怖い話~世界の食を支配する者たち~

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3月 042013

 現在、「モンサントの不自然な食べ物」というドキュメンタリー映画が食に対する意識が高い人の間で話題になっている。今、日本でも上映されている。ところで、欧州委員会(European Commission)は、遺伝子組み換え(GM)作物の承認を2014年末まで凍結することを決定。ところで日本は、GM(遺伝子組換)作物については市民レベルでの抵抗はあるものの、基本的にはアメリカの言いなり。TPPはさらにそれを加速させることになる。TPPに参加するということは、米国がつくった脅威のシステムに組み込まれ、食品安全など米国の言いなりになることを意味する。そのウラには世界の食を支配しようと考えているグローバルエリートがいる。今回は、少々古くなってしまったが、そのことを的確に指摘したウイリアムエンダールのインタビューをお届けする。

「怖い話~世界の食を支配する者」

                                                                2008年6月

            The Seed Barons (種子ビジネスで暗躍する大物たち)
~巨大な農業ビジネス関連企業、巨大な石油企業と大きな政府が世界の食料供給を支配している~


                                                    F・ウィリアム・エンダール
 

 

<F・ウィリアム・エンダール>
 は、アメリカに拠点を置いているが、現在、ドイツに在住している。エンダールは、遺伝子組み換え食品に関する記事やレポートを積極的に執筆している。このインタヴュー記事の中で、彼は次のように語っている。「歴史、科学、そしてエネルギー政治、特に多国籍石油企業などの取材に長年携わっているうちに、遺伝子組み換え食品(GMO)というテーマに行き着いた」と。 2004年に出版された彼の著書『戦争の世紀-アングロ・アメリカン主導の国際政治と世界新秩序』はベストセラーとなった。(この本は2年前に日本で出版された本だが、多くの日本の将来を憂慮している日本人が読むべき名著である。近いうちに詳細に紹介したい。)エンダールは多くのメディアで記事を書いている。

それらは、アジア・タイムズ、ファイナンシャルセンス・ドットコム、アジア・インク、グローバルリサーチ・ドットコム、321ゴールド・ドットコム、日本経済新聞、そして雑誌「フォーサイト」などである。

 エンダールは、エネルギー分野の専門知識を長年にわたって培ってきた。このことによって、彼は生物工学分野での「戦争」を取材する上で理想的とも言える準備をすることが出来たと言えるだろう。生物工学分野は、エネルギー分野と同じく、巨大であるが、表に出ない、多国籍企業など、グローバルなプレイヤーたちが支配している分野である。彼らは、世界中の、数百万、数千万の人々の生命に影響を与えるほどの力を持っている。 アメリカ国内の活動家たちやリベラルな人々とは一線を画しながら、エンダールは活動している。エンダールは、世間で受け入れられた言説や主張とは違う考え方を述べることが多々ある。例えば、彼は、「地球温暖化が進行している」というコンセンサスには与しない。この地球温暖化というテーマをエンダールと議論することは次の機会に譲るとする。

 今回のインタヴューでは、遺伝子操作と石油価格に集中して議論を行うこととする。





A(質問者、以下A):あなたのこれまでの経歴、そして、あなたがどのようにして遺伝子組み換え食品をテーマとするようになったのか教えて下さい。

エンダール(以下、E):私は35年間、経済リサーチャー、歴史家、そしてフリーのジャーナリストとして活動してきました。私はニューヨークに住んでいたのですが、最近の5年ほどはヨーロッパに在住しています。1973年から1974年にかけての第一次オイルショック、1970年代終わりの第二次オイルショックをアメリカではエネルギー危機と呼びますが、このエネルギー危機をアメリカが経験しているとき、私は、巨大な石油企業の力に興味を持ち、セヴンシスターズ(Seven Sisters)が持つネットワークの影響力を調べ始めたのです。
 私は巨大石油企業の影響力の調査に没頭し、テキサスを頻繁に訪れました。アメリカ南西部にある中小の石油企業(非セヴンシスターズ系)からの招待も受けました。それは、彼らが、私が書いた、非セヴンシスターズ系中小石油企業と巨大石油企業との力のバランスに影響を与えるような記事に注目したからです。
 こうした経験から、私は「歴史を通して諸問題を理解する」という手法を確立しました。1990年代初め、ドイツの小さな出版社から、石油に関する歴史についての本を書くよう依頼されました。正確に言うと、この依頼は、第一次イラク戦争の起きた1991年になされました。私は、その本の構想を練り、調査を始めました。そして、後にそれが、『戦争の世紀』(A Century of War、ア・センチュリー・オブ・ウォー)となりました。私は1880年代にまで遡りました。この時期、英国海軍(the Royal Navyザ・ロイヤル・ネイヴィー)が、石油内燃機関を使った戦艦で構成される艦隊を創設しました。このプロジェクトはウィストン・チャーチル(Winston Churchill)によって始められました。その時、チャーチルは英国海軍省の第一海軍卿(First Lord of Admiralty、ファースト・ロード・オブ・アドミラルティ)でありました。
 『戦争の世紀』の中で、私は「生死の境目(thin red line、シン・レッド・ライン)」という概念を使って、石油の歴史を説明しました。ここ数百年間、過去から現在にかけて、歴史上の重要な出来事の多くが「生死の境目」によってつながっているのです。
 具体的に言うと、アメリカとイラクの関係、イランに対する脅威、スーダンのダルフールでの大虐殺に関する中国とアメリカの緊張関係などです。これらは全てつながって起きているのです。
 石油をコントロールすることは、第二次世界大戦後のアメリカの世界戦略、または軍隊の駐留戦略の中心となってきました。1970年代半ば、ヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger)は次のように述べています。
「石油をコントロールすることで、世界中の国々をコントロールすることが出来る。食料をコントロールすることで、世界中の人間をコントロールすることが出来る」と。


A:生物工学(バイオ・テクノロジー、biotech)というテーマにはどのようにしていきついたのですか?

E:1980年代半ば、私は、関税と貿易に関する一般協定(GATT、ガット)を取材し、疑問を持ちました。私は何度も何度もブリュッセルを訪れました。ブリュッセルには、ヨーロッパの農業団体の多くが本部を置いていましたし、ヨーロッパ経済共同体(EEC)、後のヨーロッパ連合(EU)も本部を置いていました。
 私が石油の取材を通じて行った手法を使って、穀物市場がどのように機能しているのかを取材しました。そして、私は驚愕の事実を突き止めたのです。
 それは、「国際穀物市場とヨーロッパの農業政策は、アメリカの外交政策をコントロールしている人々によって、コントロールされている」というものでした。ヨーロッパの農業政策は、ヨーロッパの農業従事者と消費者の利益を促進すべきものであるべきなのにもかかわらずです。
 国際穀物市場を支配する人々は、穀物カルテル(grain cartel、グレイン・カルテル)と呼ばれていました。5つの大企業のうちの、4つの企業がこの穀物カルテルを形成しているのです。それらの企業とは、ミネソタ州にあるカーギル社(Cargill)、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド社(Archer Daniels Midland)、その当時のコンティネンタル・グレイン社(Continental Grain、現ContiGroup Companies, Inc)でした。
 穀物カルテルは、重要な農業政策を彼らの利益に沿うように変えるくらいの、大きな影響力を持ち、ロビー活動を行っていました。ガット・ウルグアイラウンドと農業ビジネスについての疑問についても私は長年取材していました。〔注:ADM社は、以前は、ネルソン・ロックフェラー未亡人が取締役会メンバーの公然たるロックフェラー系企業だった。今も関係はあるだろう〕5、6年前から私が1980年代に取り組んだ仕事、農業ビジネスの取材を再び開始しました。私は遺伝子操作作物と植物の特許についての疑問に取り組むことから始めました。











<モンサント、デュポン、ダウ社の企業ロゴ>

 その当時は生物学について全くの素人でしたが、私が直感的にこれは大変なことだと感じたのは次の事実を掴んだときでした。それは、決定的に重要な特許は、4つの世界的大企業のうちの3つが所有していて、重要な飼料用穀物、大豆、とうもろこしなどがそれらに独占されている、ということでした。その3つの大企業は、米ミズーリ州セントルイスに本社があるモンサント社(Monsanto)、デラウェア州にあるデュポン社(DuPont)、ミシガン州にあるダウ・ケミカル社(Dow)です。そして4番目は、スイスのバーゼルに本社を置く、シンジェンタ社(Syngenta)である、と言われていました。このシンジェンタは、スイス、スウェーデン、そしてイギリスの生物工学企業が合併したものでした。

 私が農業ビジネスの取材を再開したのは5、6年前です。その時、農業ビジネスの流れを改めて見てみました。私が述べた3つの大企業は、特許を独占し、この10年間、全人類にとって必要不可欠な世界の種子の在庫(ストック)をコントロールしている構図は全く変化していないどころか、その度合はますます酷くなっていました。
 3つの大企業は農業ビジネスをコントロールする力を強めていっています。デュポン社、ダウ・ケミカル社、そしてモンサント社は人々の安全に関する限り、後ろ暗い歴史を背負っています。一例を挙げます。それはヴェトナム戦争の頃まで、さかのぼります。これら3つの企業は、オレンジ剤(Agent Orange)やダイオキシン(dioxin)を使った「枯れ葉剤」を製造していましたが、従業員たちはそうした物質を浴びてしまっていたのです。それから数十年にわたり、彼らは裁判で争っています。その他にも多くの事件が隠されているのです。
 こうした大企業は、植物の遺伝子操作に関するアメリカの政策に大きな影響力を持っています。この事実を知り、私はこうした事実を白日の下にさらさねばならないと考えました。そして、本を出版しました。題名は『破壊の種子:遺伝子操作の隠された真実』(Seeds of Destruction: The Hidden Agenda of Genetic Manipulation、シーズ・オブ・デストラクション:ザ・ヒデュン・アジェンダ・オブ・ジェネティック・マニュプュレーション)です。この本は、カナダのグルーバル・リサーチ社から刊行されました。アメリカでも販売されています。

A:世界市場をコントロールしようとする、モンサント社とデュポン社の企みによって、私たちの生活は一体どうなっているのでしょうか?あなたの本ではどこまで書かれていて、本の出版以降、どのようなことが起きているのでしょうか?

E:私の本の刊行以降で、最も劇的な出来事は、デュームズディ・シード・ヴォウルト(黙示録の日に備える種子バンク、Doomsday Seed Vault)とBBCが呼んだ、プロジェクトが実行されたことです。
 これは、ノルウェイ政府主導で、北極圏に近いスピッツベルゲンの山の中で行われているプロジェクトです。彼らは、世界種子銀行(global seed bank、グローバル・シード・バンク)を創設しようとしているのです。この銀行は、地上に存在する全ての植物の種を山奥深くの貯蔵庫に貯めておくことを目的としています。この貯蔵庫は、核攻撃のような未曾有の大災害や大惨事にも耐えられるほどの強度を持っています。
 この種の貯蔵庫について興味深いことは、このプロジェクトがある企業によって支援されているということです。こうした企業を私は、「遺伝子の巨人たち」(gene giants、ジーン・ジャイアンツ)、もしくは「ヨハネの黙示録の四騎士」(four horse-men of apocalypse、フォー・ホースメン・オブ・アポカリプス)と呼んでいます。これらの企業は、遺伝子操作作物(GMO、Genetically Modified Organism、ジェネティカリー・モディファイド・オーガニズム)という形で、生命を特許の対象にすることを推進しています。こうした企みに、何も裏がないなんてことはない、と私は疑っています。
 
 世界中の重要な地点の数々に、種子がそのまま保存されている、種子銀行が設置されています。その一つは、イラクのアブ・グレイブ周辺にありました。しかし、米国の占領直後、それは姿を消しました。イラク国民は、そこで何が起きたのか調べることは出来ません。この種子銀行はおそらく、爆破されてしまったのでしょう。しかし、こうした種子銀行は世界中の重要な地点に存在しているのです。世界にとって重要な、小麦の種子が保存されている銀行はシリアにありますし、トウモロコシの種子は、メキシコのオアカサ地域で保存されています。
 
 私の本『破壊の種』は2006年に出版されました。その際、私はある情報を新たに書きました。それは、モンサント社がミシシッピー州の小さな会社、デルタ・アンド・パイン・ランド社(Delta and Pine Land、DPL)を買収したというものです。これは劇的な出来事でした。それは、DPL社を手に入れたことで、モンサント社は、世界的に重要な、ある権利を手に入れることになったからです。それは大手メディアが「破壊者の技術」(”Terminator Technology”、ターミネーター・テクノロジー)と呼ぶものです。
 この技術が施された種子は、1年経って収穫された作物の種子は発芽しない、つまり種子が自殺してしまうというものです。つまり、農民が収穫をしても、収穫したものから取れる種を蒔いても、発芽せず、作物が再生産されないのです。農民がこれまで数千年間にわたっておこなってきた、収穫した一部を種として取っておく、という行為が不可能になってしまったのです。このことは、農民たちが、特許商品となったとうもろこしや大豆など、モンサント社の種を永久に使い続けねばならないように、取り込まれてしまっていることを意味します。そして、農民たちは、何かを栽培する際には、モンサント社に使用料を払わねばならなくなってしまったのです。


A:しかし、モンサント社はそうした技術は使用しないと発表しましたよね?

E:モンサント社は私たちをだましています。彼らは「破壊者の技術」を商品化しないと発表したに過ぎません。DPL社は「破壊者の技術」の特許を持っていました。しかし、注意を払わねばならないのは、この特許の共同所有者が、アメリカ農務省、つまり、アメリカ政府であるということです!〔注:この破壊者の技術を「農業ビジネス版の核兵器」だと理解すれば、それを使用せずとも、周囲の国々に与える抑止力が絶対的なものであると理解できるだろう〕
 モンサントは、1999年にDPL社を買収するつもりである、としおらしく記者会見を行い、その中で、「破壊者の技術」は商品化しないと発表しました。その時、アメリカ農務省の高官は挑発的に、次のように述べました。「そうだな、私たちは研究を継続するし、DPL社と今後もしっかりと協力していく」と。皆さんは次のような疑問を持たれるでしょう。「2000年から現在に至るまでの、アメリカ政府の意図は一体何なのか」と。何と言っても、アメリカ農務省は「破壊者の技術」を支援する研究プロジェクトを積極的に進めているのですからね。

A:それでは、アメリカ政府の意図とは一体何なのでしょうか?

