大変な事態が進行しているようである。愛知県豊橋市の中高年の女性からも政府の原子力発電所の事故発表はどうも信用できないという声が上がり始めている。

親戚や知人からいろいろな生の情報がもたらされているせいだろう。

 被災者、退避者たちが、避難所から避難所へ、そして、親戚の家に引き取られている。特に、福島県民は、原発事故の退避(避難)で、何も発言できないまま、福島第一原発から、10キロ圏の双葉町は、埼玉県の加須市に移され、大熊町は、会津若松市に移されている。楢葉町と、浪江町、広野町も、行政機能ともども、仮設住宅の建設とともに、どんどん、散り散りバラバラになりつつある。

 そんななか、菅政権の今回の福島原発の対応に対して重大な疑惑が浮かび上がっている。今回は。その一つを紹介する。

  政府は国民の生命と健康を守るために、万が一にも被害が発生しないように行動する責任を負っていることを肝に銘じて行動してもらいたい。

 愛知県を元気にして被災者、被災地を助けるんだという気概が今、求められている。

*FACT 2011年 4月号より

「菅の大罪「福島原発」判断ミス」

 東電は早くから「スリーマイル以上、チェルノブイリ未満」と報告していたが、100キロ圏内を見殺しにしたのか。

 千年に一度と言われるマグニチュード9.0の「東北関東大震災」は、深く大きな傷を日本列島に残した。しかしこれを「天災」と諦めることはできない。地震、津波の被害は天災と言えるかもしれないが、東京電力福島第一原発1~4号機の爆発または損傷と放射能の拡散は「人災」以外の何物でもない。菅直人首相と官邸スタッフ、そして民主党内閣は、東電から再三の報告があったにもかかわらず、実態を隠蔽し、住民の避難を遅らせて、最小限に防ぎえた被害を拡大させた疑いが浮上している。

100キロ圏内は避難必要

 地震発生から3日目、計画停電初日の3月14日午後、電力ウォッチャーが声を潜めてささやいた。

 「チェルノブイリまでは行かないだろうが、スリーマイル島以上に深刻な状態になっているんだ」

 言うまでもなく、前者は1986年4月26日、旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原発で起きた事故で、黒鉛炉が炉心溶融(メルトダウン)の後、爆発した。この結果、広島に投下された原爆約500発分の放射性物質が、旧ソ連領ばかりか全北半球に拡散した。被曝などこの事故に原因するとされる死者は、数百人から数十万人までと諸説あるが、史上最悪の原発事故と言われる。

 一方、後者はこれに先立つこと7年前の79年3月28日、米国ペンシルベニア州スリーマイル島原発で発生した事故である。イオン交換樹脂の再生作業中、安全弁が開きっぱなしになり、500トンの冷却水が流出した。このため周辺住民は大規模な避難を余儀なくされた。

 国際原子力機関(IAEA)の8段階の深刻度レベルで、チェルノブイリが7、スリーマイルが5だから、日本が当初、福島を4と発表したのは、明らかに過小だった。

 このウォッチャーが、原発のプロとも言える電力会社OBに聞いたのは12日である。同日午後3時36分、福島第一原発1号機で水素爆発が発生し、建屋が吹っ飛び、東電社員2人と協力企業従業員2人が負傷。炉心溶融の可能性が高いと報じられたからだ。大震災発生以来、日本が、そして世界が危惧していた被災地の原発事故が遂に発生して、その事態が何を意味するかを聞いたのだが、予想以上に深刻な事態(Severe Accident原子力関係者の用語では「過酷事故」と呼ぶ)になっているとの回答が返ってきたのだという。

 IAEAの尺度で7と5の間、つまり6とは、要するに、大規模な住民避難以上の事態は不可避だが、数百人から数十万人という規模の死者には至らない、という意味になる。

 背中が凍りついた。やっぱり、そういうことか。一瞬、13日に計画停電を発表した枝野幸男官房長官の無表情と、対照的になにかに追い立てられるような東電の会見が頭の中で交叉した ― 官邸と東電は連携できているのだろうか。

 ちょうどその時、携帯が鳴った。15日に会食の約束をしていた東電に近い関係者からである。耳にしたばかりの「スリーマイル島以上、チェルノブイリ未満」のココロを聞いた。驚いたことに、この関係者はあっさり事態を認めた。

「その通りです。福島第一原発は極めて危険です。すでに制御不能状態にあります。周辺の住民はすぐに100キロ圏内立ち入り禁止にしなければならないような状態です」

 耳を疑った。菅首相や枝野官房長官はそんな危険な状態であることを一言でも漏らしたろうか。100キロ圏内の住民に避難勧告をしていただろうか。

「その情報は官邸にあがっているんですか?」

「過去に原発事故を起こし、糾弾を受けた東電は、データを隠すことなどできないガラス張りになっています。情報はすべて官邸にあげています」

 帰宅の道すがら、旧知の民主党閣僚、議員にメールを打ちまくった。

「真偽はとにかく、福島原発はスリーマイル島以上との情報あり。外れなら幸い、大規模な避難を実施しなければ民主党は償いきれぬ罪を負います」

「福島原発事故の真相を一刻も早く明らかにし、直ちに避難を進めないと民主党は国賊、未来永劫償っても償いきれぬ罪を負う。信頼できる消息筋からの情報」民主党閣僚、議員からは何の返信もなかった。自宅でテレビをつけても、どの番組でも福島第一原発がすでにコントロール不能の深刻な状態にある、という報道はなかった。

