m.yamamoto

9月 112013

あの小泉純一郎氏が、「脱原発」を明言し始めたようである。千両役者である小泉氏がシナリオ、脚本もなくそのような行動をとることは、有り得ないだろう。ということは、日本の脱原発が国際社会のなかで、可能になる、許される状況が出てきたということを意味する可能性もあるだろう。

<小泉純一郎氏>

(引用開始)

風知草:小泉純一郎の「原発ゼロ」=山田孝男

(毎日新聞 2013年08月26日 東京朝刊)



脱原発、行って納得、見て確信−−。今月中旬、脱原発のドイツと原発推進のフィンランドを視察した小泉純一郎元首相(71)の感想はそれに尽きる。



三菱重工業、東芝、日立製作所の原発担当幹部とゼネコン幹部、計5人が同行した。道中、ある社の幹部が小泉にささやいた。「あなたは影響力がある。考えを変えて我々の味方になってくれませんか」



小泉が答えた。



「オレの今までの人生経験から言うとね、重要な問題ってのは、10人いて3人が賛成すれば、2人は反対で、後の5人は『どっちでもいい』というようなケースが多いんだよ」



「いま、オレが現役に戻って、態度未定の国会議員を説得するとしてね、『原発は必要』という線でまとめる自信はない。今回いろいろ見て、『原発ゼロ』という方向なら説得できると思ったな。ますますその自信が深まったよ」



3・11以来、折に触れて脱原発を発信してきた自民党の元首相と、原発護持を求める産業界主流の、さりげなく見えて真剣な探り合いの一幕だった。



呉越同舟の旅の伏線は4月、経団連企業トップと小泉が参加したシンポジウムにあった。経営者が口々に原発維持を求めた後、小泉が「ダメだ」と一喝、一座がシュンとなった。



その直後、小泉はフィンランドの核廃棄物最終処分場「オンカロ」見学を思い立つ。自然エネルギーの地産地消が進むドイツも見る旅程。原発関連企業に声をかけると反応がよく、原発に対する賛否を超えた視察団が編成された。



原発は「トイレなきマンション」である。どの国も核廃棄物最終処分場(=トイレ)を造りたいが、危険施設だから引き受け手がない。「オンカロ」は世界で唯一、着工された最終処分場だ。2020年から一部で利用が始まる。



原発の使用済み核燃料を10万年、「オンカロ」の地中深く保管して毒性を抜くという。人類史上、それほどの歳月に耐えた構造物は存在しない。10万年どころか、100年後の地球と人類のありようさえ想像を超えるのに、現在の知識と技術で超危険物を埋めることが許されるのか。



帰国した小泉に感想を聞く機会があった。



−−どう見ました?



「10万年だよ。300年後に考える(見直す)っていうんだけど、みんな死んでるよ。日本の場合、そもそも捨て場所がない。原発ゼロしかないよ」



−−今すぐゼロは暴論という声が優勢ですが。



「逆だよ、逆。今ゼロという方針を打ち出さないと将来ゼロにするのは難しいんだよ。野党はみんな原発ゼロに賛成だ。総理が決断すりゃできる。あとは知恵者が知恵を出す」



「戦はシンガリ(退却軍の最後尾で敵の追撃を防ぐ部隊)がいちばん難しいんだよ。撤退が」



「昭和の戦争だって、満州(中国東北部)から撤退すればいいのに、できなかった。『原発を失ったら経済成長できない』と経済界は言うけど、そんなことないね。昔も『満州は日本の生命線』と言ったけど、満州を失ったって日本は発展したじゃないか」



「必要は発明の母って言うだろ? 敗戦、石油ショック、東日本大震災。ピンチはチャンス。自然を資源にする循環型社会を、日本がつくりゃいい」



もとより脱原発の私は小気味よく聞いた。原発護持派は、小泉節といえども受け入れまい。5割の態度未定者にこそ知っていただきたいと思う。(敬称略)(毎週月曜日に掲載)

(引用終わり)



ところで以前、落合莞爾氏の「金融ワンワールド」という本を紹介したことがあった。彼が指摘しているのは、



「世界の経済は「金融ワンワールド=国際銀行家のネットワーク」が裏で糸を引いており、彼らが儲かるような仕組みが考えられて各国の経済を牛耳っている。その基本的な方法は、戦争の勝ち負けなど国家レベルの情報を操作して株価を底値まで落として買いまくり、その後に株価が上がるような情報を流して大儲けするというものである。」

ポイントは、明治維新以後、日本の皇室は、金融ワンワールドのメンバーとなっているということである。もちろん、現在の日本の円安、株高も彼らの意向である。



おそらく、現在、フクシマ原発の状況が相当厳しい状況にあり、原発をこのまま再稼働させた場合、「日本という金の卵」を失うリスクがあまりに大きいと言うことに、彼らの多くが、気が付き始めたのではないか日本は世界最大の債権国であり、世界経済は、ジャパンマネーによるファイナンスによって、回っている。

このことを私たちは、ひとときも忘れてはならない。



郵政民営化や規制緩和をある意味、ジャパンハンドラーの意向を受けて竹中平蔵氏とともに、忠実に実行した小泉純一郎氏のような政治家が、大きなバックがないような危険な発言をすることは、有り得ないから、そのように考えるのが自然だと思われる。



*参考:http://www.yamamotomasaki.com/archives/1256「金融ワンワールド」



ということは、これから、米国のジャパンハンドラー:ネオコン派:彼らも金融ワンワールドの傘下には入っているが、日本という国を巡る目先の利益では、対立が始まっていくということだろう。そして、ご存じのように自民党という政党は、権力を維持するためだったら、社会党とも組むような、何でもやる政党である。



とにかく、これから、「原発マフィアのカネ=米国のジャパンハンドラー:ネオコン派」対「人気取り政治家=金融ワンワールドの意向」の仁義なき戦いが始まりそうである。おそらく、司法・マスコミ・アングラ世界まで巻き込んで、一般の人々が想像もしていなかった事実が、次々と明るみに出てくること可能性もある。注意深く見守る必要がある。

「いかさま」の国にしないために

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9月 022013

地元の東愛知新聞の社説が素晴らしい!

今回は、その社説を紹介します。

「いかさまの国にしないために」~空気が支配する日本社会の病理を適確に指摘している~地方のマスコミのなかで、ひっそりとジャナーリズムの良心が息づいていることに心から感謝したい。

戦後のプログマティズム教育の結果、「自分に分からないこと=存在しないこと」という認識法が蔓延している。「自分の知らないこと=存在しないこと」にする認識法が、きわめて楽な生き方だったからだろう。

現在はそれが「自分の嫌いなこと=存在しないこと」になりつつある。危険な兆候である。あまりにも巧みにつくられた空気によって、真実が片隅に追いやられてしまうことのないようにするのが、ジャナーリズムの務めである。地方のマスコミ人の役割は、大きい。地方から独自の発信を粘り強く続けていただきたい。

*東愛知新聞社説(平成2591日)

「いかさま」の国にしないために

1923(大正12)年9月1日の関東大震災からちょうど90年、「3・11」の東日本大震災から2年半です。改めて震災について考えようと長谷川如是閑(はせがわ・にょぜかん)を読みました。

明治、大正、昭和の3代にわたって健筆を振るったジャーナリスト・如是閑の「いかさま都市の滅亡と新帝都」という1文です。関東大震災発生の1カ月後に当時の「中央公論」に発表されたものです。

如是閑は主張します。東京は「いかがはしい商店がショウウインドウだけに立派な商品を並べて、内では粗末な品物を売ってゐるのと同じ…一種の<いかさま>都市」であったことが震災で「暴露させられた」と。

その復興には「大胆なしかしながら細心な…大計画の実行を期するがいい」と訴えます。

そして復興の指揮を執る後藤新平内相について「多少の常識外れの人間を偶然中心とすることになったのは、かえって幸(い)」としながら、「目前の利害」に捕らわれるような「人種は文明の都会を築き上げる資格はない」と復興への姿勢を説いています。

社会を変える「3・11

関東大震災では190万人が被災し、死者・行方不明は11万人近くに及びました。

一方、観測史上最大のマグニチュード9・0という大地震による東日本大震災の死者・行方不明は1万8600人、全壊・半壊の建物は40万棟に上りました。

巨大津波の恐怖の映像は目に焼き付き、炉心溶融を起こした福島第1原発の事故は周辺住民に長期避難を強い、放射能汚染水の海への流出など深刻な被害は今なお進行中です。

3・11は国民の安心・安全、原発政策の今後など多くの課題を投げ掛けています。関東大震災が政治・経済、文化や世相を変容させたように、3・11も変革を促しています。特に原発事故は日本だけでなく欧州を中心に世界に政策転換をもたらしています。

如是閑が説いたように「目先の利害にとらわれない人種」による復興、オール・ジャパンによる粘り強い復旧・復興、国と地域の立て直しに立ち向かわねばなりません。

「空気」を読まないで

あれから2年半。震災を風化させてはなりません。語り継ぎ、若い世代の関心を呼び覚まし続けることが大切です。

大切なことは、もう一つあります。復興や再建、政策転換に取り組む時に「空気を読まない」ということです。

「最悪の事態を想定しての必要な準備ができず、危機管理能力を致命的に欠いているのは、日米戦争から福島原発事故にいたるまで、空気が支配する日本社会の宿命的な病理」だ、と作家の笠井潔さんが指摘しています。

終戦間際、帰還の当てのない戦艦大和の沖縄出撃もその場の空気が決めたものでした。そして大和の悲劇を招きました。

笠井さんは「考えたくないことは考えない、考えなくてもなんとかなるだろう。これが空気の国の習い性だ」と指弾します。場の空気に流される習性からの脱却が大切です。これは国づくり、地域づくりにも言えることなのです。

求められているのは、しっかりと自分を持ち、「考えたくないこと」でも考えるという「空気の国の習い性」からの脱出です。そうでないとわれわれの国や地域は如是閑の言う「いかさま」になってしまいます。

<東愛知新聞社>http://www.higashiaichi.co.jp/

「国難の正体」 興味深い指摘である!