E:私を始め、多くの人々が次のように考えています。世界中に、遺伝子操作された種を普及させることに関して、邪悪な政策意図があると。1970年代からのキッシンジャーの様々な発言を遡って調べてみるとそれがよく分かります。
 アメリカ政府の政策意図とは、人間の食物連鎖の中の致命的に重要な部分をコントロールする能力を持つということなのです。大豆は肉牛や畜産における、重要な飼料用作物ですし、とうもろこしもそうです。米(こめ)に関しても同様に、遺伝子組み換え操作が行われ、特許が取られている品種があります。そうした米はアジアを中心として、世界の人口の40%の人々の生活を支えているのです。食物連鎖の中で、こうした穀物は大変重要な役割を果たしています。
 そうした穀物の種をコントロールする動きはそれ自体も大変なことです。しかし、次の事実を合わせて考えると、その深刻さがよく分かると思います。1992年、当時のジョージ・H・W・ブッシュ(父親)大統領はモンサント社の幹部たちとホワイトハウスで非公式に会談を持ちました。その直後、ある行政令(directive、ディレクティヴ)に署名をしたのです。それは、遺伝子組み換え食品と非遺伝子組み換え食品を区別してはならない、というものでした。これが悪名高き「実質的同等原理」(substantial equivalence doctrine、サブスタンシャル・イクイヴァレンス・ドクトリン)です。
 これは次のことを意味するのです。それは、遺伝子組み換え食品は普通のとうもろこし、大豆、綿と全く同じであるので、遺伝子組み換え作物に対する、政府による特別な監視も、第三者機関による安全性実験も必要ではないということです。この決定は、アメリカの歴史の中で、政府によってなされたことの中で、最も狂っていて、危険なものなのです。
 少し考えてみたら分かることです。モンサント社などは、特許を取ったとうもろこし、大豆、牛乳の生産量を増大させるためのrBGHホルモンは特殊である(unique)と発表していました。彼らによれば、遺伝子組み換え操作を細菌や菌類に施し、問題の植物のDNAを変化させていました。従って、彼らの行った遺伝子操作によって、そうした植物は通常とは異なる、特殊なものとなりました。しかし同時に、彼らはこのようにも述べています。遺伝子組み換え作物は特殊ではない、他のとうもろこしや大豆と同じ、だと。モンサント社などの言っていることは矛盾しています。この矛盾の中に、モンサント社と政府が一体となって推進してきた、遺伝子組み換え食品に対して一切の規制や監視を行わないようにしてきた、大変に後ろ暗い、暗黒の歴史が垣間見られるのです。この遺伝子組み換え食品は、現在の人間の食物連鎖にとって重要な部分を占めているのです。

A:ブッシュ政権下で、生物工学企業は、規制がかけられないようにするための方策を採ることが出来た、ということなのですか?

E:遺伝子組み換え食品について、規制やコントロールは存在しません。1992年以降、政府はいかなる規制も行っていません。アメリカ食品・医薬品局(FDA)もアメリカ農務省も規制を行っていないのです。遺伝子組み換え食品を監視し、安全性に関する実験を行うべき、政府機関はどれも規制や監視を行っていないのです。
 モンサント社は、幹部社員たちを政府機関に送っています。彼らはFDAや重要な政府機関の中心的なメンバーとなっています。彼らはモンサント社の意向に沿うように政府機関で働き、その後、モンサント社に帰るわけです。クリントン政権下でアメリカ通商代表部代表(U.S. Trade Representative、ユー・エス・トレイド・レプリゼンテイティヴ)だった、ミッキー・カンター(Mickey Kantor)は、国際貿易交渉で、モンサント社の利益実現に多大な貢献をしました。彼は、アメリカ通商代表部を離れた後、モンサント社の取締役になりました。〔注:現在は退任している〕

A:それでは、ブッシュ政権下で、モンサント社などは、政府の規制がない状態を保ち、推進してきたということでしょうか?

E:そうですね、今は政府による、遺伝子組み換え食品に関する規制は何もありません。それに加えて、現ブッシュ政権は、この状況を外国にも適用しようとしているのです。イラクがその良い例です。2003年にポール・ブレマー〔注:キッシンジャー・アソシエーツ元パートナー〕が、イラクの「植民地総督」(proconsul、プロウコンサル)に就任した際、モンサントは「オーダー81」(Order 81)と呼ばれる書簡をブレマーに送りました。アメリカ政府は、イラク国民に対し、多くの命令を発しました。これをアメリカ政府は寛大さを現わした、と考えているようですが。とにかく、それらは「命令」ですから、実行されねばなりません。
 オーダー81は、特許の取られた作物に対する企業の権利をイラク国内法で認め、イラク国内でモンサントの種を使用する際には、強制的に使用料を徴収する、というものでした。このオーダー81はイラクの憲法に反している内容なのです。2004年、イラクでは、遺伝子組み換え種の存在が国内法で認められました。これはアメリカの後押しがあったためです。

A:先ほどお話しのあった、北極圏の種子貯蔵庫の創設についてお聞きします。これに、巨大穀物種子企業や食料生産大国の、どのような地政学的な意図が隠されているのでしょうか?





ノルウェーにある「種子銀行」にはロックフェラー財団も資金提供(地図中、Svalbardとあるのがその種子銀行の場所)





E:「黙示録の日に備える種子貯蔵庫」(デュームズディ・シード・ヴォウルト)は、遺伝子組み換え食品に、人々の注意や関心を集めるのに役立つと思います。このプロジェクトは、僻地で行われている、何の役にも立ちそうもない計画なのです。それに巨額の金が投入されているのです。
 人々は次のような疑問を持つに違いありません。ビル・ゲイツ財団(Bill Gates Foundation)はとロックフェラー財団(Rockefeller Foundation)は、ノルウェー政府と「持続可能な農業のためのシンジェンタ財団」と共同して、北極圏で一体何をやっているのだ、と。彼らは何の目的でこれらの種を貯蔵しているのかと。
 または、遺伝子組み換え作物を取り扱う大企業が、人類のこれまで築きあげてきた財産である種を利用するためなのか、もしくはそれらの穀物の特許を取り、食料供給を実質的に支配しようとしていのか、という疑問が浮かびますね。そうした種子には、メキシコでだけ栽培されている、バスマティ米やとうもろこしがあります。こうしたことを批判することは厳しく制限されています。
 今この時点では、こうしたことは推察の域を出ません。
 しかし、ロックフェラー財団は遺伝子革命を推進し、それに1970年代から1億ドル以上の資金を投入してきました。また、ロックフェラー財団は優生学(eugenics、ユージェニックス、優勝劣敗の思想=社会ダーウィン主義に基づいた「劣悪遺伝子排除」の思想)に肩入れし、人口抑制を押し進めてきました。これはつまり、ロックフェラー財団が人間の群を間引いていて、望ましくない人々、例えば少数民族を抹殺しようとしているのです。1930年代にロックフェラー財団はナチス(Nazis)に資金提供をしていました。それは、優等民族(master race、マスター・レイス)を創造するためでした。これは何の誇張もなく、事実なのです。私は『破壊の種子』の中で、もっと詳しくこのことを書いています。

A:ロックフェラー財団は確かに、その事実を否認し、隠蔽していますね。これは企業の広報のイロハです。「自社が過去にナチスと関係があったことを否定せよ」ですね。

E:彼らは、過去を否認していませんよ。これは大変に面白いことです。彼らはただそれを無視してきました。
 ロックフェラー家はアメリカ優生学学会で、積極的に活動してきました。優生学という学問は、ヒトラー率いるナチスの保護下で、ドイツの医学者たちが発展させた学問です。その究極的な形がガス室となったわけです。こうした事実がニュールンベルグの軍事法廷で明らかとなったとき、アメリカ優生学学会は名称を変更することにしたのです。そして彼らは優生学の部分を「遺伝子(genetics、ジェネティックス)」に変更したのです。
 世界中にある生物学研究センターの設置と、遺伝子組み換え作物を発明した研究への資金提供はロックフェラー財団が直接的に関わって始めたプロジェクトなのです。別に鋭い人ではなくても、ロックフェラー財団の意図には簡単に気づくでしょう。ロックフェラー財団は優生学の発展のために資金提供してきました。それは「劣った民族や人々」(inferior peoples、インフェリア・ピープルズ)を抹殺するためのものでした。
 そんなことをしてきたロックフェラー財団が、遺伝操作された種子の研究に資金を出しているのです。こうした事実を合わせて考えると、ロックフェラー家は、世界中の民族グループや人口への食料供給をコントロールする計画を持っているということになります。これは地政学的に、大きな武器となります。これを私は『破壊の種子』の中で書いています。そして残念なことなのですが、これは私の想像の産物などではないのです。

A:力が衰えつつある超大国(superpower、スーパーパウア)であるアメリカに本社を置く多国籍企業(multinationals、マルタイナショナルズ)はいまだに世界の食料供給に対して巨大な力を持つことが出来るのでしょうか?また、そうした企業は言うことを聞かない国々の態度に影響を与えることが出来るのでしょうか?

E:私は今2冊の本に取り組んでいます。これまで書いた、石油をテーマにした『戦争の世紀』、この『破壊の種子』を入れて、これらを三部作(trilogy、トリロジー)としたいのです。私は今三部作の3冊目の本に取りかかっています。キッシンジャーの規則の3番目は、金(かね)をコントロールする者が、世界をコントロールするというものです。そして、種子の供給をコントロールすることは想像を絶するほど強力な武器となります。〔注:エンダールは現在自分のウェブサイトで、現在の金融危機についいてのコラムを書いている〕
 中国はアメリカから、少しずつですが独立し、距離を取ろうとしています。そしてジョージ・ブッシュ、ディック・チェイニーや、ワシントンの政治家たちの要求を全て呑むということをしません。そしてアジア地域における、自国の利益を確立しようとする動きに出ています。
 そうした中国の動きに対して、アメリカは次のように言うことができます。「種子の供給をストップしますよ。私たちの言うことを聞かないと、翌年に米を収穫できませんよ。イラン、スーダンやアフリカ諸国の石油の供給を実力で阻止しますよ。あなた方は私たちの望む通りに動いて下さらないし、アメリカ国債に充分投資して下さらないし、ニューヨークにある大銀行群がサブプライム問題で困っていますが、そこから手を引こうとなさっているし」これは単純な話なのです。世界の食料や種子供給をコントロールする人間や国は、信じられないほど巨大な力を持つのです。
 世界の4大種苗企業のうちの、3つの企業は、軍産複合体(the Pentagon-military-industrial complex、ザ・ペンタゴン・ミリタリー・インダストリアル・コンプレックス)と深く結びついています。これは人々に注意を喚起しなくてはならないことです。

A:ここ数年、ヨーロッパ連合を中心として、食料の遺伝子操作は、阻止され、邪魔されてきていますね。あなたは現在、ドイツに住んでおられます。ヨーロッパでは、遺伝子操作作物はその存在の可否が問われていると思いますか?

E:ヨーロッパでの状況は複雑になっています。ヨーロッパの人々は遺伝子操作作物に反対しています。これは明らかなことです。ドイツやオーストリアなどの国々の国内法では、遺伝子組み換え作物の栽培を禁止しています。スイスでは、5年間の猶予期間が設定されていますが、遺伝子操作作物は禁止されています。私が個人的に知っている農民たちがその禁止措置の中心的な役割を果たしました。
 ギリシアでも同じ状況です。ポーランドでは、国会が遺伝子組み換え作物に対する厳しい制限を加えようとしています。それは、ポーランドの国会議員たちが自国の小規模農家が、巨大な農業ビジネス・コングロマリットの支配によって破壊されてしまうことを憂慮しているからです。

エンダール(以下、E):・・・・ドイツでは、農民と消費者による、草の根の、反遺伝子組み換え作物運動が組織されています。ドイツでは、農薬や化学薬品を使用しない場所がたくさんあり、そうしたところでは、無農薬、有機作物が収穫されています。こうした作物には厳しい規制がかけられているのです。ドイツでは、無農薬・有機作物というのはただラベルに書いてあるだけのものではなく、実体が伴っているのです。ドイツの人々は遺伝子組み換え作物に強く反対しています。
 ドイツでは、遺伝子組み換え作物を栽培する農家には多少のペナルティを課しています。しかし、風に運ばれた種で、自分の農地が汚染されてしまった農家にはペナルティを課されることはありません。
 ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)政権は、現在、アメリカ政府との関係修復への努力を行っています。しかし、メルケル政権は「誤った政策を行っている」アメリカ政府との関係修復を目指しているのです。メルケル政権は、ブッシュとチェイニー率いるアメリカ政府が望むこと全てを行うことで緊密な関係を築こうとしています。その中に、遺伝子組み換え作物の栽培の認可も含まれています。
 フランスでは、1ヶ月前、政府の科学機関が、モンサント社のMON810を禁止することを支持すると発表しました。このMON810は、遺伝子組み換えとうもろこしで、フランスでは、数年前から安全性のテストが行われ、導入がストップされていました。フランスの政府機関が、モンサント社が安全で、健康に問題のないと主張した、とうもろこしが不安定で、安全ではなく、健康に問題を与えると発表したのです。その結果、ヨーロッパにおいては、MON810の導入が議論されることはほとんどなくなりました。
 モンサント社にとって最も重要な目標は、ヨーロッパにおける遺伝子組み換え作物に対しての抵抗をなくすことであると言えるでしょう。モンサントをはじめとする農業ビジネスの大企業は、ブリュッセルにおいて、ヨーロッパ議会やEUの農業機関に対し、ロビー活動を展開し、大きな影響力を行使しています。そうした機関へのロビー活動は、より簡単であるためです。それは、そうした大企業が数十年にわたって、ブリュッセルにおいてロビー活動を展開してきた実績があるからです。
 ヨーロッパ各国の国内法では、食料品の内容物の1%以上が遺伝子組み換え食品である場合にはそのことを表記するように義務づけています。アメリカでは、1990年代以降、その逆の政策が行われています。これは最も馬鹿げた政策です。
 食料品に遺伝子組み換え食品が含まれていることを表示することは、アメリカでは違法なのです。従って、アメリカ人は次の事実を全く知らされていないのです。彼らの食べる食品の60%から70%は、遺伝子組み換え食品だということを。ケロッグのコーンフレーク、ケンタッキー・フライド・チキンの付け合わせのとうもろこし、そして、マクドナルドのチーズバーガー1個の容量に3分の1含まれている大豆などは遺伝子組み換え食品なのです。そして、アメリカで、アレルギー患者が激増していることと、遺伝子組み換え食品との相関関係があるのです。

A:それでは、フランクフルトのスーパーに行けば、遺伝子組み換え食品が含まれている食品にはそのように表示されていることが分かるようになっているのですか?