 深夜に何かあったらいけないと思い、節電の呼びかけもものかは、テレビをつけっぱなしで寝ていたところ、15日午前8時過ぎ、NHKのアナウンサーが深刻な表情で「福島第一原発2号機から午前6時14分に爆発音がした」と伝えた。周辺に最大400ミリシーベルトという高濃度の放射性物質が漏れ出したと指摘され、4号機の火災や2号機で格納容器が破損した可能性など、一気に事態が拡大した。政府は避難を指示していた範囲を周辺20キロから10キロ拡大して、30キロ圏内の住民に屋内退避を呼び掛けた。

 まさにスリーマイルを超えたのだ。運転停止中だった4~6号機の使用済み核燃料も貯蔵プールの温度が上昇、原発から遠く離れている東京、横浜でも通常以上の放射線値が記録される。在日中国人は一時帰国のために航空券を買い漁り、15日以降の中国路線は連日満席となった。

東電本社で怒鳴り散らす

 

 菅首相は号外が発行される前後の15日午前、東電本社(東京・内幸町)を訪ね、福島第一原発の爆発事故の連絡が遅れたと怒鳴りちらした。「一体どうなっているんだ。テレビで爆発が放映されているのに、首相官邸には1時間くらい連絡がなかった」

 そして新聞やテレビの記者を前に「東電の撤退などあり得ない。覚悟を決めてほしい。撤退したときには東電は100%つぶれる」と、大見得を切ったという。東電に近い関係者の情報が事実なら、菅首相は福島第一原発が制御不能な状態との報告を受けていながら、何の措置を取ろうともせず、事故が起きてから東電本社に乗り込んでカメラの前でパフォーマンスを演じたことになる。

 これが「政治主導」なのか。

「官邸には発表するタイミングもあることでしょうから、隠蔽という表現が適切かどうかわかりません。しかし、東電は計画停電にせよ、避難にせよ、すべて官邸におうかがいを立てるだけです。原発事故という国を揺るがす大事故すら、官邸はショー化して自らの人気取りにしようとしているとしか思えません」

 東電に近い関係者は、力なくこう悟った。福島第一原発の爆発が近いという重大情報を入手していながら、これを故意、もしくは無作為に放置して、避難命令を遅らせた菅内閣、官邸は国民を見殺しにしたに等しい。不幸にして被曝による犠牲者が出た場合、千古の罪人として菅首相は償っても償いきれまい。東電も対処を誤った責任は免れないが、政府はすべてを東電に押しつけて済まそうとしている。世界を実撼させた原発事故に彼らがどんな報道管制を敷いたのか、復興支援の一方で激しく追求しなければならない。

  3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震により、多くの命が失われことに対し、深くお悔やみを申し上げますとともに、心よりお見舞い申し上げます。

一人でも多くの方の命が救われるよう、併せて被災に遭われた方々が元の生活を取り戻せるよう、一日も早い復旧復興をお祈り申し上げます。
                                                     山本 正樹
     
  <東日本大震災の安否確認・緊急募金・ライフラインなどの情報>

◆【総合】毎日jp【安否・ライフライン・交通リンク集】
http://mainichi.jp/select/jiken/graph/20110311lifeline/

◆【総合】Yahoo!地震・津波災害に関する情報
http://weather.yahoo.co.jp/weather/2011sanrikuoki_eq.html

◆最新の災害情報 – Yahoo!災害情報
http://rd.yahoo.co.jp/media/rescure/2011sanrikuoki_eq1/?http://rescue.yahoo.co.jp/

◆鉄道運行情報 – ナビタイム
http://www.navitime.co.jp/train/

◆道路情報
http://www.jartic.or.jp/index.html

◆飛行機運行情報
JAL http://www.jal.co.jp/
ANA http://www.ana.co.jp/

◆消息情報(Person Finder)
http://japan.person-finder.appspot.com/?lang=ja

◆風向きの情報- 気象庁 | アメダス実況(風向・風速)
http://tenki.jp/amedas/?amedas_type=wind

◆避難所情報 – Google
http://www.google.com/intl/ja/crisisresponse/japanquake2011_shelter.html

~いっそう厳しさを増す日本の政治と経済への視線~

*ダイモンドオンライン3月14日号より

 地震大国・日本――。大津波を引き起こし東北沿岸に甚大な被害をもたらした東日本巨大地震は、そのリスクを世界にあらためて認識させた。
 日本時間3月11日金曜日午後の地震発生以降、世界の主要メディアは先を争って緊急特番を放送。東日本大震災は、それまでヘッドラインを独占していた中東・北アフリカの政情不安関連のニュースに代わって、連日トップで大きく報じられ、さらにそのニュース映像がユーチューブなどの動画投稿サイトを通じて世界中にばら撒かれた。

