上、航空、戦闘支援及び基地支援能力といった海兵空地任務部隊の要素から構成される」とも書いてある。「海兵空地任務部隊」とは、海兵隊の主要機能全体をさす言葉で、曖昧である。

日米は、沖縄海兵隊のうち何がグアムに移転し、何が沖縄に残るかを意図的に曖昧にしておくことで、海兵隊が今後もずっと沖縄に駐留し続け、日本政府は「思いやり予算」などの支出を米軍に出し、財政難の米軍はその金をグアム基地の運用費に流用し、日本政府は1日でも長く続けたかった対米従属の構図を残せるという談合をした疑いがある。「グアム統合軍事開発計画」は、具体的に書きすぎており、沖縄海兵隊が全部グアムに移ることがバレてしまう心配が出てきたので、1週間で削除したのだろう。

その後、宜野湾市関係者が、グアム統合軍事開発計画を根拠に、米国沖縄総領事に「普天間基地の海兵隊ヘリ部隊がグアムに移転する計画ではないか」と尋ねたところ、総領事は「あれは紙切れにすぎない」「正式な決定ではない」と返答し、沖縄海兵隊でグアムに移るのは司令部機能だけだと主張した。だが、その3年後の今年11月20日の環境影響評価の報告書草案でも、グアム統合軍事開発計画の内容は踏襲されており、米軍は沖縄海兵隊の大半をグアムに移す計画を粛々と進めている。伊波市長は先日、グアム統合軍事開発計画について「この3年間、この計画に沿ってすべてが進行している」と指摘した。

宜野湾市は、周辺市町村も誘って、2007年8月にグアム島の米軍基地を視察し、米軍やグアム政府からの聞き取りや資料集めを行った。その結果、以下のことがわかった。

(1)グアムのアンダーセン空軍基地の副司令官に、沖縄の海兵隊航空部隊の施設建設予定地を案内され「65機から70機の海兵隊航空機が来る」と説明を受けた。普天間の常駐機は71機。ほぼ全数がグアムに移る。

(2)グアムのアプラ海軍基地に、今は佐世保に配備されている、強襲揚陸艦エセックス、ドック型揚陸艦ジュノー、ドック型揚陸艦ジャーマンタウン、ドック型揚陸艦フォートマックヘンリーのために、停泊施設が新設される。海兵隊の軍艦は、佐世保からグアムに配置換えになる。有事に備え、揚陸艦の近くに駐留せねばならない海兵隊の戦闘部隊や兵站部隊からなる第31海兵遠征部隊も、グアムに移る可能性が高い。 08年9月には、米国防総省の海軍長官から米議会下院軍事委員会に、グアム軍事計画の報告書「グアムにおける米軍計画の現状」が提出された。その中に、沖縄からグアムに移転する海兵隊の部隊名が示されており、沖縄のほとんどの実戦部隊と、ヘリ部隊など普天間基地の大多数の部隊がグアムに行くことが明らかになった。



外務省が捏造した1万人の幽霊隊員



外務省発表や大手マスコミ報道によると、沖縄には1万8000人の海兵隊員がおり、グアムに移るのはそのうち8000人だけで、グアム移転後も沖縄に1万人残る話になっている。私もその線で書いてきた。しかし、在日米軍の司令部によると、1万8000人というのは「定数」であり、実際にいる数(実数)は1万2500人である。しかも、沖縄タイムスの06年5月17日の記事「グアム移転 人数の『怪』」によると、沖縄にいる海兵隊の家族の人数は8000人で、発表どおり9000人の家族がグアムに移るとなると、残る人数が「マイナス」になってしまう。

沖縄海兵隊の「実数」は、軍人1万2500人、家族8000人の計2万0500人だ。これに対してグアムが受け入れる人数は軍人8000人、家族9000人の計1万7000人である。家族数の「マイナス」に目をつぶり、総数として引き算すると、沖縄に残るのは3500人のみだ。米軍再編の一環としての「省力化」を考えれば、米本土に戻される要員も多いだろうから、沖縄残存人数はもっと減る。今回の宜野湾市の資料は「沖縄に残るとされる海兵隊員定数は、今のところ空(から)定数であり、実働部隊ではない」としている。空定数とは、実際はいないのに、いることになっている人数(幽霊隊員)のことだろう。