E:はい、もちろん、小さな表示ではありますが、表示されているのですよ。遺伝子組み換え食品を1%以上含まれている食品にはそのように表示するように法律で決まっているのですから。モンサント社やその他の大企業が今行っているロビー活動の中心テーマは、遺伝子組み換えの大豆やとうもろこしを飼料として与えられた肉牛から取れた牛肉を、その様な飼料が与えられたことを示さないように出来るようにすることです。
 
 しかし、すでに多くの農民たちは、証明書付きの遺伝子組み換え作物ではない大豆をブラジルのような国から輸入し、使うようになっています。ブラジルでは遺伝子組み換え作物は栽培されていません。つまり、そうした農民たちは、遺伝子組み換えではない作物を輸入し、そうした大豆の種を第三者機関による試験に出しているのです。

A:世界的な遺伝子組み換え作物の流行や拡がりに対して、人々の抵抗はどれくらい成功しているとお考えですか?

〔注:この8月になって、イギリスのチャールズ皇太子が、遺伝子組み換え作物の安全性について、宗教的な「神の領域をひとが侵すべきではない」という理由と、「史上最悪の環境災害を招く」という理由から、同食品を推進している大企業などを批判した。疑念を呈したが。
参考URL:http://sankei.jp.msn.com/world/europe/080815/erp0808150942006-n1.htm


E:大変に成功していると考えます。メルケル政権は、この2年半の間、アメリカ政府が熱望しているにもかかわらず、遺伝子組み換え食品をドイツに導入することが出来ていません。ドイツ政府はあらゆる努力を行っていますが、成功していないのです。
 
 ドイツでは、政府がエタノールや生物燃料をガソリンの代替物として導入することを支援するという、馬鹿げた政策を採ることで、遺伝子組み換え作物の導入を行おうとしているのです。これは、ブッシュ政権がアメリカ国内で補助金をたくさん出すことで生物燃料を支援し、遺伝子組み換え作物を導入したのと同じ方法です。
 アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)社のような、種子を支配する大企業と石油企業はブッシュの政策を支持しています。〔注:バイオエタノール自動車の政策は、このADM一社を儲けさせるための政策と良く批判される〕それは、そうした政策を採っても、環境問題は解決しないと分かっているからです。そうした政策によって、世界中で食料品の値段が高騰しています。そして、農地はもはや農業生産のためでなく、燃料生産のために使用されているのです。〔注:民主党の大統領候補も農業が盛んな州への配慮から、表だってバイオエタノール政策を批判できないのが実情である〕

A:生物燃料の拡大によって起きる最大の問題や失敗は何だとお考えですか?

E:最大の失敗は、アメリカ国内で生物燃料向けに栽培されたとうもろこし畑の総面積が、輸出向けに栽培されたトウモロコシ畑の総面積と同じになったことです。
 アメリカは世界最大のとうもろこし輸出国です。簡単に申し上げると、広大な面積の土地が、ただ燃やされるためだけのとうもろこしの栽培に使われている、ということなのです。
 こうした事実を踏まえた上で、アメリカ政府は、ブラジルやヨーロッパ連合に対し、アメリカと同じように生物燃料のためのとうもろこしを栽培するように促したのです。その時のアメリカ政府の理屈は、生物燃料によって、外国から輸入する石油に頼らなくてもよくなり、石油価格の高騰にも悩まされなくなる、というものでした。現状は、原油価格によって、穀物価格が決定されています。そして両方の価格とも天井知らずの高騰を続けているのです。
 もっと危険なことは、国際連合食糧農業機関(FAO)によると、世界の農業生産において、穀物のストックが減少しているということなのです。それは洪水被害や飢饉に対するためのストックも含まれています。穀物のストックの減少の程度は1970年代初めと同程度だと報告されています。当時は石油危機とあいまって、穀物が不足し、価格が急騰したのです。現在の穀物ストックの程度は1972年以来、最低である、と私は考えます。

A:どうしてそのようなことが起きてしまったのでしょうか?

E:穀物のストックが激減したのは、部分的には、アメリカとヨーロッパ連合の意図的な政策によるものです。彼らの政策によって、誰が利益を得るかお分かりでしょうか?穀物ストックはカーギルやADMによってコントロールされているのです。従って、私たちの税金がそうした穀物ストックのために使われずに済んでいるという主張があります。ブッシュ政権になって、政府が穀物ストックへの税金投入の殆どを廃止しました。そして、同政権は、生物燃料を推進しました。その結果、生物燃料向けの農作物作付け総面積は激増しました。
 カリフォルニア州立大学バークレー校の調査によると、アメリカで生産される、とうもろこしと大豆の全てを生物燃料に振り向けると、アメリカ国内のガソリン需要の約12%を賄えるということです。昨年、アイオワ州とサウス・ダコタ州で生産されたとうもろこしの約半分がエタノール精製工場に運ばれたと思います。農民たちはこの生物燃料に魅力を感じてもいるのです。それは、彼らは長年、とうもろこしの低価に苦しんできたからです。
 生物燃料の導入によって、とうもろこしの価格は上昇しました。その結果、農民たちは、年によって作物を変える、伝統的な方法を捨て去り、大豆やとうもろこしばかりを作るようになりました。そうして、土地はどんどん痩せていき、農民たちはますます化学肥料や農薬〔注:もちろん、モンサントやデュポンの商品である〕に頼るようになってしまったのです。これは正に悪循環と言えます。アメリカ国内で使用される除草剤の総量の40%がとうもろこし畑に使用されているのです。


A:あなたがなさっている主張に対して、よくある反論としては、近い将来には、そこら中に生えている雑草(weedy plants)を刈り取って燃料にする技術が開発されるから問題がないのだ、というものがあります。だから、たくさんの農薬や肥料は必要なくなるだろうというわけです。この主張はどう間違っていると思われますか?

E:セルロース・エタノールですね。〔注:オバマ陣営の選対幹部であるトム・ダシュル元上院議員は、セルロース・エタノールの推進者だ〕昨年、ヨーロッパ連合は、ドイツのような加盟国が、ブラジル産の安い甜菜(てんさい)に対して、国内市場保護を目的とする輸入制限を課すことを禁止しました。しかし、大事なことは、生物燃料というものは、経済にマイナスの効果を与え、決してプラスにならないということです。
 
 石油はまだたくさんあるのです。ブラジルはつい最近、海底油田を発見しました。予想埋蔵量は何十億バレルという規模です。この発見は、アラスカ油田や北海油田の発見に匹敵するものです。世界的に見て、石油不足は起きていません。従って、世界中で食料が不足しているこの時期に、食料を燃やして燃料にしてしまうというのは、余りにも馬鹿げていて、奇妙なことだと私は考えます。

A:あなたのご意見は驚くべきものです。多くの人々は次のように考えています。映画「シリアナ」〔注:ハリウッドでも有名なリベラル俳優のジョージ・クルーニーが主演している、反ブッシュ映画。石油企業の陰謀で中東戦争が起こされるという筋書き〕で描かれているように、石油埋蔵量は枯渇しつつあり、また埋蔵されている石油も採掘しにくい、と。しかし、あなたは石油の埋蔵量は豊富だと主張されています。

E:そうです。疑いようもありません。

A:それでは、ピークオイル(peak oil)説の欠陥や不備とはなんでしょうか?

E:ピークオイル説は欠陥だらけです。ピークオイル説は、確かに、それは2003年に起きたアメリカによるイラク占領を説明できるものです。私も当初、アメリカのイラク侵攻をその観点から説明しました。それはそれ以外の説は説得力がないと思われたからです。
 しかし、それ以降、私はピークオイル説に反対しているのです。私はピークオイル説に反論を加える文章を発表しました。タイトルは「かつてピークオイル信者だった男の告白」(“Confessions of an Ex-Peak Oil Believer”、コンフェッションズ・オブ・アン・エックスピーク・ビリーヴァー)というものです。それによって論争が起こり、私に敵意に満ちた手紙がたくさん送られてきました。
 
 そもそも、ピークオイル理論は、石油は化石燃料であるという考えに基づいています。この考えは、世界中の殆ど全ての大学の地質学科で宗教ドグマのように受け入れられています。問題は、石油は化石燃料ではないということです。
 つまり、恐竜の死骸(しがい)、海底の藻類(そうるい)の残骸、鳥類の糞(ふん)などの残骸から、石油ができるのではないということです。石油は生物由来のものではないのです。〔注:これが、いわゆる石油無機説といわれるもの。生物の死骸に由来するという通説的な石油有機説に対する意見〕石油はもっと深い地中で生成されているのです。地球が地核までどのような構造になっているかを示す模型や、火山がどのように爆発するかを示す模型をご覧になったことがあるでしょう。それらをご覧になると分かりますが、地球の中心部はマグマがあり、いつも燃えたぎっている状態にあります。そして、地表近くで、断層や破裂、プレート移動が発生します。それによって、地球の中心部にある高温のマグマが吹き出すのです。クラカトラ山やエトナ山の大爆発がその例です。
 石油は地球の深部で、どのように生成されるか、考えてみましょう。石油は炭化水素です。ロシアの科学者たちは、炭化水素石油の生成実験に何度も成功しています。実験は常温で、海抜レベルの気圧の中で行われました。石油は、あらゆる角度から考えて、地中深くで恒常的に生成されています。決して、動物の死骸が地中で圧力をかけられた結果、生成されるものではないのです。地質学者は、もっと地中深くに関心を払うよう、教えられる必要があります。サウジアラビアのガワールにある断層やその他、中東各地にある断層などは私の主張の好例となるものです。そうした断層地帯から、石油が多く採掘されています。
 1年前に、私はアイスランドに行き、私の書いた本に基づいた講演を行いました。その時、アイスランドの外相だった人物が、私に、アイスランド政府が、アイスランドに石油が埋蔵されているか、第三者機関による、地球物理学的な調査をし、その結果がちょうど出たばかりだ、と述べました。その人物は続けて、「調査結果によると、アイスランドには石油が多く埋蔵されており、それは、北海油田の規模になることも可能だ」とも述べました。
 

 一体誰が、世界の石油供給に関する情報をコントロールしているのでしょうか?誰がピークオイル説などを流布させているのでしょうか?それは、マット・シモンズ Matt Simmons というヒューストンの石油銀行家です。彼は、ディック・チェイニー副大統領の長年の友人でもあります。
 1バレルあたり107ドル〔当時〕にまで高騰した石油価格によって、誰が利益を得ているのでしょうか?エクソン・モービルがどれほどの利益を出しているのか、私には分かりません。しかし、彼らは、巨額の利益を得ていて、それらは正しい商取引の結果だと正当化されているのです。こうしたことを問題提起する人は誰もいないのです。

 〔注:さらにいえば、ゴールドマン・サックスとエクソン・モービルの取締役兼任によって、意図的に原油の高騰が演出されたという園田義明氏の説もある。参考URL:http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2008/08/14/3689777

A:罪のない、アメリカのドライバーたちは、近い将来、大量の石油が発見されることで石油価格が下落すると信じ、枕を高くして眠れるようになるのでしょうか?石油価格の下落によって、食料価格も下落し、生活は少しでも楽になるのでしょうか?

E:私もそうであれば、と願っています。しかし、石油価格は2つの要素によってコントロールされているのです。1つは、石油精製をコントロールしている、3つから4つの世界的な巨大多国籍石油企業です。そのうち2つはイギリスの、もう2つはアメリカの企業です。2つ目の要素は、ウォール街の金融企業です。
 石油取引の投機的デリヴァティヴ市場は、石油の価格決定メカニズムを革命的に変化させました。中東の石油輸出国が原油1バレル107ドルの原因ではありません。
 ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、そしてその他、石油への投資を中心に活動している3つの投資銀行が石油価格に影響力を持っているのです。
 イラクのバスラでテロリストが輸出用の石油パイプラインを爆破した、などとロイター通信が報道すると、これらのヘッジファンドとオイルへの投機筋は5分以内に、石油価格が10ドル上昇する方に賭けるわけです。これでは石油価格が安定することはありません。これは大変なことです。〔注:最近では「ナイジェリアの武装勢力がパイプラインを破壊した」という報道が良く行われる〕
 石油企業は、ここ数十年の間に、石油を即座に出荷できる体制を整えてきました。〔注:彼等は意図的に精油所のキャパシティーをギリギリにすることで市場に精製された石油を放出しないことで価格を統制しているのである〕
 これによって、彼らは、石油価格を上昇させることが出来るようになりました。石油市場は、統制された市場となってしまっているのです。これは、自由市場などではありません!エネルギー市場は世界で最も統制された市場です。そして食料市場はそれに次いで二番目に統制されているのです。

A:それでは、石油の供給は、少なくともこれから数十年、大丈夫だということですか?