 東京電力福島第1原子力発電所1号機のメルトダウン(炉心溶融)の可能性が日本国内で伝えられた12日、特に同1号機建屋で爆発があった夕方以降は、海外メディアの報道の中心はこの問題に大きくシフト。CNNなど複数のメディアでは、専門家を招いて、旧ソ連時代の1986年に起きた史上最悪の原発事故であるチェルノブイリ原発事故との比較検証を繰り返し行っている。
 ワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズなど米有力紙の電子版のトップページも、福島原発事故関連の記事で埋め尽くされた。日本企業の原発の海外輸出戦略にネガティブな影響を与えるのは必定だ。
 今回の巨大地震に際しては、一部の速報メディアが当初、大きな地震が東京を襲ったことを急ぎ報じ、それがソーシャルメディアで拡散されたこともあってか、東京が甚大な被害を受けたとの誤解も国外の一部では飛び交ったようだ。ダイヤモンド・オンライン編集部にも地震発生からしばらくすると、海外の複数の寄稿者から、安否確認とともに、東京の被害状況ばかりを尋ねるメールが多数飛び込んだ。しかし、すぐさま震源地などに関する詳細な情報が海外に伝わったことで、市場の大きな混乱にはつながらなかったようだ。
 海外メディアはその後も地震・津波による被害状況や原発事故関連のニュースを繰り返し報じているが、それとともに、日本経済やマーケットへの影響などについて、震災報道に追われる日本のメディア以上に、さまざまな分析報道を浴びせかけている。
 投資家向けの有力メディアとして知られるブルームバーグは、リーマンショックを予測したことで知られるニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ教授とのインタビューを掲載。「日本にとって、財政赤字削減に苦しんでいる最悪の時期に巨大地震が発生した」との同教授の見方を伝えている。

 ルービニ教授は、資産が破壊されたことを考えれば、株式市場にも確実にネガティブであり、消費者心理にも大きな(マイナスの)影響を与えると語ったほか、景気回復のために大規模な景気刺激策が必要との見方を示唆した。

 一方、ロイター通信では、企業や投資家が外国資産を売却し資金を日本国内に還流させるリパトリエーションが起こるとの観測から円高の進展を予測する識者の声を複数掲載している。
 確かに、円は1995年に発生した阪神・淡路大震災後の3カ月間で対ドルで約20%上昇している。米著名投資家デニス・ガートマン氏は、円が数日から数週間以内に1ドル=75円に上昇する可能性もあるとロイター通信に語っている。実際、11日の円相場は地震発生直後こそ円安に振れたが、そのあとは主要通貨すべてに対して上昇している。


 もっとも、円高がガートマン氏の予想レベルまでさらに一段と進むかは、海外識者の見方も分かれている。そもそも日米貿易戦争の真っ最中だった1990年代半ば当時とは、政治的な背景事情が違う。むしろ、企業の生産拠点へのダメージが明らかになり、操業停止が長期化したりすれば、日本経済の減速懸念が高まり、逆に円安に振れやすくなるとの論調も多い。とはいえ、たとえ円安に振れたとしても、原発事故などに伴い電力供給不安まで現実化している経済活動の混乱状態を考えれば、株高の要因は見出しにくい。すでに海外ファンドの投機的な動きなどを背景に、先週末には先物も下落している。

 また、日本経済そのものの行く末についても、前述のルービニ教授だけでなく、今回の大震災を受けて、いっそう厳しい論調が増えている。

 英エコノミスト誌やフィナンシャル・タイムズ(FT)などの英国の有力メディアは、東北地方の生産額が日本のGDPに占める割合は8%程度であり、東日本大震災に伴う経済的損失は関西の巨大経済圏を直撃した阪神・淡路大震災に比べて小さいとの見方を示しているが、日本経済の中長期の見通しについてはまったく楽観していない。

 FTは3月11日の記事で、地震が経済に与える影響は当初想定よりも小さくなるものだとしながらも、日本経済が戦後最悪のリセッションから抜け出せるかどうかについて消費者や投資家の間に存在する疑いは、今回の大震災によって、さらに増すだろうと指摘している。
 FTも予想するように、短期的には首都圏を中心に買いだめ現象が広がることによる消費押し上げ効果や、復興に向けた建設需要の高まりが見込まれるが、いずれも一過性のものにすぎない。むしろ、復興費用の支出によって、日本の財政健全化の道のりがいっそう険しくなったことは間違いない。

 この未曽有の危機に際して、菅政権はリーダーシップを発揮できるのか?
海外のメディアはこの点にも大きく注目している。


 英ガーディアン紙の電子版は、「日本はリーダーシップが必要だ。しかしナオト・カンに実行できるのか」と題したコラムを掲載。今回の大震災前から日本を覆う問題――政治的脆弱性やリーダーシップの不在――に対して警鐘を鳴らしている。

「戦後65年間で最も厳しい危機」と菅首相が形容した未曾有の国難に際して、海外から支援の申し入れは相次ぐ。しかしそれとは別に、日本の政治と経済を見つめる海外の視線は、いっそう厳しく険しいものになりつつある。
(ダイヤモンド・オンライン編集部)

政治を根本から変えなければならない緊急の時を迎えている。今こそ、政治を庶民(市民、県民、国民)の手に取り戻さなければいけない。

                                                                                                                       2011年 2月11日
                                     
                     「地方から日本の政治の閉塞状況を打ち破る時代が来た!」

 2009年のある意味、歴史的「政権交代」によって民主党政権が誕生したが、ダッチロールを繰り返す民主党の政権運営によって、多くの国民は、深い失望感に包まれている。また、野党になった自民党も党再生の道筋を示せず、国民の期待を裏切っている残念な状況である。
 そんななか、注目すべきトリプル選挙が、この2月に愛知県で繰り拡げられた。
結果は、既存政党の惨敗であり、地域政党の大勝利であった。
 おそらく、これから、しばらく、地域政党ブームが続くのであろう。この動きが、単なる一過性のブームとして中央の政界再編等に巻き込まれる形で終わるのか、本当の意味で草の根の地域政党のネットワークとしてこれから、本当に日本の政治を変えていくのか、注目すべきであろう。
 既存政党が機能不全に陥っている現在、日本の政治の閉塞状況を打開するめにも、真に地方の時代を切り拓くためにも実りのある運動に育てていく気持ちが大切だと思われる。
 しかしながら、地域政党では、現在の制度では、国を動かすことは、できない。国会議員を出していくためには、先ずは5名以上の現職国会議員を集めて政党要件を満たすことが必須条件であると言っても過言ではない。しかし現在の地域政党には、まだ自力で国会議員を出す力がない。また挑戦しようにも地方では自民党や民主党などの既成政党の力が強く、まだ、簡単には動ける状況ではない。さらに新党大地の如く、ブロック政党も考えられるが、衆議院選挙のブロック比例区などで戦うにも政党要件が無いため、ブロック定員数の2割以上の候補者を立てなければならない。

