m.yamamoto

2月 142016

戦後、日本人が近現代史を事実上、学ばなくなってから久しい。その結果、「日本が朝鮮半島、台湾、満州で行ったこと」を全く知らない日本人が大量生産されている。

私たち日本人は、朝鮮半島、台湾、満州において欧米の植民地経営と異質の「同化政策」と取り、莫大な予算をその国に投じ、インフラ整備等を行ってきた。その結果、戦後、アメリカが仕掛けた分断統治政策によって恨(ハン)の国、韓国からは恨みを買い、米国がそのような政策をとらなかった台湾からは、それほどの反感を持たれることはなかった。むしろ、現在の台湾は親日国と言っていいだろう。 

 私たち日本人が忘れてならないことは、英米は、ロシアの南下政策への対応、大英帝国の金融支配(金本位制をすすめるために)の上でも日本の朝鮮半島への進出を明らかに承認していたことである。石原莞爾、板垣征四郎による満州国建国ですら、満鉄の経営を米国の鉄道王ハリマンとの共同経営にしておれば、おそらく認められていただろう。

戦前、北朝鮮の工業地帯をつくり、鉱山を開発していたのも、私たち日本人であったことも忘れてはならないことである。なぜなら、その設備は今も生きているのだから。今、北朝鮮の核問題で大騒ぎだが、彼の地で理化学研究所を中心に戦前、核兵器である原子力爆弾開発に邁進していたのも、私たち日本人なのである。 

歴史にイフはないと言われるが、もし、日本が大東亜戦争でアメリカと戦争をしなければ、朝鮮半島は、現在のアメリカにおけるハワイ州のようになっていたことも間違いない。それほど日本の朝鮮半島に対する植民地支配は完璧だったのである。それは朝鮮銀行(中央銀行)による金融支配とメディアコントロール、李王朝の日本の皇室への取り込みにあった。

そのために当時の日本政府は、李王家に150万円も予算をつけたのである。当時、日本の11宮家の総予算が70万円だったことを考えれば、如何に破格の待遇であったか、わかるだろう。この政策によって李王家は、同胞朝鮮民族に対する求心力を急速に失っていくことになる。また、裏では英米にお金儲けをさせることも明治維新以来、英国勢力と共犯関係にある明治の元老の日本は決して忘れていなかったのである。 

米国は戦後、このような日本の朝鮮、満州管理政策を詳細に研究し、戦後の日本管理にその研究尽くした日本の手法を応用していった。そしてそれは、今も現在進行形である。その証拠に米国は日本占領後、「日韓併合条約」の原本を本国に持ち帰り、未だに日本に返還しようともしていないのだ。 

かつて私たち日本人は、宗主国としていい悪いは別にして、朝鮮半島のことを世界で一番知っていた。今もそうであったなら、現在報道されているような米国の戦争屋=ジャパンハンドラーが創作した北朝鮮:悪の枢軸のような幼稚なプロパガンダがこれ程、日本のマスコミで連日、報道されることはないはずである。(NHKは国際放送では、North Korea airs rocket launch video、「北朝鮮がロケット打ち上げビデオを放送」、それに対して私たち日本人には、「北朝鮮の国営テレビ、ミサイル発射の放送」である。明らかに日本国民に対するイメージ操作が行われているのである!)大体、今回官邸が沖縄等に配置した迎撃ミサイル・システム(:海上自衛隊が運用するイージスBMD,航空自衛隊が運用するPAC-3)ではミサイル?の迎撃は不可能に近いのである。日本政府は無知な国民に対してパーフォーマンスをしているに過ぎないのである。 

今回は、北朝鮮を少しでも客観的に見ていただきたいと思い、まとめるレポートである。

まず、はじめにレポートでも時々紹介する元外交官原田武夫氏の「北朝鮮外交の真実」という本のことを知っていただきたい。この本は小泉純一郎氏が北朝鮮外交を展開している時に北朝鮮班長を務めた原田氏の経験から日本外交の問題点を指摘した本である。内容は以下。ただ、北朝鮮外交を巡る内部情報は一つも明かされていないのが物足りないところである。

北朝鮮外交の真実

・1993年4月。桜咲く霞ヶ関に、私(原田武夫)はリクルートスーツに身を包んだ同期たちとともに、外務省に初登庁。東京サミットが過ぎ、在外研修員としてドイツ連邦共和国における研修生活が始まった。 

・そこで大物外交官、有馬龍夫駐独大使から、日々厳しい薫陶を受けることになる。

外交官としての立ち振る舞いのイロハは、ここで学んだ。ハーバード大学で政治思想を教える立場から、一転、外務省へと転職した異色の経歴を持つ有馬大使は、何かというと日本の国内政治か、食か酒の話しかできない日本人幹部外交官とは全く違い、その類い稀なる知性と、レスンリング選手であった頃からの強靭な意志で、どんな大物ドイツ人政治家であっても圧倒するほどの迫力を持つ人物だった。 

・彼の秘書官として、朝の鞄持ちから、深夜にまで及ぶこともある公邸夕食会の裏方に至るまで、24時間、その仕事ぶりを学び、盗み取った。 

・北朝鮮外交だけをとってみても、関係する諸国は皆、それぞれに濃淡はあれど、はっきりとした「経済感覚」をもって、外交の現場に臨んでいる。そうでないのは、悲しいかな日本だけである。北朝鮮問題の本質は、核兵器ではなく、実は鉱山利権を巡る争いである 

・外交とは、近代国家に特有の国家の行動である。

その意味で、外交を論じるということ、あるいは外務省を論じるということは、結局は、その国のあり方について論じるということにも通じていく。 

・安全保障問題だからこそ、相手国の財界関係者が精通していることも多々ある。

なぜなら、彼らにとってある国や地域の安全保障環境は、すなわち投資環境の状態につながるからだ。こうした相手国財界関係者に「お土産」となる情報をもたらすことで、相手国政府が「作った事実」の真偽や経緯を検証することもできるはずだ。 

・企業活動の本当の成否はヒト、モノ、カネといった目に見える資源が決めているのではない。技術開発力、熟練やノウハウ、特許、ブランド、顧客の信頼、顧客情報の蓄積、組織風土といった、目に見えない資源こそが企業の発展のカギを握っている。これらの資源を『見えざる資産』と呼ぶと、それは実はすべてが情報にからんだ資源であることがわかる。

・他者との関係を媒介する力が強い人ほど、そのネットワークで中心的な存在である。

ハブとして強力な媒介中心性を有していれば、そのネットワーク内で流れる情報は、すべて自分を通らなければならない仕組みになっている以上、ハブの人はいわば常に情報の「良いとこ取り」ができる立場にある。 

・情報の競争に勝つためには、ひとことで言えば、「ハブ」としての地位を保つために、あらゆる手段を用いるべしということに尽きる。 

・今の自分に欠けている情報を得るためには、自分と関係が重複していない人々やメディアを情報源としている人々と接触する必要がある、というわけだ。 

・ODAは、武力を持たない丸腰の日本外交が唯一持っている「伝家の宝刀」だ。いかに暴れん坊の国であっても、ODAを供与しない、あるいは減額するといった議論を始めると途端に、日本に対して従順となる。 

・外交に求められる発想法、あるいは論理とは何か。私は、非常に単純な整理をした場合、それは次の六段階の発想法だと考える。 

1.地理的・時間的に研ぎ澄まされた現状認識を持つ。 

2.狙った相手国へ自国に有利な投資条件の整備を飲み込ませる。 

3.あらかじめ安値の間に先行投資を行う。 

4.軍事力を背景とした工作を展開する。 

5.狭義の「外交」によって表面を取り繕う。 

6.そこで実際には絶好のタイミングであらかじめ仕込んでおいた先行投資を回収する。 

・「本当に勝つボクサーは、アッパーなんて打ち込まないよ。勝利のためには、目立つことでなく、相手が体力を消耗するように地道にボディーブローを繰り返す。外交も同じだよ」(ある老練な先輩外交官) 

・日本の「公なるもの」とその延長線上に幸福を描く議論に共感する気持ちは、大方の日本人を大同団結させるものである。この気持ちが後押ししてくれるからこそ、日本外務省の仕事が成り立つのだ。 

・外交はひとり政府が行うものでもなく、外務省がすべてを担えるものではないことを率直に吐露したい。その上で、オールジャパンで国際場裏において、「国富を取りにいく」ことの重要性を説くこと。この率直さと、高潔さが外務省に働く人々に備わったとき、「日本のために」を合言葉に寄り集う人々の団結は、もはや他国からのメディア・アプローチへの免疫を十分兼ね備えたものとなる。 

・「情報力」によって事実を認識し、「政経合体戦略」によってターゲットの選定とそれを獲得するまでのシナリオを描く。そして狙いを定めた先に、まずは圧倒的な「メディア・アプローチ」をもって、世論を形成させていく。 

・外務省に入省した若い省員たちは、古株たちから、「他省庁と話すときには付加価値を付けて話せ」と叩き込まれる。外務省には権限がないため、複数の省庁にまたがる懸案事項について国内調整するとき、郵便屋になってしまうことが多い。しかし、それではナメられてしまうから、何としてでも知恵を出せというわけだ。 

・ドイツには「連邦諜報庁(BND)」という機関がある。日本と同じく敗戦国として再生した西ドイツにおいては、日本と異なり、戦後まもなくから諜報機関が活動してきた。BND自身は1956年に設立されたが、その前身はナチス政権下で東欧・ソ連に対する諜報活動を指揮していた。ゲーレン将軍が率いる「ゲーレン機関」であった。 

・東欧とソ連を自らの生存圏として定義し、そこへの侵略戦争を展開していたナチス・ドイツにとって、これらの地域への諜報・工作活動は死活的な意味合いを持っていた。

そのため、ゲーレン将軍率いる特殊機関は大きな役割を果たしていたが、ナチス・ドイツの敗北とともに、この機関も消滅するかに見えた。しかし、ゲーレンはこの機関の遺産を、そのまま「東側世界への防塁」として役立てていることを米国に提案し、戦後世界における生き残りをはかることになる。 

・日本に本当の「外交」を可能とするために、人的ネットワークを創り上げよ。 

・「トータルな発想」では、個別の地域的問題ではなく、世界中のあらゆる地域・国家を対象とした外交政策がリンクされなければならない。

なぜなら、富は常に世界のどこかに集積しているからだ。すべての地域に目を配り、綿密な計算の下、外交政策の全体のポートフォリオが絶えず更新されなければならない。(終わり)

それでは、過去のものになるが彼のブログから興味深い記事を紹介したい。以下。

 

「北朝鮮は世界最強のファンドビジネス国家?」 2007年 212

 

今頃になって騒ぎ立てる日本のメディア 

28日から中国・北京で行われた北朝鮮を巡る六カ国協議。2003年から延々と行われてきたこの協議も最大の山場を迎えた。いや、日本にとっては山場どころか、最大のピンチといった方がいいのかもしれない。なぜなら、とある重大事がはっきりとしてきたからだ。

「封じ込まれているのは北朝鮮ではなく、日本ではないのか」

あれだけ北朝鮮とはサシで話し合いはしないと言っていた米国が、ドイツ・ベルリンで米朝協議を行い、交渉当事者たちがなにやら怪しげな笑みを浮かべた後に行われたのが今回の六カ国協議である。蚊帳の外に置かれた日本政府は、一体何が起きているのか分からないというのが正直なところだろう。

しかし、今回の六カ国協議の直前になって、日本のメディアがけたたましく騒ぎはじめた話がある。それは、よりによって北朝鮮の豊富な鉱山利権を巡って、英国が深く関与する形でファンドが設定されているというのだ。しかも、それは一般に売られており、インターネットで広告すら出されているのだという。いつもは「核兵器の脅威だ!」「拉致問題だ!」としか騒がない初老のコメンテーターたちが、訳知り顔で付け加える。「要するに安い内に買っておいて、米朝が仲良くなって値上がりしたら売り払うということですよ」。 

今になって「したり顔」でコメントする彼らの似非コメンテーターぶりに、正直、怒りを超えて、呆れてしまった。なぜなら、北朝鮮問題の本質は、核兵器ではなく、実は鉱山利権を巡る争いであることは、一昨年4月に出した拙著『北朝鮮外交の真実』でも既に明らかにしたとおりだからである。そうした真実をこれまで語ることなく、今頃になって「したり顔」で騒ぎ立てる日本のメディアの罪は重い。 

ドイツとスイスの新聞だけが明かす真実

 