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8月 262013

今回は本の紹介です。

8月は、お盆に終戦記念日を迎える特別な月。

現在の日本の不可思議な状況が、どのような仕組みによってもたらされているのかを知る上でも、是非、読んでいただきたい本です。



<目    次>

◎はじめに

◆第一章 戦後「世界史」の正体

◎冷戦は八百長だった

モスクワの実態/アメリカを支配するイギリス/作られた超大国ソ連の虚像/ グロムイコが高く評価したアメリカ人(ヘンリー・キッシンジャー、アベレル・ハリマン)/ソ連はなぜ崩壊したか

◎中華人民共和国建国の謎

マーシャルをほめるグロムイコ/マッカーシーから見たマーシャル/ アメリカと毛沢東/ベトナム戦争以後の米中関係/日中戦争の後日談

◎朝鮮戦争の謎

なぜアメリカは勝とうとしなかったか/マッカーサー証言の真相/ ソ連はアメリカに協力した/スターリンの死

◎ベトナム戦争の謎

長引かせた戦争/米ソの意図を見抜いていた中国/中ソはなぜ対立したのか/ アメリカとの核戦争を想定していた毛沢東/ベトナム戦争後、アメリカに麻薬禍が蔓延

◎第四次中東戦争と石油危機の謎

キッシンジャーの策略/石油危機を演出

◎湾岸戦争の謎

フセインはなぜクウェートに侵攻したのか/湾岸戦争の隠れた目的/コソボはなぜ独立したのか

◎アフガニスタン戦争の謎

「テロとの戦い」の危険/麻薬生産が増大

◎イラク戦争、東欧のカラー革命、「中東の春」現象の謎

やはり石油が目的だった/アメリカのNGOが関与していた/「中東の春」を恐れる中国・ロシア



◆第二章 超大国「アメリカ」の正体

◎アメリカの世界戦略は誰が決めているか

CFRの創立メンバー/ニクソンの失脚の原因/アメリカの軍事戦略もイギリスの影響下にある/グロムイコもイギリスとアメリカの一体性を認識していた

◎イギリス金融資本家の軍門に下ったアメリカ

独立後すぐ始まった中央銀行設立論争/リンカーン大統領暗殺の真相/アメリカの金融が民間銀行の支配に落ちた日/連邦準備制度の罠/国際銀行家とは何か

◎アメリカの大富豪は「共産主義者」である 国民のチェックが及ばない社会/なぜ国際主義思想が生まれたか/日露戦争と国際銀行家/ナショナリズムは本当に危険なのか/反セム主義とは何か/マイノリティとしてのユダヤ人

◎「アメリカ人」のいないアメリカ

グローバリズムの正体/アメリカのグローバル戦略/もはや「アメリカ人」は存在しない



◆第三章 日本「国難」の正体

◎アメリカは占領時代に日本に何をしたか

日本のナショナリズムを破壊せよ/原爆は破壊の悪魔である/秘密裏に行われた検閲/ 検閲官と非検閲者は共犯関係にあった/田母神事件の教訓/ シビリアンコントロールとは何か/国民が完璧に洗脳された理由/ 分割統治の鉄則が戦後隣国との紛争関係の仕組みを作った(北方領土・竹島・尖閣諸島)

◎冷戦終了後日本がアメリカの「仮想敵国」になった

ブレジンスキーの日本観/ブレジンスキーの世界観

◎現在進行中のアイデンティティ破壊工作

ジェンダーフリーこそ大問題/日本語が危ない/ 構造改革路線の本当の目的/TPPの隠された目的/ 大量移民受け入れによる日本人種の雑種化/韓流ブームはなぜ起ったか/ 人権侵害救済法案は「ヘイト・クライム」の導入を企図したもの/次は麻薬の合法化

◎ウクライナ大飢饉の教訓

民主主義は幻想/選挙で当選しても借金から逃れられない/ マスメディアなどが情報操作によって国民を洗脳している/ False Flag作戦という戦慄すべき情報操作/世界は「金」と「情報」で支配されている



◆第四章 明日の日本の生きる道

◎日本型民主政治の再生

権力と権威のバランス/チェルノブイリ事故の教訓/新しい「国体論」はどうあるべきか

◎日本外交の新境地

市場経済化に失敗したロシア/米露新冷戦の開始/プーチン大統領は本当の親日家/ 新「日露協商」構想/ ロシアが日本の信頼しうるパートナーになりうる理由(・ロシア人と日本人の国土観の類似性 ・ロシア正教と日本人の宗教感情との親和性・国民性の類似)/ ドストエフスキーと芥川龍之介

◎グローバリズムを阻止する方法

◎究極の日本中立化構想



<著者 馬渕睦夫プロフィール(まぶち むつお)>

元駐ウクライナ大使兼モルドバ大使 前防衛大学校教授1946年京都府に生まれる。京都大学法学部3年在学中に外務公務員採用上級試験に合格し、1968年外務省入省。1971年研修先のイギリス・ケンブリッジ大学経済学部卒業。外務本省では、国連連合局社会協力課長、文化交流部文化第一課長等を歴任後、東京外務長、(財)国際開発高等教育機構専務理事を務めた。在外では、イギリス、インド、ソ連、ニューヨーク、EC日本政府代表部、イスラエル、タイに勤務。2000年駐キューバ大使、2005年駐ウクライナ兼モルドバ大使を経て、2008年11月外務省退官。同月防衛大学校教授に就任し、2011年3月定年退職。



元外交官馬淵睦夫氏「国難の正体」はあまりに興味深い本である。

今までレポートで紹介させていただいたユダヤ論、国際金融資本論、ごく一部の人が指摘している、実際には、英国の中枢が米国をコントロールしていることなどを、次々と公開情報を基に指摘している。京都大学を卒業し、外交官だった人間がこういった本を書いた意味は、一般の人に対する信用度という面で非常に大きいと思われる。



ところで、ウクライナ大使と防衛大学教授を務めた馬淵氏の経歴は、以前レポートで何回も紹介した「戦後史の正体」を書いた元外交官、孫崎享氏が、同じ旧ソ連圏のウズベキスタン大使や防衛大学教授を務めたことと酷似している。

特に馬淵氏は、国際金融資本のグローバリズムに対抗するための「日露の連携」という興味深い主張をしており、今後、米国の軍事支配から日本が独立していくためには、ロシアとの対等な軍事・経済同盟に向かう選択肢もあり得ることをはっきり、提示していて興味深い。

ところで、2009年に成立した民主党の鳩山内閣は米国の対日内政干渉である「年次改革要望書」を拒否するという従来の枠組みから外れた無謀な行動に打って出た。

その結果、<グローバリズム:国際金融資本、国際企業グループ>の側から返球がTPPという新たな対日戦略である。

ご存じのようにTPPの交渉内容は日本政府でも数名しか知らされていないが、米国でも上下両院の議員は内容を知らされていない。このような異常な事態が生じていることをもっと、多くの日本人が知るべきだろう。

ところで、TPPの調印は今年末の予定で、FRBのバーナンキ議長の任期は来年1月である。FRB設立後100年の今年12月23日にFRBは廃止されるという密約が設立時にあったとの驚きの指摘も一部に出てきているから、注視が必要だ。

この本の特長は、誰でも入手可能な公開情報をもとにして、それらを繋ぎ合わせ、行間を読むことによって、現代史を解釈し直したところにある。その結果、教科書やマスコミが報道しているのとは、全く違う現代史の相貌が浮かび上がってきたのである。

それを一言で言うと、



「私たちが住む地球には、「世界の政治経済を制覇するために、民間の手による世界金融支配システムを創造することを目指す金融資本家たちの国際金融ネットワーク」が存在する」(米国歴史学者キャロル・キグリー:クリントン大統領の恩師)ということである。

それでは、本書の内容を簡単に紹介しよう。

「人・物・金」の行き来を自由にするグローバリズムの美名のもと、国境を消滅させ各民族を均質化することで、ある特定層だけが世界を支配する計画(ニューワールドオーダー)が現在進行形で行われている。その特定層こそが、国際主義の名を借りた共産主義者であり、TPPのような日本が直面する国難をもたらす外圧を加え続けている勢力のことである。

元外務官の馬渕睦夫氏が、こうした勢力が弄んできた世界構造の変遷に関わる歴史と、今後、日本が国際舞台の中でどう立ち回りどう国益を守っていくべきかの提言を本書でしている。



「冷戦は八百長だった」というセンセーショナルな見出しから始まり、中国はアメリカによって建国された、ベトナム戦争はアメリカの自作自演だった、その他、9.11後テロとの戦いと称して世界で先端を開いた理由などを、当事者の著書を中心としたソースを駆使して克明に分析している。

馬淵氏は、こうした現代史の背景には必ずユダヤ系の国際銀行家が暗躍し、ロスチャイルド家やロックフェラー家をはじめとする大資本家が、自らが儲けるためだけに世界地図を塗り替えようとしているということを明らかにした。歴史的に祖国というものを持たない彼らには、そもそも国家という概念がない。民族それぞれが全世界に散らばっていくうちに社会・共産主義的な思考が醸成されていき、それがいつしか国際主義(グローバリズム)へと変質していったと分析している。

つまり、彼らの目的は全世界を統一した市場とし、そこから生まれる莫大な権益を独占することである。



<参考資料>



「金融ワンワールド」http://www.yamamotomasaki.com/archives/1256

~二十年前だったら、東京大学法学部を卒業して、住友金属に勤め、経済企画庁に出向し、経済白書作成に関わり、その後、野村證券で日本初のM&Aを仕掛けた男が、このような内容の本を出版することは、おそらくあり得なかった。このような知識を一般に公開することはなかったはずだ。その意味で時代が変わったのである。~

「通貨戦争」http://www.yamamotomasaki.com/archives/930

~おそらく、一般にはあまり、知られていないが、ヴィクター・ロスチャイルドは、二十世紀が生んだ天才の中の天才である。一言で言えば、悪魔のように頭の切れる男である。~

「ユダヤがわかると世界が見える?!」http://www.yamamotomasaki.com/archives/1570

~このように西洋の歴史:世界史はある意味、金銭闘争の歴史であり、その金融政策を知らなければ、その歴史はわからないのである。そして、そのことは、ユダヤ人=他者への憎悪と嫉妬に呪縛されている精神で跳梁するとも言える面をもつ人たちの真実を知ることに繋がっていく。~

対談スペシャル 「国難の正体」を読み解く

8月に考えること(再掲)

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8月 012013

*三年前のレポートです。(再掲します。)

「日本のあまりにも長い戦後はいつ終わるのか」

10年に一度と言われる暑い夏の8月が始まった。

終戦記念日の8月15日を含むこの月に戦争や戦後史に思いを馳せることにはそれなりの意味があるのではないだろうか。



ところで、「龍馬伝」というNHKの大河ドラマが人気のようである。

国民作家と呼ばれた司馬遼太郎氏が「竜馬がゆく」という小説を産経新聞に連載したのが、1962年から1966年、日本経済が奇跡の高度成長を始めた東京オリンピックを挟んだ時代であった。司馬氏の作品は、高度成長する、躍動する日本に相応しい読む者を元気づける素晴らしい大衆小説であった。ところで、小説というのは、作家による一つの小さな説に過ぎないのであって、勘違いする人々が多いが歴史ではない。

2010年の日本人としても、ドラマや小説のような龍馬が本当に歴史上の実像だったと信じたい処だが、これから、日本が本当に独立自尊の国なるためには、それはあまりにも拙いことだと言わなければならない。アヘン貿易で大儲けした「ジャーディン・マセソン商会」がグラバーという男を通して、坂本龍馬や長州、薩摩の藩士をサポート、操縦していたのであり、そこには、フリーメンソンという国家を超えた組織を通じて世界経済を牛耳りつつあった人々の意向が見事に反映されていると冷徹に見るべきであろう。