  大きく地域政党をネットワーク化し、まとめ上げることのできる有意な人材が出てくるかどうかが、今後の大きなポイントだろう。

 *東愛知新聞(2月7日版)より
                    愛知県知事選に大村氏、圧勝で初当選


 任期満了に伴う県知事選が6日投開票され、減税日本推薦で無所属の前衆院議員・大村秀章氏(50)が初当選を果たした。圧勝だった。大村氏は、任期途中で名古屋市長を辞任して同市長選に再選出馬した河村たかし氏とタッグを組んで選挙戦に挑み、大票田・名古屋での河村人気に支えられて4人の対立候補を圧倒した。大村氏は「中京都」の創設や河村氏とともに減税を訴えて、戦いを終始リード。有利な選挙を展開した。終盤には、自民党県連推薦の元内閣府参事官補佐・重徳和彦(40)、また民主党など与党が推薦した元総務省官房審議官・御園慎一郎(57)両氏の追撃を受けたが、政権与党への逆風や自民勢力の分裂などに助けられ、勝利を手にした。投票率は52.52%だった。
(本多亮)


 現職の神田真秋知事が4選出馬を辞退したことから、今回の知事選には大村、重徳、御園の3氏とみんなの党の医師・薬師寺道代(46)、共産党推薦の医師・土井敏彦(64)の新人5人が出馬した。
 名古屋市長選と同市議会の解散の是非を問う住民投票との「トリプル投票」で行われることが最大の特長となった知事選だった。
 大村氏は河村氏との「ムラ・ムラ連合」を、また御園氏は衆院議員を辞任して同市長選に出馬した石田芳弘氏、さらに土井氏は元参院議員の八田ひろ子氏とそれぞれタッグを組んで、市長選と住民投票との「トリプル投票選」に臨んだ。
 大村氏は、減税や議員報酬半減を訴える名古屋市長選の河村氏と二人三脚で街頭演説や自転車での街宣活動を展開。河村人気に支えられて名古屋での支持をまとめると同時に地元の西三河地域の支持も固めて圧勝した。
 重徳、御園の両氏は陣営の分裂・股裂きに苦しんだ。
 重徳氏は自民党県連の推薦を得たものの、大村氏が元々は自民党代議士で県連会長を務めた経緯もあり、自民勢力の股裂き状態の中で戦いに挑むことを余儀なくされた。自民党所属の国会議員らが重徳氏ではなく大村氏支援に愛知入りする場面も多く見られた。
 御園氏は民主の支援を受けたものの、名古屋市長選の河村氏が元々は民主出身だったことから民主支持層の分裂にあえいだ。選挙中、岡田克也・民主党幹事長や片山善博・総務相、蓮舫・行政刷新相らの閣僚の支援を得たものの、連合愛知の足並みもそろわず敗退した。
 薬師寺氏は昨年夏の参院選に続いてみんなの党の公認候補として出馬したが、昨夏に見られた同党の勢いはなかった。
 土井氏は無党派層への支持の広がりがなかった。
 知事選 最終得票数
 大村 秀章 無・新   1,502,571
 重徳 和彦 無・新     546,610
 御園慎一郎 無・新    487,896
 薬師寺道代 みんな・新  324,222
 土井 敏彦 無・新     141,320
          有効投票数   3,002,619  
                                                               (引用終わり)

日下公人氏と共著を出版している三橋貴明氏の論説です。
既存のマスコミ報道が混乱するなか、非常にわかりやすい指摘です。前回のレポートでも 指摘したようにTPPは、米国の経済戦略の一つと考えるべきでしょう
                                                                                               2011年2月
                                         TPPと「平成の開国」