豊富な鉱物資源を抱える北朝鮮は、実は世界でも有数の「ファンドビジネス国家」でもあるのだ。英国、そしてスイスといった欧州諸国、あるいは中国を経由して、それに目をつけた資金が既に大量に流れ込み、鉱山開発が着々と進められている。その一方で、これからは資源、とりわけ鉱物資源の時代である。特に、来年の北京オリンピックを控えた中国は、大量の金属、石炭、そしてウランや金を必要としている。隣国でこれだけ巨大な需要が生まれるのだから、北朝鮮は笑いが止まらないだろう。そこにファンドを設定した欧州各国の投資家たちも、北朝鮮と同じ思いに違いない。しかし、どうやら米国はこの利権にありつき損ねたようなのだ。だからこそ、何かというと北朝鮮を悪者扱いし、挙句の果てには経済・金融制裁まで課してきた。そして、「米ドルの偽造疑惑」まで持ち出しては北朝鮮をたたき続けている。 

しかし、今年の1月7日。世界中の北朝鮮ウォッチャーたちを大いに驚かせる報道が、ドイツの最有力紙「フランクフルター・アルゲマイネ」に掲載された。それは何と、「ニセ米ドル」は米国自身がアフリカの独裁政権を維持するために刷ったものであり、これが巡りめぐって北朝鮮に渡されたに過ぎないというのである。同じような内容はスイスでも最有力紙「ノイエ・チューリッヒャー・ツァィトゥング」が昨年1119日付で報じている。 

これらは、日本の「似非コメンテーター」たちが話すのとは訳が違う。なぜなら、米ドルの輪転機をつくっているのはドイツであり、そのインクはスイス製だからである。したがって、北朝鮮に関する米国の主張や政策と真っ向から反対するこれらの記事にはすさまじい重みがある。それなのに、日本の大手メディアは一切このことを報じてはいない。 

世界をウォッチする個人投資家だけが生き残る 

賢明な読者は既にお分かりであろうが、金融資本主義のイロハを知っていれば、ここで一体何が起きているのかを想像するのはそれほど難しいことではない。ドイツやスイスの激し方からいって、要するに彼らが北朝鮮で展開するファンドビジネスの取り分に米国が手を出してきたのであろう。だからこそ、米国と「ガチンコ勝負」に臨んだというわけだ。 

その結果、どうなったのか。―――116日、ドイツのベルリンで米朝協議が行われた。ドイツのお膝元で米国は北朝鮮とあえて話し合いをもったのである。要するにブッシュ大統領は完全に「白旗」をドイツに振ったのである。その後に行われた今回の六カ国協議で話し合われる「本当の問題」が一体何であるのかは、この段階で既に明らかだったといえよう。 

それなのに、日本の大手メディアやそこに巣食う言論人たちは、「北朝鮮問題を経済問題で片付けるのはけしからん」などと訳の分からない主張を繰り返し、無策な安倍晋三総理もその尻馬に乗ってしまっている。拉致問題の解決のためには、それこそ日本の国富で北朝鮮ファンドを買占め、胴元である北朝鮮にいうことを聞かせるべしといった、金融資本主義の鉄則にかなった外交を主張する政治家・外交官はこの国に全く見当たらない。(終わり)

 もう一つ、彼の興味深い指摘を紹介する。

 

「“朝鮮統治”という1つのビジネス・モデル」 

たとえば、過去における朝鮮統治の問題を考える時、次のような質問をされたならば、読者の皆さんはどのように答えるだろうか。 

「日本による植民地統治下にあった朝鮮半島で、石油を売っていたのは誰なのか。そこにも日本人による現地住民に対する“搾取”という絵柄が見て取れるのか」。 

恐らく答えに窮する読者が多いに違いない。「第2次世界大戦へと突入する直前まで、朝鮮半島で石油を独占的に販売していたのは、日本勢ではなく、英米勢だった」というのが、この問いに対する正解なのである。 

朝鮮統治が行われた1910年以降の大部分の時期において、現地での石油販売を独占していたのは米系のスタンダード社、そして英系のライジングサン社(後のシェル)なのであった。

なぜこれら2社が朝鮮マーケットを独占できたのかといえば、これらいわゆる「外油」に対しては、輸入に際して特例関税が課されていたからである。具体的には、当時、日本のいわゆる「内地」に石油を輸入するにあたっては高額の輸入税が課せられていたのに対し、朝鮮という「外地」については消費者に安い石油を使わせるべしという理由で、無税に近い税率が設定されていたからである。そのため、外国から輸入した石油を朝鮮へと転売する日本の石油企業は著しく不利な立場に置かれていたわけなのだ。

満州(現在の中国東北部)における鉄道などについてもいえるのだが、日本の大陸進出を巡るビジネス・モデルには、常にこれと全く同じ1つのパターンが見え隠れする。すなわち、表向き「進出」していくのは紛れもなく日本である。だが、その一方で目立たないが重大なセクター(インフラストラクチャー)で広く、着実に収益を上げていたのは米国勢、そして英国勢なのであった。 

もちろん、第2次世界大戦の足音が響き始めると同時に、これら英米勢は駆逐され、日本勢が代わりに入っていくことにはなる。しかし、だからといって「朝鮮統治」というビジネス・モデルは日本が単独で担ったものではなく、むしろステルス(透明)で、より狡猾な形でそれによって莫大な利益をあげていたのは他ならぬ英米勢だったのである。そして問題なのは、こうした単純な「史実」であっても、私たち=日本人が学校で学ぶ機会はほぼ100パーセント無いという現実なのである。 

確かに、過去の一時期において「不幸な出来事」が日朝間で生じたことは否定できない。しかし、だからといって朝鮮統治というビジネス・モデルの展開によって現地が被った全ての償いを日本に対して求める一方、いわば“本当の黒幕”だった英米に対しては何も問わないという主張は、全く肯んずることはできないのである。そして、こうしたダブルスタンダード(二重の基準)自身に見え隠れする虚構こそ、今の日本、そして東アジア・マーケットを見る私たち日本人の眼を曇らせる最大の要因でもあるのだ。(終わり) 

それでは「行政調査新聞」が今回の核実験を巡る北朝鮮の動きについてなかなか適確な分析をしているので紹介する。

http://www.gyouseinews.com/p4_naigaijousei%20kokunaitenbou/p4_2_naigaijousei_kaigaijousei.html

 

「東アジアの枠組みを激変させる北の核ミサイル発射実験!」~日本が核武装する日~ (201626)

 

今年(2016年)1月6日に北朝鮮は4度目となる核実験を行った。「地球観測衛星」という名目で長距離弾道ミサイルの発射実験を行うと通告しており、早ければ今日明日にでも発射実験が行われるかもしれない。国際世論に逆らう暴挙は、北朝鮮のますますの孤立化を招くと思われる。だがいっぽうでは、北朝鮮の「綱渡り外交」が着々と成果をあげているとの分析もある。この先、北朝鮮がさらに暴れ出せば、東アジアは激変する。それが禁断の「日本核武装論」に火をつける可能性がある。 

「休戦協定」により休戦中の朝鮮戦争 

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は国土面積約12万平方キロで日本の3分の1。ここに日本の5分の1以下の2450万人の人々が住む。建国は1948年(昭和23年)9月9日。(日本の敗戦後約3年間はソ連が占領していた。)

建国2年後の1950年6月25日未明、北朝鮮軍は国境線を突破して大韓民国に侵攻。朝鮮戦争が勃発した。この戦争は「米軍・韓国軍を中心とする国連軍」と「北朝鮮・中国軍(ソ連が物資支援)」との戦争で、朝鮮半島全域が戦場となった。開戦1年後には38度線を挟んで膠着状態となり休戦が模索され始めた。1952年1月には実質的休戦となり、1953年7月に「休戦協定」が締結された。戦死者数は不明だが、一般的に双方の兵戦死者100万人以上、民間人犠牲者も100万人以上200万人に近いとされる。 

国連軍と北朝鮮、中国軍との間に交わされたのは「休戦協定」である。「停戦協定」ではない。協定に明白な違反があれば、通告不要で直ちに攻撃が可能となる。違反はすぐに出現した。協定では、両軍は「新たな武器兵器」を導入しないことになっていたが、米軍の説明によると北朝鮮がこれを破って新規の武器兵器を導入したという。これに対抗して米国は1957年に休戦協定の一部を一方的に破棄すると通告。1958年1月には核武装したロケット弾オネスト・ジョンを韓国に配備した。米軍はその後、ソ連や中国を射程に収める核弾頭ミサイルを配備している。

当初、北朝鮮はこれに対抗して地下要塞の建設を進め、米軍による核攻撃の被害を最小限にとどめようと努めた。その後北朝鮮は、米韓軍事演習を「北朝鮮への侵攻を企図する大規模軍事演習」と断定し、「もはや休戦協定は機能していない」、「失効している」と主張。1994年以降2013年までの間に何度も「北朝鮮は休戦協定に束縛されない」と宣言している。 

北朝鮮は米韓連合軍(国連軍)の攻撃を非常に恐れている。 

「休戦協定」を破棄し、新たに「停戦協定」を結びたい。それが北朝鮮の本音である。「停戦協定」を結ぶためには、戦力対戦力、武力対武力で互角でなければ対等の条約を結べない。その怖れを北朝鮮は感じている。 

北朝鮮の核は世界一流 

昨年(2015年)6月に米国大統領補佐官・国家安全保障担当のスーザン・ライスが極秘裏に韓国を訪問し、韓国軍と協議を行っている。その直後、米国DIA(国防情報局)が以下の情報を発信した。

「北朝鮮の核は非常に高度で、北朝鮮が韓国に対し軍事行動を起こす『根拠ある判断』を所有している」

米国の統合参謀本部偵察作戦を担当する部署の情報である。じつに衝撃的で、一般常識を覆す内容である。「北朝鮮の核は非常に高度」とはどういう意味か。そして「韓国に対し軍事行動を起こす根拠ある判断」とは何を意味するのか。 

大多数の国民が飢え、エネルギー不足、電力不足、灯油すら満足に求められず、科学技術も劣る最貧国が「高度な核技術」など持てる訳がない。これが多くの日本人の本音であり、世界中もそう考えていると勝手に推測している。しかし現実はそうではない。米DIAの分析によると、北朝鮮の核開発物資、開発作業員はソ連崩壊(199112月)直後にウクライナから持ち込まれたという。旧ソ連は米国と肩を並べる核大国だったが、ソ連の核兵器はウクライナで生産され貯蔵されていた。ウクライナはソ連の核開発、核技術の本拠地だった。それがソ連崩壊と同時に北朝鮮に流れたのだ。

さらに北朝鮮にはヨーロッパの最先端核技術が導入されている。

北朝鮮は現在世界の160カ国と国交を樹立しており、豊富な地下資源を輸出している。「貧困な北朝鮮」とは日本のマスコミが作ったイメージで、鉄鉱石、無煙炭、マグネサイトなどの輸出でかなり潤っているのだ。EU諸国では、アイスランドとフランス2国以外とは国交を持ち、イギリス、ドイツとの関係が深く、英・独とも平壌に大使館を置いている。ドイツは北朝鮮の羅先経済特区支援のために1兆9000億円投入を決定したばかり。第二次大戦以前から北朝鮮の医薬品、医療器具はドイツ製のものが使われ、両国の親密な関係が理解できる。そして北朝鮮の最先端核開発にはイギリスとドイツの科学者が深く入り込んでいる。 

「核抑止論」から「実戦核兵器」へ 

これまで核兵器は「使用されない兵器」と考えられてきた。対立する国が核兵器を使用すれば相手も報復攻撃を行い、両者が国土、国民すべてを失う大ダメージを受けるばかりか、全世界が放射能汚染され、地球そのものが破壊されると考えられてきた。だから核兵器とは、「実戦に使用されることのない『抑止兵器』」とされてきた。しかし……。

第二次大戦から70年の歳月が過ぎた。その間、科学は途轍もなく進歩した。第二次大戦時最速の戦闘機は時速700km程度。現在の最速は約5倍のマッハ2.5超。時速3500km近くになる。ビル1棟分も必要だったコンピュータは机の片隅に置けるようになった。科学技術の進歩は想像を絶している。では広島・長崎に落とされた原爆は70年前からどれほど進歩したのか。 

軍事兵器に関して正確なことはわからない。かつて戦略核、戦術核と分類されていたが、1961年に旧ソ連が行った「世界最大の核実験」以降、米ソを含め核保有国は核の小型化を目指した。小型化、超小型化、超々小型化……。それが意味するところは何か。「実戦核兵器」である。北朝鮮が核兵器の小型化に挑戦していることは2006年の最初の核実験から一貫している。米DIA(国防情報局)は2013年4月に「北朝鮮は弾道ミサイルに搭載可能な小型核弾頭を開発した」とのコメントを発表。その後核の小型化はさらに進化し、実戦配備可能な状態になっていると思われるのだ。また、科学者には、作った武器兵器を試してみたくなる心情が存在する。ヨーロッパの科学者にとって極東で超々小型核を実験することを期待する気持ちが働いていることも事実だ。さらに超々小型核による放射能汚染をどうすれば除去できるのか……。 

昨年6月、米DIAは「北朝鮮が韓国に対し軍事行動を起こす『根拠ある判断』を所有している」と発信している。その直前にライス大統領補佐官(国家安全保障担当)が韓国軍中枢と秘密裏に会談した理由は、北が単なる南進(韓国への侵攻)だけでなく、実戦核を使用する可能性に踏み込んだものと推測できる。 