E:いいえ。この問題を研究している人々の間では、これから数世紀間は大丈夫だと言われています。ワシントンにあるシンクタンクと深い関係を持つ、ある人物が私に次のように言いました。「アメリカの軍事衛星から撮った写真などの証拠によると、サウジアラビアとイエメンの間にある、未確定の国境地帯に、石油が多く埋蔵されている。ここが開発されれば、これから50年間の、世界の石油需要を全て賄うことが出来る」と。これは10年前に聞いた話です。それから何かなされたという話はありませんから、まだそこに石油は残っているのです。
 ロシアの地球物理学者たちは、その石油がどこにあるか、正確な位置を発見する方法を知っているのです。ロシアは、冷戦期、シベリアにおいて、自力で石油を発見した実績があります。その時期、ロシアは中東地域から石油を輸入することが全く出来ませんでした。それはNATOがロシアへの石油輸出を禁止していたからです。ロシアは、地球物理学を発達させ、ヴェトナム沖の海底油田を発見し、ロシア国内で多くの油田を発見しました。現在、ロシアは、サウジアラビアに次いで、世界第二位の産油国となっているのです。〔注:ロシアの石油埋蔵量に関しては、イギリスのロイヤル・ダッチ・シェルやイギリスの金融紙「フィナンシャル・タイムズ」などが、期待するほど多くないという情報操作を行っている〕

A:地球温暖化の話はおいておきます。ですが、環境に対し、現在の石油使用法は直接的な影響を与えています。太平洋上にはプラスティックやビニールのごみが多く浮いている状態です。その広さはテキサス州の広さの2倍に達しています。石油によって、世界は苦しめられてもいます。

E:そうした問題は、各国政府の環境部門が解決する必要がある問題です。経済を活性化させるには、効率的なエネルギーを使う必要があります。そしてそのエネルギーは安価で、経済を活性化させることが出来るものでなければなりません。しかし、だからと言って、私は、地球上をビニール袋であふれるような状況にしようなどとは思っていません。環境問題は解決されねばなりません。

A:石油が枯渇し始めると、石油価格が高騰する。結果、研究が進み、現在の生活様式が変わり、環境への負担が減るのではないか、という希望を持つ人々がたくさんいます。地球温暖化ガス、ヒューストン、ロサンゼルス、そしてリオデジャネイロの車社会の弊害などは強調してもし過ぎることはありません。

E:あなたがおっしゃりたいのはSUV(Sports Utility Vehicle、スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)のことですか。私はSUVがあまりにも肯定的に受け入れられ、多く売れている、という主張に賛成です。家族の移動や買い物には適切な大きさで、燃費の良い車があると思いますね。1ガロン(3.97リットル)あたり、100マイル、200マイル、そして300マイル走るエンジンは開発されています。しかし、これらの特許はジェネラル・モーターズ(General Motors)をはじめ、巨大自動車企業によって買われています。

A:人々はそういった話は都市伝説(urban legends)だと考えています。

E:都市伝説などではありませんよ!私はそういったエンジンを開発した人々に会っています。そういった人々は、自分だけで企業をやっていて、創造的な能力を持っている人々です。彼らの発明は大企業によって買収され、市場に出ることはありません。私の本『戦争の世紀』のアラビア語版の版権は、サウジアラビアの大手出版社によって買われたのですが、訳本が市場に出ることはありません。ですから、私の本にアラビア語版は存在しないのです。〔注:翻訳権を入手しても市場に出さないというのは典型的なグローバリストの手先による情報統制のやり方である。ただし、違約金を出版社は支払うことになる〕

A:2008年3月現在、たくさんの事件が起こっています。ドルの価値は下がり続けています。イラクでは争いが続いています。アフガニスタンの状況は好転していません。エネルギーに関して、ロシアの重要性は増加し続けています。ヴェネズエラもそうです。OPECは以前のようには調停者としての役割を果たしていないように思われます。それでは、これから数年間の間にどんなことが起きると予想されますか?

E:これは大きな質問ですね。控えめに言って、世界の勢力図、パウアについて、根本的な大転換(paradigm shift、パラダイム・シフト)が起きると思います。私たちは歴史的に重要な時代に生きているのです。そのような大転換は1870年代から1914年にかけて起こりました。大英帝国が衰退し、2つの帝国が出現し、あい争いました。1つはドイツ帝国で、もう1つはアメリカ合衆国です。1914年から1945年にかけて争いは続き、最終的にはアメリカが勝利し、世界の超大国(superpower、スーパーパウア)となりました。
 私の次の本のタイトルは仮ですが、『アメリカの世紀の興亡』(The Rise and Decline of the American Century)となるでしょう。このタイトルは「タイム」誌のヘンリー・ルース(Henry Luce)が、1940年代にアメリカの覇権が確立される時期に使った言葉です。現在のサブプライム問題は、残念なことに、そして悲劇的なことに、アメリカの銀行制度や金融制度の根本的な危機となっています。

 サブプライム問題は本来なら起こらないはずの問題のはずです。議会や新大統領が何か劇的な変化が起きるように手を打たなければ、アメリカは1930年代の大恐慌の時代と同じような状況になると思います。アメリカ中で、家屋の差し押さえ(home foreclosure、ホーム・フォークロージャー)で頻発しています。郊外の住宅地が、ギャングが抗争を繰り返すゲットー地区のようになっている場所があります。打ち捨てられた家屋が多数を占める場所もあります。そんな場所に住んでいる人々は、2、3年前には美しい住宅地であった場所で、一体何が起きているのか不安に思っています。しかし、こうした流れはますます加速します。それは住宅ローンのシステムはサブプライムを含む構造となっており、消費者に対し、詐欺的に勧められていたからです。これは大規模な金融詐欺と言えるでしょう。

 サブプライム問題について、私はいくつかの記事を書きました。そしてこの問題を「金融津波」(the Financial Tsunami)と呼んでいます。それらの記事に興味がある方はインターネットで読むことが出来ます。あらゆる局面で、住宅ローンの証券化と、この手法の拡大を推し進めた人物こそ、前連邦制度準備理事会議長(the former chairman of the Federal Reserve)アラン・グリーンスパン(Alan Greenspan)です。彼は議長職を退くその日まで、住宅ローンの証券化を進めたのです。
 当然のことながら、グリーンスパンは、自伝の中で、2005年から200

困った話

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2月 202013

 ところで、原子力規制委員会が「活断層がある」と判断した青森県・東通原発について東北電力の海輪誠社長は18日の記者会見で「『活断層とは活動を断った層』 と理解しており、安全性に問題はない」と述べたということです。本当に困ったものです。
 
現在のマスコミ報道を見ているとフクシマ原発事故は収束したかのような錯覚に陥ってしまいます。少々古い記事ですが、本当の事をもう一度確認しておくべきでしょう。
 

*現代ビジネスより 

 

20120914日(金)

「新たな一大汚染の危機と国・東電の無策ぶり」

村田光平

 

~福島第一原発の事故から1年半。実は今、同原発の「4号機」が、さらなる放射性物質を地上に撒き散らし、人類を未曾有の危険にさらそうとしている。それなのに国と東電にはまるで危機感がない。外交官時代から脱原発の志を貫いてきた信念の人・村田光平さん(元駐スイス大使)が、その空恐ろしい実情を語る。~

村田光平氏

<村田光平(むらた・みつへい)プロフィール>

1938年、東京生まれ。61年、東大法学部卒業、外務省入省。駐セネガル大使、駐スイス大使などを歴任し、99年、退官。99年~2011年、東海学園大学教授。現在、同大学名誉教授、アルベール・シュバイツァー国際大学名誉教授。外務官僚時代、チェルノブイリ原発事故をきっかけに「脱原発」をめざす活動を開始。私人としての活動だったにもかかわらず、駐スイス大使時代の99年、当時の閣僚から「日本の大使が原発反対の文書を持ち歩いている」と批判され、その後日本に帰国となり、辞職。さまざまな圧力に屈せず、脱原発の主張を貫いて「反骨の外交官」と呼ばれた。以後、現在まで、主に原子力問題やエネルギー問題などをテーマに言論活動を続けている。著書に『原子力と日本病』、『新しい文明の提唱 未来の世代に捧げる』など。 



驚くべき杜撰さが明らかになった



去る8月31日、「福島原発4号機の核燃料問題を考える議員と市民の院内集会」が衆議院第一議員会館で行われました。私も特別スピーカーとして出席しましたが、この集会で驚くべきことが判明しましたので、急ぎご報告したいと思います。

 一言で言うと、ここで明らかになったのは、呆れ果てるしかない原発事故処理体制の実態です。事態は放置できないレベルに達しており、世界的な一大事になりつつあります。少なくとも、今の事故処理体制の信じがたい杜撰さが、国内外から根本的に厳しく問われることは必至です。

 こういうと、多くの人は「福島第一原発の事故処理は一段落したんじゃないのか?」といぶかしく思うかもしれません。しかし、実態はまったく違います。一段落どころか、これまでの量をはるかに上回る放射性物質による汚染が、明日にでも起こる可能性があるのです。まずはこのことから説明しましょう。

 

「福島4号機」の崩壊が招くメルトダウンと世界の破局

 

今、世界を脅かしている大問題があります。それは福島第一原発の「4号機問題」です。4号機には使用済み核燃料プールがあり、そこに残っている1535本の核燃料棒がさらなる惨事を引き起こす可能性があるのです。

 昨年3月11日の東日本大震災で福島第一原発が大事故を起こしたのは周知の通りですが、4号機の建屋は、このときの水素爆発で大変傷んでいます。しかも地盤に不等沈下があって、倒壊する危険もあります。

 現在、4号機のプールにある1535本の核燃料棒はかろうじて冷却されていますが、もし4号機が倒壊すれば、冷やす術はありません。そうなると、最悪の事態—核燃料棒が溶け、メルトダウンが起き、膨大な放射性物質が撒き散らされるという、いまだ人類が経験したことがない悲劇が起こります。

 そうなれば、これまで放出された分の数倍、数十倍の放射性物質が拡散し、福島第一原発の一帯には誰も近寄ることができなくなります。すべての人員が原発から撤退しなければならなくなるのは言うまでもありません。その結果、4号機のみならず、1号機から6号機までの事故後処置も難しくなり、全機がメルトダウンを起こす可能性もあります。

 今、4号機も含めて、福島第一原発に残されている核燃料棒の総数は14225本にのぼります。米国の核科学者ロバート・アルバレス氏によれば、チェルノブイリの85倍のセシウム137が福島第一原発に存在するそうです。4号機に限っても、セシウム137の量はチェルノブイリの10倍になるのだとか。

 したがって4号機の崩壊は、日本のみならず、世界的な広範囲の汚染を招くでしょう。「究極の破局に繋がることは確実」と多くの科学者は見ています。



政府と東電は「4号機は震度6強の地震に耐えられる」としていますが、逆に見ると、この震度を超える地震が発生したらきわめて危険ということです。しかも、傷んでいる建屋が本当に震度6強までの地震に耐えられるかについては、何の保証もありません。



 今年3月、私は参議院予算委員会の公聴会に公述人として出席し、この4号機問題には世界の安全保障問題として最大限の対応が必要であることを訴えました。8月24日から3日間、広島市で開催された核戦争防止世界大会でも、世界に向けて4号機危機への注意を喚起するスピーチを行いました。



 私たちの訴えは各国で少しずつ聞き入れられていき、今や4号機問題は世界の安全保障上、最も重大な関心事になっているのです。



「水では消火できない」ことを知らなかった国と東電

 

冒頭に述べた「福島原発4号機の核燃料問題を考える議員と市民の院内集会」は、このような背景で開催されるに至りました。13人の国会議員が呼びかけ人となり、脱原発政策実現全国ネットワークの主催で行われました。



 第1部では、アメリカの原子力技術者アーニー・ガンダーセンさんが講演を行い、私は特別スピーカーとしてコメントを述べました。第2部では、経産省から資源エネルギー庁の課長と、東電から課長クラス7名が出席し、彼らに対するヒヤリングが行われました。

 あらかじめ、東電に対しては、飛散防止剤の影響や鉄筋の腐食、燃料棒取り出しの計画などについて、質問書を提出してありました。また原子力安全・保安院(資源エネルギー庁の特別機関)に対しては、企業任せの事故処理を改めて国が前面に出て迅速に対応する必要があることや、国際技術協力チームが必要であることなどにつき、やはり質問書を提出していました。



 第1部でガンダーセンさんは、以下のような重要な指摘をしました。これが後に、処理体制の驚くべき実態が明らかになることにつながります。



①4号機の燃料プールの水が地震で抜け、燃料棒がむき出しになると、1535本の燃料棒に火がつく。このことはアメリカで、すでに実験によって確認されている。



②その火がついたときの破壊力は、核兵器程度ではすまない。東北、関東圏は壊滅し、放射能で人がいなくなれば、福島第一原発の1、2、3、5、6号機も管理不能となり 核の暴走が勃発する。



③燃料棒に一度火がつくと、燃料棒を包むジルコニウムが水を分解し、そのときに生じる酸素で発火が起こり、水素爆発に至る危険がある。したがって、消火に水を使用することは許されない。



④消火のための化学製品はアメリカで開発されているので、これを用意しておくことが望まれる。



集会が第2部に入ると、ガンダーセン氏は東電の7名に対し、

 「最悪の事態に備えて、(第1部で説明した)化学製品の活用を考えていますか」

 と質問しました。これに対し、東電側からの答えは以下のような趣旨のものでした。



 「4号機は十分に補強しているので崩壊はあり得ない」

 「燃えるようなものはなく、消防体制も強化している」



 これを聞いて、会場に集まった人々は一様に愕然としました。東電の面々は、水による消火が問題外であることなど、まったく理解していない様子だったのです。世界中が固唾を呑んで見守っている4号機問題という重大問題について、当事者である東電の認識があまりにもお寒いものであることが暴露された瞬間でした。



会場から「全然わかってない!」と罵声

 

会場からはたちまち罵声や怒号、叱声が次々と起こりました。

 「何をバカなことを言ってるの?」「燃えるものがあるだろう!」「想定外じゃすまないんだよ!」

 騒然とした雰囲気の中、資源エネルギー庁の課長が話を引き取って、次のような趣旨の発言をしました。



 「万が一、プールが損壊して水が漏れた場合、コンクリートポンプ車を用意して水を・・・」



 課長はこの発言を最後まで続けることができませんでした。会場から遮るように、「ガンダーセンさんの話を聞いていたの?」「水はダメだって言ってるじゃないか」「全然わかってないだろう!」といった罵声が次々と上がったからです。

 そう、東電だけでなく、国の実務責任者も「燃料棒の消火に水を使うことが許されない」という重要な事実を知らなかったのです。



 注目を集めたのは、菅直人前首相の政策秘書・松田光世氏の発言でした。松田氏は、ガンダーセン氏が述べた消火のための化学薬剤に関して、こんな趣旨のことを述べました。



 「福島第一原発の事故の直後、日本政府はアメリカ軍にこの消火薬剤を送ってもらっている。だが、東電にはまだ渡していない。東電には管理能力がないと判断しているので、消火薬剤の到着を知らせてもいない。もし、4号機の燃料棒に火がつくような事態が起きたら、米軍機が山形空港から飛び立って、4号機の燃料プールに消火薬剤を投げ入れることができるようになっている。だが、そのことにさえ反対する国会議員の勢力がある」



活断層の上にある核燃料プール

 

思わぬ情報に身を乗り出して聞く会場に向かって、松田氏は続けました。

 「4号機の建屋の下の、南側3分の1くらいのところに活断層がある。核燃料プールはその上にある。大震災のとき、4号機は80㎝も右に傾いた。そこに東電は40本の棒を打ちこんで補強した。しかし、60㎝沈んだところや40㎝沈んだところもあって、地面はあちこちが凸凹になっている。それを東電の報告書では『平均58㎝の地盤沈下』と言っているが、いったい何のことやら、実態を反映していない。コンクリートもひびが入ったので、底が割れないようにさらに厚くしたが、鉄筋も入れず、ただ厚くしただけ。だから横揺れには弱い。そういうことを、国と東電は正直にすべて言うべきではないか。データを公開すべきだ。