 菅直人首相は、1月24日の施政方針演説において、TPPを「平成の開国」と位置づけ、国会での議論を呼びかけた。
 『2010年1月24日 毎日新聞「菅首相:施政方針演説 税・TPP協議呼びかけ「責任、与野党負う」--通常国会開会」
 第177通常国会が24日召集された。会期は6月22日までの150日間。菅直人首相は24日午後、衆参両院本会議で施政方針演説を行い、消費税を含む税と社会保障の一体改革について「一政治家、一政党の代表として与野党で協議することを提案する」と宣言。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)についても国会での議論を呼びかける。演説の最後でも「国民は、先送りせず、結論を出すことを求めている。今度こそ、熟議の国会に」と訴え、「ねじれ国会」を武器に対決姿勢を強める野党に責任の共有を求める。
 首相は昨年6月の就任後、国会での所信表明演説は2回行っているが、年初の施政方針演説は初めて。演説では国づくりの三つの理念として、「平成の開国」「最小不幸社会の実現」「不条理をただす政治」を掲げる。(中略)
 平成の開国では、貿易・投資の自由化を経済成長につなげることをうたい、米豪などがアジア太平洋地域の貿易自由化の枠組みづくりを目指すTPPに関し「今年6月をめどに、交渉参加について結論を出す」と参加に前向きな姿勢を示す。』
 今ひとつ菅首相の真意が分からないのだが、江戸時代の鎖国に終止符を打った「開国」、すなわち「日米和親条約」や「日米修好通商条約」などを各国と締結したのは、明治政府ではなく江戸幕府である。しかも、本格的な「日本の開国」を決定付けた日米修好通商条約は、治外法権や完全自主権の放棄など、日本にとって著しく不利な内容を含む「不平等条約」であった。
 治外法権とは、たとえ国内であっても、自国の権利が外国人に対して完全には及ばないという、外国から見た「特権」である。すなわち、日本国内であっても、日本の司法の手を外国人に及ぼすことができない状況なのだ。より分かりやすく書くと、外国人が日本国内で罪を犯しても、日本の法律では裁けないのである。
 そういえば、2010年9月7日に発生した「尖閣諸島中国漁船衝突事件」は、「日本国内で中国人が犯した犯罪を、日本の法律で裁けない」という結末を迎えた。全く笑い事ではないが、あれこそがまさに「治外法権」である。
 さらに、関税自主権の放棄とは、国内産業の保護を目的として、輸入製品に対して税金を「課せなくなる」という話である。すなわち、例えば日本の農業の生産性が相対的に低いからといって、農産物に高関税を課すことは許されない。外国産の製品やサービスについて、自国の都合で関税を設定することができなくなるわけだ。
何ということだろう。
 尖閣問題の顛末(中国人の治外法権)といい、TPPといい、菅直人政権の進める「平成の開国」とやらは、まさしく江戸幕府が締結した諸外国との不平等条約そのものだ。冗談でも何でもなく、「平成の開国(治外法権や関税自主権の放棄)」なのである。
 江戸幕府から政権を奪取した明治政府にとっては、不平等条約の撤廃こそが国家的な目標であり続けた。明治日本は日清戦争、日露戦争と、数多の戦争を経て、ようやく不平等条約の撤廃を実現したわけだ。
 ところが、民主党あるいは菅政権は、「自主的に」中国人への治外法権を認め、「環太平洋諸国」を相手に、関税自主権の放棄を促進している。皮肉でも何でもなく、現在の菅直人政権の政策は、まさしく「平成の開国」である。すなわち、外国人が治外法権を獲得し、日本が関税の自主権を失う日米修好通商条約の再現だ。

 そもそも、日本がTPPを批准することによるメリットとは、一体何なのだろうか。

「平成の開国」や「TPPに加盟しなければ日本は完全に世界の孤児になる!」といった、フレーズやイメージはどうでもいい。「経済的なメリット」を数値データに基づき、検討する必要があると思うわけだ。
 TPP諸国のGDPを比較すると、アメリカと日本の二カ国で九割を超える。すなわち、TPPなどとは言っても、日米両国にとっては、「互いの国」以外に、まともに相手にできる市場は存在しないのである。
 アメリカが日本に「何を売りたいか?」については次回に回すとして、まずは「日本がアメリカに売れるもの」について考えてみよう。はっきり言って、TPPにより関税が撤廃され、アメリカ市場における日本企業の売上が増える製品とは、耐久消費財しかない。具体的に書くと、自動車と家電である。
 アメリカ市場、特に個人消費の市場は、名目値で10兆ドル近い。文句なしで、世界最大の「需要頭目」である。何しろ、日本の全GDPの二倍である。
 この世界最大の市場において、日系企業が自動車や家電を販売を拡大したい。現在、アメリカは工業製品への関税を維持している(ちなみに、日本の工業製品に対する関税はほぼゼロ)。関税率を下げてもらうか、あるいは撤廃してもらえれば、日本からアメリカへの耐久消費財の輸出が増える。だからこそのTPPだ。
 上記の理屈は、「印象論」ではあるものの、非常に分かりやすい。とはいえ、この種のイメージに基づく論調は、多くのケースで的外れか、あるいは悪質な「情報操作」である可能性が高い。上記のような解説をしたいのであれば、本来は全てを「数値データ」に基づき語らなければならないのだ。なぜならば、経済とは「イメージ」や「フレーズ」ではないためだ。経済とは、数字である。
そもそも、現在の日本の家電メーカーや自動車メーカーが、アメリカ市場で苦戦しているのは、ウォン安で勢いに乗る韓国企業の攻勢を受けているためだ。
 08年の危機において、韓国のウォンは「暴落」に至り、ほとんど通貨危機直前の状態に至った。ところが、韓国にとっては大変幸運なことに、08年2月に大統領に就任した李明博氏は、元大企業の経営者ということもあり、まさに「これしかない」という対策を立て続けに打ってきた。
 李政権は、まずは近隣の三大国(日本、アメリカ、中国)と通貨スワップを結び、通貨危機に対するセーフティネットを構築した。さらに、ウォン安で競争力が高まった韓国大手輸出企業への支援(法人税引き下げなど)を拡大し、輸出依存で韓国経済の立ち直りを図ったのである。