米国の「核の傘」が期待できない韓国 

北朝鮮は2月8日から25日までの間に「地球観測衛星を打ち上げる」と公表している。金正日総書記の誕生日である2月16日直前の発射実験との見通しが強かったが、2月5日には燃料注入を開始した模様で、天候次第では8日、9日にも打ち上げるかもしれない。場合によると不具合の調整などで、実験が月末になる可能性もある。

北朝鮮が超々小型核兵器の開発に成功し、攻撃力をバックに南進を開始したら韓国はひとたまりもない。頼りは米国の「核の傘」だが、今回の北朝鮮の実験で使用されるミサイルは明らかに米本土到達能力を持っている。米国の「核の傘」には頼れない。韓国内では以前から核武装論がくすぶっていたが、今年1月の北朝鮮の核実験以降、与党セヌリ党の元裕哲(ウォン・ユチョル)院内代表や金乙東(キム・ウルドン)最高委員が「核兵器独自開発」を口にするなど、その声が一気に高まってきている。ミサイル発射実験が行われれば、その声はさらに高まるだろう。 

韓国が核武装の検討を真剣に始めれば台湾も動くと考えられる。かつて中国の核実験(1964年)以降、蒋介石が核開発を開始し、米国がこれを制止したという経緯がある。1980年代には蔣経國政権下で本格的な核開発が進み、1987年にプルトニウム抽出まで行っている。この計画は李登輝政権時代に米政府の圧力で施設を閉鎖したが、蔡英文政権下で復活する可能性はある。韓国が核開発をすればその可能性は一気に高まる。そしてそれは中国との激しい摩擦を生む。

韓国、台湾で核武装論、核開発が進めば、当然ながら日本にも影響が出てくる。米国にも日本の核武装を求める声があり、とくにネオコンは日本にNPT(核不拡散条約)からの脱退を奨励している。この場合の日本の核とは、「米国製の核を日本が預かる」というものではあるが。 

2016年、東アジアは大暴風雨を迎えようとしている。予想をはるかに超えた事件が勃発する可能性がある。政治的、経済的、軍事的なすべての面が凋落し、大統領選を迎えて国内論議に終始している米国は頼れる状況にない。安倍晋三政権の改憲議論も念頭に、本気で10年先、20年先の日本を見つめていく時が来た。(引用終わり)

如何だろうか。北朝鮮は、決して日本のマスコミが報道しているような国ではないのである。ただ、朝鮮戦争以来、現在も米国と戦争中であり、日本は北朝鮮が戦っているアメリカの同盟国(属国)であるために極端なネガティブキャンペーンをやらされているというのが現実である。上記の記事では全く指摘していないが、以前のレポートでも解説したように現在、宇宙、軍事技術で圧倒的に優位に立っているのがロシアである。だから、これからのロシアのプーチンの動きによって、韓国、台湾、日本の核武装問題は大きく変わるはずである。現在、ユダヤネットワークと密接に関係していたグローバーリスト、ロシア革命の立役者であるレーニンをプーチンが痛烈に批判し始めていることにも注目すべきだろう。その意味でプーチンが従来のネオコン:戦争屋を利する大きな戦争を望んでいないことだけは間違いないところだ。 

その意味で2016年もロシアのプーチンの動きから目が離さないのである。

*参考資料

「米国人専門家「ロシアの最新鋭対空防衛システムが中国の手に入れば、アジアの状況は変わる」 20160127

http://jp.sputniknews.com/politics/20160127/1499873.html#ixzz3zxeCSdZp

米国のランド(RAND Corporation)研究センターのティモシー・ニース主任分析員は、今後予想されるロシアの最新鋭地対空ミサイル・システムS-400(トリウムフ)の中国への供与、それがアジアの安全保障システムにもたらす影響について自身の見解を述べている。

以下、ニース分析員の見解を、要約して御紹介する。

S 400連隊

<ロシア航空宇宙軍 新たなS-400連隊をモスクワ郊外に配備>

-400(トリウムフ)について、マスコミが取り上げ始めたのは昨年末で、ロシアが、スホイ24戦闘機がトルコ空軍機に撃墜された事に対抗する措置として、シリアにそれを配備した時の事だった。そうした対空防衛システムの出現により、トルコは、空での作戦を一時中止せざるを得なくなり、また米国とその同盟国の作戦に本質的な影響を及ぼした。このエピソードは、S-400(トリウムフ)が持つ幅広い可能性と、軍部隊の配置に対する影響力を示すものである。

そして近い将来、このシステムを入手する中国も、そうした可能性と影響力を持つことになるという事実は、極めて注目される。中国が、このシステムをどこに展開する計画なのか、現在に至るまで明らかではない。

-400は、現在存在する地対空ミサイル・システムの中で最も効果的なもので、その射程は400キロだ。伝えられているところでは、このシステムは、100の標的をとらえ、そのうち6つを同時に攻撃できる能力を持っている。射程400キロと言えば、台湾全島や北朝鮮のほとんど、さらには尖閣諸島のすぐ近くまで網羅できる。そうなれば、中国は、危機的状況になれば、米国及びその同盟国の行動を本質的に抑える事が出来、反応する手段の選択において、彼らを狼狽させることになる。(引用終わり)

1月 222016

正月明けから日経平均がなかなか下げ止まらない。そして安倍政権のスキャンダルが続出しそうな空気が漂い始めている。以下。

衝撃告発「私は甘利大臣に賄賂を渡した!」週刊文春1月20日(水)

 

甘利大臣甘利大臣2

<50万円を甘利氏に渡し終えた後のツーショット。撮影は清島所長が>

甘利明TPP担当大臣(66)と公設秘書に、政治資金規正法とあっせん利得処罰法違反の疑いがあることが週刊文春の取材でわかった。千葉県内の建設会社の総務担当者が週刊文春の取材に応じ、メモや録音を基に金銭の授受を証言した。 この男性によれば、独立行政法人都市再生機構(UR)が行っている道路建設の補償を巡り、甘利事務所に口利きを依頼。過去3年にわたり、甘利大臣や地元の大和事務所所長・清島健一氏(公設第一秘書)や鈴木陵允政策秘書に資金提供や接待を続け、総額は証拠が残るものだけで1200万円に上るという。

20131114日には、大臣室で甘利大臣に面会。桐の箱に入ったとらやの羊羹と一緒に、封筒に入れた現金50万円を「これはお礼です」と渡したという。 面会をセットした清島所長は、週刊文春の取材に「献金という形で持ってきたのではないですか」と回答した。ただ、甘利氏の政治資金収支報告書に記載はない。
元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏は、一連の金銭授受は政治資金規正法違反、あっせん利得処罰法違反の疑いがあると指摘した。TPPが国会承認を控える中、甘利大臣の適格性を問う声が上がりそうだ。

<週刊文春2016128日号『スクープ速報』より>

また、日本の大手マスコミは無視をしているが、「ジャパンタイムズ」に元外交官孫崎 亨氏も紹介しているが、下記の記事が掲載されたようである。IOC probes 2020 Games bribery allegations 

http://www.japantimes.co.jp/news/2016/01/16/national/ioc-probes-2020-games-bribery-allegations/#.VqBosnlf2Un

IOCは2020年オリンピック賄賂疑惑を証明IOC probes 2020 Games bribery allegations)」

 

「国際オリンピック委員会(IOC)は2020年オリンピックへの誘致において賄賂があったのではないかと言う点について調査を行う用意が出来ている。スポーツ団体は金曜日、世界反ドーピング機関(WADA)世界反ドーピング機関(WADA)の独立委員会に、東京オリンピックを確保するために500億ドルの協賛金を支払われた可能性を示した資料の提出を求めた。

世界反ドーピング機関報告書の脚注は国際陸連前会長は国際陸連ラミン・ディアク前会長らが国際陸連(IAAF)行事への協賛との引き換えに、2020年オリンピック投票に彼の投票を売る用意があったことを示唆した。報告書は当時IOCメンバーであったディアクがトルコ側が支払いを拒否し、日本側が支払いした後、イスタンブール支持を取り下げ、東京を支持したことを示唆している。 

IOCは我々が事情を理解するため、既に独立機関に報告書を求めたことを明らかにした。東京主催者たちは疑惑は我々の理解を超えているといい、トルコのオリンピック委員会はディアクの要求はイスタンブールが負けた理由ではないと述べた。 

IOCの声明は、IOCメンバーで世界反ドーピング機関の審査委員会の議長をしたディック・パウンド(Dick Pound)は現在のオリンピック招致過程が組織的腐敗に陥っていないことには十分自信を持っていると述べた。ソルトレイク市招致スキャンダル後の体制に言及し、我々は1999年以降多大な努力をしたと指摘した。

彼は腐敗の個別的ケースがあっても、組織的にはオリンピックには関係しない問題と思っていると述べた。

世界反ドーピング機関報告書の脚注は、ディアクの息子の一人Khalilとトルコ陸連関係者の会話が記載されている。“トルコはダイヤモンドリーグないし国際陸連に4-5百万ドルの協賛金を支払わなかったので国際陸連の支持を失った”“会話記録によれば日本側はそのような金額を支払った”

 “2020年オリンピックは東京に与えられた”“IOCは本件を自分達の管轄外として調査を行わなかった”と記載している。

東京はイスタンブールを2013年ブエノスアイレスでの最終投票で60対36で破った。 小野日子・東京五輪広報官は声明の中で、“東京が最高の提言を行ったので東京に決定した”と言及した。

トルコ・オリンピック委員会委員長Ugur Erdenerはディアクの要請関連で敗れたのではない。彼は個人的な投票を彼の期待にそう別の市のために利用したかもしれない“との声明を出した。セネガル人であるディアクは1999年から2013年までIOCメンバーであった。パウンドは木曜日、2020年オリンピック誘致に関する贈収賄に真摯に調査することを提言した。(終わり)

昨秋11月、「アベマジックの終焉が近づいている」というレポートを書いたことがあったが、いよいよ舞台転換の時が迫ってきたようである。いまだに勘違いしている日本人が多いが、そもそもアベノミクスの主目的は、宗主国であるアメリカを助ける為の政策で日本の為のものではない。すべては、20089月のリーマンショックから始まるものである。

 

ご存じのようにリーマンショックは、米国の巨大金融機関の債務超過問題だった。 

1990年代半ばからの米国ITバブル崩壊の後、2000年代に、2倍の価格に上がった米国の住宅価格は、2007年から下がり始めていた。それが、20089月には、住宅証券(AAA格)の40%の下落が明白になり、この下落のため、住宅証券をもつ金融機関の連鎖的な破産になったのである。米国の住宅ローンは、日本(200兆円)の約5倍(1000兆円)の巨大な証券市場を形成している。このためちょっと前まで米国の債券では、国債市場より、住宅証券市場のほうがはるかに大きかったのである。住宅ローンの回収率で決まる価値(MBS等の市場価格)が40%下がると、金融機関が受ける損害は、400兆円になる。ちなみに、米国の金融機関の総自己資本は200兆円レベルである。

 

そのため、20089月には、米国大手のほぼ全部の金融機関が実質で、債務超過になっていたのである。金融機関の債務超過は、経済の取引に必要な信用量(流通するマネー量)を急減させる。当然、株価も下がり、ドルも下落した。20088月は、1929年に始まり1933年まで続いて、第二次世界大戦にまで至った米国経済の大収縮、つまり信用恐慌になるスケールのものであった。放置しておけば、信用恐慌を招くことが必至の状況であった。米政府は金融機関の連鎖的な倒産を避けるため、銀行に出資し、FRBは銀行が保有する不良化した債券を買い取ってドルを供給した。

その総額は、リーマン・ブラザースの倒産直後に$1兆、その後も$1兆を追加し、129月からのQE3の量的緩和(MBSの買い)も加わって、FRBのバランスシートは、$3.3兆と20089月以前の4倍以上に膨らんでいった。

金額で言えば、FRBは$2.5兆(250兆円)の米ドルを、金融機関に対し、増加供給したままになっている。買ったのは、米国債($1.8兆:180兆円)と、値下がりして不良化した住宅証券(MBS1.1兆:110兆円)である。

 

FRBによる米国債の巨額購入は、米国の金利を下げ、国債の価格は高騰させた。この目的は、国債をもつ金融機関に利益を与え、住宅証券の下落で失った自己資本を回復させることであった。同じ目的で、もっと直接に米国FRBは、40%は下落していたMBS(住宅ローンの回収を担保にした証券)を$1.1兆も、額面で買っている。

FRBが下がっているMBSを、マーケットの時価で買えば、金融機関には$0.550兆円)くらいもの損失が確定してしまう。このため時価ではなく額面でFRBが買って、金融機関に利益を与えることにしたのである。MBSの下落損である50兆円はMBSを買ったFRBに移転していることになる。