多くの従業員の明日を預かる経営者、子ども達の未来に関与する教師、国、地方の未来を決める立場にある政治家と称する人々ぐらいは、もう少しほんとうの事を知るべき時期にいよいよ日本も入ったと思われる。



ところで、「美味しんぼ」という人気漫画の原作者雁屋 哲氏が、「美味しんぼ日記」というブログに興味深い記事を書いている。過激な表現を故意にする人なので、文書表現等に問題があるかもしれないが、取りあえず、そのまま引用する。(長文のため、編集)

(以下引用)~中略~



私は、鳩山由紀夫氏は善意の人だったと思う。 ただ、辺野古問題は、上に書いた、竹の子みたいな物だったのではないか。氏は、掘ろうと思えば掘れると思った。ところが、どっこい、地下の根は複雑に入り組んでいて、しかも強力で、魑魅魍魎も跋扈していて、とても掘れない。私たちの場合は、悪戦苦闘の末に、竹の子を掘り出すことは出来たが、氏は出来なかった。長濱義和さんの使ったような、兇悪な竹の根も断ちきることの出来る刃の長いクワを鳩山由紀夫氏は持っていなかった。

氏を妨げた物は、端的に言えば、アメリカが日本の社会に張り巡らした醜悪な竹の根である。アメリカは日本中に根を張っていて、日本人がちょっと形の良い竹の子を掘ろうとすると邪魔をする。ときには、掘ろうとした人間の社会的生命を葬ってしまう。今回も、鳩山由紀夫氏はアメリカの張り巡らした節だらけの根に掴まって負けた。氏は、次の総選挙にも出馬しないという。実質的に政治家生命は絶たれてしまった。アメリカに逆らうとこうなると言うことが分かって、今度首相になった菅直人氏は勿論、これから誰が総理大臣になっても、沖縄に限らず日本の在日米軍基地に対して文句を言うことはないだろう。

話を続ける前に、今までに書いたことの中で、事実関係をきちんと示していない部分があったので、そこを補足する。まず5月4日に書いた昭和天皇と沖縄の問題である。

敗戦後、昭和天皇の御用掛を勤めた寺崎英成という人物がいる。

その寺崎英成の残した「昭和天皇独白録」が1990年に発見され、それを文藝春秋社が発表し、当時大きな反響を巻き起こした。「昭和天皇独白録」については、さまざまな研究書が出ている。

結果として、「昭和天皇独白録」は昭和天皇による自己弁護の書である。当時の連合軍司令官マッカーサーは、天皇を日本支配の道具として使いたいと考えていた。

じつはこれは、マッカーサー個人の考えではない。加藤哲郎・一橋大学教授が米国国立公文書館で発見した機密文書「Japan Plan」という物がある。

下記のページに、教授の詳しい記述が記載されているのでお読み頂きたい。

http://homepage3.nifty.com/katote/JapanPlan.html

これは、1942年6月3日の日付で作られた物である。



この中で、アメリカは既に戦後日本をどう取り扱うか構想を立てていた。その構想とは、戦後、「天皇を平和の象徴として利用する」という戦略だった。1942年6月と言えば、真珠湾攻撃からまだ半年しか経っていない。その時期に、すでにアメリカは戦後の日本の取り扱いについての構想を立てていたのだ。それも、思いこみによる構想ではない。日本を良く研究した上で、日本国民をどう取り扱えば占領政策が上手く行くか、論じているのである。日本の指導者たちが、悠久の大義に生きるとか、皇道精神などと、現実離れしたことを譫言のようにいっている時に、アメリカは戦後の計画を、冷静緻密冷徹に計画を立てていたのである。自分たちが勝つことを当然と考えている。これだけ頭の程度に差があっては、戦争に勝てる訳がない。

当時の日本の指導者たちは、アメリカの指導者たちに比べると、正に精神年齢12歳の子供同然であったことが、この文書を読むと痛感させられて、実に悲しくなる。

アメリカは最初から天皇を傀儡として使うつもりだったから、「東京裁判」に引っ張り出されて有罪にされたら困る。昭和天皇に戦争責任がない形にする必要がある。

そこで、寺崎英成がアメリカ側の意を体して、同時に昭和天皇自身が欲した保身のための術として作り上げたのが「昭和天皇独白録」である。天皇が東京裁判に引き出されるのを防ぐのが目的の弁明書だから、一般の目に触れることはなかった。

その「昭和天皇独白録」は1991年に、文藝春秋社から、半藤一利氏の解説を付けて発売された。同書には「寺崎英成・御用掛日記」も加えられた。これは、寺崎英成の残した1945年8月15日から、1948年2月15日までの日記である。

その1947年9月19日の記録に、次のような一文がある。

「シーボルトに会ふ 沖縄の話 元帥に今日話すべしと云ふ 余の意見を聞けり 平和条約にいれず 日米間の条約にすべし」

これだけでは何のことだか分からないが、1979年にアメリカの公文書館で発見された文書が、一体それがどう言うことだったのか示した。この文書は沖縄公文書館がそのコピーを入手し、以下のホームページで公開しているので、一度見て頂きたい。

http://www.archives.pref.okinawa.jp/collection/2008/03/post-21.html

そのページを開くと、その文書の内容についての簡単な説明があり、最後にPDF画像(2頁)と書かれている。そこをクリックすると、原文のコピーが出て来る。

これは、マッカーサーの政治顧問のSebaldが、1947年9月20日づけで当時の国務長官マーシャルに宛てた手紙で、寺崎英成が、マッカーサーに伝えた天皇の言葉を報告した物である。寺崎が伝えた天皇の言葉は、大略すれば次の通りである。

天皇はアメリが、沖縄と琉球諸島の軍事的占領を続けることを望む。

天皇は、アメリカの沖縄(必要であれば他の島々も)の軍事的占領は、主権は日本のままで、25年から50年またはそれ以上の長期リースの形で行われるのが良いと言った。

寺崎氏は、アメリが沖縄とその他の島々を、軍事的基地として獲得する権利は、日本とアメリカ二国間の条約とするべきで、連合国との平和条約の一部とするべきでない、と言った。(主語は寺崎氏となっているが、この文書の性格として天皇の言葉を伝える物だから、この言葉も天皇の物と考えるのが自然だろう)このような一次資料を基にして、私は5月4日の日記の中で、沖縄をアメリカの基地にしたのは昭和天皇である、と書いたのだ。無責任な憶測でも、噂話の又聞きで書いたのでもない。

事実が文書としてこうして残っていて、みんなが良く知っているのに、みんなが、言わないようにしている。正しい事実を公に論じることをしない日本という国は、不思議な国なのだ。天皇が、戦争犯罪に問われなかったのは、戦争は天皇が自分の意志で始めたのではなかったからだという理由による物ではなかったか。それを主張する物が「昭和天皇独白録」である。

戦争犯罪を問われそうになると、自分は立憲君主だから部下の言う事を認可してきただけで、主体的に戦争を指導したのではないと言った昭和天皇が、戦争が負けたら相手の国の元帥に、沖縄をずっと占領していてくれなど主体的に言う。こう言うことが許されるのだから、日本は不思議な国だ。

米軍が沖縄を占領し続けることを天皇が主体的にアメリカに頼んでいるのである。

具合が悪いと、それは部下がしたことで自分は知らないと云い、自分の命に関わってくるところになると相手の元帥に自分の国を民ごと切り渡して与える。

しかも、他の国にはやらない、君だけにやるんだから、後はよろしく頼むよ、と言う。先に挙げた「昭和天皇独白録」「寺崎英成御用掛日記」(文藝春秋社刊)の259ページに、秦郁彦教授が、マッカーサー記念館の「総司令官ファイル」の中から発掘した文書として、寺崎英成と思われる政府高官が伝えた天皇の言葉が記されている。

それによると

「(前略)日本人の国民性には美点も多いが欠陥もあるから、占領は長期間つづくほうが望ましいと、陛下は感じている」

昭和天皇自らが、アメリカの支配を望むと仰言られたのだ。どうして、下々の人間が天皇陛下のお言葉に反することが出来ようか。その陛下の有り難い大御心を奉じたてまつって、アメリカは日本占領をいまだに続け、以来ずっと日本はアメリカの奴隷であり続けているのである。~中略~



ところで、1945年8月15日までの昭和天皇は、元帥帽をかぶり、いかめしい天皇服を着て、白馬にまたがって、皇軍を率いていた大元帥の勇ましい姿だった。

戦争当時、昭和天皇の側近を務めた木戸幸一の記した「木戸幸一日記」という物がある。公共図書館に行けば置いてあるから読んで欲しい。

その中には、昭和天皇の生々しい言動が記録されている。木戸幸一日記に寄れば、昭和天皇は、対米開戦を決める前に、海軍や陸軍の指導者の話を何度も何度も、聞いた後に

「海軍大臣、総長に、先ほどの件を尋ねたるに、何れも相当の確信を以て奉答せる故、予定の通りに進むる様首相に伝へよ」と言っている。

昭和天皇は、アメリカとの戦争を始める前にさんざん検討を重ねているのである。

それは、勝つか、負けるか、の検討であって、戦争の善悪の検討ではない。

戦前の昭和天皇は操り人形ではなかった。(同じ人間が、戦後には、アメリカの傀儡、操り人形になったのだが、戦争を始める時点では、人形ではなく自分の意志で動いていた) 同じ、「木戸幸一日記」の1942年(昭和17年)2月16日に、次の記述がある、(日本がシンガポールを陥落させた直後のことである)

「シンガポール陥落につき祝辞を呈す。

陛下には、シンガポール陥落を聴こし召され(お聞きになって)、天機殊の外麗しく(天皇の機嫌は大変に良かった)、次々赫々たる戦果の挙がるについても、木戸には度々云う様だけれど、全く最初に慎重に充分研究したからだとつくづく思ふと仰せあり。誠に感泣す。(これまでに充分研究して戦争を始めたんだから、勝つのは当たり前だ、と天皇は言ったのだ。それに対して、木戸は感動して泣いた)」とある。



もうひとつ、木戸幸一日記から。

1942年3月9日、前々日に、日本軍がインドネシア、ビルマを陥れたという知らせを聞いて、

「(前略)竜顔(天皇の顔のことをこう言う)殊の外麗しくにこにこと遊ばされ『あまり戦果が早く上がりすぎるよ』との仰せあり。」

もう一つ。

1942年6月8日、ミッドウェーでの敗戦を聴いた後で、

「今回の損害は誠に残念であるが、軍令部総長には之により士気の阻喪を来さざる様に注意せよ。尚、今後の作戦消極退嬰とならざる様にせよと命じ置いたとのお話しあり。英邁なる御資質を今目の当たり景仰し奉り、真に皇国日本の有り難さを痛感せり」