 07年には1円=7.5ウォンだった円ウォン為替レートが、08年の危機以降、一気に高騰した(=韓国ウォンが暴落した)。2010年中盤以降は、1円=13ウォン台で高止まりしてしまっている。すなわち、ウォンの価値は07年と比較し、対円で二分の一に近い水準にまで落ち込んでしまったのである。
 対米輸出で考えれば、韓国製品は日本製品と比べ、半額セールを常時行っているようなものだ。韓国企業のアメリカ市場における競争力が、一気に高まって当たり前である。
 為替レートの問題である以上、TPPでアメリカの工業製品に対する関税が撤廃されたとして、果たして日本企業がどれほど対韓国企業で競争力を高められるか、疑問視せざるを得ない。なぜならば、アメリカの家電製品に対する関税率は5%、自動車(トラック除く)は2.5%に過ぎないのだ。TPPにより、数パーセント程度の関税がなくなったところで、そんなものは更なる円高(もしくはウォン安)で相殺されてしまう。
 また、そもそも日本の自動車メーカーがアメリカ市場で販売する製品は、すでに現地生産の割合の方が高い。すなわち、日本からアメリカに輸出しているのではなく、アメリカ国内の工場で生産しているわけである。すでに日系自動車メーカーのアメリカにおける現地生産の割合は六割を超え、ホンダに至っては八割を上回っている。
 現在、確かにアメリカ市場で韓国の現代自動車に勢いがある。だが、日系自動車メーカーは、今のところ互角以上の戦いを演じている。無論、日系メーカーの現地生産が拡大し、為替レートの影響を受けにくくなっているためだ。
 逆に、アメリカにおける現地生産が、自動車ほど進んでいない日系家電メーカーの方は、まさしく「惨憺たる状況」に陥ってしまった。ウォン安で競争力を高めた韓国家電メーカー(サムスン電子、LG電子)に対し、ほとんど太刀打ちできない事態に至っているのだ
 とはいえ、ここで落ち着いて考えてみて欲しいのは、「マクロ的な日本の耐久消費財の輸出」についてである。トヨタやソニー、パナソニックなどがアメリカ市場で苦戦しているのは分かるが、そもそも日本の耐久消費財(自動車や家電など)の輸出は、我が国の国家経済に対してどの程度の割合を占めているのだろうか。



 乗用車の輸出がGDPに占める割合は、1.23%。家電は0.036%に過ぎない。無論、金額ベースで見ると、乗用車が623億ドル、家電が18億ドルと、相当にでかい。とはいえ、GDPの2パーセントに満たない乗用車や家電の輸出をサポートするために、日本の「国の形」や「社会のあり方」を変えかねないTPPを批准しても構わないのか、という話である。(TPPがなぜ日本の「国の形」や「社会のあり方」を変えるかについては、次週に解説する)
 断っておくが、別に筆者は自動車メーカーや家電メーカの苦境を放っておいても構わない、などと主張する気は全くない。だが、そもそも日本の製造業がアメリカ市場ばかりを見ているのは、国内がデフレで市場規模の拡大が見込めないためなのだ。
 また、現在の日本は「デフレかつ円高」なのではない。「デフレゆえに、円高」なのだ。すなわち、名目金利が低くとも、デフレで実質金利が高まり(※実質金利=名目金利-期待インフレ率。デフレとは期待インフレ率がマイナスの状態)、日本円が相対的に買われやすい状況になっているためなのだ。
 そうである以上、日本政府が「財政出動(及び減税)と金融緩和のパッケージ」という真っ当なデフレ対策を実施することで、現在の自動車メーカーや家電メーカーの苦境を救うことができる。デフレ対策として日本が量的緩和を拡大すれば、円の価値は相対的に落ちていく。かつ、デフレを脱却すると実質金利が低下し、円高圧力が緩和される。加えて、デフレ脱却で国内市場が拡大を始めれば、日本のメーカーもアメリカ市場ばかりを意識する必要はなくなる。
 

 そもそも、TPPとは「貿易の自由化」を目的としている。自由貿易とはインフレ時には全体的な生産高(=消費量)を増やし、参加者が得をする政策だ。だが、デフレ期に自由貿易を推進すると、「物価を安くする」ことでデフレを悪化させてしまう。
 すなわち、TPPとはインフレ対策なのだ。
 言うまでもなく、現在の日本に求められる政策は、「平成の開国」とやらではなくデフレ対策なのだ。日本がデフレを脱却することは、耐久消費財のメーカーの苦境を救うという点でも大いに意味がある。
 それにも関わらず、民主党政権はTPPという「インフレ対策」を推進している。しかも、TPPを批准した場合、アメリカから「とんでもない連中」が大挙して日本に押し寄せてくる可能性が、極めて濃厚なのだ。
1月29日、世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)。菅直人首相の演説により、日本のTPP交渉参加に関する結論を6月までに出すことが、事実上「国際公約化」されてしまった。

『首相「TPP交渉参加可否、6月に結論」 ダボスで表明
 菅直人首相は29日昼(日本時間同日夜)、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で「開国と絆」をテーマに講演し、環太平洋経済連携協定(TPP)について「今年6月をめどに交渉参加に関する結論を出す」と、国際公約として表明した。
 首相は明治維新、第2次世界大戦後の復興に続く「第3の開国」を自らの目標に掲げ、「自由貿易は世界と繁栄を共有する最良の手段」と経済連携の推進を訴えた。TPPに加え、欧州連合(EU)とのEPA(経済連携協定)も「今年こそはぜひ交渉を立ち上げたい」と呼びかけた。(後略)』
 先週も書いたように、実際に開国したのは明治政府ではなく、江戸幕府である。
しかも、開国の象徴たる「日米修好通商条約」は、「治外法権」「関税自主権の放棄」など、日本にとっての不利な条項を含む不平等条約だったわけだ。
 TPPが、「2015年までに農産物、工業製品、サービス等、全ての商品について例外なしに関税その他の貿易障壁を撤廃する」ものである以上、ある意味で菅直人首相の「平成の開国」は正しいフレーズである。すなわち、日本は日米修好通商条約を締結した江戸幕府同様に、TPP加盟国に対して「関税自主権」を放棄するということだ。
 後述するが、上記の「農産物、工業製品、サービス等、全ての商品」の中には、日本国民が「思いも寄らなかった商品」が含まれている。問題なのは、日本国民へのマスコミの報道姿勢もあるが、それ以上に、所信表明演説で「平成の開国」をぶち上げ、ダボス会議で「国際公約化」までしておきながら、菅直人首相自身がTPPの中身について、よく理解していないという点である。
 1月28日の通常国会の場において、「みんなの党」川田龍平議員が「TPPに参加すると医療分野における市場開放や自由競争を迫られる」という懸念に関する質問をした。それに対し、菅首相は「アジア太平洋地域が自由な貿易圏に発展していくことが重要だ」と、観念論でしか回答することができなかったのだ。