恐るべき事だが、資本が$660億(6.7兆円)しかないFRB自体も、これらの保有資産を時価評価すれば、債務超過に陥ってしまう。要するに米国経済は、FRBのマネー増発である$2.5兆(250兆円)の上に成り立つ砂上の楼閣だということだ。

一方、FRBの増発マネー$2.5兆(250兆円)は、米国の金融機関の預かり資産になって、それがファンドに貸されて、国際的な投機資金になっている。201211月から日本円を売り(その結果が円安)、株を買ったのも(その結果が株価上昇)この資金である。

もちろん、この5年間、米ドルを増発し続けてきた米国FRBには、そろそろ「出口政策」を模索している。出口政策とは、FRBが量的緩和のために買ってきた米国債と住宅証券のMBSを市場に売って、金融市場から米ドルを吸収することである。これを行えば、米国の金利は上がって、米ドルは不足するようになる。

出口政策が必要とされる理由は、FRBのバランスシートを$3.3兆(330兆円)に膨らませたままでは、いずれ、金融機関に代わってFRB自体が陥った巨大な穴、つまり債務超過に気がつく人が増えるからある。それがドル価値の減価、つまり、ドルとドル債売りに繋がっていく。ドルの暴落、米国債の暴落である。 

将来のドル価値が下がると見て、海外勢がドル債を売り浴びせれば、対外債務が$22.7兆(2270兆円:GDP1.5倍)と巨大な米国経済は、奈落の底に沈むことは間違いないだろう。海外から毎年$5000億の国債を買ってもらい、その分を増加保有してもらう必要がある対外純債務国である米国にとって、ドル価値の減価を見越したドルとドル債売りが、もっとも怖れていることである。

これが起こると、ドルの暴落、米国の金利の高騰になる。これを防ぐためFRBは、出口政策に転じる必要があると考えているわけだ。出口政策は、FRBが買ってきた米国債やMBSを逆に売って、市場のドルを吸収して減らすことである。これをFRBが行うには、米国債を増やして買ってくれる強力なパートナーがいないと、米国はドル安になって金利が上がり、経済は不況のどん底に沈むことになる。 

要するにFRBが売りたい米国債を買ってくれる、海外の国がなければどうにもならないわけだ。もう、おわかりのようにそんな奇特な国は世界には、日本しかいない。第二次安倍政権とは、そのために作られた政権なのである。

2012年の12月以降のアベノミクスによる円安政策は、実は、米ドルとドル債買いであり、円と円債の売りであることは言うまでもない。つまり、日本が米国債を大量に買って米国の財政を支援しているからこそ、見せかけの危うい安定が取りあえず維持されているのである。いい悪いは別にしてこれが世界経済の現実である。 

そして当然のことだが、異次元金融緩和を進めている日銀の財務内容もFRBのように資産ばかり膨らみ、急速に悪化している。そのために昨年末、中国の人民元が、SDR(特別引き出し権)をもつ国際通貨になることが認められたわけだ。すべてはドルの延命のためである。つまり、今起きている相場の乱高下は、中国人民元が国際通貨になっていくプロセスの中で必然的に起きていることで、逆に言えばただそれだけのことであるということである。上記に書いたようにFRBの増発マネー$2.5兆(250兆円)は、米国の金融機関の預かり資産になって、それがファンドに貸されて、国際的な投機資金になっている。当然、FRBが出口政策に向かえば、これらの資金は縮小し、日本市場、中国市場から引き上げていくことになる。それが現在の世界株安である。日本人が頭にいれておくべきことは、本当は、マスコミに騒がれている中国よりアメリカの方がはるかに経済的には大変な状況にあるということである。昨年末にアメリカが原油を輸出すると言い出したのはその現れである。現在でも日本の経済ニュースでは、中国経済のネガティブな面ばかりが報道されているが、一方、世相のニュースでは、今も中国観光客の爆買いのニュースが報道されている。先日も中部国際空港で仏壇まで買っていくという中国人の驚くべき購買行動が紹介されていた。前回のレポートでも指摘したが、表の経済統計がどうであろうと、中国人は金を持っているということである。 

ここで、今までのレポートで何回も断片的に説明させていただいたが、日本という歴史上、今まで存在したことのない、あまりに不思議な<世界の貢ぐ君>になっている債権大国の現実をしっかり頭にいれていただきたい。 

ちょっと、古い数字で恐縮だが、本質は全く変わっていないので問題ないと考えていただきたい。世界的に見ると、富裕層が最も多いのは米国の522万世帯であり、これに次ぐのが153万世帯の日本である。ちなみに中国は85万世帯、英国は57万世帯、ドイツが40万世帯となっている。日本の富裕層の世帯数は前年比6%増。全世帯に占める富裕層の割合は3.2%であり、全資産の24%を保有しているという。

わが国では家計全体の貯蓄額のパイが小さくなっても、このパイに占める富裕層の貯蓄額の割合はむしろ増えている。なお、世界の家計が保有する金融資産は、2010年末に前年比8.0%増加して121.8兆ドルにも達する。この金融資産には預金や株式、債券などは含まれるが、土地は含まれていない。

さらに、大半の家計が苦しくなり貯蓄をする余裕がなくなる半面、民間企業の貯蓄が増加しており、勤労者の貯蓄が企業の貯蓄にシフトしている現象が起きている。日銀の資金循環統計によると、金融部門を除く民間企業の現金・預金の残高は2011年3月末で211兆円となり、統計開始の1980年以来過去最高を記録した。もっとも、民間企業が手元流動性を厚くするために現預金を増やしている側面もあり、貯蓄増加のすべてが民間企業からのシフトというわけではない。だが、リストラによる人件費削減や内部留保の積み上げ、一部の大企業や優良企業に有利な税制などによる要因も少なからず作用していると思われる。

また、2010年末のわが国の対外純資産残高、つまり国内の民間企業や個人、政府が海外に保有する資産から、海外から国内への投資(負債)を控除した残高は、対前年末比▲5.5%減の251兆4,950億円となったものの、世界一の債権国の地位を20年連続で維持した。(現在はアベノミクにより350兆円を優に超えている)

 

日本は世界一の金持ちの国といわれて久しいが、実生活の中で豊かさを実感することはほとんどない。所得は多くても物価は高く支出は多い。住環境や食生活、教育、社会インフラに至るまで、お世辞にも世界一の債権国の名に相応しい暮らしぶりとは言い難い。確かに日本は対外的に多額の資産を有している。だが、それはあくまでも帳簿上に記されたお金の数字が大きいということに過ぎない。お金はモノを購入したり、サービスを享受するために使って初めて、その豊かさを実感できる。数字という記号に変換されたままでは、将来的にモノを購入したり、サービスを享受することができるという状態を維持しているに過ぎない。 

日本の資産は、外国の債券や株式の購入、ODA(政府開発援助)を通じて外国人の生活水準向上のために使われている。(国連やWHOの活動も日本のお金がなければ、回っていかないのが現実である。)実際にそのお金を帳簿上の記号から実物に換えて使用し、欲しい物やサービスの購入に充てているのは、外国人の方々なのである。 

人のいい私たち日本人は、やがては自分の好きなときに実物のお金に換えて利用できるものと安心しきっているが、それは絶対的に保証されているわけではない。

帳簿上の記号に変換したお金を再び実物の形に戻す請求権を持っていることが、いついかなる場合でも100%実現できることを意味しているのではない。権利は行使したときに自分の目で確かめたり、実感する形で実現する。ところが、それを確実なものと思い込んで安住しているうちに、デフォルト(債務不履行)やインフレ進行の形で権利が消えてしまうリスクがあることには思い至らない。ここに大きな落とし穴がある。 

家計所得額そのものの減少、家計と民間企業双方における経済格差と二極化の拡大は、小泉政権が誕生した約十年前から急速に進行してきた。また、日本全体では債権超過でカネ余りでも、その債権という帳簿上の権利をモノやサービスといった実体のある形に変えて行使するのはわれわれ日本人ではなく、最終的には外国人というのが不思議の国日本の実態だ。(以前、キリギリスとアリのイソップ童話でこのことを説明したレポートを書いたことがある。)要するに私たち日本人は、もっと自分たちのためにお金を使うべきなのだが、今までそういう仕組みを創ることを宗主国であるアメリカに許されていなかったのである。 

ところで、外国人は債務者としてわれわれに対して債務履行の義務を負っているが、その約束を必ず果たすという保証はどこにもない。恐らく、宗主国であるアメリカは日本に元本を返す気などさらさらないだろう。彼らの気持ちを代弁すれば、「金利を払ってやるだけでも十分ありがたいと思え」、だろう。 

このような構造で、国民生活の改善と向上を願って国政を託す国民の期待は常に裏切られてきた。これは歴代政権が無能だからというだけではない。政治家や官僚、財界人やマスコミ人士らが自らを特権階級と位置づけ、その下に位置する国民全般の幸福や安寧などは彼らの眼中にないから当たり前なのである。また、彼らは1945年以降、日本の「真の支配者」である米国をはじめとする外国勢力によってその存在価値と地位を保障されているため、外国勢力の利益を実現して歓心を買うためにはどうしても、これと相反する国民の利益を犠牲にしなければならない立場にいる。(最もこの立場から逸脱すると、東京地検特捜部や税務署、マスコミによるネガティブキャンペーン、不正選挙で木っ端微塵にされてしまうから身動きがとれないのが現実である。) 

要するに人のいい私たち国民は、政治家の空虚な公約やマニフェスト、官僚の言葉巧みな方便、無責任で事実を歪曲するマスコミの偏向報道に騙され続けてきたのである。もういい加減、この辺で目を覚まして、自らの人生を他人に委ねる依存心を捨て、自分の人生は自分で歩むという独立自尊の精神を持たなければならないということだろう。

そして一番重要なことは「アメリカあっての日本」の時代がもうすぐ、終わりそうだということである。ただその段階に進むには、「円安誘導による資産バブル」を唱道していた人間は、表舞台から退場して、「円高による資産バブル」政策を実行する人間に入れ替わる必要がある。おそらく、それを推進するためのスキャンダル等がこれから、目白押しに表に出て来るのではないか。現在、表に出ているのは氷山の一角である。 

そしてその後、数年以内に戦後の既得権者総退場の時を迎えることになれば、その時、1945年以降、初めて日本は独立国になることができるのだろう。

 

 ところで、以下の記事からもスキャンダルの匂いがするのだが、

http://www.newstandard.jp.net/news/world/japan-may-import-oil-from-is/1151

 

「イスラム国の原油を日本が輸入している可能性」  2015/12/21     白石和幸

 

1124日に起きたトルコ空軍によるロシア戦闘機Su-24を撃墜したことが発端になって、1115-16日のトルコで開かれたG20首脳会議終了後プーチン大統領は記者会見の席で「イスラム国(IS)に資金的支援をしている国がG20に参加している国を含めて40ヶ国ある」と述べたのである。これはプーチン大統領のトルコを含めISを背後から支援している国への報復である。この資金的支援とはISが採油する原油を購入している国が相当数あるということである。そして以下に披露する情報から、日本もISの原油を輸入しているということなのだ。 

この事件を切っ掛けに、エルドアン大統領とその家族がISと関係していることと、そしてその原油売買に関与しているという情報がロシアのメディアに広く伝わるようになったという。そのひとつが、「ISが過去8か月間に闇市場で原油をバレル20ドルでトルコに販売し、その総額は8億ドル(960億円)になる」とイラクの国家安全保障の元アドバイザーで現在イラク議会議員のリーダーのひとりアル•ルバイエ氏が『スプートニク』紙に語ったことだ。 

さらに同紙は、シリアのムアレム外相が以前、「エルドアン大統領の息子のビラル•エルドアンがISの原油販売に不法に関与しているようだ」と指摘し、そして「トルコがSu-24を撃墜したのはビラル•エルドアンが所有する石油会社との関心ごとからだ」と述べたことを伝えた。彼が所有するタンクローリがロシア戦闘機によって被害を受けたということで、その報復としてSu-24を撃墜したのではないかということなのである。 

しかし、それが全て真実であると認め難いかのように、在スペインロシア大使のコルチャギン氏がスペイン国営放送TVEの番組の中で〈「(撃墜は)事前に(トルコ側で)熟考された上での行動であると思える多くの徴候がある」〉と述べて、トルコにとって、ロシアは非常に重要な貿易相手国である。しかも現在中断しているとはいえ、ロシアからトルコ経由でヨーロッパに天然ガスを供給するパイプラインの建設構想もある。それを何故犠牲にするほどの行動に出たのか不可解であるという考えなのだ。 

一方、ロシア紙『Rossiyskaya Gazeta』でもエルドアン大統領の息子がISの原油販売に関与していることが報じられたことを英国電子紙『Scott』も他社同様に伝えた。しかし同ロシア紙では、共和人民党のグセル・テキン副党首が「エルドアン大統領の息子のビジネスに違法性はなく、日本の企業と取引しているだけだ」と述べて、ビラル・エルドアンを擁護したという。