もともと、この「昭和天皇独白録」は、昭和天皇を戦争犯罪人にせずに、傀儡として戦後の日本を支配したいというアメリカの意志の元に作られた物だ。こう言うアメリカの工作のお陰で、昭和天皇は戦争責任を問われることなく「平和を愛する天皇」として、歴代天皇としてはまれな長寿まで生き続けたのだ。

昭和天皇が、まず、自分自身を立憲君主国天皇と言いながら、その範囲を自分で超えて、「沖縄をアメリカの基地にしろ」「日本も出来るだけ長く占領を続けろ」と言った。こう言う時の天皇の言葉の力は大きいらしく、いまだに、天皇の言葉のままだ。

日本全体のアメリカの隷属化の第一は昭和天皇の言葉による物であることは明らかになった。言葉は力である。

昭和天皇は、当時は非常なる権力者であったから、昭和天皇の言葉はそのまま強力な力となった。



では、次に日本をアメリカに隷属し奴隷となることを推進したのは誰か。それは、過去半世紀にわたって日本を支配してきた「自民党」である。

2007年にニューヨーク・タイムズの記者ティム・ワイナーが「Legacy of Ashes. The History of the CIA」という本を出版した。「Legacy」とは遺産のこと。

「Legacy of Ashes」で「灰の遺産」と言うことになる。



これは、もともと、アイゼンハウワー大統領の言葉だそうだが、どのような状況で何をさしていったのか、この本からだけでは分からない。しかし、戦争直後に言った言葉であり、戦後のヨーロッパやアメリカの各地のあの壊滅的状態を思い起こせば、そして、この本のあちこちの表現を見ればその意味は想像がつく。

あの当時のドイツと言えば、遺産としては灰しか残っていなかったのだから。

「The History of the CIA」という副題から推察すると、CIAから次世代のアメリカが(現代のアメリカのことである)受け継ぐのは戦後のヨーロッパのように「灰だけだ」と言うことになる。

ずいぶん、厳しい言葉だが、この本を読んでみると、この題名に納得がいく。



私たちは、CIAというと、大変に優れた諜報機関で、全世界にスパイ網を持ち、世界中の情報を収集し、と同時にアメリカにとって邪魔な国を倒すための陰謀を巧みに企んできた恐ろしくもあり強力な存在だと思ってきた。

ところが、この 「Legacy of Ashes」では、如何にCIAが無能で、情報機関としても陰謀機関としても、大きな失敗ばかり重ねてきたか暴いているのだ。

例えば、自発的にCIAのスパイになってくれたソ連での人々を、CIAがわのソ連のスパイが密告して全員殺された。レーガン大統領の時に、イランに武器を売り付け其の代金を中東で使うというイラン・コントラ事件が起こって、CIAも、中東での関係もめちゃくちゃにしてしまった。恐ろしく情報能力が低下して、ソ連の軍事能力を過信し、アフガニスタンに武器を大量に提供してソ連のアフガン侵攻を阻止しソ連を崩壊させる一助となったのはいいが、其の大量の武器が今アメリカを困らせている。大統領がCIAを信じないし、CIAも大統領を喜ばせることしか伝えない。CIAは大統領に嘘をつくのである。イラク戦争の時も、CIAは大量破壊兵器があると強調して戦争を始めたが、結局、全て偽の情報でイラクに大量破壊兵器はなかった。CIAの組織力はくずれ、世界中にいるCIAの人間は、ニューヨークのFBIの職員の数より少ない。  2004年にブッシュ大統領は、CIAのしていることは「just guessing」だといった。

「guess」とは推量とか、あて推量で言い当てる、と言う意味だ。要するに、CIAは「事実に基づいた判断ではなく、勝手に思いこみで言っているんだろう」、とブッシュは言ったのだ。これは、「Political death sentence(政治的死刑宣告)」だとワイナーは書いている。こんなことを今までに言った大統領はいない。

2005年に中央情報長官の職が廃止されたことでCIAがアメリカの政治の中心で果たしてきて役割は終わった。アメリカは、情報機関を立て直さなければならないが、遺産として目の前にあるは「Ashes」である。というのが、ワイナーのこの本に書いてあることだ。

実に恐ろしいくらい、愚かな失敗をCIAは繰返している。

CIAと言えば泣く子も黙る恐ろしい存在だと思い込んでいた私など、それじゃ、幽霊と思ってススキにおびえていたのか、と愕然となった。今まで、CIAとソ連の諜報機関との戦いを描いていたハリウッド製のスパイ映画は何だったのと言うことにもなる。なお、ワイナーによれば、ここに書いたものは、CIA、ホワイト・ハウス、連邦政府の55000以上の文書、2000以上の、アメリカ情報機関担当員、兵士たち、外交官たち、のオーラル・ヒストリー(自分の歴史的体験を口述したもの)、そして、1987年以来行われた、300以上の、CIAの職員、退役職員、(その中には10人の元長官も含まれている)に対して行われたインタビューを元にしている。

この文書は、全て実名の情報に基いている。出所を明らかにしない引用、匿名の情報、噂話の類は一切用いていない。この本はCIAの真実の全てを書いたものとは言えないかも知れないが、ここに書かれたことは全て真実である、とワイナーは述べている。

幸いなことにこの本が2008年に文藝春秋社によって日本語訳が出版されたので、日本人も容易に読めるようになった。(なお、文藝春秋社版の日本訳と私の持っているアメリカのAnchor Books版とでは、この第12章の内容が甚だしく違うところが多い。

文藝春秋社の編集部の解説によれば、文藝春秋社版の第12章の前半と、第46章は日本語版のために著者が追加執筆した物だという。他にも、Anchor Books版になくて、文藝春秋社版にある部分がある。結果として、本来は50章の本なのに、日本版にはおまけで1章付け加えられた。私は、アメリカのAnchor Books版を元にしていたので、危うくこの付け加えられた一章を見落とすところだったが、後で述べるように、1994年にワイナーによって書かれたNew York Timesの記事には、もっと厳しい内容が書かれているので、この付け加えられた章がなくとも、私には問題がなかった。

(英語版が手に入らない日本の読者には意味があるだろう)逆に、英語版で大事なところが、文藝春秋社版では欠けているところがあるので、私は一応Anchor Books版を基本に、文藝春秋社版を参考にすることにした。)

さて、改めて言うが、この本を読んで、私はCIAがこれ程までに無能な機関であり、ここまで数々失敗を重ねてきたひどい政府機関であることを知って驚いた。

そして、一番驚いたのは、この駄目機関であるCIAがただ一つ成功した例があることである。それは、ああ、なんと、この日本という国の支配なのである。

今回の眼目は、この本の第12章である。その章のタイトルは、「We ran it in a different way.」となっている。「run」とは、動かす、管理する、指揮する、支配する、と言う意味である。ここでの、「it」は日本の政治のこと。すなわち日本のことである。「we」はCIAのこと。「in a different way」とは、当時日本を占領していた連合軍司令官であるマッカーサー元帥とは、違う方法で、と言う意味である。

なぜ、わざわざこの部分を英語の原文のまま示したか、それは、この「We ran it in a different way」という言葉の持つ、冷酷さ、非情さ、おごり高ぶった情感をはっきり読者諸姉諸兄に味わって頂きたいからである。これを、文藝春秋社の日本語訳のように「別のやり方でやった」などとしてしまっては、このアメリカの非情さが分からない。

英語と言う言語の持つ実に直裁的な冷酷な味わい、そして、それが、アメリカ人の心理をそのまま反映した物なのだが、それが消えてしまう。我々日本人は、アメリカ人に、「run」されたのだ。「rape」と変わらない。其の屈辱感を、しっかり身にしみて貰いたいために、あえて英語の原文を示したのだ。

始まりは、1948年の末。 ワイナーは次のように書いている。

「2人の戦争犯罪人が、他の戦争犯罪人たちが絞首台に連れて行かれた前日に、戦後三年間入れられていた巣鴨刑務所から釈放された」その2人とは岸信介と、児玉誉士夫である。

岸信介は、1896年山口県生まれ。東京大学の法学部を卒業して農商務省に入り、東条内閣の対米宣戦時の商工大臣であり、敗戦後A級戦犯に指定されたが、釈放され、その後総理大臣になって対米安全保障条約・新条約の締結を行った。

児玉誉士夫は、1911年福島県生まれ。 戦前右翼の活動家として活躍し、戦中は海軍の庇護の元に中国で「児玉機関」と言う組織を動かし、強奪的にタングステン、モリブデン、などの貴金属、宝石類を大量に集め、それを海軍の力を利用して日本に送り届けた。(それを自分の物としたのが凄い)敗戦後、A級戦犯とされるが釈放された後、中国から持ち帰った巨額の資産を元に、政界に影響を及ぼし、やくざ・暴力団・右翼のまとめ役、フィクサーとして力を振るった。

Anchor Books版に書かれていて、文藝春秋社版に書かれていない文章は、以下の物である。

「Two of the most influential agents the United States ever recruited helped carry out the CIA’s mission to control the government.」Anchor Books

拙訳「かつてアメリカがリクルートした二人の一番影響力のあるエイジェントがCIAの日本政府を支配する任務を遂行するのを助けた」で、其の二人の男とは、岸信介と児玉誉士夫である。

リクルート、エイジェント、この二つの言葉の持つ意味は重い。会社にリクルートされて其の会社に勤めたら、貴方は其の会社の人間だ。エイジェントとなったら、貴方はその会社の人間だ。これが、会社でもなく、アメリカ政府なのだ。

岸信介と児玉誉士夫は、アメリカ政府に雇われて、アメリカ政府のために働く人間になったのである。もっと正確に言えばアメリカ政府の人間になったのである。

岸信介と児玉誉士夫は日本人のためではなく、アメリカ政府のために働く人間になったのだ。文藝春秋社版では、この岸信介が「アメリカのエイジェント」だったことを明確に書かない。文藝春秋社が翻訳に使った底本が、そうなっていたのかも知れない。しかし、ワイナーの本は、まずアメリカで出版され、非常に高く評価されたのだ。アメリカの恥部を暴いた其の著者が、国ごとによって違う内容の版を出すとは思えない。この一文が無くては、自民党の本当の姿を理解出来ない。この一文を見のがしてはならないのだ。岸信介は、アメリカにリクルートされたエイジェントだった。

エイジェントとは軽い言葉ではない。アメリカのエイジェントとなったら日本のために働くのではなく、アメリカのために働くのだ。正確に言えば、岸信介はアメリカに魂を売ったアメリカの手先、「売国奴」、だったのだ。何度でも繰り返したい。この一文は非常に重い意味を持っているのだ。日本国民が、日本の首相だと思っていた人間が、実は日本人のためではなくアメリカのために働いていたのだ。我々日本人は「売国奴」を首相として崇めていたのだ。こんな事があっていいものだろうか。ワイナーの記述は、まだまだ続く。 分かりやすいようにまとめよう。