 そもそも、現在、検討が進められているTPPは、決して「アジア太平洋地域」などではない。日本とアメリカだ。何しろ、この両国だけで、TPP参加国(参加予定国)の全GDPの91%を占めるのである。
 要するに、今回のTPPは「包括的かつ100%自由化をゴールとし、かつ期限も確定した日米FTA」というわけである。というわけで、日米両国の関税率の状況を見てみよう。

    日本の平均関税は唯一の例外(農産品)を除き、軒並みアメリカよりも低い。すなわち、現時点で日本はアメリカよりも「開国」をしているという状況なのである。
 さらに、問題の農産品にしても、生産額ベースの自給率で70%(09年。以下同)、カロリーベース自給率で40%である。カロリーベース自給率は、日本でしか使用されない「独自指標」であり、指標としての問題も多すぎる。本稿では「グローバル・スタンダード」の生産額ベース自給率で話を進めることにするが、アメリカの同指標の数値は124%である。アメリカは生産額ベースで、自国の需要を上回る農産品を生産しているということになる。
 また、重量ベースで見た日本の主要穀物自給率は58%、穀物自給率に至っては、わずかに26%だ。すなわち、日本は重量ベースで穀物の七割以上を「輸入」に頼っているわけだ。この状況で「日本の農業市場は閉ざされている」などと言い張る人は、よほど数字に弱い人か、何も考えていない人だろう。日本の農業市場は、むしろ充分以上に「開国」されている。


 米国の輸出倍増計画

 もっとも、オバマ政権下で「輸出倍増計画」を推進するアメリカにとっては、日本が開国していようがしていまいが、どうでもいい話だろう。ただ淡々と、アメリカは日本の農産物市場に「更なる開放」を求めるだけである。
 アメリカにとっては、日本の食糧自給率や構造問題など、それこそ知ったことではない。単に、「我が国の農産物を買うために、さらに市場を開け」これで終わりである。
ここで考えたいのは、なぜアメリカが「農産物を大々的に輸出が可能なのか」についてである。無論、食料自給率が120%を超え、国内の需要を満たして余りある農産物を生産しているためである。現時点において、アメリカが「輸出倍増計画」の一環として、日本への農産物輸出を拡大したいのは間違いない。
 しかし、果たして永遠にそうだろうか。例えば、アメリカが将来において天災に見舞われ、食糧生産が激減し、自国の需要を満たせなくなっても、なお、日本への輸出を優先してくれるのだろうか。無論、そんな御伽噺的な話は有り得ない。この世界に、自国の需要を満たせないにも関わらず、農産物を輸出に回すような国はない(毛沢東時代の中国など、特殊な例を除く)。
 現在の日米欧などの先進諸国は、農産物に高い関税をかけ、「自由貿易」を事実上、拒否している。農産物の交易が国民の生命に関わる以上、当たり前の話である。すなわち、発展した資本主義国であろうとも、国民の生命は「自由貿易に優先する」と判断しているわけだ。
 すなわち、農産物への関税撤廃とは「国民の生命」に関わる問題なのである。それにも関わらず、菅内閣は「平成の開国」などと、イメージやフレーズ優先で事を進めようとしている。拙速であるとしか、言いようがない。
 