しかし、それを否定する情報を流したのが米国で金融関係を主体にその他の情報にも言及するブログ『Zero Hedge』だ。それによると、トルコ政府はイラクでISが不法に所有する油井から採油された原油を購入し、ビラル•エルドアンが所有する複数の石油タンカーを使ってベイルートとセイハンにある彼の船会社専用の特別埠頭から、ISの密輸入された原油を日本に出荷していると言及したのだ。もちろん、その中で、ヨーロッパの船会社と契約して異なったアジア諸国にも原油を送っていることにも触れた。 

更に上述ブログではエルドアン大統領の娘がISの負傷した戦闘員を匿って治療する病院をトルコ国内にもっていることも報じている。 

Su-24の撃墜に伴うロシアからトルコに課したトルコ製品の輸入禁止やロシア人の観光禁止などによりトルコが被る被害は90億ドル(1800億円)にのぼるという。

 

<白石和幸プロフィール>スペイン在住の貿易コンサルタント。1951年生まれ。広島県出身。スペイン・バレンシア大学への留学後、商社勤務を経て、スペイン・バレンシアで家具、食品などを幅広く手がける貿易事業を展開。2008年に貿易コンサルタントに転身した。在バルセロナ日本総領事館のアシストも務めている。日本やスペインで、講演やメディア出演も数多くこなす。

1月 082016

あまりにも暖かく湿度のある穏やかな正月の三日間が終わると、波乱の幕開けとなった2016年であった。株式市場は中国株の影響を受けて暴落し、サウジアラビアはイランと断交を発表、人騒がせな北朝鮮の金 正恩は、小型水爆の祝砲を響かせ、自身の誕生日のお祝いとした。

考えてみれば、ローマ法王フランシスコは、昨年クリスマス前に下記のような恐ろしい、人を脅かすような説教をしている。以下。 

While the world starves, burns, and descends further into chaos, we should realise that this year’s Christmas celebrations for those who choose to celebrate it may be their last.”

http://catholictruthblog.com/2015/12/22/pope-francis-last-christmas-warning/

法皇は2015年のクリスマスが最後になるかもしれないと述べたのである。

要するにヴァチカンは現在、グローバル社会全体が既に「第三次世界大戦」に巻き込まれているという情勢分析をしていて、これから状況は益々ひどくなっていくという認識を持っているということである。三年前のレポートで紹介した「金融ワンワールド」落合莞爾氏と全く同じ認識(「テロとの戦争」というものは形を変えた世界大戦であるという認識)である。もう少し、付け足すと、この世界大戦が終わったら、世界は激変しているのでは、と考えることがとても重要なのである。

 ところで、国立研究開発法人情報通信研究機構が開設している公開サイト「宇宙天気情報」によると太陽の黒点数がこれから急速に減少していくようである。

太陽黒点数予想201512月に「60」である太陽黒点数が、来年(2016年)11月には驚くべきことに「30」、すなわち半減してしまう。要するに太陽活動は著しく減退していくと予想されているのである。そして、そのことによる影響こそ、今、人類が真剣に考えなければならない大きな問題となっている。太陽黒点数が著しく減っている時期は、気候が温暖化するのではなく「寒冷化」してきたということは、歴史的事実である。     以下。

 

The Huffington Post

「太陽に元気がない」地球寒冷化の予兆?太陽の磁場に異変       2013年11月18日

太陽に異変が

2013年は太陽の活動が強くなったり弱くなったりする11年周期の中で、活動がピークになる「極大期」に当たり、太陽の北極と南極の磁場が入れ替わる「極域磁場転換」が起きるはずが、いまだに起きていないという。MSN産経ニュースが報じた。

活動ピーク年には増えるはずの太陽の元気のバロメーターとされる「黒点」も今年は異常に少ない。今後、太陽は活動の低調期に入り、併せて地球も寒冷化すると指摘する専門家もいる。
MSN産経ニュース「太陽元気なし 寒冷化予兆 11年周期の磁場転換起きず、黒点も最少」より 2013/11/18http://www.sankei.com/life/news/131118/lif1311180022-n1.html

ガリレオがおよそ400年前に黒点を初めて観測して以来、科学者たちによって太陽の黒点の観測が行われて来たが、太陽は11年ごとに北極と南極の磁場が入れ替わることが分かっている。その詳しいメカニズムは解明されていないが、「極域磁場転換」が起こる年は太陽の活動が最も活発になり、高緯度の地帯に多数の黒点ができるという。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナルによると、極大期に近づいているにしては「全くぱっとしない」と米航空宇宙局(NASA)の科学者ジョナサン・サーテイン氏は話したという。通常、太陽の活動がピークの年には、常時150200の黒点が観測される。また、大量の電磁や粒子を放出することによって起こる太陽嵐によって地球上の電信施設が損傷を受けることもしばしば起きていたが、今年はこれまで観測された黒点は概ね50100ぐらいにとどまっており、ここ200年で最も少ないという。

さらに、今回の極域磁場転換では、北極の磁場はマイナスからプラスに反転しているが、南極の磁場はマイナスのままの状態が続く「異常現象」が起こっているという。2012年に太陽観測衛星「ひので」が、北極の磁場がマイナスからプラスに転じている様子を観測したが、南極は安定してプラスを維持を維持していると、国立天文台は発表していた。

JAXAによると、りくべつ宇宙地球科学館の上出洋介館長がインタビューで以下のように解説している。

昨年1月、「ひので」は、北極の磁場が、マイナス極からプラス極へ反転するのに向かってゼロ状態になっていることを見つけました。また、南極がプラス極のままほとんど変化していないことも確認しました。その結果、北極と南極がともにプラス極となって、赤道付近にマイナス極ができるような、太陽の磁場が4重極磁場構造になったわけです。人によっては、この状態を「異変」が起きていると言います。
(宇宙航空研究開発機構(JAXA)「太陽のオーロラが地球のオーロラをつくるりくべつ宇宙地球科学館館長上出洋介」より 2013/8/29

太陽磁場の変化

従来の太陽の磁場(左)と2012年5月以降の太陽の磁場(右)(提供:国立天文台/JAXA)

今年と似たような状況はおよそ、300年前にも起こっていた。NHK解説員室の「解説アーカイブ」では以下のように説明している。

最近観測された黒点の変化(周期ののび)に似たことが、かつて起きたとされている。それは300年前の「マウンダー極小期」と呼ばれる時期で、黒点がほとんどない状況が70-80年続いた。当時の資料によると、寒冷化した地域が出現し、テムズ川も凍った。北半球平均気温は、現在より-0.6度。マウンダー極小期の前後からみると-0.1~-0.2度寒くなったのではないかとされている。北半球の平均では、大したことないように見えるが、局所的に気温のでこぼこがあり、中には非常に低温になったところもあったとされている。

NHK解説員室解説アーカイブ「くらし☆解説 『太陽異変 地球が寒くなる?』」より 2012/05/08

300年前の「マウンダー極小期」のような現象が今後、地球で再び起こることはあるのだろうか。「地球は間違いなく寒冷化に転じる」(大気海洋地球物理学者の中村元隆氏)と断言する専門家もいるというが、上出洋介氏は、前出のインタビューで次のように語っている。 


だいだい100年ごとに1回はこのような低活動期があり、それに応じて地球が寒冷化している記録が残っていますので、太陽にしてみれば、当たり前のことが起きているのかもしれません。人間の寿命がそれより短いからあたふたとしているだけで、太陽は今頃「何に驚いてるの?」と笑っているかもしれませんね
(宇宙航空研究開発機構(JAXA)「太陽のオーロラが地球のオーロラをつくるりくべつ宇宙地球科学館館長上出洋介」より 2013/8/29(引用終わり)

しかしながら、現在、日本の冬は暖かく湿っている。なぜだろうか。 

世界の天気を見てもソウルもパリもロンドンもパリもニューヨークも日本ほど顕著に気温が高いわけではない。

下記の富士山は本年1月5日の撮影ということだが、ゴールデンウイーク並みに雪が少ない。

雪の少ない富士山 2016年正月

これは、フクシマ第一から、メルトダウン、メルトスルーして溶け落ちた核燃料(デブリ)が大量の放射性水蒸気と熱を日本上空に拡散させていると考えれば、すんなり理解できる話である。要するに現在、トリチウム水水蒸気が日本上空を覆っているのである。

トリチウムとは

フクシマ第一の汚染水の中には、放射性セシウムと放射性ストロンチウムと共に、トリチウムという放射性物質が汚染水に大量に流れこんでいる。トリチウムという放射性物質は、元素としては水素である。しかし通常の水素は原子核が陽子1個でできているが、トリチウムの原子核は、そこに中性子が2個くっついている。重い水素なので、「三重水素」とも呼ばれる。この放射性物質トリチウムがなぜおそろしいかというと、化学的には水素なので、水素のように振る舞うからだ。つまり人間の体は、大部分が水でできている。水は、水素と酸素の化合物H2Oである。血液であれリンパ液であれ、細胞をつくっている中心部分の染色体であれ、その遺伝情報を伝えるデオキシリボ核酸(DNA)の分子であれ、水素なしには存在しない。DNAを構成する究極の原子は水素H、炭素C、酸素O、窒素N、リンPである。その水素が、放射線を出す水素になってしまえば、体内で、どれほどおそろしいことが起こるかは、誰でも想像できるだろう。それがわれわれの体内に入って、自由に移動している。そしてトリチウムの原子核についていた中性子が、“マイナスの電荷を持った電子”を放出して、“プラスの電荷を持った陽子”に変化し、水素がヘリウムHeになる。その時に出される電子が、ベータ線と呼ばれる放射線なのである。

この放射能が半分に減るまでの期間、半減期は12.3年なので、安全な1000分の1になるのに123年かかるから、この影響はほぼ一世紀続くことになる。

多くの国民には知らされていないが、私たち日本人は「風の谷のナウシカ」のような日本列島に知らないうちに2011年3月11日以降、住まわされているのである

今回は、本当の日本史に詳しい新井信介氏の悲壮な決意を紹介したい。ここまで考えている人もいるのである。以下。(*読みやすいように大幅に編集加筆) 

<国家(政府)は私的暴力機関と言う側面を持ちます。だから暴走する政府の政策には、本当の対策が必要になります。生存を暴走する国家に預けるのは愚かの極みです>2015年 12月

新井信介 

中国と日本。皇帝と天皇の違い。ここから、現在の日本社会と日本人を考えてみましょう。

中華皇帝は「易姓革命」ですね。それに対し、天皇は「万世一系」と言われますが、これは、明治維新後に創作された物語ですから当然フイクションです。皇室典範も男系男子も明治の元老伊藤博文が勝手に決めたものです。いわゆるこれが、「田布施システム」の根幹となっています。 

 長州藩の下忍であった伊藤博文を筆頭とする維新の立役者たちは、戦国時代から日本に入り込んだバチカンのイエズス会(=欧米植民地支配の先兵の役割を果たしてきた)の手法を取り入れ、<人のいい日本人>を徹底的に洗脳してきました。明治という近代国家を英国勢と共にでっち上げ、天皇からの「恩寵」をありがたがり、現在、放映中の「あさが来た」というNHKの朝ドラ(ドラマの中では、加野屋が十万両の提供を出来たばかりの維新政府に求められていました。)を見ていてもわかるように、日本列島にある経営資源を強制的に全部、自分たちが作った明治政府に集中させました。そして、「天皇の赤子」と言う言葉を創りだし、新政府支配下の臣民は、統治機能の良きパーツになろうと努力するように徹底的に臣民を教育し、訓練しました。その上、近代の思想、科学も、「お上」=東京大学の権威が選び出したものだけを、盲目的に学ぶことだけに専念させました。つまり、日本のエリートとは、極論すれば、人間コピー機や人間演算器にされてしまった人材と、言っても過言ではないのです。 

そのため、明治以降のごく普通の日本人の関心や興味が、森羅万象=(自然(じねん))に向かわないようになってしまいました。目に見える国家の枠組みだけを見上げるようにされてしまったのです。

特に、「自分が、何をどう考えているか、その考えている自分を、きちんと知る」と、いう哲学がすっぽり抜け落ちたままになってしまいました。権力と権威が一致し、しかも、この権威が太古の昔からずっと、この日本列島に存在したと、為政者に都合がいいフイクションを私たちは真実だと思い込まされてきたのです。 

少し勉強すればわかることですが、日本史において「天皇」の存在は、持統天皇が皇祖神「アマテラス」をつくりだして、696年に退位した後からは、ごく一部を除いてずっと、名誉職=権威で、権力=政体ではありませんでした。天皇は、天武の時にその呼称が生まれましたが、大王(おおきみ)として皇帝並みの権限を振るったのは、崇神、垂仁、応神、仁徳、雄略、継体、欽明、天武ぐらいでしょう。 