(念のために断っておくが、ワイナーが言明しているように、以下に書くことは真実である。すべて、文書や記録が残っている。)

岸信介と児玉誉士夫は、CIAのエイジェントとなった。

CIAの助けによって、岸信介は自民党の党首となり、首相となった。

児玉誉士夫は暴力団のナンバーワンとなり、CIAに協力した。

岸信介と、児玉誉士夫が、戦後の日本の政治の形を作った。

岸信介は、児玉誉士夫の金を使って選挙に勝った。

代議士になると、岸信介はその後50年に渡って日本を支配する自民党を作り上げた。  岸信介の作った「自由民主党」は自由主義的でもなければ民主主義的でもなく、戦争で亡びたはずの日本帝国の灰の中から起き上がってきた右翼的で封建的な指導者たちのクラブだった。

CIAと自民党との相互の間で一番重要だったのは、金と情報の交換だった。その金で党を支援し、内部情報提供者をリクルートした。アメリカは、一世代後に、代議士になったり、大臣になったり、党の長老になったりすることが見込める若い人間たちとの間に金銭による関係を作り上げた。岸信介は党の指導者として、CIAが自分の配下の議員たち1人1人をリクルートして支配するのを許した。

この部分、Anchor Books版では、次のように書かれている。

「As the party’s leader, he(岸信介)allowed the CIA to recruit and run his political followers on a seat-by-seat basis in the Japanese parliament.」

文藝春秋社版では、そこのところが、

「岸は保守合同後、幹事長に就任する党の有力者だったが、議会のなかに、岸に協力する議員を増やす工作をCIAが始めるのを黙認することになる」と書かれている。

Anchor Books版に描かれた岸は、自分の配下をCIAに売る悪辣な男である。

岸信介は、トップに上り詰めるための策動をする間に、日本とアメリカの間の安全保障条約を作り直す作業をCIAと一緒にすると約束した。岸信介は、日本の外交政策をアメリカの要求を満たすように変えると約束した。それによると、アメリカは日本に軍事基地を保持し、核兵器を貯蔵しても良いというのである。

それに対して、岸信介はアメリカの秘密の政治的な協力を要請した。

もう充分だろう、と思うが、先ほど書いたように、実は、ワイナーは、1994年10月9日付けのNew York Timesに「CIA Spent Millions to Support Japanese Right in 50s and 60s. 」(CIAは日本の右翼を助けるために1950年代から60年代に書けて何百万ドルもの金を使った)と言う記事を書いている。その記事の内容は、今回の本の内容に近いし、文藝春秋社版用に書き下ろしたと言う部分も、実はこの中に含まれている。この本よりももっと具体的なことも書いてある。



そこから幾つか拾ってみよう。

1970年頃に、日本とアメリカの貿易摩擦が起こっていたし、その頃には自民党も経済的に自立出来ていたので、自民党に対する資金援助は終わった。しかし、CIAは長期間にわたって築き上げた関係を利用した。1970年代から1980年代初期に東京に駐在していたCIA職員は「我々は全ての政府機関に入り込んでいた」と語った。

「CIAは首相の側近までリクルートしており、同時に農林省とも同じような関係を結んでいたので、日米農産物貿易交渉で、日本がどのようなことを言うか事前に知っていた」とも語った。元警察庁長官で、1970年代に自民党の代議士になり、1969年には法務大臣になった後藤田正晴は、自分が諜報活動に深く関わってきた1950年代60年代について「私はCIAと深いつながりを持っていた」と言っている。

1958年に、当時の自民党の大蔵大臣だった佐藤栄作が選挙資金の援助をCIAに要求して、その資金で自民党は選挙に勝った。1976年にロッキード事件が起こって日本は騒然としたが、それは、同時にCIAにとって、それまでの工作が暴露される恐れのある危険な事件だった。ハワイで隠退生活をしている元のCIAの職員は電話で、次のようなことを語った。

「この事件は、ロッキードなんかよりもっともっと深いのだ。もし、日本という国のことについて知りたかったら、自民党の結党時のことと、それに対してCIAがどれだけ深く関わったか知らなければ駄目だ。」



もう、本当に充分だろう。日本を半世紀にわたって支配してきた「自民党」はCIAのエイジェントによって作られたCIAのために働く党だったのだ。狡猾な旧日本帝国の官僚である岸信介、中国で強奪して来た資産で力を持ったやくざ・暴力団の親玉である児玉誉士夫。この2人の魂をアメリカに売り渡した売国奴によって作られた党だったのである。作られただけでなく、自民党は長い間、政治的・金銭的援助と引き替えに日本をアメリカの代わりに支配を受け付け続けていたのだ。日本人は長い間、自民党を支持し続けて来たが、実はアメリカの政策に従っていただけだったのだ。我々は、アメリカに支配されてきたのだ。

CIAが、有望な若い者達にも金を与えていたと言うことも忘れてはならない。官僚から自民党の政治家になった者は大勢いる。CIAの金は官僚にまで回っていたのだ。

事実、1970年代後期、80年代初めに東京に駐在したCIA局員はワイナーに「われわれは全ての政府機関に浸透した」と述べている。

CIAは首相側近さえも取り込み、農林水産省とも非常に有力なつてがあったので、日本が通商交渉でどんなことを言うか、事前に知ることが出来たとはなんと情けないことだろう。日本の官僚たちもアメリカに逆らえない弱みを握られているのだ。

これで、日本がアメリカに隷属し続けた原因が分かるだろう。



自民党議員も政府官僚はみんなアメリカから金を貰って弱みを握られているからアメリカに反することは出来ない。自民党の二世・三世議員も同じことだ。祖父と父が従ってきたボスにどうして息子が反抗出来るか。だから民主党政権になって、辺野古問題でアメリカの意志に反することを言い出したら、日本の官僚組織が一団となって、小沢一郎氏、鳩山由紀夫氏を引きずり下ろすために全力を傾けたのだ。

誰なのか正体の知れない「市民団体」に訴えさせて、一旦不起訴と決まった小沢一郎氏を検察審議会に、「起訴相当」の判決を出させたりもした。

どうして、あんな事をさせるのか。考えてみれば、日本の官僚は上下関係でがんじがらめになっている。自分たちの先輩の決めたことを自分が覆したら、官僚世界から追放される。官僚は官僚の世界から追放されたら生きて行けない。東大法学部を卒業した人間はその肩書きしか人間としての力はない。その肩書きが通用するのは官僚に関係する社会だけであって、実社会に放り出されたら、全く無能力である。だから、日本では改革などと言葉で言っても、絶対に改革が実行されない。

それと同じで、現在の官僚は、米軍の沖縄基地の自由使用と言う過去の先輩たちの決めた慣例をひっくり返したらえらいことになると怯えたのだろう。で、人間としての価値もない無能な官僚全体がよって、たかって民主党攻撃に回っているという訳だ。

さて、もう一つ言わなければならないことがある。それは、日本の新聞、テレビ、など、いわゆるマスコミの問題である。民主党をけなし続けているのは、大新聞、テレビ各局である。では、その報道機関、マスコミが、アメリカの魔手から逃れていたのか。これが、実はそうではない。民主党攻撃に必死になったマスコミも、実は、アメリカの手先なのだ。

(引用終わり)



言葉遣いはともかく、興味深い事実を雁屋氏は、提示している。

ニーチェに「善悪の彼岸」という本ある。政治の世界を見る場合は、善悪の彼岸に立って見るべきであろう。我々の先人は、欧米列強の圧力を受けた結果とは言え、命がけで時代に合わせた国民国家をつくり、近代史における列強の帝国主義に遅れて参戦した。そのため、欧米によって巧みに日清、日露という戦争に誘導されたが、何とかそれらを切り抜け、国際連盟の常任理事国になる等、一定の成果を上げた。そして、「大東亜共栄圏」という欧米列強を排除した経済圏の創設を夢見、元帥である天皇もその先頭に立って奮戦したが、戦略欠如のため、見事に負けてしまったのである。

ところで、戦争とは、国同士の喧嘩である。どちらか一方が全面的に正しい、悪であるなどということが、あるはずがない。その意味で戦勝国が敗戦国を裁く裁判には、政治的な意味はあるにせよ、本当に意味での正当性はないはずである。だからこそ、あのチャーチルでさえ、「現代文明の倫理の原則は、戦争に敗れた国家の指導者は、戦勝国民によって死刑に処せられるべきであると規定しているようである。ローマ人は反対の原則に従った。彼らの征服は、その勇敢なる行為と同じくその寛大さに負うところが多かったのである。」などと言い訳しているのである。

ところで、広島、長崎で人類初の原爆被害を受けている日本人が、普通に米国のその悪を連想できなくなっている現象をどう解釈すべきか。

米国のウオーギルティープログラムGHQのWGP=戦争贖罪プロパガンダ戦略によって巧みに「日本人は、今回の戦争において大変残虐なことをしたので、ジュネーブ条約に違反する一般市民を含む無差別爆撃を核兵器によってされてもしようがない」と洗脳されているのである。

米国は、国家戦略にしたがって、この半世紀にわたって、日本を占領し、自国の国益のために巧みに利用してきた。たまたま、冷戦が存在したことが、日本の経済成長、経済自立を可能にしただけなのである。(もちろん、軍事的、政治的には自立はしていないが、)自民党も、既に解党した社会党もそういうバランスの時代に存在価値があった政党である。雁屋氏は自民党が、CIAからお金を貰っていたことを非難しているが、第二次世界大戦後の発展途上国であった国々では、よくあったことである。

1950、1960年代の日本は、自由主義陣営の発展途上国であったということを意味しているに過ぎない。



今まで、何度も指摘させていただいたが、冷戦が終わった時から、日本は、米国から収穫すべき対象になったのである。これも何度も指摘させていただいているが、1985年のプラザ合意がその分岐点なのである。戦後政治の流れを考えれば、ベルリンの壁が崩壊した時点で、自民党も社会党もその存在意義を失っていたとも言えよう。

おそらく、日本の政治が混乱しているのは、左も右も米国依存症という病気にかかっていることにある。今までの自民党の政治家の「従米」も、そんなことお構いなしに平和憲法を唱えている左の脳天気な人々も、日本という国が米国軍に占領されている、人によっては駐留しているというかもしれないが、そのことによって成り立っている現実を直視しようとしていない。すなわち、これらの人々も日本を自立させようとは、思っていないのであろう。

ところで、政治というのは現実である。米国が覇権国でなくなる「帝国以後」の時代に入ったら、そんなことを言っていることも、ご機嫌伺いしているだけでは生き延びていくことも、できないのである。ビル・トッテンという青い目の日本人が興味深い指摘を「アメリカ帝国の衰退」という題名でしている。



(引用はじめ)