 現行の国の基準では、活断層の上に原子炉を建ててはならないことになっている。しかし、その建てられないところに4号機の建屋がある。原子力安全・保安院ですら、『4号機の建屋が震度6強に耐えられるかどうかは言えない』と言っている。情報をもっと世の中に真面目に公表してほしい



 この松田氏の発言にショックを受けた議場からは、さまざまな発言が飛び出しました。中でも、

 「燃料棒に火がついたら、私たちが受ける被害は広島の原爆の数千倍になる」



 「震度6強を上回る地震が起こる可能性は十分にある。スマトラでは、マグニチュード9の地震の起きた18ヵ月後に、マグニチュード8.4の余震があった」

といった発言が印象に残りました。



なぜ、今すぐ燃料棒を取り出さないのか

 

そんな中、ガンダーセン氏から次のような提言がありました。



 「国は来年12月から核燃料棒を運び出すと言っているが、それでは遅すぎる。実は、もう、燃料棒の3分の2が十分に冷えているのだから、今から1年半ほどかけて、冷えているものから順に取り出せばいい。それが終わる頃には、残りの3分の1も冷えているだろう。そうやって一刻も早く、効率的に取り出すことを考えるべきだ。地震は待ってはくれない。

 また現状のプランでは、水中から取り出した燃料棒を100トンのキャニスター(核物質を入れる容器)で運ぼうとしているが、これは40トンから50トンくらいに小さく分けて回数を多く運ぶ方がよい」



この提言に対しても、東電側は冷淡でした。彼らの言い分は、



 「放射能の拡散の問題があるから、現状の屋根がない状態では、燃料棒を取り出す作業はできない。屋根をつける作業を先にする。今は、100トンの重量の燃料棒をクレーンで上げられる機械を企業に発注し、作ってもらっているところだ」



 というもので、早急な問題解決への積極的な意欲が全然と言っていいほど感じられませんでした。燃料棒の取り出しがいかに急を要するものであるか、その認識がまったく欠けた回答ぶりでした。私はこの件について、東電に強い不満を表明しました。

 

米国の専門家も東電の言い分に「戦慄した」と

 

今回の集会で判明した二つの重要な事実を整理しておきます。



 第一に、世界が安全保障問題として注目している4号機問題につき、経産省と東電が、事故から1年半を経てもその重大さを理解しておらず、最悪の場合の想定も対策も一切考えていなかったことが明らかになりました。会場が罵声と怒号で包まれたのは当然です。この体たらくにつき、私のもとにもすでに全国から怒りと失望の反響が伝わっています。



 第二に、原子力の現場を熟知した専門家アーニー・ガンダーセン氏は、「今すぐ4号機からの燃料棒の取り出しが可能だ」と指摘しました。来年末まで待つことなく作業を始められる。との見解が示されたのです。



 実は、現場で事故処理に携わる会社の責任者も、私にこう語ったことがあります。



 「処理の予算を東電が半分に削ったりするような現状を改め、国が全責任を担う体制にすれば、ガンダーセンさんの提言に沿うことは、困難が伴うかもしれませんが実行が可能です」



 集会の後、ガンダーセン氏は私宛のメールの中で、次のような意見を述べてきました。



①東電は最悪の事態が発生しうることを想像できていない。そのため、対策の必要も感じていないことが今回の集会により証明された。



②「4号機の冷却プールに燃えるものは何もない」という東電側の言い分に戦慄を覚えた。原発事故が起こった後も、東電の世界観は事故の前と一切変わっていない。



③「独立した専門家が必要」とのご意見には賛成するが、IAEA(国際原子力機関)の専門家は排除すべきである。



 4号機について、フランスの有力誌『ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール』は8月、「最悪の事故はこれから起きる」とするショッキングな記事を掲載しました。この記事では、北澤宏一元JST理事長など、4号機の施設のデータを分析した専門家を取材し、「北半球全体が長期にわたって深刻な汚染にさらされ、現代日本は滅亡する」と指摘する声を伝えています。

また同誌は、この事態の危険性を日本の政府やマスコミはいっさい伝えていないが、欧米諸国では早くから危惧されてきており、米上院エネルギー委員会の有力メンバーであるロン・ワイデン議員が昨年6月、ヒラリー・クリントン国務長官に深刻な状況を報告したと指摘しています。

 

「原発ゼロ政策を確立せよ」と野田首相に手紙

 

前述したように、私は8月下旬、広島で開催された核戦争防止世界大会に出席しスピーチをしましたが、海外の出席者が4号機問題に寄せる関心は高まる一方でした。特に、日本政府が世界を脅かすこの大問題への対応を東電に委ねたままで最大限の対応をしていないことや、放射能汚染による加害国としての罪悪感に欠けることについて、海外から厳しい批判の目が向けられています。

 以上のことを踏まえ、私はこのたび野田首相宛に手紙を出し、広島、長崎、そして福島を経験した日本が当然打ち出すべき脱原発政策の確立と、日本の名誉挽回のため、次の諸点を要望する旨を申し入れました。



①原発ゼロ政策を確立すること



②事故収拾については国が全責任を負い、4号機からの燃料棒取り出しの作業を早急に開始すること



③4号機問題の解決に人類の叡智を動員するため、中立評価委員会及び国際技術協力委員会を設置すること



④福島事故は、原発事故が人類の受容できない惨禍であることを立証するものであるから、そのような事態が起こる可能性を完全にゼロにする必要があると世界に発信すること



 今、「原発の存在自体が、倫理と責任の欠如に深く結びついたものである」という認識が、急速に国際的に広がりつつあります。それなのに日本では、福島第一原発事故の後も原発推進体制が改められることなく、原発輸出や再稼働などによって国は「不道徳」の烙印を押されたも同然で、名誉は大きく傷つけられています。



 先の集会でわかったように、原発事故の収拾体制に驚くべき欠陥があると露呈したことで、上記4項目は、一刻も早く実現しなければならない最優先の国民的ミッションとなったのです。(終わり)

<参考資料>





二律背反の現実

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2月 162013

*日本人もこの二律背反の現実をしっかり認識すべきでしょう。

以下、月刊日本 20011年 9月号より

「脱原発なくして対米自立なし 核拡散防止体制から離脱せよ」 

 藤井厳喜・竹田恒泰

<藤井 厳喜>(ふじい げんき、本名:藤井昇、1952年8月5日 – )

日本の国際問題アナリスト、未来学者、評論家。保守派言論人として知られている。東京学芸大学附属高校卒。早稲田大学政治経済学部政治学科卒、クレアモント大学大学院修士課程、ハーバード大学大学院博士課程修了。専門は国際政治。

現在、拓殖大学日本文化研究所客員教授、警察大学校専門講師、株式会社ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ・オブ・ジャパン代表取締役。



<竹田 恒泰>(たけだ つねやす、1975年(昭和50年) – )

日本の作家、法学者。専門は憲法学、環境学。学位は学士 (法学)(慶應義塾大学・1998年)。慶應義塾大学講師。家系は伏見宮家より分かれた北白川宮家の分家にあたる竹田宮家。明治天皇の玄孫に当たり、皇太子徳仁親王の三いとこにあたる。竹田恒和は父。



~原発は一度の事故でゲーム・オーバーだ~

竹田 事故の直接的原因は、冷却機能が完全にダウンしたことですが、十分な安全対策が講じられていなかったということです。「千年に一度の大津波」という言い方をしていますが、あれは嘘です。同程度の規模の津波は百五十年の間に三回来ているからです。
 国民は、大津波への対策は十分に講じられていると思っていました。ところが、全く対策は講じられていなかった。今回事故が起こっていなかったとしても、五十年、百年という期間で見れば、いつか、どこかで原発事故は起きていた可能性は高いと思います。今回、「想定外」という言葉が氾濫しましたが、あらゆる事態を想定するのが安全対策の基本です。事故の当事者が「想定外」などと言って責任を回避するのは許し難いことです。
 電源をもっと上部に設置しておくべきだったとか、そういった小手先のことではありません。大津波に対する様々な対策を講じていなかったにもかかわらず、安全だと言ってきたことが問題なのです。
 

原発推進派は、「この部分を少し工夫すれば、より安全になる」というような言い方をしていますが、原発事故の被害はあまりにも甚大で、一度の事故も許されません。もちろん、列車事故や飛行機事故の被害も大きな被害をもたらすケースがありますが、原発事故の被害はそれらの事故の被害とは桁が違います。原発の場合には、事故を繰り返し、試行錯誤をして、安全なシステムに改善していくというようなことは許されないのです。絶対にミスを犯してはいけない。「今回ここに問題があったので事故が発生しましたが、そこを改善しましたから同じ原因の事故は起こらないでしょう」というようなことは、原発に関する限り成り立たないのです。原発は一度でも事故が起きたら、そこでゲーム・オーバーなのです。





藤井 仰る通りだと思います。例えば、列車であれば、事故が起きたらその原因を究明し、改善していくことは可能です。しかし、原発は原理的に改善していくことはできないと思います。原発事故は、他の事故とは質が全然違います。火力発電所の事故とか、石油コンビナートの爆発事故とかは、たとえ大事故に発展したとしても局地的な被害に留まります。しかし、原発事故の被害は、その規模と範囲があまりにも大き過ぎる。核兵器は「大量破壊兵器(Weapons of Mass Destruction)」と呼ばれていますが、私は原発事故を「大量破壊事故(Accident of Mass Destruction)」と定義したいと思います。
 

原発は一度事故が起きれば、取り返しのつかないことになります。竹田さんの前だから言うわけではありませんが、今回の原発事故について、私は心から天皇陛下に対して申し訳ない、靖国の英霊に対して申し訳ないと思います。広島、長崎への原爆投下は許せないことではありますが、戦争中に敵がやったことです。これに対して、今回の事故は、三発目の原爆を日本人の手で落としたに等しいのです。とんでもないことをしてしまった。ところが、当事者には大変なことを仕出かしてしまったという感覚がない。

那須の御用邸にも放射能汚染は広がっています。東京の中心にある皇居も僅かではありますが、放射能汚染を受けてしまいました。もちろん一般国民にも健康被害が広がっていくかもしれない。国を愛する者として、そういうことに思いいたらず、ただの事故で済ませてしまうことはできません。
 

「自動車事故では年間七千人死んでいるが、原発事故では死んでいないではないか」という議論がありますが、これは事故とテクノロジーの本質を全く理解していない議論なのです。自動車は完成されたテクノロジーです。しかし、それでも事故は起こる。ただし、自動車事故はほとんどの場合、技術的な問題によって事故が起こるわけではなく、人為的なミスで起こるのです。ところが、原発は運転しているうちに、やがて事故が起こるようにできているのです。技術として未完成なのです。
 しかも、何億年も動かない岩盤があるという条件があるならばまだしも、地震列島日本で安全に原発を動かすことなどできません。実際に事故は起こったのです。ここにいたれば、もう原発は諦めるしかないのだと思います。

 

竹田 完璧な技術など、もともとないのです。飛行機は、どんなに安全になったとはいえ、墜落することもあります。ライト兄弟が空を飛んでからまだ百年ちょっとしか経っていません。人類が五千メートル以上の深海に潜る技術を開発したのも、つい数十年前の話なのです。人類は未だマントルまで掘る技術を持っていません。私たちは意外と地球のことをわかっていないのです。
 蚊が飛ぶ原理も人類はまだ解明していません。鳥が飛ぶ原理は、航空力学上、説明がつくのですが、蚊は飛び立つときの周波数が高過ぎて、理論上は飛ばないらしいのです。蚊が飛ぶ原理がわからないほど人類は無知だということです。そのことがわかれば、原発を安全に動かせるという考えが人類の奢りであることもわかります。



藤井 非常に漠然とした言い方になりますが、原子を燃やすというのは非常に難しいことなのです。いままでは分子を燃やしてエネルギーにしてきましたが、原発は原子を燃やしてエネルギーに変えようとしているのです。原発は、従来とは全然次元の違うテクノロジーなのであり、確立されたものではありません。

 

核保有のためには脱原発しかない……藤井
―― 脱原発と核保有は両立するのでしょうか。

藤井 両立するというよりも、核保有のためには脱原発をするしかないのです。原発を推進するためにはNPTに加盟していなければならいのです。NPTに入っている限り、核武装はできません。NPT体制とは、憲法九条体制と同じように、日本の自立した防衛力の整備を不可能にする体制なのです。
 一九五三年のアイゼンハワー大統領の「平和のための原子力」演説以来、いわゆる原子力の平和的利用が促進されてきました。これに対応して、日本への原発導入の旗を振ってきたのが、中曽根康弘氏や正力松太郎氏です。
 しかし、アメリカは、原子力の平和的利用を促進する一方、核保有国を増やさないという方針を貫いてきたのです。つまり、原発を推進することと核兵器を保有しないこととは、予めパッケージなのです。これが条約として明文化されたのが、NPT体制にほかならないのです。「原発をやらせてやる、そのために原料もノウハウも提供してやる。しかし、絶対に核兵器を持ってはいけない」ということです。
 実際、私が「核武装しよう」と言うと、「それはだめだ。原発が止まる」と言った原発推進派の人がいました。その通りなのです。NPTを脱退すれば、核燃料を輸入できなくなります。そして、NPTに加盟している限り核武装は推進できないのです。二律背反なのです。

 <以下略>

ユダヤがわかると世界が見える?!