ところで、昨秋(2015年 秋)、日本の評論家に経済破綻間近と言われていた中国の人民元が、SDR(特別引き出し権)をもつ国際通貨になりました。逆にわが日本国では、どんどん貧困層が増えていても、放射能がまき散らされていても、まだ一般の日本人は国家(仕組み、制度)を信頼し切っています。この両国の違いはどこから来るのでしょうか。

それは、一言で言ってしまえば、近代国家になってから後の、地下経済の厚さの違いにあります。一般の日本人にはこのことを全く認識していませんが、大陸に言ったことのある日本人はこのことを知っているはずです。中国大陸は、始皇帝による統一以後、国家(統治体)が壊れても、通貨は、それ自体は存続し、時に、新しい国家、新政権、新政府で、自分の命を、守る、大切な道具として機能しました。中国人は要するに政府を盲目的に信用しません。国家権力の本質が暴力であり、それが、出来上がると、国家それ自体が存続するために、さらなる詐欺と暴力を、使い続けることを知りつくしているからです。一時代に三つの国家があったことも、ひどい時には、華北全域が戦乱状態の五胡十六国の時代という時代もありました。こうした政治権力事情の国柄だから、一つの国家(統治体)にとてもじゃないが、全面的に自分の生存を預けるわけにはいかなかったのです。

仲間や同志を生存次元で支え合うために、血縁、地縁で、彼らは結社を築いていきました。それが、幇(ぱん)ですね。幇は様々な次元で広がり、掟を作り、地上に、どんな国家ができようとも、お互いが生存できるように支え合ってきました。そして政権とは、いつの時代も、対等の関係で取引してきたのが中国の歴史です。  

中国では皇帝になるのは天に選ばれた一族ですが、その一族がつくりだした国家は、私的暴力機構だと、中国人は知り尽くしています。だから、常に、幇(ぱん)を生存の基礎に置いてきました。政府は一時的。しかし、幇(ぱん)は、政府を超えて存在する。地理的にも、時間的にも。これがいわゆる「華人ネットワーク」というものです。 

あの毛沢東が政権を取る時、彼を支持したのが、青幇(チンパン)ではなく、紅幇(ホンパン)でした。そこに清朝打倒を目指す明の貴族層の洪門(こうもん)と、客家(ハッカ)が加わりました。(宋三姉妹も客家ですね。)だから共産党政権ができても、それを心底から信用することは決してありません。彼らに取って国家も、政権も、一時的なものに過ぎません。だから、中国人は自分たちで、様々な、独自のネットワークをつくるのです。そして、そのネットワークの中に、仲間で使える金融資産まで、潜りこませていきます。それを、国家の指導者も、省レベルの役人も、実業家も、学校の先生も、道路工事の作業員も、売春婦も、みんなが、独自に、自分なりの、生存のための、パンを作っています。これらが彼らの互助組織であり、生存保障につながっていきます。

これらのネットワークが、1984年の改革開放の後、海外の中華の人間とで、縦横無尽に個々の人間の力量に応じて、広がっていきました。1994年に、外貨兌換券がなくなり、2001年以後、米ドルの資本が大量に大陸に入り、しかも人民元でも、債権が発行され、地方政府にも認められると人民元マネーは、共産党政府に管理されないところで、どんどん、貸し借り、融資や信用保証が、広がっていきました。これが、現在、中国経済の地下経済になっています。  

さらに、胡錦濤時代に、外貨準備が、世界一になり、さらに、「走出去」と、海外への資本進出を政府が、国家方針として打ち出すと、自分の幇(パン)を伸ばして、海外に住む新たな仲間と、すぐに新たなパンを作っていきました。政府が損しても、パンの構成員は、その政策の裏で儲ける。これは、中国の外でも、大陸内でも、同じで、ここに政府が赤字でも、中国社会全体では、マネーで十分に潤う、地下経済構造が完成しているのです。

政府の人間は表では、それを、いけない、まずいという建前ですが、個人になると、みんな、パンの構成員に成っているのです。要するに完全なダブルスタンダードです。

「上に政策あれば、下に対策有り」は、権力者自身も行っているのです。(要するに日本を見るのと同じ感覚で中国を判断すれば、完全に間違えるということです。)

しかもこの「対策」が、巨大です。かといってどこかに、統一管理する司令塔があるわけではありません。民族を構成する、個々人が、自分自身の生存するために、巨大なサブシステムを、いつも確保しているのです。

そしておそらく、この地下経済の規模が現在、国家経済の、数倍から、十倍以上にもなっています。これが、さらに、IMFがみとめるSDRの対象通貨になることで、海外でも、より大きなパンができて、人民元と米ドルとで、相互に信用状態が生まれ、それを、さらに、国家を超えたパンが利用する状況が生まれます。

もうそこでは、表の「外国為替管理法」という国際的な政策をらくらく飛び越えた「マネー」での融通が、これまで以上に、簡単にできるようになります。これでFRBが発行した米ドル建ての資産まで十分に延命する可能性が出てきました。 

つまり、習近平政権の国家税収がどうなろうと株式が暴落しようが、巨大化した中国地下経済が、米ドル資産の流通と結びつけば、中国社会それ自体も、十分に安泰だということです。そして本当の「朋友」のみを助け合うのが、「パン」だと言われています。 

それに対し、我が日本人は、明治以来、お上に気に入られようと、言われるままに真面目に努力し、「滅私奉公」の果てに1945年の敗戦に導かれましたが、戦後は、米国が意図的に天皇の「権威」が残したために国家権力に対する盲目的服従が治らず、自分自身の生存の基盤を、江戸時代に築かれていた地域の「結(ゆい)」のようなつながり(地縁)をことごとく壊して、政府の行政のマネーと表の企業社会の収入だけに頼るように馴致されてしまいました。 

 現在、日本の国家が消費税や資産課税という増税路線を明確にし、命に関わる「放射能汚染」の嘘情報を広めて、完全に暴力装置という、その本質がむき出しになって醜い姿をさらしているにもかかわらず、それでも、自分の生存をこの政府と表の正しい稼ぎだけに預けている真面目な日本人がほとんどです。

 完全に人間としての余裕を失っている姿ですね。真面目に勉強し、お上のいうことを真に受け、マスコミ報道を鵜呑みにし、生存を国家に預けたことの報いというものでしょう。

 人間の生存は、天地自然の純粋な恵みと、相互扶助の人間関係のみが保証してくれるものです。本来、マネーは、生活を豊かにする道具ですが、同時に国家の暴力から逃れる手段だったはずです。今、多くの日本人にはこれが枯渇しています。 

 「苛政は、虎よりも猛し」これが、中国人が、政治と向かい合う時の姿勢です。 

しかし、今の日本人は、その政府の政策がすでに苛政であるのに、それを、未だに美しいもの、立派なもの、自分を大切にしてくれるものと、信じています。

悲しいが、「自分が、何を考えているか?どうして、自分は、こう考えているか?他の考え方もあるのではないか?自分が、信じている世界は、まやかしではないか?常に、こう考えていない」と、現実は、生きていけないのですが、現在、日本人は進んで「檻の中」に入ったまま、「茹でかえる」になって死んでいこうとしています。 

私はどんなことがあっても生き抜いて、それでも、この日本列島で生まれ、演じられてきた様々な日本文化の核心を伝えられる存在でいたいと思います。

それには、若者たちを、どうしても救わねばなりません。微力ゆえに、わずかであってもできる範囲で。

健康な肉体で、生き残ってくれれば、まだまだ、希望はあります。みんな。死ぬな!

生き残れ!

 「豚になってでも、生きよ。」・・・これは文化大革命の時代を描いた、名画『芙蓉鎮』の中の言葉です。

 マネーなんか殆ど無くたって、愛される人間になって人間関係を築いて、とにかく、「放射能」のないところに、這ってでも移住して、とにかく、生き残る。ここから未来は始まります。(終わり)

 

<新井信介プロフィール>長野県中野市で昭和32年(1957年)にリンゴ問屋の息子として生まれる。日本の歴史に圧倒的影響を与え、しかも、世界でもっとも多くの人間の住む国、中国と商売しないのはおかしいと東京外国語大学の中国語学科に進んだ後、今度は、世の中の現実と構造を知りたい思い、商社に入り、北京駐在員として自動車・電気機関車などの輸出、さらに、本社では経済協力案件を担当。しかし、88年秋、プラザ合意に始まったバブル経済が過熱していく中、昭和天皇が倒れ、「金儲けどころじゃない、日本がおかしくなる」と、世直しを決意して退社。日本の政策転換とバブルの早期処理を訴えるが、結果は、「失われた20年」に。98年から、「世紀末の大転換」を確信し、著作と講演を進めてきた。 

兎に角、有意な日本人は大きな時代の節目に備えることである。1989年にベルリンの壁が崩壊したが、1~2年前に現地を訪れた人であのような形で壁がなくなることを予想した人は一人もいない。変わる時には、社会は一気に変わる。その時に社会を支えるのは有意な本来の日本の心を持った人たちである。それまでかけがえのない生命(イノチ)を大切にすることである。

終わりに青い眼の日本人ビル・トッテン氏が正論を書いているので、紹介させていただく。もっとも大統領選の民主党有力候補であるヒラリー・クリントン女史ですら、TPPには反対しているので、この協定が本当に成立するかどうかは、疑問だが、以下の文書を読んでいただければ、TPPが如何に日本人を馬鹿にしたものかよくわかるはずである。以下。

 

「英語版TPP条文」     201614 

環太平洋連携協定(TPP)交渉参加国が10月初めに大筋合意したという条項を、115日、ニュージーランド政府が公開した。 

秘密で行われていた交渉の内容がようやく英語の世界では明らかにされたが、30章からなる文書は細かい取り決めまで含むと55554ページにも及ぶ。政府は概要を掲載するだけで、条文はニュージーランド政府のホームページへ、となっている。

協定は英語、スペイン語、フランス語を正文とする、とあるが、経済の規模からみてなぜ日本語が正文になっていないのか。日本の制度や法律を変えるほどの効力を持つ協定を、英語版しか国民に提供せず、日本政府が交渉の場で日本語版を要求しないこと自体が、TPPが一方的な押し付けであると考えざるを得ない。これだけでも、TPPの本質が「日本の主権喪失」にあるといえるだろう。 

しかしTPPによってマイナスの影響を受けるのは日本国民だけでない。条文の公開以来、各国の研究者や市民グループ、NGOなどから多国籍企業の利益を優先するものだという強い批判が出ており、TPP協定の原型ともいえる北米自由貿易協定(NAFTA)の施行で雇用が海外に流出し、国内賃金の低下をはじめとする多くの悪影響がもたされたアメリカでは、強い反対運動が起きている。 

もちろん全ての国民が6千ページ近くの文書を読み、理解することは容易ではないが、わずかな概要だけで、TPPを検討し、承認すべきではない。オバマ大統領がTPPを「新しいタイプの貿易協定」と呼んだことからわかるようにそれは単なる製品やサービス、投資や資本に関する文書ではなく、政治的な協定だからだ。つまり、多国籍企業が国や国民の主権、民主主義そのもののあり方を変えようとしている。 

公開された条文の27章(運用および制度に関する規定章)と28章(紛争解決章)だけを見ても明らかだ。27章には、TPP締約国は大臣または上級職員のレベルで会合するTPP委員会を設置し、協定に基づく義務の実施に向けて進捗(しんちょく)状況を報告しなければならないとある。TPPは「生きている協定」と呼ばれ、常に見直しが入るとされるが、では一度政府が批准した後で変更がなされれば、あらためて批准の必要はないのだろうか。また委員会メンバーをどのように選出するのか、そこでの議論が公開されるのか、さらには、この委員会で決定されたことを政府や国民が覆すことができるのか。その内容次第ではTPPは、国の法律の上位にくる機関となってしまう。

そして28章には、企業と政府の紛争解決は当事国の国内法にかかわらず、TPPの「裁判所」に提訴されることが明記されている。自民党が反対したISDS条項がしっかりとそこにあるのだ。政府が特定秘密保護法を持ち出せば、このTPPの人民裁判の内容を国民に秘密にすることすら考えられる。 

カナダでは新政権が発足したため、前政権が交渉したTPPの合意内容について議会で討議を行うだけでなく、国民が内容を理解し意見を表明できるようパブリックコメントを募集するという。当然であろう。しかし日本では条文を知りたければ英文を読めと、国民に説明すらない。(引用終わり)

 

サンフランシスコ講和条約の日本文も正文ではないことは知る人ぞ知る話だが、戦後70年経っても日本という国は、国際社会でこのような扱いを受けていることをもっと多くの人が知るべきだろう。この条約の批准を検討する国会議員で、まともにTPP条約案を読む人間は一人もいないと思われるのも、この国の機能不全に陥っている戦後民主主義の悲しい姿を物語っている。