 日本における、昨年秋の突発的な「TPP問題」の発生は、完全にアメリカの戦略に基づいている。

 アメリカはQE2(量的緩和第二弾)を実施し、同時に減税延長などで懸命に自国経済のデフレ化を食い止めているが、それでも失業率は9.4%である。1930年代の大恐慌のトラウマから、アメリカは雇用環境の悪化に極めて敏感だ。オバマ大統領としては、失業率改善のために、やれることは全てやっておきたいわけである。
 当然ながら、アメリカは日本の農産物市場をターゲットの「一つ」にしているだろう。とはいえ、真実、アメリカが日本に売り込みたいものは、農産物ではない。「サービス」である。
 サービスと書くと、漠然とし過ぎているように思える。しかし、アメリカのこれまでのWTOに関する姿勢を見ると、TPPにおいて「完全自由化」が目指される「サービス」が何を意味しているかが、かなり明瞭につかめてくる。
 すなわち、金融・投資、法律、医療、そして政府調達である(政府調達はサービスに限らないが)。現在、ブルネイやニュージーランドなどが締結済みのTPPの構成を読むと、きちんと「サービス貿易」及び「政府調達」という項目が入っている。サービスの輸出入や政府の調達も、TPPにおける「完全自由化」の対象なのである。
  サービス貿易の自由化とは、具体的には以下を意味している。
◆加盟国の提供するサービスについて「内国民待遇」や「最恵国待遇」とする
 ※内国民待遇:自国民と同様の権利を、相手国の国民及び企業に対し保障すること
 ※最恵国待遇:第三国に対する優遇処置と同様の扱いを、現在及び将来において約束すること
◆以下の行為の禁止
 ・サービス提供者の制限
 ・サービス取引総額あるいは資産制限
 ・サービス事業の総数あるいは総産出量の制限
 ・サービスセクターに雇用あるいは関係する自然人の総数の制限
 ・サービスを提供する法人あるいはジョイントベンチャーの形態の制限
 すなわちTPPに加盟することで、アメリカの法律家、医療関係者、金融関係者に、日本人と同様の権利を保障し、かつ一切の規制を掛けることができなくなってしまうわけだ。筆者は本連載において、アメリカの医療サービスを容赦なく批判してきた。まさに「あの」アメリカの医療サービスが、日本に「一切の制限なし」で流入してくる可能性があるわけである。心底からゾッとする。
 無論、現在は様々な非関税障壁により、アメリカの法律、金融、医療などのサービス産業は、日本で大々的に事業を営むことはできない。しかし、TPPに加盟した瞬間から、アメリカが日本に対し、各種の規制の撤廃を要求してくることは間違いない(すでに始まっているようである)。
アメリカに工業品の関税を撤廃してもらい、日本の家電や自動車産業が数パーセントのアドバンテージを得た結果、上記の「アメリカのサービス」や農産物が、日本市場に怒涛のように襲い掛かってくることになる。しかも、前回も解説した通り、アメリカの関税撤廃で日本の耐久消費財のメーカーが多少息をついたところで、5%円高になれば、全ては消し飛んでしまう。
 

 何しろ、現在のアメリカは量的緩和を拡大している最中なのだ。日本のデフレが継続している限り、実質金利が高い円は買われ続け、為替レートは円高ドル安に動かざるを得ないだろう。
 TPP批准後に数パーセント円高になると、日本の工業製品が獲得したアドバンテージは消滅し、「ドル安」を利用した農産物が日本市場に雪崩れ込んでくることになるわけだ。加えて、上記のアメリカの「問題があるサービス」が日本市場に流入し、我が国は「国の形」を変えられてしまうかもしれないのである。
 かつて、家電王国だったアメリカは、法律家たちがPL法などを活用し、メーカーへの訴訟合戦を繰り広げた。結果、嫌気が差した企業は家電事業から撤退し、現在のアメリカには、まともな家電メーカーが残っていない。アメリカの家電産業を潰した法律家たちを、日本は「GDPの1.5%に過ぎない耐久消費財の輸出産業」のために受け入れなければならないのだろうか。
 あるいは、リーマンショックを引き起こした、アメリカの投資銀行などの金融サービスである。現在の日本の家庭の現預金は800兆円を超え、この額は世界最大だ(アメリカの家計の現預金総額よりも大きい)。現預金とは、すなわち「きちんと運用されていないマネー」と、アメリカの金融サービスは見なすだろう(大きなお世話だが)。TPPにより、アメリカの金融サービスが大挙して日本に上陸し、日本の家計の巨額現預金を運用し、莫大な手数料(及びボーナス)を稼ぐことを目論むわけだ。彼ら、アメリカの金融サービスは、日本の「安全資産」を、海外のハイリスク・ハイリターンな投資商品に誘導する可能性が極めて高い。無論、ここで言う「ハイリスク」を引き受けるのは、アメリカの金融サービスではなく、日本の家計である。
 また、TPPを批准すると、政府調達も「自由化」されてしまう。すなわち、TPP批准国の企業に対し、内国民待遇をする必要に迫られるのだ。日本の公共投資が資金力に富む海外事業者に受注され、国内のインフラ供給力が削られていく可能性を否定できない。
 

 筆者は「金融緩和及び公共投資などの財政出動、減税などをパッケージとして実施し、デフレを脱却する」という解決策を頻繁に提案している。しかし、公共事業を海外事業者に受注されてしまうと、「海外からの輸入」ということになってしまい、GDPへの波及効果が激減する。
 さらに、防衛産業など「特殊な政府調達」についても、アメリカの事業者を日本企業同様に扱わなければならなくなる。何しろ、アメリカの防衛産業は、日本と比べ物にならないほどに競争力がある(世界を相手に商売しているわけだから、当然だ)。自衛隊がアメリカの軍需品ばかりを使用するようになり、日本の防衛産業が衰退していったとして、本当にそれで我が国の安全保障は維持されるのだろうか。
 などなど。民主党政権は「平成の開国」などとスローガンしか叫ばず、農業を悪者にして、強引にTPPを推進しようとしている。しかし、TPPは「開国」という言葉がもたらすイメージとは裏腹に、日本の国益を害する可能性が高いのだ。
 また、そもそもTPPは農業の問題などではない。日本の「国の形」をどうするか、という問題なのである。この視点からTPPについて語るマスコミが、果たして一社でもあるだろうか。
 

最後に付け加えておこう。
 TPPで自由化される「サービス」の中には、当然ながら「報道サービス」も含まれている。アメリカの極端にブランド力が高いメディアが、日本で宅配事業を始めたら、果たして日本の新聞社は太刀打ちできるのだろうか。
 あるいは、資金力が大きいアメリカのメディアが、TPPを錦の御旗として、日本のテレビ局を買収しようとするかも知れない。
 それでも、日本の新聞やテレビは、現在同様に横一線になってTPPに全面的に賛同することができるのだろうか。筆者は注目している。

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