第三世界の国は工業製品のほとんどを海外から輸入し、代わりに天然資源を輸出している。また、第三世界の国の経済は国内資本が不足しているため、外国からの資本に依存している。まさにアメリカはこの条件に当てはまる。そして第三世界のもう一つの特徴は医療などに問題があることだ。これも、先進国の中でアメリカの平均寿命が最も短いことは偶然ではない。特にアメリカでは、所得格差の拡大からここ20年間で富裕層と貧困層の平均寿命に大きな差ができつつある。例えば、貧しい黒人男性の平均寿命は66.9歳だが、裕福な白人女性は81.1歳と、14歳以上も離れている。また乳児死亡率も他の先進国より高く、これは高度医療設備がありながらも医療保険がないために、貧しい家庭では乳幼児の病気に対して何もできないという格差の現われであろう。

その一方で、貧しい第三世界の国々と大きく異なる点が少なくとも2つある。一つはエネルギー資源の消費量が世界のどの国よりも格段に多いこと、そして、どこよりも多く軍事にお金をかけ、複雑で高度かつ高額の兵器を大量に保有していることだ。そしてこの2つが、アメリカ帝国が没落に向かう理由と深く関連している。

アメリカが世界に誇る軍隊を持っているのは国民の健康や安寧のためではない。帝国がいつの時代にもそうであったように、それは帝国を支配する者が富を手にするためであり、そのために世界のあらゆるところに軍隊を派遣している。そしてその結果として、アメリカ国民は世界人口の5%に過ぎないにもかかわらず、世界の資源の3分の1を使い続けることができるのだ。

今から100年前、イギリス帝国は世界中から富を集めることで国民の生活水準をあげた。同じように帝国主義のアメリカは今、大量のエネルギーを使って高い生活水準を保っている。しかしこの途方もない贅沢な暮らしをしているアメリカも、イギリスが衰退して帝国の地位をアメリカに引き渡したように、水準を徐々に下げざるを得なくなってきている。帝国を維持するコストは、それがもたらす便益をもはや大きく上回り、また、ますます格差の広がる国内の国民から不満の声が高まってくるからだ。

中国へのアヘン戦争、イギリス東インド会社の拡大からインドを支配下におき、エジプトの実質支配、さらにはカナダ、オーストラリア、南アフリカといった自治領を持つイギリス帝国が衰退することを、誰が1910年に想像したであろうか。

それから100年たった2010年、同じようにアメリカ帝国の衰退は誰にも止められない。もちろん帝国の属国である日本であっても。そしてそれは、われわれも身の振り方を改める時期にあることを意味している。

(引用終わり)

時を合わせるように、野中広務氏がまた、爆弾発言したようである。

*岩下俊三のブログより引用

「機密費がマスコミへ」につづく野中広務・第二の「爆弾発言」



前提として野中広務はボケては、いない。また個人的な思惑もない、というよりいまさら陰謀をめぐらす根拠がない。そこそこの名誉と金と己の限界を知り、しかも年齢的に先は長くはない。あらゆる欲望から離脱した人間の「爆弾発言」に揣摩憶測は不要である。単に墓場まで秘密にすることと、死ぬ前に言っておきたいこがあるということだろう。そのひとつが「官房機密費」がマスコミに流れていたという事実の暴露であった。

そして今回「鳩山前首相が1ヶ月半前に、外務省の元高官を通じて沖縄県知事のところに行って辺野古に移設することを決めるように、そして、小沢氏を道連れに辞任するように、米国から命じられた。自分は、元高官から話をきいた」と発言した。さらに「みんなの党の後ろには、竹中平蔵氏がついているので、木村剛の逮捕があったが、今後、同党に関わる市場原理集団の問題がアレコレ出て来るのではないか」とも言っている。

過去の野中の怪人ぶりからして、なんかの思惑や陰謀、怨念であるとして受け流す人もいるだろうが、それは事実を知れれたくない人間の言い分であって、僕は野中がこの歳になって嘘をいっているとは到底思えない。理由は上に述べた通り、発言によって得することもないし、たとえこの発言によって利することがあったとしても、その成果が生きているうちにある保障もなければ、そもそも権力に対する欲望も嫉妬も枯れているはずだ。これは老人になって見なければたぶん理解できないだろうが、そう思われてならない。

自分の漏れ聞くところでも、鳩山はアメリカに辞めさせられたし、菅も恫喝されているという。つまりこれは明らかにアメリカの内政干渉であるが、基本的に属国である国民は戦後一貫してきたこの体制に表立って無関心を装っている。しかし国民は去年民主党のマニフェストに騙されただけであったのか、そうではない。心の奥底でアメリカのいいなりになるのはもういやだという国民感情に、民主党とくに鳩山が答えてくれそうな「幻想」をもったからではないだろうか。その鳩山をアメリカの手先=官僚にこまされた関係閣僚が説得し、最後はその後ろ盾が直接鳩山に辞任を迫ったのだ。5月の鳩山の虚ろな目を覚えている。そして今の菅の恐怖に怯えた目を再認識する。木村逮捕も何処か不思議な感じがする。もと警察である亀井の怨念という説もあるが、いずれにしても新自由主義=小泉・竹中路線=アメリカナイズに反する野中なりの警告であるとも思われる。つまりトカゲの尻尾(木村)切りだけでは終わらないということであり、大胆に「みんなの党」は竹中一派であると断言しているところに、野中のなみなみならぬ決意が垣間見える。

野中広務は反戦の人でもある。ここはひとつ、長い確執と恩讐を超えて「悪魔」と手を組んででも、日本を売り渡そうとしている勢力に抵抗して欲しいものだ。

(引用 終わり)



現在、地球上で異変が起きているとしか思えない事件が頻発している。「中国でエイズに似た謎のウイルスが拡大か」、「中国では洪水被害により一億人以上が被災」、「異常高温と干ばつに見舞われているロシア」、「南米では凍死者、ペンギンの大量死」、「大連のパイプライン爆発事故」「ハリケーン「ボニー」がメキシコ湾へ」、「地球を保護していた「熱圏」が崩壊してしまった?」大きな時代の変化を予感させる事件ばかりである。

1945年以降、都合よく、米国による永久占領状態におかれ、惰眠を貪ってきた日本も冷戦が終わり、米国の覇権が衰退するなか、そろそろ目を覚まさなければならない時代を迎えたようである。暑い夏だが、心ある人には、日本の自立について、本気で考えてもらいたいものである。

<参考資料>

*「毎日・夕刊の衝撃記事 「日本の政治の黒幕はアメリカ」」

5大紙と言われる新聞に、【日本の政治の黒幕はアメリカ】と発言したのを、記事として掲載されたのは、おそらく初めてだろう。7月30日毎日夕刊「特集ワイド」記事「日本の政治これから」の中に、毎日新聞夕刊編集長の近藤勝重氏が、同紙小菅洋人政治部長との対談で述べている。以下はその発言の前後である。

小菅洋人政治部長:・・・先の人事では菅さんが小沢さんの影響力を排除して支持率のV字回復を果たしましたが、党内はねじれ国会を前にして、小沢批判だけでは事は済まないという空気です。菅さんと小沢さん、さらには鳩山由紀夫前首相との間で代表戦後の党のあり方について心理戦が始まっているのです。

近藤編集長:小菅さんは前回、「小沢さんは辞めた方がいい」と言いました。集団の中で自己主張の強い人間を嫌うと、歴史的に「黒幕化」します。そういう意味でも、「辞めた方がいい」ということかもしれませんが、本当の意味で【日本の政治の黒幕はアメリカ】だと思います。沖縄の基地問題など、この最大の黒幕に太刀打ちするには、相当な力業が必要です。そこにも小沢待望論が出てくる素地があると思います。

小菅氏:公明党と組むとか、自民党との大連立を仕掛けるとかは、小沢さんにしかできないかもしれない。しかし問題は小沢さんが何をしたいのかが分からない。かって「日本改造計画」では自己責任を強調したが、今はあの輝きは感じられない。小沢さんが代表選に立って「俺はこの国をこうするんだ」という場面を見たい気はします。(引用終わり)

ところで、外務省国際情報局長だった孫崎 亨氏が驚くべき本を昨年の夏に出版した。下記の本である。この本を読まれれば、上記のレポートがすべて事実だということがわかる。ただ、「満州の妖怪」と呼ばれた岸信介氏の腹の中をどう読むかという違いがあるだけである。外務省の要職にいた方がこのように本当の事を暴露し始めている。大きく時代が動いていく前兆ではないかと思われる。

「シェールガス革命」の裏を読む

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7月 162013

一部日本のマスコミが囃し立てている「シェルガス革命」について、大変、興味深い指摘があるので、紹介する。以前、高貴なる嘘という概念を紹介したが、(「高貴な嘘」(ノーブル・ライ)という概念はプラトンの「法律」という本に書かれていたものだ。悪意で解釈すれば、「嘘も100回言えば真実だ」(ゲッペルス)ということだ。善意で解釈すれば「子供には神話を最初に教える必要がある。ある程度物が分かるようになってから科学を教えても遅くはない。それが教育的な配慮だ。」と言うものである。大衆を騙すのは権力者にとって必要悪?であるという考え方である。)現在、米国勢が囃し立ているシェルガス革命についても、過去の原子力平和地用や、二酸化炭素による地球温暖化のように、いろいろ思惑があるようである。

今回は、ル・モンド記事と元外交官原田武夫氏の興味深い指摘をご紹介する。(以下)



~エネルギー事情の大転換となるか、景気の一時的活性化に終わるか?~


「大いなるペテン、シェールガス」


ナフィーズ・モサデク・アーメド


(政治学者)ブライトン開発政策研究所(イギリス)所長


(訳:鈴木久美子)



安価なエネルギーと引き換えに長期にわたる汚染を引き受けねばならないのだろうか。シェールガス・シェールオイルの採掘に関わるジレンマにアメリカの企業も政府も悩んでいない。10年もたたないうちにこの新しい資源はアメリカの経済成長を軌道に乗せ、雇用を活性化し、国際競争力を復活させるだろうというのだ。しかしこの《エネルギー革命》がすぐつぶれるバブルに過ぎないとしたらどうか? [フランス語版編集部]



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アメリカメディアによるとシェールガス・シェールオイル「革命」による経済の飛躍的発展が予測され、アメリカは間もなく「黒い金(きん)」の恩恵に浸ることになるという。国際エネルギー機関(IEA)の『世界エネルギー展望2012年版』によれば、2017年度にはアメリカはサウジアラビアから世界第1位の産油国の座を奪って、エネルギーに関して「ほぼ自給自足」となる。IEAによると炭化水素の計画的な生産上昇は、2011年の一日当たりの8400万バレル[原油1バレルは約159リットル――訳注]から2035年には9700万バレルになるだろうとされ、それは「すべて液化天然ガスと非在来型エネルギー資源(主にシェールガスとシェールオイル)から」生じるとされている。一方で在来型エネルギー資源の生産量は2013年から下降するであろう。