12月 242015

恒例のフォーブス誌の世界での影響力ある人物のランキングが発表された。三年連続でロシアのプーチン大統領が一位である。わが国の安倍首相は、ランキングが上昇したとは言え、41位に低迷している。ちなみに大トヨタの豊田章男社長が28位である。

パワーリスト フォッブス

考えてみれば、世界最大の債権国であり、最後の貸し手とも、世界のATMとも言われるわが国の首相の影響力がこれ程、低い評価であることは、おかしな話である。

資本主義社会においては、通常ならば、大口の出資者の意向が一番大きな力を持つはずである。ところが、現実はそうはなっていない。以前も何回か、指摘させていただいたが、日本という国は国際政治・経済の舞台で実際には、主権を持っていない。1945年の敗戦後、私たちの国、日本はその主権すべてを米国のジャパンハンドラーの手に委ねてきたのである。言葉を変えていうなら、奪われてきたのである。

 

 そう考えると自民党が2012年の総選挙でTPP反対を公約に選挙戦を戦っていたにもかかわらず、現在はTPPに積極的になっていることも、安倍首相自ら、トルコやベトナムに原発を売り込んでいることも、安倍首相が今秋、中東を訪問してイスラエルの意向通りの円借款を約束してきたことも、また、現在話題になっている「マイナンバー制度」のシステムをNATO諸国のなかで一番タカ派のエストニアから導入することになったことも、日本の原発54基すべてをイスラエルのマグナBSP社が管理しているのも、まだまだ、例を上げればきりがないがすべては日本人自身が自ら決めたことではなく、米国のジャパンハンドラーの意向に従ったものだということが見えてくる。 

 つまり、このランキングの意味するところは、世界のエリートは1945年以降、日本という国には国際政治上の主権がないと言うことを熟知しているということである。

そして、このことを知らないのは、いや、知らされていないのは、私たち日本人だけなのである。だから、多くの日本人は米国の特別行政自冶区に過ぎないこの国を勝手に立派な独立国だと勘違いしていろいろな妄想に耽ることができるのであろう。 

少々、前置きが長くなったが、今回はロシアのプーチン大統領の話である。彼が現在、どういう歴史的役割を果たしているのかを考えることで、明日の日本のあるべき姿が見えてくる

 

一言で言うなら、現在、プーチンは、ロシアの国益を守るために、2001年の911以降、テロ国家を勝手に自由気ままに特定することによって、世界情勢をいいようにコントロールしてきたネオコン(戦争屋)≒シオニストの勢力と戦っている。小生の知る限り、このことを日本人で一番早く、一般に向けて発信したのは経済アナリストの藤原直哉氏であった。彼は20153月に公共放送であるNHK第一ラジオでこのことを発言し、その後すぐに米国のジャンハンドラーによって番組を降板させられている。以下のアドレスで現在でも、彼の911以降の国際情勢と現在のロシアの動きの解説を聞くことができるので、時間のある方は聞いていただきたい。

http://fujiwaranaoya.main.jp/150401cd.mp3 

 ところで、一年前のレポートで下記のように書いたが、現在では米国のウオールストリート紙の編集者までこの事実を公言するようになっている。 


アルカイーダや今回の「イスラム国」は、グローバル・マクロを動かし、世界史を廻し、非公然活動(covert action)(=戦争を創り出す)をするために欧米のエリートが創った組織(=仕掛け)である。具体的には、今回の「イスラム国」は、イスラエルのモサド(イスラエル諜報特務庁)と米国のCIA(:Central Intelligence Agency)、英国のMI6(イギリスの情報機関。国外での情報活動をおもな任務とする。冷戦終焉の状況下で,開かれた政府を目指すイギリスのメージャー首相は,19935月,MI6の実在を初めて公式に認めた。)が「戦争経済」への布石としてつくった組織である。このことは、欧米のエリートの間では常識のようである。


 

最近では元総理鳩山由紀夫氏まで、「ISISCIAによって作られ、部分的にはワシントンからのサポートを得ている」という、WSJ編集者の談話を紹介し、黒幕は米国であるという可能性を明言している。最近、小生の知人から聞いた話では、日銀出身の若手参議院議員もイスラム国ついて、同様の話を地元の支援者にしていたようである。プーチンの世界情報戦略によって、たった一年で、世界の情報認識は様変わりしたのである。 

 だからプーチンは、昨年の秋から下記のような発信を始めているわけだ。以下。

 


プーチン「テロリスト達のスポンサーを引き受け、世界を混乱に貶めているのはアメリカです。」リア・ノーボスチ(2014 10/24 


http://en.ria.ru/world/20141024/194548545/Putin-US-Incites-Spread-of-Terrorism-by-Funding-Militants.html

 

米国は、世界を結束へ働きかけるどころか、世界の国々でテロリスト達への資金を渡し、テロリズム拡散させ、世界を対立させている、とロシア大統領ウラジミール・プーチンは発言しました。 

「昔(アフガン戦争)も同様のことが行われましたが、シリアにおいても米国とその同盟国は、異なる国々から金目当ての傭兵を集める為に、直接資金と兵器の提供を始めました。」とプーチンは、ソチで開催された11回目のバルダイ国際討論会の席上で発言した。

 

ロシア大統領は、現在イラクとシリアで活動している(元々単なる金目当ての)傭兵の集まりであった「イスラム国(IS)」が、事実上の軍隊組織に変わったのは、上に述べたような米国とその同盟国によって支援されてきたことが、その原因であると強調した。

 

「彼らイスラム国は軍事的に非常に組織的に洗練された形で活動しています。彼らは事実上のプロ集団です。」とプーチンは述べた。そしてイラクではISIL、シリアではISISとして報道され知られているイスラム国がそのように勢力を伸ばしてしまった背景には、イスラム国殲滅の為にこの度結成されたアメリカ主導の(サウジ、カタールなどからなる)反IS連合国が自ら地域勢力を分断しようとしていることにある、と付け加えた。

 

プーチンによると、分断線を引いて、仮想敵国を作って、それにやっつける連合国を形成し、その指導者となろうとするのがアメリカの試みであり、それは冷戦時代に行われた手法そのものである。

 

ロシア大統領は、そのような一方的な覇権主義はテロとの戦いにおいて役には立たないどころか、リビアで行われたように平和な国に混乱をもたらすだけである。リビアは欧米により崩壊の瀬戸際まで破壊され、テロリスト養成の地と化してしまった、と強調した。エジプトの現在の指導者の決意と英知が、混乱の広がりと過激主義者達に対する唯一の防波堤となっている、とプーチンは述べた。 

ロシア大統領によると、アメリカは民主主義を広めると宣伝していたが、実はやっていることはイスラム過激派への支援であった。プーチンは、この間、テロリスト達の資金源は拡大してきたと説明した。「テロリストへの資金源については、アフガニスタンへ軍が派遣されている時期に何十倍にも増加した生産量の麻薬の密売から得られる利益だけでなく、現在は原油の販売による利益にまで広がっている。」とプーチンは述べた。 

原油の生産はテロリスト達の支配地域で行われている。彼らはそれを破格の安値で売っている。そして、それを買い取り、転売している者がいる。そうすることによって、いつの日か自らの国を破滅に導くかもしれないテロリストに資金を供給しているということに、彼らは気づいていないのです、とロシア大統領は強調した。

プーチンによると、欧米のパートナー達は、傭兵たちに、資金を供給することによって同じ過ちを繰り返している。結果、中近東におけるテロの連鎖は止まないということである。

「かつて、欧米のパートナー達は(アフガン戦争で)ソビエトと戦ったイスラム過激派達のスポンサーだった。そのような欧米による過激派への活動が現在のタリバンやアルカイーダを誕生させたのです。」とロシア大統領は述べた。(引用終わり)

そして現在、プーチンが真実を述べていたことが徐々に明らかになりつつある。

 

ところで、最近以下のニュースを見て日本人の活躍を喜んだ方も多いのではないだろうか。以下。

 

<油井宇宙飛行士が国際宇宙ステーションから地球へ無事に帰還> 20151212日(土)

「ただいま。体調は大丈夫です。重力を感じます。宇宙も素晴らしいですけど、地球もいいですね。冷たい風が心地いいです。」 (帰還直後の油井さんのコメント)

1211()142日間に渡って国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在していた第44次/45次長期滞在クルー(油井亀美也、セルゲイ・コルネンコ、チェル・リングリン)を乗せたロシアのソユーズ宇宙船(TMA-11M/43Sが、カザフスタン共和国の雪原に無事着陸しました。ソユーズ宇宙船は、午後649分、ISSから分離した後、高度140キロ付近で、帰還カプセルが切り離されました。大気圏に突入したソユーズ宇宙船は、最後はパラシュートを開いて地上に降下し、午後1012分ごろ(日本時間)に着陸しました。この後、油井宇宙飛行士ら3名のクルーは、着陸地からカザフスタン共和国のジェズカズガン空港に向け移動しました。

油井宇宙飛行士

ここで重要なことは、日本人を国際宇宙ステーションに運んで行ったのがロシアのソユーズ宇宙船であることである。以下の記事を見ても現在ではロシアの方がアメリカより宇宙船技術で上をいっていると考えても間違いないだろう。以下。

<新しいクルーを乗せバイコヌールからISSに向け「ソユーズ」打上げ> 20151215

http://jp.sputniknews.com/science/20151215/1324365.html#ixzz3uXe8wEZV 

宇宙船「ソユーズTMA19M」を乗せた運搬ロケット「ソユーズFG」が、バイコヌール基地の第一発射場から、打上げられた。現地から、リア-ノーヴォスチ通信が伝えた。ロスコスモスのスポークスマンによれば、宇宙船は軌道上へ、ロシアのユーリイ・マレンチェンコ、米国のティモシー・コプラ、英国のティモシー・ピークの3飛行士からなる第46次及び第47次クルーを送り届ける。 

宇宙船「ソユーズ」と国際宇宙ステーション(ISS)との接近は「短い」6時間.方式により行われる。新しいクルーは、ISSで7カ月、つまり通常よりひと月長く過ごすが、これは、飛行プログラムの変更によるものだ。ロ米英の飛行士らは、新しい宇宙貨物船「プログレスMS」の受け入れ作業の他、米国の宇宙貨物船Dragon 及び Cygnusも受け入れる事になる。また今回の滞在計画では、ロシアと米国のセグメントの装備補充作業も実施される。(引用終わり)

 

上記のことにも関係するが、昨年の下記の記事当たりから一部の人が、電子戦の分野でロシアがアメリカより優位に立ったとの指摘をしていたが、現在のシリア情勢を見る限り、事実だと考えてもいいと思われる。以下。

<ロシア戦闘機スホイ24米国のイージス艦「ドナルド・クック」の「鼻をあかす」> 2014.04.20

米国のイージス艦

http://jp.sputniknews.com/japanese.ruvr.ru/2014_04_20/271416946/

 

ロシアの戦闘爆撃機スホイ24が、黒海で米国の最も近代的な戦闘システム「イージス」を搭載した駆逐艦「ドナルド・クック」を麻痺させた。ロシア科学アカデミー米国カナダ研究所のパーヴェル・ゾロタリョフ副所長は、ロシアのマスコミおよびブロガーたちが盛んに議論しているこの出来事について見解を表した。

 

 巡航ミサイル「トマホーク」を搭載したイージス艦「ドナルド・クック」が4月10日、黒海の中立水域に入った。その目的は、ウクライナとクリミアに関するロシアの立場に関連した威嚇行為と軍事力の誇示だ。同水域への米軍艦の進入は、軍艦の艦種ならびに滞在期間に関しても、モントルー条約に違反している。 これを受けロシアは、「ドナルド・クック」の周辺を飛行するために非武装のスホイ24を派遣した。専門家たちによると、スホイ24には最新のロシア製電波妨害システムが搭載されている。伝えられているところによると、「イージスシステム」は、遠距離から接近するスホイ24を探知し、戦闘警報を鳴らした。全てが通常通りに行われ、米国のレーダーは飛行コースを計算した。だが突然、画面がフリーズした。「イージスステム」は機能せず、ミサイルは目標指示を受け取ることができない。だがすでにその時、スホイ24は「ドナルド・クック」の上空を通過し、空中戦闘機動を行い、目標に対して仮想のミサイル攻撃を実施した。そして旋回し、再び演習を繰り返した。それは12回に及んだ。「イージスシステム」を復活させ、対空システムに目標指示を与える試みは、全て失敗したようだった。ロシアの政治学者パーヴェル・ゾロタリョフ氏は、米国側からの軍事圧力に対するロシアの反応は極めて穏やかなものだったとの考えを表し、次のように語っている。

 

 「デモンストレーションは、十分にオリジナリティーに溢れたものだった。非武装だが電波妨害装置を搭載した戦闘機が駆逐艦に対して十分な働きを行った。その駆逐艦は最も近代的な対空システムとミサイル防衛システムを搭載したイージス艦だった。だが、この船艇にモバイル配備されたシステムには、重大な欠点がある。それは目標物の追跡機能だ。この機能は船艇が複数あり、調整役がいる場合には上手く作動する。だが今回の場合は駆逐艦1隻だった。そのためスホイ24の電波妨害システムが稼働した際に、駆逐艦に搭載されているイージスシステムの電波探知装置のアルゴリズムが作動しなかった。」