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2月 112013

今から30年以上前に宇野正美氏が「ユダヤがわかると世界が見えてくる」と言う本を書き、70万部を超えるベストセラーになったことがあった。また、聖書研究家の山本七平氏がイザヤ・ベンダサンと言うユーモアたっぷりのペンネームで「日本人とユダヤ人」と言う本を出版して、「ユダヤ人の発想」というものを日本人に紹介していたこともある。これらのエッセイは、たしか高校の英語の教科書まで載っていたことがあった。



 

たしかに「ユダヤがわかると世界が見える」ことは間違いないことである。 

世界に最も影響を与えた「聖書」という本をシュメール文明等の神話等から創り出し、共産主義をつくり、アメリカ大陸を発見し、素人には訳のわからない相対性理論(現在の最先端の物理学ではすでに破綻をきたしている理論だが、)をつくり、その結果、原爆を人類にもたらし、中央銀行という超合理的な金儲けのシステムを世界に押しつけ、世界の富を実際に支配する民族?(=他者への憎悪と嫉妬に呪縛されている精神で跳梁するとも言える面をもつ人たち)のことを知らなければ、現在の私たちが住んでいる世界を客観的に見ることができないのは、当たり前のことである。

 ところが、この当たり前のことを理解させない力が目に見えない形で働いていることもまた、事実である。彼らが絶大な影響力を行使している宗教、教育、マスコミが一般の人々に大きなスクリーンを何重にもかけているからである。 

 考えてみれば本当に不思議なことである。彼らが創り上げたシステムが公明正大なものであったなら、そんなことをする必要は全くないからである。

 今回は、そのことを理解するための本を厳選して紹介させていただく。



まず、最初に紹介するのは、三島由紀夫を高く評価していた評論家村松 剛氏の「ユダヤ人」(中公新書)という本である。この本を通読すれば、一般に流布されているユダヤ人についての情報を整理することができる。基礎知識をつけていただいた後に読んでいただきたいのが、長谷川三千子氏が書いた「バベルの謎~ヤハウィストの冒険~」という知的ミステリーである。この本は、和辻哲郎文化賞受賞した本である。

この本に登場するヤハウィストというのは、ユダヤ教の神ヤハウェの天地創造の話を書いている「創世記」に始まるモーセ五書(残りは「出エジプト記」、「レビ記」、「民数記」、「申命記」の4つ)を書いたとされる一人の人物についてドイツの聖書研究家ゲルハルト・フォン・ラートが名付けた名前である。上質の推理小説を読むような味わいのある本である。小生も若い頃、「聖書を読まなければ、文学は理解できない。」という言葉を真に受けて岩波文庫で全冊そろえて読もうとしたことがあった。

だが、典型的な日本人である私には、この物語に充満している激しい憎悪と呪詛の言葉になじむことができずに放り出してしまった思い出がある。私にはこの物語に登場するヤハウェ神がとても神というような高貴な存在に思えなかった。エゴイスティックな横暴な権力者にしか見えなかったのである。

この本の一番の肝は以下である。

「「カナーンの地」は、イスラエルの民にとって「故郷」と呼ぶべき類の地ではなかった。そもそも、それは事実の上から言って、彼らの「故郷」ではないのである。それはカナーンの人々が住みつき、根づいていた地なのである。しかも、彼らイスラエルの民がその地を侵略し、そこに定住するようになったのは、それらカナーンの人々が築いた文化にあこがれ、それにあずかろうとしてのことではなかった。さきに見たとおり、イスラエルの民と「カナーンの地」との関係は、徹頭徹尾ヤハウェ神に依っている。 

 この地は、ヤハウェ神によって示され、命じられ、約束されたことによってのみ、イスラエルの民と結びついているのであり、それ以外の形で結びついてはならないのである。」(本書より) 

作者はバベルの塔の物語のちぐはぐさの中から、「さすらうもの、さまようもの」としてのイスラエルの民の宿命を見事に暴き出した。ここには、絶望とそこから生まれるニヒリズムが見え隠れする。

ヤハウェ神に「選ばれた民」(選民思想)である彼らは、非ユダヤ人が創り出したすべてのものを信じていないのでないか。逆説的だが、ここから、彼らの抜群の知力と行動力が生まれている。

 ユダヤ人という人々が持つ絶望とニヒリズムについて理解していただいた後に読んでいただきたい本が、ユースタス・マリンズ氏「真のユダヤ史」(成甲書房)である。

時々、レポートで紹介した苫米地英人氏(苫米地 英人(とまべちひでと、1959年9月7日 – )は、東京都出身の認知科学者(計算言語学・認知心理学・機能脳科学・ 離散数理科学・分析哲学)。TPI日本代表。カーネギーメロン大学博士(Ph.D.)の持つ会社が発行している雑誌サイゾー2012年10月号にこんな感じでこの本が紹介されている。

 

(以下引用)

――世界最大のタブーとして、しばしば挙がる“ユダヤタブー”。その背景にあるのは「世界の経済と金融を動かすのはユダヤマネー」という陰謀論に端を発するが、その真相はいかなるものなのだろうか?

ここまでは、陰謀論の歴史学的検証をひもといてみたが、陰謀論の中でも世界最大のタブーとされているのが、ユダヤ人をめぐる報道と見る向きは少なくない。周知の通り、日本国内において最大のユダヤタブーに触れた事件は95年の「マルコポーロ事件」だろう。この事件において注目すべき点は、ユダヤ人団体であるサイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)の行動が抗議活動だけにとどまらず、文藝春秋が発行する全雑誌への広告出稿のボイコット呼びかけにまで発展したことだ。この事件に深く関わったジャーナリストの木村愛二氏が文藝春秋の関係者に聞いた話では、「広告出稿のボイコットに加えて、執拗な電話攻勢も行われた。また、国内にある某宗教団体からの抗議、その団体が動かした政治家からの圧力など、想像を絶するすさまじさであった」という。

 それにしても、ユダヤ人および彼らの団体が、日本のメディアに対してもこれほどまでに力を持てるのはなぜなのか?

 まず、ユダヤタブーにおける実行機関となるのがユダヤ人団体だが、これらの多くはアメリカに活動拠点を持っている。その中でも有名な団体は、「マルコポーロ事件」のSWC、アメリカ最大の名誉毀損防止同盟(ADL)などが挙げられる。社会活動家であり、ユダヤ資本に関する著述を数多く手がける安部芳裕氏によると、これらの団体はそれぞれに独自の監視網を持ち、反ユダヤ主義的な報道を素早くキャッチするという。

(引用終わり)

 

ところで、著者のユースタス・マリンズ氏は、日本人読者に向けて言葉を寄せている。

(以下引用)

<序文   日本の読者の皆さまへ> 

 

 本書が日本の皆さまに読まれることは、私の名誉であります。大日本帝国が第二次世界大戦へと巻きこまれていく背後にあった事実を、日本民族は本書ではじめて発見することになるでしょう。

フランクリン・デラノ・ルーズヴェルト政権は、貿易等の経済制裁をもちいた日本に対する一連の挑発行為を通して、むりやり日本に太平洋地域のアメリカ保有財産を攻撃させようと謀りました。ルーズヴェルトが日本軍の暗号を解読ずみであったため、ホワイトハウスには敵対行為がいよいよ勃発するのに先立って日本側の交信をすべて秘密裡に明かされていました。

 1941年12月6日夜、サンヘドリン、すなわちユダヤ最高法院のホワイトハウス駐在員バーナード・バルークは、合衆国陸軍参謀総長ジョージ・C・マーシャル将軍およびルーズヴェルト大統領と同席していました。何時間か経つうちに、3人はパニックにおちいりました。暗号解読された通信によって、日本の作戦部隊がパールハーバーに接近中であることが判明しましたが、同時に、攻撃前にアメリカ側に探知されたら攻撃を中止して日本に引き返せとの厳しい命令を、日本側の作戦司令官は受けていたからです。

日本軍は果たして攻撃するであろうか? もし日本軍の暗号電文がホワイトハウスによって解読追跡されていることが知れたら、攻撃は取り止めになり、日本と合衆国を第二次世界大戦へ巻きこむという世界ユダヤの計画は水泡に帰すことになります。しかし日本軍は、監視下に置かれていることに気づくことなく、全力でハワイに向かって近づき、攻撃を開始しました。

ルーズヴェルト、バルーク、マーシャルは、近づきつつある攻撃に関するすべての情報を米国太平洋方面軍指揮官に洩れないよう入念な措置を講じました。

 はっきりしていることは、もし彼らがパールルハーバーの艦隊に警告を発していたら、日本は攻撃しなかったということです。沈黙をつづけることにより、ルーズヴェルトは日本のパールハーバー攻撃を奨励したのです。そしてこのことが、大統領自身の国の何千人という若い兵士船員たちが警告も受けず死んでゆく運命を決したのです。まさにレオン・トロツキーが口ぐせにしていたとおり、「卵を2、3個割らなければ、オムレツはつくれない」であったのです。

 それからなんとルーズヴェルトは、パールハーバーの司令官だったキンメルとショートとを、攻撃に対する準備ができていなかったという「重過失」の嫌疑で軍法会議にかけたのです。後日、キンメルの息子は、任期切れ寸前のジョージ・ブッシュ大統領に父親の特赦を嘆願しました。ブッシュは、「私には歴史を書き換えることはできかねる」といって、そっけなく断わりました。

 戦後、ダダラス・マッカーサー将軍が日本占領連合軍最高司令官となったとき、新たな経済の絶対支配者としてウィリアム・ドレイパー将軍を帯同しました。ドレイパーはウォール街の銀行ディロン・リード社の共同経営者であり、同社は1924年に1億2000万ドルの債券を発行することによりドイツを再軍備へと踏みださせ、第2次世界大戦への道を避けられないものとしました。

 ドレイパーの会社ディロン・リードを率いていたのはクラレンス・ラポウスキーでしたが、彼は自分の名前をディロンと改名したのです。ディロンはテキサスのユダヤ入で、その息子C・ダグラス・ディロンはケネディ大統領の財務長官となりました。C・ダグラス・ディロンの娘は結婚してヨーロッパの貴族となっています。第2次世界大戦後、ドレイパー将軍の指揮のもとで日本経済は、ドレイパーのほんとうの主人ロスチャイルド家が策定した路線に沿って再編されました。

 当時、イギリスのジャーナリストのコンプトン・ペイカナムは「ニューズ・ウィーク」誌の通信員をしていました。ペイカナムはまた天皇ヒロヒトの親友の一人でもありました。私はペイカナムを訪ねたことがあります。彼が私に語ってくれたのは、天皇はユダヤ陰謀家たちの悪辣さを絶対に理解できない、なぜなら天皇は即位以来まったく信義というものをもたない人間と接触したことが一度もないからだ、ということでした。 

 日本民族は、ユダヤ人のもつ血への欲望のゆえに、第2次世界大戦中、信じがたいほどの残虐非道すなわち東京大規模爆撃、広島・長崎への原爆攻撃などを耐え忍びました。これら大量殺人は軍事的にはなんらの影響をともなわず、ただただ、あらゆる歴史においてもっともおぞましい大量虐殺にすぎなかったのです。日本がユダヤによって原子爆弾の標的として選ばれたのは、原子爆弾のユダヤ人開発者らがユダヤの地獄爆弾を非白人系の民族にテストしてみたかったからにほかなりません。

 ハリー・トルーマン大統領は原爆の使用については疑念を抱いていたのですが、サンヘドリンのもっとも邪悪な使用人の一人ジェームス・ブライアント・コーナントが原爆の使用を熱心に説き、とうとう説得させられてしまいました。コーナントはハーバード大学総長になった化学者ですが、ウィンストン・チャーチルに依託されて、ドイツに対して使用するための炭疸(たんそ)爆弾を開発しました。

 この爆弾は、ドイツに生存するすべての生物を殺戮し、長期間にわたってそこには誰も住むことができないようにするはずでした。しかしコーナントが開発したときには、すでにドイツに使用する時期を失していました。彼は炭疸爆弾を日本に使用するよう求めたのですが、ユダヤ陰謀家たちは日本民族に対して彼らの地獄爆弾をテストすることを決めたのです。

 私は公式の法廷記録のなかで、ジェームス・ブライアント・コーナントこそが「第2次世界大戦の最大の戦争犯罪人」であると繰り返し述べてきました。彼はのちに敗戦国ドイツの高等弁務官となり、1955年にドイツ語に翻訳された連邦準備制度の歴史に関する私の著作の焚書を命じました。彼の補佐官はベンジャミン・ブッテンワイザーで、西半球におけるロスチャイルド権益の秘密アメリカ代理人であるニューヨークのクーン-ロエブ商会の共同経営者でした。ブッテンワイザーの妻、レーマン銀行一族のヘレン・レーマンは、アルジャー・ヒスの名高いスパイ事件の裁判で弁護人でした。ブッテンワイザーは、アルジャー・ヒスが刑務所に収監されていた期間、ヒスの息子のトニーを100万ドル相当のマンハッタンの邸宅で養育しました。

 この情報をお伝えすることによって日本の皆さまが、ユダヤが日本民族に対して負わせてきた極悪陰険な国際的勢力についてのよりよき理解を得る一助にされることを私は心から希望します。

                           1994年11月25日

                             ユースタス・マリンズ

(引用終わり)

 

<ユースタス・マリンズ Eustace Mullins

1923~2010年。メイ・フラワー号で米国に渡った初期移民以来の名家に生まれ、ワシントン・リー大学、ニューヨーク大学、ノースダコタ大学、現代美術研究所などで学ぶ。1942年に准尉として入隊、空軍に配属され、第二次世界大戦に3年2ヶ月従軍した。終戦後の1949年、反戦を訴えて国家反逆罪で収監されていた米国の著名詩人エズラ・パウンド(20世紀の詩に決定的な影響を与えながら、つねに騒然と論議を呼び起こしてきたアメリカン・モダニズムの巨星)に私淑、人生の大きな転換点を迎える。調査専門職員として連邦議会図書館に勤務、「赤狩り」で有名なジョセフ・マッカーシー上院議員の共産党資金源究明の調査に協力する。職員免官後は執筆・講演活動に専念、ユダヤ国際勢力に蹂躙された世界の秘密を追究する数々の著作を発表した。享年86。

以前にも、紹介した「自由民権 村松愛蔵とその予告」柴田良保著という本も書かれていたことと同趣旨のことをユースタス・マリンズ氏も書いている。

「日本という国家は、今日の世界において人種的にまとまりのある数少ない共同体の一つであり続けているために、カナン族(ユダヤ人と称する)の世界権力はこの国(日本)を次なる絶滅候補に選んでいる。」とのことである。

 

村松愛蔵の本にも以下のように書かれていた。

 

「日本人が自発的に日本人でなくなる道をとるなら、それは日本民族の集団自殺であるが、それでも良い。だが、もしも日本人がその歴史的民族的伝統を復活させるようなことが、あれば我々キリスト教、ユダヤ財閥、フリーメーソン連合はただちに日本を包囲して今度こそ、日本民族を一人残らず、皆殺しにする作戦を発動するであろう。」

参考:http://www.yamamotomasaki.com/archives/619

 あまりにも興味深い符合である。

この本でどんなことが指摘されているのかを少しだけ紹介しよう。(以下)