シェールガスは水圧破砕(水と砂と洗剤の混合物に圧力をかけ注入して頁岩にひび割れを作り、そこからガスを取り出す)と、水平掘り(これにより必要な地層をより長時間にわたって叩くことが可能になる)によって採掘されるが、広範にわたる環境汚染を代償にして得られるものである。しかしアメリカでの採掘は数十万人の雇用創出へとつながり、豊富で安価なエネルギーという利点を与えてくれる。2013年の『エネルギー予想――2040年に向けて』(エクソンモービル・グループ)のレポートによれば、世界のガス需要の急速な伸びという状況にあっても、アメリカはシェールガスのおかげで、2025年から明らかに炭化水素の輸出国となるという。



そして「シェールガス革命」が回復期にある世界経済を強くするばかりでなく、投資バブルをはじけんばかりにふくらませるとしたらどうだろう? 経済は病み上がり状態だし、近年の経験から言っても、このような浮かれ騒ぎに対して慎重な態度を促さなくてはならないはずなのだが。スペイン経済を例にとると、かつては隆盛を誇っていたのが(2008年にはEU圏で第4位の勢力)、盲目的にしがみついていた不動産バブルが突然崩壊して以来、ひどい状態になっている。政治家たちはこの2008年の危機からほとんど教訓を引き出してはいない。彼らは同じ過ちを化石燃料で繰り返す危険があるのだ。

ニューヨーク・タイムズの2011年6月の調査報告はシェールガス「ブーム」のなかでメディアと石油・ガス業界の間に早くも生じた亀裂を暴露している。その号では専門家たち(地質学者、弁護士、市場アナリスト)が抱いた疑惑を公にしているのである。

石油会社の発表は、「故意に、不法なまでに採掘生産量と埋蔵量を多く見積もっている(注1)」という疑惑が表明されている。同紙の説明によれば、「地下の頁岩からのガスの抽出は石油会社がそうみせかけているよりももっと難しく、もっとコストがかかるはずで、その証拠として、この問題について業者間で交わされた数百の電子メール、資料ばかりでなく、数千の採掘抗について集められたデータの分析報告がある」。



2012年の初頭に、アメリカの2人のコンサルタントがイギリスの石油業界の主要誌『Petroleum Review』で警鐘を鳴らしている。二人は「アメリカのシェールガスの鉱床の信頼性と持続性」について検討を加え、業者たちの予測がアメリカ証券取引委員会(SEC)の新しい規則に沿って行われたものであることを強調している。SECは投資市場の監視をする連邦委員会である。この規則は2009年に採択されたもので、石油会社に備蓄量を好きなように計上することを許可しており、独立機関による調査は行われないのである(注2)。



業者たちは頁岩のガス鉱床を過大に見積もることによって、採掘に伴うリスクを二義的な問題にしてしまうことができる。ところが水圧破砕は環境に有害な影響を及ぼすだけではない。まさに経済的な問題をも引き起こす。水圧粉砕は非常に寿命の短い生産しかおこなわないからだ。雑誌『ネイチャー』で、英国政府の元科学問題顧問のデヴィッド・キング氏はシェールガス井の生産性は最初の1年の採掘で60~90%低下すると力説する(注3)。



これほど急激な生産性低下では明らかにわずかな収益しかもたらされないことになる。ガス井が涸れてしまうと作業員たちは大急ぎで他のところへ採掘に行って生産量のレベルを維持し、資金返済に充当しなくてはならない。条件が整えば、このような自転車操業で数年間は人の目を欺くことができる。このようにして、シェールガス井採掘は脆い経済活動と結びつき(持続力はないが、短期間には瞬発力を発揮して)、アメリカで急激な天然ガスの価格低下を引き起こした。2008年には100万BTU(イギリス熱量単位)7、8ドルだったものが2012年には3ドルを割った。



投資の専門家たちは騙されない。「水圧粉砕は景気を粉砕する」とジャーナリストのウルフ・リヒターは『ビジネス・インサイダー』で警告している(注4)。「採掘は猛スピードで資本を食いつくし、生産が行き詰ると業者に借金の山の上を残してきた。この生産量の低下で経営者たちの懐を痛めないようにするために、企業は次から次へと汲み上げなくてはならなくなり、涸れた油井の分を他の油井で補うのである。他の油井も明日には涸れるだろう。悲しいかな、遅かれ早かれこういう図式は壁に突き当たる。現実という壁である」。



ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)との合併前の石油会社アモコ(Amoco)で働いていた地質学者のアーサー・バーマンは「信じられない速さ」で鉱床が涸れていくことに驚きを示している。バーマン氏はテキサスのイーグル・フォード鉱区(最初のシェール油田)を例に挙げて、そこでは「年間採掘量が42%以上低下した」と言う。安定した生産量を保つためには業者は「毎年追加で約1000の油井を同じ鉱区で掘らなくてはならない。それは、1年に100億から120億ドルの支出となる。全部合計すると2008年の金融業界への資金投入額の合計に達する。企業はどこでこの資金を調達できるというのだろう?(注5)」。



ガスバブルの最初の影響はすでに世界大手石油企業に及んでいる。2012年の6月にエクソンモービルの代表取締役のレックス・ティラーソン氏が窮状を訴えた。アメリカの在来型天然ガス価格の下落は消費者にとっては確かに幸運だったが、売り上げの激減の痛手を受けたエクソンモービルには致命傷となったと述べた。そして株主を前にエクソンモービルはガスによる損失はないと偽ったものの、ティラーソン氏はアメリカでもっとも影響力のあるシンクタンクの一つである外交問題評議会(CFR)でお涙頂戴型の演説をして「わが社は資産が尽きようとしている。もう収入は得られない。経営は赤字だ(注6)」と述べている。



ほぼ同時期に、イギリスのガス会社であるBGグループが「アメリカの天然ガス事業部門で資産が13億ドルに低下したこと」すなわち「中間決算で明らかな減益」の窮地に立たされていることを認めた(注7)。2012年11月1日、ロイヤル・ダッチ・シェルの四半期の決算報告が3期連続で不振で年間累積24%の低下となったのを受け、ダウ・ジョーンズの広報担当はこの悪いニュースを伝えるに当たって、証券業界全体におけるシェールガスブームによって引き起こされるであろう「損害」について警告した。



万能薬からパニックへ



シェールガス競争の中のパイオニアであるチェサピーク・エナジー社もバブルは免れなかった。負債の重みに押しつぶされたチェサピーク・エナジーは債権者の手形決済のために資産の一部売却(ガス田とパイプラインの合計69億ドル)を余儀なくされた。「チェサピーク・エナジーは社長のおかげでシェールガス革命のリーダーになったのに、活動領域を少々減らすようになった」とワシントン・ポストは遺憾の意を表した(注8)。



どうしてこの「革命」のヒーローたちはこれほどまでに落ちたのだろうか? 経済評論家ジョン・ディザードは2012年5月6日付『フィナンシャル・タイムズ』でシェールガス企業が「自己資本を2倍、3倍、4倍さらに5倍も上回る額を使い果たして土地を購入し、井戸を掘り自分たちの計画を実現しようとした」と指摘している。ゴールドラッシュの資金繰りのためには、膨大な金額を「複雑で面倒な条件で」借りなければならない。しかし、ウォール街は通常の行動規則を曲げてくれるようなことはしない、ディザードによればガスバブルはそれでもふくらみ続けているという。その理由は経済的な危険性をはらんだこの資源にアメリカが依存しているからである。「シェールガス井の生産性の持続しない一時的性格を考慮して、掘削は続けられなければならない。シェールガス価格は高くなり、高騰すらして落ち着くだろう。過去の負債だけでなく現在の生産にかかる費用に充当するためである」。



それでもなおいくつもの大手石油会社が同時に経営崩壊に直面するということはありうる。もしこの仮説が立証されるなら「2、3社の倒産か大掛かりな債務処理にまきこまれてしまい、債務処理の名目で各企業はシェールガス事業を撤退し資本が消えてしまうだろう。これは最悪のシナリオだ」とバーマン氏は語る。



言い換えれば、シェールガスはアメリカ、あるいは全人類を「ピークオイル」(「ピークオイル」とは、地理的制約と経済的制約から原油の採掘が困難で巨額を要するとされるレベル)から守るという議論はおとぎ話にすぎないことになる。最近公表された独立性の高い科学レポートによれば、シェールガス「革命」はピークオイルに猶予を与えてくれないと確証している。



雑誌『Energy Policy』に発表された研究によると、キング氏のグループは、石油産業は化石燃料の世界埋蔵量を3分の1多く見積もったという結論に達した。まだ採掘可能な石油鉱床は8500億バレルに満たないのに、公式な見積もりではおよそ1兆3000億バレルと言われている。『Enegy Polocy』の寄稿者たちによると、「化石燃料資源が地球の深いところに確かに大量に存在しているが、世界経済が通常持ちこたえられるコストで採掘できる石油の量は限られており、短期間のうちに衰退の一途を辿るはずだ(注9)」という。



水圧破砕によって得られた宝、シェールガス・シェールオイルがあるにもかかわらず、現実の埋蔵量は年間推定で4.5ないし6.7%のペースで減少している。そのためキング氏らの研究チームはシェールガスの採掘がエネルギー危機を救うという見解を断固として拒否している。キング氏と同じ立場で、経済評論家のゲイル・トヴェルバーグ氏は在来型化石燃料の世界生産量が2005年をピークに伸び悩んでいることをあげている。彼は2008年と2009年のリーマンショックの主な原因のひとつはこの停滞にあると見て、これが現在の景気後退をさらに深刻化させる可能性を予告しているという(シェールガスがあろうが、あるまいがこれは起こるという)(注10)。それだけではない、新経済基金(NEW)はIEAの報告書に続いて出した新しい研究で、オイルピークの出現を2014年ないし2015年と予測しており、そのとき採掘と供給にかかる費用が「世界経済がその活動に致命的なダメージを受けることなく引き受けることのできる費用を追い越すだろう」(注11)とみている。



この研究はメディアの関心を引かなかったし、エネルギー業界のロビイストの宣伝文句に浸りきっている政治家たちの関心も引かなかった。遺憾なことである。この研究の結論はわかりやすいからだ。景気を修復するどころか、シェールガスは作り物のバブルをふくらませ、根本的に不安定な構造を一時的にカムフラージュしているのである。バブルがはじけると供給の危機と価格高騰をおこし、世界経済に甚大な悪影響を及ぼす危険性があるのだ。

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<注>

(1)«Insiders sound an alarm amid a natural gas rush», The New York Times, 25 juin 2011.

(2)Ruud Weijermars et Crispian McCredie, «Inflating US shale gas reserves», Petroleum Review, Londres, janvier 2012.

(3)James Murray et David King, «Climate policy : Oil’s tipping point has passed», Nature, no 481, Londres, 26 janvier 2012.

(4)Wolf Richter, «Dirt cheap natural gas is tearing up the very industry that’s producing it», Business Insider, Portland, 5 juin 2012.