外務省などは、1万人の幽霊部員を捏造し、1万人の海兵隊員がずっと沖縄に駐留し続けるのだと、日本の国民や政治家に信じ込ませることに、まんまと成功してきた。沖縄の海兵隊駐留は、日本が対米従属している象徴であり、外務省は「米国に逆らうと大変なことになりますよ」と政治家や産業界を脅し、その一方で、この「1万人継続駐留」を活用して思いやり予算などを政府に継続支出させて米軍を買収し「米国」が何を考えているかという「解釈権」を持ち続けることで、日本の権力構造を掌握してきた。

この捏造された構図の中では、普天間基地は今後もずっと返還されない。辺野古では、すでにキャンプ・シュワブの海兵隊基地内に、海兵隊員用のきれいな宿舎や娯楽施設が何棟も建設されている。海兵隊員は2014年までにグアムに移るのだから、これらは短期間しか使われない。外務省らの詐欺行為によって、巨額の税金が無駄遣いされてしまった。これは、自分らの権力を増強するため公金を無駄使いする犯罪行為である。伊波市長は今年4月、参考人として国会に出たときに「幽霊定数が重視されるのなら(海兵隊グアム移転費として日本が出す)60・9億ドルは無駄金になりかねません」と言っている。(○伊波参考人 2009年4月8日)http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/171/0005/17104080005007a.html

(最終的に、海兵隊が沖縄から出ていった後、キャンプ・シュワブは自衛隊の基地となり、辺野古の宿舎は自衛隊が使うことになるのかもしれない)









歓迎されない橋下関空容認発言



沖縄海兵隊は、1万人の幽霊定員を残し、日本から巨額の金をもらいつつ、着々と沖縄からグアムに移転している。しかし表向きは、1万人残存を前提に、辺野古に新しい基地を作る話が続いており、沖縄の人々は反対の声を強めている。

反対の声を聞いて、大阪の橋下徹知事が11月30日に「海兵隊が関西空港に移ってくることを容認する」という趣旨の発言をしたが、実は橋下知事はその2週間前にも記者団に同様のことを言っており、その発言は国会でも問題になったが、マスコミはこれらの出来事をまったく無視した。11月30日の会見はフリーのジャーナリストが会見の一部始終をユーチューブで公開し、それが人々の話題になったので、仕方なくマスコミも橋下の発言を報道したのだという。

マスコミを、外務省など官僚機構が操作するプロパガンダ機能としてとらえると、マスコミが橋下発言を無視する理由が見えてくる。米軍は沖縄海兵隊のほとんどをグアムに移転するのだから、普天間基地の代替施設は日本に必要ない。「普天間の移転先を探さねば」という話は、具体化してはならない。橋下がよけいな気を回し、本当に海兵隊を関西空港に移す話が具体化してしまうと、詐欺構造が暴露しかねない。だから、橋下の発言は歓迎されず、無視されたのだろう。

海兵隊の移転先として硫黄島の名前が挙がったり、嘉手納基地と統合する構想が出たりしているが、同様の理由から、いずれも話として出るだけで、それ以上のものにはなりそうもない。



日本の将来を決する天王山に



「海兵隊はグアムに全移転しようとしている」という、宜野湾市長の指摘も、マスコミでは報じられなかった。だが、11月末に伊波市長がその件を与党議員に説明した後、12月に入って鳩山首相が「そろそろ普天間問題に日本としての決着をつけねばならない」「グアムへの全移転も検討対象だ」と発言し、事態が一気に流動化した。鳩山がグアム全移転を言い出したことが、伊波市長の指摘と関係あるのかどうかわからないが、議論の落としどころは「グアム全移転」で、それに対する反対意見を一つずつガス抜きしていくような展開が始まっている。

そもそも「グアム全移転」は、日本側が提案することではなく、すでに米国がやっていることなのだが、世の中はマスコミ報道を「事実」と考えて動いており、海兵隊1万人沖縄残留という捏造話が、国民の頭の中で「事実」になっている。マスコミがプロパガンダ機能だと国民に気づかせることが首相にもできないほど、この機能が持つ力が強い以上、鳩山はグアム全移転を「米国に提案する」という形式をとらざるを得ない。