・『聖書』のなかでは、ヘブライ人を意味する「Habiru」という語が登場するときは、すべて強盗、もしくは人殺しを指して使われる。

・彼らははじめユーフラテス河の下流域に登場し、それから北方に転じてメソポタミアに移動した。そして当時のこの地域のあらゆる民族集団が利用した道すじ、つまりシリアを経てカナンとその向こうの荒野へという道を辿った。飢饉に追い立てられると、エジプトにさえ侵入した。ユダヤ人と遭遇した国々は、彼らを『河の向こう岸からやてきた者』は「’Ibrim」であった。これがつまり英語ではヘブライ人Hebrewsとなる。彼らのなかにはカナン地域内にとどまる者もいた。また、東方の軍事大路に沿って、その近隣の砂漠や荒野に落ち着く者もあった。そこで彼らは放浪生活を送った。一方、少数の一派が飢餓に追い立てられて最終的にエジプトへと無事たどり着いた。エジプトでは彼らをファラオが庇護した。

・こうしたエジプトへの移民集団を、この国に溶け込ませる、つまりそこに先に移住してきていた他のセム系支族のなかに吸収すべく、あらゆる手段が講じられた。・・・それにも関わらず、溶け込みは起こらなかった。

・エジプト王国は苦悩していた。社会組織がすでにガタガタだった。暴動が国中に広がった。侵入者どもは、何の防衛もしない民衆を餌食として襲いかかった。富める者はすべてを強奪されて寝る住まいもなく、貧しい者がそれを手に入れた。ここに描かれているのは、単なる地域的に限定された災難ではなく、大規模かつ国民全体を巻き込んだ災難であった。しかるにファラオは奇妙にも何の手も打たなかった。

・東方からやってきた素性の卑しい民が、図々しくもエジプトを侵略し、主力部隊によって易々と、一度の戦闘すらなくこの国を制圧した。

・かつてもっとも強力な王国であると知られたエジプトで、それは起こった。それはバビロンでも起きたことだった。ユダヤ人が征服者(ヒクソス)のために道を開いたということなのだ。エジプトの征服者はヒクソス族、すなわち羊飼いの王たちで、ヒクソス族は戦闘を一度も交えずにエジプトを打ち破り、1世紀以上にわたって民衆の上に専制を布いたのである。

・ヒクソス族がエジプトから追放されたあとでは、エジプト人は背信行為の懲罰としてユダヤ人を重労働に従事させる終身奴隷にした。

・終身奴隷に耐えるかわりに、ユダヤ人はパレスチナに帰り放浪の盗賊生活を再開することを許してほしいとファラオに懇願した。しかし、怒り狂った民衆は、ユダヤ人への懲罰は途中でやめるべきではないと要求し、ファラオもこれに同意せざるをえなかった。するとユダヤ人はあらゆる姦計を用いて自由を得ようとした。毒薬を用いて飲み水を汚染し、悪疫をエジプト人のあいだに引き起こしたのだ。そして、ついにエジプトから出発することを許されたのである。(引用終わり)

このように通説とは全く違うことが書かれている。

訳者の天童氏が巻末の解説で興味深い指摘をしている。(以下引用)

 

ユダヤ人寄生の終焉と日本人の使命

 

 マリンズは「ユダヤ人の第一の関心は、自分自身の安全なのである。あくまでユダヤ人は宿主に取り憑くだけ。そしてすべては、宿主の未来を含めて、彼らのために犠牲にされるのだ。」と極言しているが、ユダヤ人に寄生された米国の終焉も近いはずだ。1912年にジキル島で謀議され連邦準備制度も100年の歳月を経てその役目を終えた。端的には連邦準備銀行が大きな負債を抱えるという前代未聞の事態に、使い捨ての宣告を見て取ることができよう。米国は寄生され吸い尽くされて終わる。共産支那もユダヤ人に寄生されて久しく、吸い尽くされて後にいずれ九つぐらいに分割される運命にあると思われる。

 そうなると、ユダヤ人にとってももはや世界のどこにも寄生すべき対象がないということになる。これまた前代未聞の事態が訪れるのだ。ギリシャ国債をめぐるゴールマン・サックスとシティグループの相克のように、すでにユダヤ内部での共食いが始まっているとの説もある。

 収穫対象たる植民地フロンティアを失い、寄生対象を無くしたユダヤ人の運命や如何にと考えるとき、これからは、否でも応でも「共生」するしか道はないと思われる。善か悪か、白か黒かの二者択一、殲滅の思想ではなく、白でもあり、黒でもあるという日本的な曖昧さのなかにこそ、人類全体の共に進むべき方向があるのではないだろうか。

(引用終わり)

 

 ただ、マリンズ氏が熱心なキリスト教徒とは言え、この本のなかで、イエスを金髪の白人としていることには、無理があるのではないか。スファラディ系(アジア系)ユダヤ人だったイエスが白人であるはずはない。残念なのは、これほど細かく論証した本にもかかわらず、ユダヤ人の定義をしていないことである。どちらにしろ、一神教の世界観は、ユニティーの世紀、21世紀にはふさわしくないものである。

さらに理解を深めるための一冊は、中国人が中国の通貨戦略を啓蒙するために書いた近代から現代までの金融・通貨史である「ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ」宋鴻兵著である。とにかく、国際銀行家という人たちの考え方がよくわかる本である。以前、「通貨戦争」という本をレポートで紹介させていただいたことがあるので、ご記憶の方もあるかもしれない。参考:http://www.yamamotomasaki.com/archives/930

 

著者の宋鴻兵(ソンホンビン)氏は中国四川に生まれワシントンの大学で情報工学を学び、2002年からはファニーメイとフレディマックで上級顧問を務めたエコノミスト。現在は環球財経研究所院長。

ロスチャイルド財閥を筆頭とした国際銀行家たちの「金融による世界支配」の現実が、じっくりと描かれていて非常に勉強になる。世界の仕組みの背景と、これから起こる出来事の「本当の意味」のヒントを与えてくれる良書ではないかと思われる。

<主な内容>

 

○各国の「中央銀行」は、政府機関ではなく私有銀行である

・米国FRB、イングランド銀行、ドイツ連邦銀行、スイス国立銀行、イタリア銀行、日本銀行などは政府機関ではなく、本当の所有者は民間の銀行家であり政府の干渉を拒絶している

・フランス銀行は政府の傀儡とみなされ、この「エリートクラブ」からは排除されている

・中央銀行が民間所有でないのは北朝鮮、リビア、キューバ、イランなど数カ国しかない

・米国では政府は通貨を発行できず、債券を発行しFRBに通貨を発行して貰う

・日銀は、日銀法で資本金の55%を政府が保有するが、政府に議決権はない

○中央銀行の目的は通貨の発行権を独占する事

・「通貨」は商品のひとつであるが、全ての人が必要とする商品である

・商品の独占権を持つものは巨万の冨を得る

・通貨発行権を得れば、納税者から永遠に利子収入を得ることが出来る

・アメリカの歴史は、通貨の発行権をめぐる大統領と銀行家達の暗闘の歴史であり、その過程で7人の大統領が暗殺され、数知れぬ議員が命を落としている

 

○戦争もインフレも銀行家達がおこす

・戦争時には、平時では考えられぬ速度と規模で物資の消耗が行われる~米英戦争も第一次、第二次世界大戦も国際銀行家達の利益のために引き起こされた

・金融政策をコントロールし、インフレを作り出すことによって、人々の財産を通常の何分の一かの価格で収奪できる。(これは「羊毛狩り」と呼ばれる)

・通貨の流通量を増やす→お金の価値が下がり、モノの値段が上がる(インフレ)→パン一個が10万円になる→国民の貯金はあっという間になくなる→通貨の供給量を突然減らす→物価は暴落し、銀行家達はタダ同然の値段で土地や不動産を買い占める

・冷戦後、米国の専門家達によって「恒久平和が訪れた後の世界」が研究された結果、社会秩序を保ち国民が政府の指導を受け入れる為には何らかの外敵に対する「戦争システム」が必要との結論が出た。この戦争の最初の候補は「貧困」、次は「宇宙人の侵略」で、最終的に「環境破壊」が採用された

○通貨の無制限な発行を可能にする為、金本位制度を廃止した

・通貨が金と連動していた時代の各国インフレ率は100年間でほぼ0%であった

・しかし、通貨が金との兌換に縛られておれば無制限な発行はできない

・銀行家達はこの鎖を断ち切るため御用学者を動員した

・ケインズもグリーンスパンも、かつては金本位制の擁護者であったが転身した

1971年に通貨が金の束縛を脱し(ニクソンショック=ドルと金との兌換停止)、銀行家達は思うさま信用を拡大できる条件を手に入れた

・金本位制の復活を試みたレーガンは「精神異常者」に銃撃された

・政府の債権を基に発行される通貨は基本的に「債務」であり、「債務通貨」が増えれば増えるほど銀行家達の懐に入る利子収入は増える

・政府債務を肩代わりさせられるのは納税者である国民である

○インフレの発生源「部分準備金制度」

・預金者は、銀行に預けたお金をすぐに全額引き出すことはない

・統計的には預かったお金の10倍を貸し付けても問題ない=貸し出すお金の10分の1を実際に保有しておればよい(部分準備金制度)

・つまり銀行は、100万円の預金から900万円の貸付を作る事ができ、無から莫大な財産を得る

・これは通貨を発行しているのと同じ事である

・人民元は中国政府が発行しているが、中国に進出した外国銀行が「部分準備金制度」を利用して貸出しを始めれば、政府からは見えない通貨が流通し始める

 

○銀行家達の最終目標は世界政府と統一通貨?

・彼らの目的は、少数のエリートで世界中の政府を支配し、統一通貨発行システムを牛耳り全ての人間から「世界税」を徴収する事

・この「宣戦布告のない戦争」は既に開始されている

・どんな大企業も、資金が引き上げれば立ち行かない。金融(資本の流れ)は経済発展の戦略空軍であり、これの援護なしでは悲惨な白兵戦や同士討ちの危険がある

 それでは、興味深い言葉を本書から直接紹介しよう。

「私は、イギリスがどんな傀儡を諸国の王位に就けようと、あるいは太陽の沈まぬ帝国を治めさせようと、一切気にしない。大英帝国を支配するのは、通貨供給を支配する私だ。」

~ネイサン・ロスチャイルドがワーテルローの戦い(1815年)の後に巨万の富を得て言った言葉~

「そのもの自体の価値に由来する金貨と異なり、法律によって強制運用力をもたせている紙幣などの、「信用貨幣」や、小切手といった金融システムを理解できる人間は少ない。そして数少ない人間のなかには二つの人種がいる。システムからもたらされる利益に興味を持つ人間と、そのシステムの施しに頼る人間、つまり政治家だ。どちらにしても彼らは我々のすることに反対などできない。しかも残された数多くの人間は、このシステムから資本が生まれることを理解できる頭脳を持ち合わせておらず、吸い取られても文句を言うこともなく、また、このシステムが彼らに不利益を与えていることを疑おうともしない。」~1863年 ロスチャイルド兄弟~

「政府が銀行家のお金を頼りにするようになれば、政治は政府の指導ではなく、銀行家に委ねられることになってしまう。お金を出す手は、受け取る手より、いつも高いところにあるからだ。お金に祖国などない。金融家は愛国心や高尚な振る舞いなどまったく、関心がなく、彼らの唯一の目的は金儲けなのだ。」~1815年 ナポレオン~

「私には二つの敵がいる。前面は南軍と背後の金融機関だ。前者に比べると後者は最大限の脅威である。私には私を震え上がらせるような危機が忍び寄ってくるのが見える。私は私の国のことが心配でならない。マネーが国民を統治し、マネーが国民を傷つけ、最終的には少数の人間に富が集中するのだろうか。我々の共和国は破壊されるのか。どんな時より、戦争の時よりも、今、私は国家の行末をとても心配している。」~第16代大統領 リンカーン~

「リンカーンは議会から権限を与えられ、国民に国債を発行することで資金を集めた。これにより、アメリカ国家および政府は、海外金融家の罠から脱出することができた。しかし、国際金融家の支配からアメリカが逃れたことを国際金融家が悟ったとき、リンカーンの死期は迫っていた。」~鉄血宰相ビスマルク~

「立派な産業国家は、その国自体のしっかりとした信用制度で管理しているものだ。しかるにわが国の信用制度は一部に集められている。つまり、わが国の発展と我々のすべての経済活動は、完全に少数の人間に集中的に握られているのである。我々は世界中で最悪の支配を受け、もっとも徹底的に、そして完全に管理されるようになった。今の政府は自由に意見も述べられず、もはや、大勢の国民に選ばれ、確信をもって迎えられている政府ではなくなり、ごく少数に支配され、強要する政府に成り下がった。わが国の工業、商業を営んでいる幾多の人々は何かにおびえている。その目に見えない権力は組織的に、静かに、いたるところに蔓延し、互いに密接に繋がっている。徹底的にそしてすべてに広がるその権力を誰も避難することができない。」~第28代大統領ウッドロー・ウイルソン

「「連邦準備法」は地上最高の信用を与えられた。大統領が決定に署名した途端、目に見えていなかった金銭権力が合法的なものになった。国民は短期間では、それを見抜けないだろうが、数年後にはすべてが見えてくるはずである。そのときに、国民が金銭権力から自らを解放するために、もう一度「独立宣言」を宣告する必要がある。金銭と権力は最終的には議会を支配することができる。我々上下両院の議員が議会を欺かない限り、ウォール街は我々を欺くことができない。国民のために議会があるのであれば、国民は安定した生活を営むことができる。議会の最大の罪は、「連邦準備法」を成立させたことであり、この法案は、この時代における最大の「立法犯罪」である。共和党と民主党の指導者とそして秘密会議は、ふたたび、国民が自らの政府から利益を享受する機会を奪ったのだ。」~1913年 リンドバーグ議員の下院演説~(大西洋横断飛行を成功させたリンダバーグ2世の父)

「我々の共和国の真なる脅威は、目に見えない政府である。巨大なタコのように、その伸びた腕と数え切れないほどの吸盤で、我々の都市や州や国にぴったりと吸い付き、締め付けている。このタコとは、ロックフェラーとスタンダードオイル・グループと国際金融家と呼ばれる、強大なエネルギーを持つ少数の金融王者のことである。彼らは、自分たちの私利私欲のために合衆国政府を持っている。貨幣供給をコントロールできれば、政府をコントロールできる。そうすれば、国民とその国の資源を搾取することなど容易なこととなる。この国が誕生した当初から、彼ら金融財閥は、わが国の指導者を手のひらにのせて弄び、連邦準備銀行の通貨発行を利用してわが国から執拗に「富」を収奪する。」~1927年 ニューヨーク市長 ジョン・ハイライン~

 