(5)«Shale gas will be the next bubble to pop. An interview with Arthur Berman», Oilprice, 12 novembre 2012, http://oilprice.com

(6)«Exxon : “Losing our shirts” on natural gas», The Wall Street Journal, New York, 27 juin 2012.

(7) «US shale gas glut cuts BG Group profits », Financial Times, Londres, 26 juillet 2012.

(8)«Debt-plagued chesapeake energy to sell $6,9 billion worth of its holdings», The Washington Post, 13 septembre 2012.

(9)Nick A. Owen, Oliver R. Inderwildi et David A. King, «The status of conventional world oil reserves – Hype or cause for concern ?», Energy Policy, vol. 38, no 8, Guildford, août 2010.

(10)Gail E. Tverberg, «Oil supply limits and the continuing financial crisis», Energy, vol. 37, no 1, Stamford, janvier 2012.

(11)«The economics of oil dependence : A glass ceiling to recovery», New Economics Foundation, Londres, 2012.



(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2013年3月号)

 

201344


「シェール革命という高貴なウソを信じる日本」


~インテリジェンスのプロ、原田武夫氏が大胆分析~

先日、杜の都・仙台に出張したときの話だ。繁華街・国分町の片隅で設けた会食に出席された地元財界幹部の一人の方が、上気した面持ちで私に向かってこう語りかけてきた。

「原田さん、『シェール革命』ってやつはすごいね。何せこれからアメリカでは無尽蔵に採掘できて、しかも温暖化効果ガスの排出量が圧倒的に少ないっていうのだから、エネルギーの未来は、もうこれで決まりなのではないですか」



シェール革命に納得できず



同席していたわが国アカデミズムの重鎮の一人も、続いて口を開いた。「確かにそうですね。仮にアメリカがシェール革命を推し進めるとなると、今、東北大学を中心に取り組んでいる地域経済活性化のための次世代移動体研究プロジェクトがこのままでは失速してしまう危険性があるのです。なぜならばその柱のひとつである電気自動車(EV)は、現状では原子力発電が安定的に継続することを前提としていますから」

私からすれば、いずれも人生の大先輩である。普段ならば黙ってうなずくだけで、特に何も申し上げなかったはずだ。しかしこのときだけは違った。どうにもこうにも納得するわけにはいかなかったからである。「申し訳ありませんが、『シェール革命』は本当に起きるのでしょうか。私は正直言ってかなり懐疑的です」。居住まいを正して私はそう切り返した。



私の著書最新刊『「日本バブル」の正体~なぜ世界のマネーは日本に向かうのか』(4月4日刊行)でも詳しく書き、かつその新刊記念講演会(リンクはこちら)でもじっくりお話しすることなのであるが、「シェール革命」と聞くとどうしても納得がいかないことがいくつかあるのだ。思いつくままに書くならば次のとおりとなる。



◎鳴り物入りで始まった「シェール革命」だが、特にシェールガスはパイプラインがなければアメリカは輸出することができない。その肝心のパイプラインがまったく整っていないのが現状である以上、シェールガスがアメリカから世界、とりわけわが国に向かって噴き出してくるのは“今”ではなく、“将来”である。今から大騒ぎすべき話ではない。



◎つまり「シェール革命」が最盛期を迎えるまでにはまだ時間があるのだが、その間、ほかの国々が指をくわえて待っているとは考えづらい。ナイジェリアなどほかの産出国は温暖化効果ガスこそ大量に出るものの、従来型の天然ガスや原油のダンピング(廉売)を一斉に始めるはずだ。そうなった場合、採掘に費用がかかるため高めの価格設定しかできないシェールガス/シェールオイルにまで触手が伸ばされるのかは甚だ疑問である。



さらには「シェール革命」と言いつつ、アメリカ自身が次世代移動体として電気自動車や水素燃料電池車の開発を加速させているのが大いに気になる。実際、オバマ政権はこの方向に具体的な形で歩み出しており、3月15日にイリノイ州で行った演説で同大統領はこれら「ガソリンを使わない自動車」の実用化のため、今後10年間で20億ドルほどを拠出すると表明したばかりなのである。「シェール革命一本であくまでも行く」という気合いは微塵も感じられないのだ。



「高貴な嘘(noble lie)」という言葉がある。「リーダーたるもの、全体利益の実現のためには時にウソをつかなくてはならないこともある」といった意味合いだ。アメリカはこれまで何度となく「高貴な嘘」でわが国、そして国際社会を翻弄してきた。2003年に行われたイラクに対する武力行使の際、「イラクで大量破壊兵器を見つけた」と国連安保理の場で生真面目な軍人・パウエル国務長官(当時)を使って一大プレゼンテーションを行わせたのがその典型例だろう(その内容はその後、同国務長官自身が吐露したように「真っ赤なウソ」であったことが明らかとなる)。

よもや「あのアメリカがここまで正々堂々とウソをつくとは」と思うかもしれないが、それが国際場裏における現実なのだ。そして現状を見るかぎり、誰でも気づくことのできる上記のような「疑問」を踏まえれば、私には「シェール革命」が手の込んだ「高貴な嘘」に思えて仕方がないのである。



アメリカの深謀遠慮とは?



「なぜそこまで手の込んだことをアメリカはするのか。シェール革命でいちばん儲けられるのは自分なのであるから、ウソなどつく必要ないのではないか」。読者からそんな反論が聞こえてきそうだ。しかし大変失礼ながら、そう思われた読者の方は人気漫画「北斗の拳」ではないが、“お前はもう死んでいる”のである。なぜならばまさにここにこそ、アメリカの深謀遠慮が潜んでいるからである。考えられるシナリオはいくつかある。



まずいちばん単純に「シェール革命」が本当に推し進められる場合を想定しよう。実のところシェールガス/シェールオイルの鉱床は確認されているだけでもアメリカ以外の世界各地に存在している。中国や中南米などであるが、問題は現状の天然ガスや原油の価格では採算がとれない点にある。したがってこのシナリオにおいて関係各国はいずれも、石油・天然ガスが最も産出されている中東地域が「有事」となり、そこでの生産が不可能となることを強く期待することになる。イスラエルによる対シリア攻撃をきっかけとしたイランとの本格的な戦闘開始、そして「中東大戦争」への発展がその先には見えてくる。

現状では今年秋にもありうる展開であるが、そうなった場合、世界中の株式マーケットは全面安だ。マネーは逃げ場所を求めて日本円に殺到、強烈な「円高」となるわけである。オイルショックに見舞われた世界は、アメリカに「シェール革命」の推進を要請するはずだ。一方、サウジアラビアやイスラエルは戦乱で勝ち残るため、アメリカ製兵器を続々と購入し続けるに違いない。アメリカにとっては一挙両得というわけなのである。

だがここで困るのが中東地域以外の産油国、特にロシアである。通常の天然ガスや石油をめぐる最大のプレーヤーであるロシアは「シェール革命」に反対すべく、中東開戦を阻止し続けようとする可能性が高い。その結果、このシナリオは頓挫してしまう危険性をはらむ。



問題はアメリカにとっても、「そんなことは先刻お見通し」であるはずだという点なのだ。つまりこのとき、アメリカの真意は「シェール」にはない。そしてそうであるとき、アメリカは実のところ周囲をアッと驚かせる次世代エネルギー技術をすでに開発しているはずでもあるのだ。しかしそれをあえて出さずに「シェール革命」なる用語を“捏造”し、しかも天然ガスを今や世界中で買い漁っているわが国にこうささやきかけているのである。



「パイプライン設置のために投資をしてくれたらば、最優先でシェールガス/シェールオイルを特別に分けてあげてもいい。福島第一原発事故の余波で貴国は大変でしょう」



これに“日米同盟”という美辞麗句がつけられれば、わが国要人たちがこれに抗することはまずない。進んで資金提供し、巨大プロジェクトの完成を今や遅しと待つことになるはずだ。むろん、アメリカも日本側協力者に鼻薬をかがせることを忘れないはずだ。たとえば時代はさかのぼって第2次世界大戦後の1950年代、アメリカ国防総省の支援により設立された「日本開発会社」は、いくつかの復興のための巨大インフラプロジェクトに関与していたことが史料から明らかになっている。

しかしそのための資金としてアメリカ国防総省から捻出された資金は、戦後最大の政治プロデューサー「児玉誉士夫」を経由して、わが国政財界の闇へと消えて行ったのである(有馬哲夫『児玉誉士夫 巨魁の昭和史』(文春新書)参照)。「インフラ開発に日本を絡ませたときには駄賃がいる」。そうアメリカ側は伝統的に認識しているはずなのであって、わが国からパイプライン建設にマネーが流れれば流れるほど、その一部がわが国へと還流され、再びわが国政財界の闇に消えることは大いにありうる、と歴史家ならば断言するはずだ。むろん、私や読者の皆さんのような庶民の知らないところで。



それでは私たち日本人は、ただひたすら手をこまぬいて見ていなければならないのか。またそもそもアメリカはこの場合、いわば「捨て駒」となるシェール革命ではなく、実際のところ何を追求しているというのであろうか。



次世代の「本命」はシェールではなく、水素



簡単に書くならば、まず前者についてひとつの「光」を先日、わが国の神奈川県・寒川にあるとあるヴェンチャー企業Q社で私は目の当たりにした。シェールガスといっても炭酸ガスは出てくる。ところがこの企業が開発した技術ではこれを「炭酸化ナトリウム」と「水素ガス」へと分離できるのである。つまり「排ガスから燃料ができる」わけで、驚愕の技術なのだ。アメリカがシェール革命を推し進めれば進めるほど、その後ろについてこれを売ることで、わが国は巨利を得ることができる代物なのである。こうした革新的な技術を私たちは大切に育て、全面開花させなければならない。



一方、後者について言うならば、アメリカにとっては実のところ宿敵であるイギリスの態度を見れば答えはすぐ出てくる。上記の拙著でも書いたことだが、イギリスは2015年までに水素エネルギーによる燃料電池車の完全商用化を公的に宣言している。そう、時代は「水素」なのであって、シェールであろうが何であろうが、化石燃料ではもはやないのである。



しかしそれを真正面から追求すると、アメリカはイギリスから何をされるかわからない。それをアメリカが最も恐れているであろうことは、中東の石油利権を争ってきたのが、ほかならぬ米英両大国であったことを思い起こせばすぐわかるのである。だからこそ「シェール革命だ」とアメリカは騒ぎ、「高貴な嘘」をついていると考えると合点が行く。



わが国にとって今、必要なのはバカの壁に入ることなく、老練な米欧各国が国際場裏で公然とつく「高貴な嘘」をあらかじめ見破り、私利私欲を捨てて人知れず備えるべく全国民を指導するリーダーなのである。今夏行われる参議院選挙の本当の争点は、実のところ「この一点」なのである。そのことを私たち有権者は忘れてはならない。

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