鳩山は「(普天間移設に関する)政府の考え方をまとめるのが最初で、必要、機会があれば(米大統領と会談したい)」と言っているが、まさに必要なのは、米国と再交渉することではなく、政府の考え方をまとめ、海兵隊員水増しの捏造をやめることである。外務省など官僚機構が了承すれば、日本は「海兵隊は2014年までにグアムに全移転してほしい」という方針で一致し、米軍がすでに進めている移転計画を、ようやく日本も共有することになる。海兵隊グアム全移転が政府方針になると、海兵隊1万人沖縄残留という捏造話に基づく対米従属の構造が崩れ、外務省など官僚機構は力を失っていく。だから外務省とその傘下の勢力は、全力で抵抗している。

事態は、日本の将来を決する「天王山」的な戦いとなってきた。自民党は、民主党政権を批判すべく、今こそとばかり、党内に大号令をかけた。自民党は、官僚依存・対米従属の旧方針を捨て、保守政党としての新たな方向をめざすべきなのだが、依然として官僚の下僕役しか演じないのは愚かである。政権内では、北沢防衛大臣がグアムを訪問した。海兵隊のグアム全移転が可能かどうかを視察しに行ったのだろうが、向こうの米軍などに恫喝されたらしく、グアムにいる間に「グアム全移転はダメだ。日米合意からはずれる」と表明した。これに対して社民党の議員が「ちょっと行って、ちょろっと見て『ダメ』って結論が出るのか」と非難するなど、連立与党内も乱闘になっている。

日本政府が「グアム全移転」でまとまった場合、日本が米軍の移転費用を2014年以降も出し続けるかどうかが、日米の問題となる。米軍がグアム島を大軍事基地に仕立てる計画について、米軍は当初、総額107億ドルで完成できる(うち60・9億ドルを日本が出す)と言っていたが、これにはグアムで軍関係の人員や車両が増えることによる道路や上下水道、電力網などの補強工事にかかる61億ドルが含まれていない。米政府の会計検査院(GAO)は今年7月、この件で米軍を批判する報告書を発表した。

米軍は予算オーバーの常習犯で、事業が予算を大幅に超過するのは30年前からの常態だ。米軍は、超過分は日本に出させようと考えていただろうが、鳩山政権は対米従属からの自立を掲げており、財政難を理由に、金を出し渋るだろう。今回の北沢防衛相のグアム訪問時に、グアムの知事が沖縄からの海兵隊移転に初めて反対を表明したが、この反対表明の裏には、日本にグアムのインフラ整備費も出してほしいという要求があるのだろう。

米政府も財政難なので、海兵隊グアム移転にかかる費用の増加分を日本が出さない場合、海兵隊がグアムに移らず、普天間に居座る可能性もある。だが、そうなると海兵隊の居座りに対する沖縄県民の反対も強くなり、鳩山政権は、金を出さないで海兵隊に撤退を要求するという、フィリピンなど世界各国の政府がやってきた「ふつうの国」の要求をするかもしれない。最終的に、米軍は日本らか追加の金をもらえずに出て行かざるを得ず、この場合はグアム移転の要員数が縮小され、米本土に戻る人数を増やすことで対応すると思われる。「政府や議会が一度決議するだけで米軍を出て行かせられる」という、日本人が「そんなことできるわけない」と思い込まされてきた世界の常識が、ようやく日本でも実行されることになる。

沖縄では、来年の沖縄県知事選で、宜野湾市の伊波市長に出馬してもらおうとする動きがあると聞いた。もし伊波市長が沖縄県知事になったら、沖縄県は米軍駐留をなるべく早く終わらせようとする姿勢に転換し、東京の政府も無視できなくなる。それは、沖縄が米軍基地の島を脱却することにつながっていくのではないか。



<参考資料>

大前研一「ニュースの視点」〕

米軍普天間飛行場問題は解決できるのか?

~鳩山首相の選択肢は2つに1つ~



海兵隊=攻撃力の保持、という真実に目を向ける



鳩山由紀夫首相は社民党の福島瑞穂党首、国民新党の亀井静香代表と11日夜に会談したと発表しました。その中で沖縄県の米軍普天間飛行場移転問題などで意見交換を図り、移設先についてあらゆる可能性を含めて3党で協議しながら迅速に結論を見出すことで一致したとのことです。

また米国務省のキャンベル国務次官補らと米軍普天間基地の移設問題を巡り意見交換した訪米中の国民新党の下地幹郎政調会長によると、米側は18日までの決断を求め、現行計画を履行できなければ関連予算を他に転用すると警告したとのことです。