19331124日付の「ニューヨークタイムズ」紙がシドニー・ウオーバーグ(Sidney Warburg)の書いた小冊子「ユダヤ財閥がヒトラーを育てた」のことを取り上げた。この小冊子は1933年にオランダで出版されたが、数日後にすべての本棚から消えてしまった。幸い資料が残っていたため、英語に翻訳され、大英博物館にも展示された。だが、後に一般への公開は禁止され、見ることができるのは限られた人間だけとなった。著者のシドニー・ウオーバーグはアメリカ最大の銀行財閥の一つ、ウオーバーグ家の一人だったが、ウオーバーグ家は小冊子の内容を完全に否定した」~本書 184ページ

「ここに一つの深謀遠慮がある。それは、世界をあまねく覆う金融システムを作り、あらゆる国の政治制度や世界経済を支配する謀略だ。このシステムの推進者は、封建制度を模し、頻繁に会合をもち、密約を交わし、協調して支配体制の確立を謀ってきた。

その中心は、スイスのバーゼルにある国際決済銀行だ。この一個の民間銀行を支配しているのは、これも民間銀行である各国の中央銀行。そして、この各国の中央銀行は、財政への融資や為替操作によって、それぞれの国の経済活動に影響を与え、政治家に見返りを与えることで、その国の政府を支配してきた。」=第42代大統領クリントンの恩師、キャロル・ギグリー教授の言葉(1969年「悲劇と希望」より)

「かつてはアメリカの敵国であった日本ほど、ロナルド・レーガン時代の財政赤字と巨額の財政支出を支持した国はない。ドイツでさえ、ワシントンの要求を無条件に受け入れたことはなかった。日本人からすれば、東京は忠誠を尽くし、セッセとアメリカの国債や不動産やその他諸々の資産を購入したにもかかわらず、挙げ句の果てに、世界の歴史上もっとも破壊的な金融災難を与えられたようなものである。」~本書 288ページ ウイリアム・エンダール)「戦争の世紀」ウイリアム・エンダール A Century of War Anglo-American Politics and the New World Order

1974713日付のイギリス「エコノミスト」誌に、イギリス産業革命時代の物価統計が掲載され、人々を驚かせた。この統計によると、1664年から、1914年の250年の間、金本位制の下で、英国の物価は安定し、穏やかな下落傾向さえ示していた。今では世界中でこれほど長期間、物価を安定させられた国はどこにもないだろう。ポンドは驚異的に安定した購買力を保っていた。」~本書 359ページより~

*参考 http://www.yamamotomasaki.com/archives/1256

 

このように西洋の歴史:世界史はある意味、金銭闘争の歴史であり、その金融政策を知らなければ、その歴史はわからないのである。そして、そのことは、ユダヤ人=他者への憎悪と嫉妬に呪縛されている精神で跳梁するとも言える面をもつ人たちの真実を知ることに繋がっていく。

ところで、最近話題になっている「日月神示」では、日本人には「弥勒の世」を作るための大変な使命があると言っている。それぞれが身魂磨きを行ない、清廉された心の良き気の波動で悪を善の中に闇を光の中に抱き参らせるように言っている。もしかすると、ユダヤ人と称する人たちを抱き参らせる日本人の出現を世界が待っているのかもしれない。

   

1月 312013

*報道されない安倍総理の「セキュリティダイアモンド構想」について

 

プラハに本拠を置く国際NPO団体「プロジェクトシンジケート」のウェブサイトに、12月27日付けで安倍晋三首相の英語論文が掲載された。しかし国内メディアは、産経新聞が少し取り上げただけで、沈黙を守っている。

 そもそも安倍総理が英語で論文を発表していたということ自体、知らない人が多いのではないか。

 安倍首相が論文を発表したのはプラハに本拠を置く国際NPO団体「プロジェクトシンジケート」のウェブサイトである。プロジェクトシンジケートは世界各国の新聞社・通信社と提携しており、各国要人のインタビュー記事を配信するなど実績あるNPO。

 その重要性は。安倍総理以外の寄稿者の顔ぶれを見ても一目瞭然だろう。ジョージ・ソロス、ジョセフ・スティグリッツ、ビル・ゲイツ、マイケル・サンデル、クリスティーヌ・ラガルド、そうそうたる顔ぶれが並ぶ。

 2月に出版されるプロジェクトシンジケート叢書では、安倍総理の論文がこれら寄稿者のトップページを飾ることになるようだが、日本マスコミの沈黙はf不可思議としか言いようがない。自国の総理が英文で世界に訴えた?メッセージを、当の日本国民が知らない状態を放置するようでは、世界に対してあまりに恥ずかしいというものである。

朝日・読売・日経といった国内大手新聞はプロジェクトシンジケートと提携しているにもかかわらず何を考えているのだろうか。取り上げたくない理由でも、どこかにあるのか。

そう言った意味でも是非、読んでいただきたい論文である。

興味深いのは、前回のレポートで指摘したヘリテージ財団のシナリオ=アメリカネオコン派の戦略に沿って外交政策を進めると安倍氏が宣言している内容だが、すでに11月の時点でこの論文が発表されていることである。



Asia’s Democratic Security Diamond

 

TOKYO – In the summer of 2007, addressing the Central Hall of the Indian Parliament as Japan’s prime minister, I spoke of the “Confluence of the Two Seas” – a phrase that I drew from the title of a book written by the Mughal prince Dara Shikoh in 1655 – to the applause and stomping approval of the assembled lawmakers. In the five years since then, I have become even more strongly convinced that what I said was correct.

Peace, stability, and freedom of navigation in the Pacific Ocean are inseparable from peace, stability, and freedom of navigation in the Indian Ocean. Developments affecting each are more closely connected than ever. Japan, as one of the oldest sea-faring democracies in Asia, should play a greater role in preserving the common good in both regions.

Yet, increasingly, the South China Sea seems set to become a “Lake Beijing,” which analysts say will be to China what the Sea of Okhotsk was to Soviet Russia: a sea deep enough for the People’s Liberation Army’s navy to base their nuclear-powered attack submarines, capable of launching missiles with nuclear warheads. Soon, the PLA Navy’s newly built aircraft carrier will be a common sight – more than sufficient to scare China’s neighbors.

That is why Japan must not yield to the Chinese government’s daily exercises in coercion around the Senkaku Islands in the East China Sea. True, only Chinese law-enforcement vessels with light weaponry, not PLA Navy ships, have entered Japan’s contiguous and territorial waters. But this “gentler” touch should fool no one. By making these boats’ presence appear ordinary, China seeks to establish its jurisdiction in the waters surrounding the islands as a fait accompli.

If Japan were to yield, the South China Sea would become even more fortified. Freedom of navigation, vital for trading countries such as Japan and South Korea, would be seriously hindered. The naval assets of the United States, in addition to those of Japan, would find it difficult to enter the entire area, though the majority of the two China seas is international water.

Anxious that such a development could arise, I spoke in India of the need for the Indian and Japanese governments to join together to shoulder more responsibility as guardians of navigational freedom across the Pacific and Indian oceans. I must confess that I failed to anticipate that China’s naval and territorial expansion would advance at the pace that it has since 2007.

The ongoing disputes in the East China Sea and the South China Sea mean that Japan’s top foreign-policy priority must be to expand the country’s strategic horizons. Japan is a mature maritime democracy, and its choice of close partners should reflect that fact. I envisage a strategy whereby Australia, India, Japan, and the US state of Hawaii form a diamond to safeguard the maritime commons stretching from the Indian Ocean region to the western Pacific. I am prepared to invest, to the greatest possible extent, Japan’s capabilities in this security diamond.

My opponents in the Democratic Party of Japan deserve credit for continuing along the path that I laid out in 2007; that is to say, they have sought to strengthen ties with Australia and India.

Of the two countries, India – a resident power in East Asia, with the Andaman and Nicobar Islands sitting at the western end of the Strait of Malacca (through which some 40% of world trade passes) – deserves greater emphasis. Japan is now engaged in regular bilateral service-to-service military dialogues with India, and has embarked on official trilateral talks that include the US. And India’s government has shown its political savvy by forging an agreement to provide Japan with rare earth minerals – a vital component in many manufacturing processes – after China chose to use its supplies of rare earths as a diplomatic stick.

I would also invite Britain and France to stage a comeback in terms of participating in strengthening Asia’s security. The sea-faring democracies in Japan’s part of the world would be much better off with their renewed presence. The United Kingdom still finds value in the Five Power Defense Arrangements with Malaysia, Singapore, Australia, and New Zealand. I want Japan to join this group, gather annually for talks with its members, and participate with them in small-sized military drills. Meanwhile, France’s Pacific Fleet in Tahiti operates on a minimal budget but could well punch above its weight.

That said, nothing is more important for Japan than to reinvest in its alliance with the US. In a period of American strategic rebalancing toward the Asia-Pacific region, the US needs Japan as much as Japan needs the US. Immediately after Japan’s earthquake, tsunami, and nuclear disaster in 2011, the US military provided for Japan the largest peacetime humanitarian relief operation ever mounted – powerful evidence that the 60-year bond that the treaty allies have nurtured is real. Deprived of its time-honored ties with America, Japan could play only a reduced regional and global role.

I, for one, admit that Japan’s relationship with its biggest neighbor, China, is vital to the well-being of many Japanese. Yet, to improve Sino-Japanese relations, Japan must first anchor its ties on the other side of the Pacific; for, at the end of the day, Japan’s diplomacy must always be rooted in democracy, the rule of law, and respect for human rights. These universal values have guided Japan’s postwar development. I firmly believe that, in 2013 and beyond, the Asia-Pacific region’s future prosperity should rest on them as well.

Shinzo Abe is Prime Minister of Japan and President of the Liberal Democratic Party. He wrote this article in mid November, before Japan’s elections.

<日本語>

「アジアの民主主義セキュリティダイアモンド」

 

  2007年の夏、日本の首相としてインド国会のセントラルホールで演説した際、私は「二つの海の交わり」 ─1655年にムガル帝国の皇子ダーラー・シコーが著わした本の題名から引用したフレーズ─ について話し、居並ぶ議員の賛同と拍手喝采を得た。あれから5年を経て、私は自分の発言が正しかったことをますます強く確信するようになった。

 太平洋における平和、安定、航海の自由は、インド洋における平和、安定、航海の自由と切り離すことは出来ない。発展の影響は両者をかつてなく結びつけた。アジアにおける最も古い海洋民主国家たる日本は、両地域の共通利益を維持する上でより大きな役割を果たすべきである。

 にもかかわらず、ますます、南シナ海は「北京の湖」となっていくかのように見える。アナリストたちが、オホーツク海がソ連の内海となったと同じく南シナ海も中国の内海となるだろうと言うように。南シナ海は、核弾頭搭載ミサイルを発射可能な中国海軍の原潜が基地とするに十分な深さがあり、間もなく中国海軍の新型空母がよく見かけられるようになるだろう。中国の隣国を恐れさせるに十分である。

 

 これこそ中国政府が東シナ海の尖閣諸島周辺で毎日繰り返す演習に、日本が屈してはならない理由である。軽武装の法執行艦ばかりか、中国海軍の艦艇も日本の領海および接続水域に進入してきた。だが、このような“穏やかな”接触に騙されるものはいない。これらの船のプレゼンスを日常的に示すことで、中国は尖閣周辺の海に対する領有権を既成事実化しようとしているのだ。

 もし日本が屈すれば、南シナ海はさらに要塞化されるであろう。日本や韓国のような貿易国家にとって必要不可欠な航行の自由は深刻な妨害を受けるであろう。両シナ海は国際海域であるにもかかわらず日米両国の海軍力がこの地域に入ることは難しくなる。

 このような事態が生じることを懸念し、太平洋とインド洋をまたぐ航行の自由の守護者として、日印両政府が共により大きな責任を負う必要を、私はインドで述べたのであった。私は中国の海軍力と領域拡大が2007年と同様のペースで進むであろうと予測したが、それは間違いであったことも告白しなければならない。

 東シナ海および南シナ海で継続中の紛争は、国家の戦略的地平を拡大することを以て日本外交の戦略的優先課題としなければならないことを意味する。日本は成熟した海洋民主国家であり、その親密なパートナーもこの事実を反映すべきである。私が描く戦略は、オーストラリア、インド、日本、米国ハワイによって、インド洋地域から西太平洋に広がる海洋権益を保護するダイアモンドを形成することにある。

 対抗勢力の民主党は、私が2007年に敷いた方針を継続した点で評価に値する。つまり、彼らはオーストラリアやインドとの絆を強化する種を蒔いたのであった。

 (世界貿易量の40%が通過する)マラッカ海峡の西端にアンダマン・ニコバル諸島を擁し、東アジアでも多くの人口を抱えるインドはより重点を置くに値する。日本はインドとの定期的な二国間軍事対話に従事しており、アメリカを含めた公式な三者協議にも着手した。製造業に必要不可欠なレアアースの供給を中国が外交的な武器として使うことを選んで以後、インド政府は日本との間にレアアース供給の合意を結ぶ上で精通した手腕を示した。

 私はアジアのセキュリティを強化するため、イギリスやフランスにもまた舞台にカムバックするよう招待したい。海洋民主国家たる日本の世界における役割は、英仏の新たなプレゼンスとともにあることが賢明である。英国は今でもマレーシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドとの五カ国防衛取極めに価値を見いだしている。私は日本をこのグループに参加させ、毎年そのメンバーと会談し、小規模な軍事演習にも加わらせたい。タヒチのフランス太平洋海軍は極めて少ない予算で動いているが、いずれ重要性を大いに増してくるであろう。

 とはいえ、日本にとって米国との同盟再構築以上に重要なことはない。米国のアジア太平洋地域における戦略的再編期にあっても、日本が米国を必要とするのと同じぐらいに、米国もまた日本を必要としているのである。2011年に発生した日本の地震、津波、原子力災害後、ただちに行なわれた米軍の類例を見ないほど巨大な平時の人道支援作戦は、60年かけて成長した日米同盟が本物であることの力強い証拠である。

 私は、個人的には、日本と最大の隣国たる中国の関係が多くの日本国民の幸福にとって必要不可欠だと認めている。しかし、日中関係を向上させるなら、日本はまず太平洋の反対側に停泊しなければならない。というのは、要するに、日本外交は民主主義、法の支配、人権尊重に根ざしていなければならないからである。これらの普遍的な価値は戦後の日本外交を導いてきた。2013年も、その後も、アジア太平洋地域における将来の繁栄もまた、それらの価値の上にあるべきだと私は確信している。 

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