米軍普天間飛行場問題もここまで揉めてしまうと、最終的にはもう1つの新しいオプションが出てくるかも知れません。それは民主党がマニフェストで掲げていた通り「グアムに移転してもらう」というオプションです。そもそも、なぜこの問題はこれほどまでに揉めてしまうのか?というと、歴史的に自民党が「嘘つき」で国民に真実を語ってこなかったからです。日本は憲法上、攻撃力を保持せず、防衛力のみ許されています。だから「自衛隊」であり「防衛省」という名称になっているわけです。ただ防衛力だけでは、万一近隣の中国や北朝鮮で有事が起こったときに対応できません。だから米軍・海兵隊に駐屯してもらっているのです。日本が保持していない攻撃力を肩代わりする存在、それが米軍・海兵隊です。普天間基地での軍事訓練の騒音や飛行場での墜落事故の危険性などが問題視されていますが、「防衛」のための訓練ではなく「攻撃」のための訓練をしているので、ある程度は致し方ないことです。

橋下大阪府知事は、普天間飛行場の移設について関西国際空港での受け入れの可能性について言及したとのことですが、これは本質を外していると思います。攻撃力を保持しなければ意味がないのですから、移設するならば海兵隊という軍事力について「ワンセット」全部必要だからです。船・タンク・ヘリコプター部隊など、すべての海兵隊が一緒に移設されなければ意味がないのです。

本来ならば保持していないはずの「攻撃力」について自民党がずっと嘘をついてきたために、社民党の福島党首などが正論を述べるだけで正しく聞こえてしまうのだと思います。



鳩山首相が取るべき選択肢は、2つに1つ



では鳩山首相としては、この問題にどのように対処するべきでしょうか?

私ならば「嘘つき」はやめて、海兵隊についての真実を正直に国民に話します。

・憲法上、攻撃されたときだけ守るという「自衛・防衛」しか許されていないが

・それでも万一の有事のときのために「攻撃力」を保持したいと思う

・この矛盾のためにあるのが、沖縄に駐屯している米軍の海兵隊である



その上で、国民投票という形で日本国民に問うでしょう。こうした矛盾を認めても、米軍・海兵隊の攻撃力を保持するべきか、あるいは憲法に従ってこれを認めるべきではないか。もしこの答えが「YES」ならば、日本国民全員で「迷惑をかけて申し訳

ないけれども、よろしくお願いします」と、沖縄の人にお願いをするということになるでしょう。逆に答えが「NO」ならば、海兵隊という攻撃力そのものが必要ないということですから、「どうぞグアムに帰ってください」ということになるでしょう。

過去数十年の歴史を振り返ると、日本の防衛のため、あるいは攻撃された際の自衛のために沖縄の海兵隊が動いたことはありません。

海兵隊がグアムに駐屯するというのも現実的にあり得るオプションだと言えると思います。またそれでも万一の有事が起こった時には、日米安保条約に従い、米軍・海兵隊に対する支援要請についてその度に「交渉」をするということになるでしょう。

では、果たして米国側はこのような日本の意見を受け入れる可能性があるか?というと、私は「お金次第」で大いにあると思います。

沖縄からの移転が現実になった場合、当然のことながら米国は移転費用の支払いを求めてくるでしょう。

さらに、「一度移設したら、後から有事の際に海兵隊に来てくれと頼まれても、その時には費用は高くつくぞ」という類のことを言ってくるでしょう。

しかし逆に言えば、こうした費用について日本が「払う」と答えれば、米国としてもそれ以上何も言えないはずです。

鳩山首相の選択肢は2つに1つだと思います。国民の意見を聞き、「沖縄に日本国民全員でお願いをする」もしくは「米国に帰ってもらう」のいずれかを選ぶだけです。

今、この問題はこれまで自民党が嘘をついてきた「ツケ」を支払わされているのです。このまま嘘つきの議論を続けても埒が明きません。それを根本から払拭することが第一歩であり、大切なことだと私は思います。

鳩山首相や岡田外相を見ていると、少し「学生」のような青臭い議論をすることがあると私は感じます。

「日本に攻撃力は必要ないから、米軍には出て行ってもらうのは当然」という意見についても、それだけを学生のように正論として主張していても「現実的な解決」には結びつきません。

この点について改めて考えてもらいたいと思います。また「年を越す」というタイミングなので「1度米軍もグアムに戻る」という議論も、案外受け入れられる可能性が高いのではないかと私は見ています。

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