 

 外国のマスコミの報道によると、この出来事があったあと、「ドナルド・クック」はルーマニアへ緊急寄港した。そこでは乗組員27人が退職願を提出した。退職願には、自分の生命を危険にさらしたくないと書かれていたという。これは米国防総省の声明の中でも間接的に確認されている。なお声明では、この行為が「ドナルド・クック」の乗組員の士気を下げたと主張されている。米国が扇動した黒海の出来事によって、今後どんなことが起こる可能性があるのだろうか?ゾロタリョフ氏は、次のように予測している。

 「私は、米国がイージスシステムの改良について検討するのではないかと考えている。これは純粋に軍事的なものだ。政治的な面では、米国あるいはロシアが何らかの示威行為をすることは恐らくないだろう。一方で米国にとって今回の出来事は極めて不愉快だ。米国が展開しているミサイル防衛システムには莫大な費用がかかっている。その資金を予算から拠出する必要があることを毎回証明しなくてはならない。同時に、ミサイル防衛システムの地上配備迎撃体の実験は、理想的な条件で行われたものの、効果の低さを露呈した。米国防総省はこれを注意深く隠している。最も近代的な海上配備型『イージスシステム』も今回、その欠点を提示した。」

 

米国の「ドナルド・クック」をショックに陥れたロシアの戦闘機スホイ24に搭載されているシステムのコードネームは、「ヒビヌィ」。これは、ロシアのコラ半島にある山脈の名称だ。「ヒビヌィ」は、最新の電波妨害システム。最近ブリヤートの試射場で行われた演習で、「ヒビヌィ」の定期テストが実施された。テストは成功したようだ。そのため、近いうちにも限りなく現実に近い条件で、システムの実験が行われることが決まった。(引用終わり)

如何だろうか。いまだにアメリカの軍事技術が世界で一番だと思っている多くの日本人は吃驚するのではないか。おそらく、現時点でロシアのプーチンの方がアメリカより軍事的に優位に立っている。そう見なければ、現在の世界情勢を理解することはできない。

 

ここで、今秋、見かけた興味深い記事を紹介する。米国のブレンジスキー元大統領補佐官が本当の事を思わず喋ってしまったものである。以下。 

「本当の事を言ってしまったブレンジスキー」

 

 「Former US national security adviser Zbigniew Brzezinski’s assertion that Washington should retaliate against Moscow for Russian airstrikes against US assets in Syria is a “stunning admission” of the role America has played in the Syrian crisis, an American scholar in Wisconsin says.

プレスTV:http://www.presstv.ir/Detail/2015/10/06/432288/US-Syria-assets- 

元米国家安全保障顧問ズビグニュー・ブレジンスキーの「ワシントンはシリアにおける米資産に対するロシアの空爆に対してモスクワに報復すべきである」と言う主張は、シリア危機においてアメリカが実行した役割の「驚くべき告白」であると、ウィスコンシン州のアメリカの学者は語る。

イスラム-ユダヤ-キリスト教同盟の創設メンバーであるケビン・バレット博士は、火曜日プレスTVのインタビュでファイナンシャルタイム紙のロシアに関するブレジンスキーの最新の記事についてコメントする中で、語った。

ブレジンスキーはバラク・オバマ大統領に、ロシアがシリアのCIAが訓練した民兵を攻撃し続けるならば、ロシアを、武装解除をするよう助言した。

「シリアにおけるロシアの海軍と空軍の存在は脆弱で、本土からは地理的に孤立している」とブレジンスキーは日曜日に書いた。「彼らが米国の挑発に固執するならば、彼らは武装解除されるべきである」

バレット博士は、これは、米国が事実、アルカイーダ或いはイスラム国(Daesh/ISILテログループ)を同様に資産として使っていたと、ここ米国の上級高等政策顧問からの衝撃の告白であると語った。

シリアのアルカイーダ、ヌスラ戦線が実際は米国の同盟者であると言うことは、ワシントンDCの職員によって通常認められるようなことではないと彼は語った。

モスクワの最良策としてCIAの民兵を攻撃すると明確な決定は、ロシアの軍の無能を反映しており、最悪でありアメリカの政治的無能を強調する危険な欲望の証拠であるとブレジンスキーは書いた。

 

プレステレビのコメントとして、バレット博士は、その当時においても一部の人たちによって、ソ連に対するアフガンの聖戦において米国と関係があった”CIAの別働隊”と呼ばれていたアルカイーダを公式に糾弾していた、2001年9月11日の攻撃から14年たって、3000人のアメリカ人を殺した責任があるといわれている、おそらく悪魔化した敵グループが今シリアでは同盟者であり、我々はロシアとの戦争を起こし、アルカイーダに対する戦いに対してロシアを罰するために核戦争の危険を冒すべきだということを聞くことはアメリカ人にとって興味あることであると述べた。

誰もがロシアのアルカイーダの攻撃に対して、ロシアへの報復を想像することができる、びっくりするような話であるが、それはまさしくブレジンスキーが言ったことだと、彼は述べた。

そして、ブレジンスキーは良くも悪くも、彼以上に狂った彼の周りのネオコンについて伝える、ワシントンDCではより懸命で分別のある一人であると実際に思われていると「テロとの戦争」の著者バレット博士は述べた。

 

これを説明しようとするとき、我々はブレジンスキーの背景に注意しなければならない。彼はロシアを非常に嫌う理由を説明する家族的背景をもつポーランドの貴族の出身であり、彼は生涯に掛けてロシアに対抗する積極的政策を押し続けていると、彼は指摘した。

シリアが状況を安定化させ、平和的解決の類の基礎を築くためにアルヌスラやイスラム国のようなテログループに対して政府を強化する目的で、ロシアが、国際法上完全に合法なシリア政府の要請で介入した時、ブレジンスキーの応答はロシアを攻撃すべきであったのは、非常に衝撃的であり恥ずかしいことであると、バレット博士は見ている。(引用終わり)

今から4年前に「アメリカニズムの終焉」~幻想の大国アメリカ~というレポートを書いたことがあったが、プーチンという男が着々とパックスアメリカーナの幕引きに向かって動いている。その意味でしばらく、この男の動きから目が離せない。やはり、世界で最もパワフルな人物ということになるのだろう。

プーチンと柔道の心

COP21が開かれたパリでは現在、こんなポスターが張り出されはじめている!

安倍首相頭から水蒸気ポスター

先日、NHK衛星放送「フランケンシュタインの誘惑~科学史闇の事件簿~」では、キュリー夫人を特集していた。夫ピエールと共に放射能に魅せられた彼女は、その放射能による被曝(番組の中でこのように紹介されていた:マウスを入れたガラスの入れ物に、ラジウムを一緒に入れたら、9時間で全てのマウスが死んだ。肺から放射能が検出された。マウスは骨髄がやられていた。キュリー夫人は白内障になり、再生不良性貧血で亡くなった)で結局、死に神を招き寄せていたのだった。当時は放射線による人体への影響がよくわかっていなかったこともあるが、現在では、プルトニウムを使った人体実験のデータすら本当は存在する(これを題材にしたアイリーンウェルサム著「プルトニウムファイル」という本もある)のに巨大な原子力産業をつくるために数々の真実が隠蔽されてきた。そのために21世紀になっても多くの人が放射線の人体への影響について無知な状態に意図的に放置されている。

 そもそもあのキュリー夫人が発見したラジウムの製造所を建設するスポンサーは誰であったか、ご存じだろうか。

金融王ネイサン・ロスチャイルドの曾孫アンリ・ロスチャイルドである。 

原子力産業の歴史とは、ダークサイドから見れば、彼らロスチャイルド財閥の金儲けの犠牲になった人類の歴史でもある。多くの日本人は、原子爆弾ができる前から原爆が日本に投下されることが決まっていたことも未だに知らないのが実情だろう。そして、本土決戦によるアメリカ兵の犠牲を減らすために原爆が投下されたというプロパガンダをほとんどの日本人が未だに信じているのではないだろうか。戦争に負けた日本が現在でも彼らの核実験場であり続けていることにもおそらく、ほとんどの日本人が、気が付いていない。現在のフクシマ第一は放射能被曝データを提供する恰好の実験場となっているのも悲しく、厳しい現実である。

 

現在でも、福島県内の子どもの甲状腺ガン発生率は平常時の70倍を超えている。

201136月の放射性セシウムの月間降下物総量は「新宿が盛岡の6倍」、甲状腺癌を起こす放射性ヨウ素の月間降下物総量は「新宿が盛岡の100倍超」(文科省20111125日公表値)という驚くべき数値になっている。世界経済、日本経済を回すために騒がないだけで、東京を含む東日本地域住民の内部被曝は極めて深刻状況になっている。 195157年に計97回行われたアメリカのネバダ大気中核実験では、核実験場から220キロ離れたセント・ジョージで大規模な癌発生事件が続出している。220キロといえば、福島第一原発~東京駅、福島第一原発~釜石と同じ距離である。

核実験と原発事故は違うのではと思われがちだが、中身は同じ200種以上の放射性物質である。福島第一原発の場合、3号機から猛毒物プルトニウムを含む放射性ガスが放出されている。これらはセシウムよりはるかに危険度が高い。3.11で地上に降った放射能総量は、ネバダ核実験場で大気中に放出されたそれより「2割」以上も多い。

また、日本の原発からできるプルトニウムで欧米の核兵器がつくられ、彼らの核武装体系が維持されている敗戦国の不合理な現実をもっと多くの日本人は知るべきだろう。

 

 ところで、国際的な原子力専門メディア、Nuclear Engineering Internationalが、26日付けで3号機から蒸気が噴出しているのを作業員が目撃しているとの報道している。以下。

More problems for Fukushima

 

Tokyo Electric Power Co (Tepco) has admitted that radioactive ground water from the Fukushima Daiichi nuclear power plant has probably been leaking into the Pacific Ocean. It is the first time Tepco has officially acknowledged that contaminated water from the plant may have reached the sea, despite several studies and findings from the Nuclear Regulation Authority (NRA) which confirmed leakages.

 

Now we believe that contaminated water has flown out to the sea,” Masayuki Ono, Tepco’s general manager, told a news conference in comments broadcast on Japan’s public NHK television. “We would like to offer our deep apology for causing grave worries for many people, especially for people in Fukushima.”

 

Tepco’s admission has underlined concerns raised by NRA, which earlier in November said its experts had found high levels of caesium in samples taken from coastal seawater and the pit water near the facility. NRA had ordered Tepco to investigate the possibility of a leak, but Tepco said there was insufficient evidence to link the high levels of caesium to a leakage from the plant.

*NRA: Nuclear Regulation Authority

While Tepco acknowledged that contaminated water from the reactors is seeping through ground water channels before flowing into the sea, it said water sample tests showed that the impact of the leakage appeared to be controlled by silt fences built around the reactors, as there was no significant rise in the levels of radioactivity in the sea water.

 

However, Tepco admitted in April, that around 120t of radioactive water may have leaked into the surrounding ground from a storage tank, and earlier this month, tests on ground water samples showed that levels of caesium-134 had increased more than 110 times in a few days. To prevent further seepage of ground water to the ocean, Tepco is injecting chemical sodium silicate into part of the seawall separating the sea and nuclear plant, which will solidify a larger part of the seawall with the chemical, Reuters reported.

 

Tepco is also struggling to contain radioactivity at the plant. Workers on 24November reported steam from inside the unit 3 reactor building for the second time in a week. Tepco is investigating the cause after initially suggesting rainwater could have been the source.

 

We think it’s possible that rain made its way through the reactor building and, having fallen on the primary containment vessel, which is hot, evaporated [and created] steam,” Tepco spokeswoman Mami Yoshida said, according to Reuters.

 

The steam rising from unit 3 was noticed by repair crew who were removing contaminated debris from the facility. “All work to remove debris in and around unit 3 was stopped,” a spokesperson for Tepco told The Daily Telegraph. “We have confirmed that radiation levels around the pressure chamber have not changed, and we were able to confirm that the reactor has not reached criticality.”

 

The incident underscores the concerns and challenges involved in decommissioning the Fukushima plant, including how to dispose of the water used to cool its melting reactors. Tepco has poured thousands of gallons of water over the reactors since the 2011 incident, and disposing of the water with radioactive content is a major problem.(引用終わり)

 以下の映像を見ていただければ、核燃料のメルト・スルーによって人類史上未曽有の事態を引き起こしてしまっている福島第一原子力発電所の現在の状況を垣間見ることができる。是非、見ていただきたい。

フクシマ トリチウウム水蒸気

https://www.youtube.com/watch?v=-f10qxt0C8I

臨界を想像させるような異様な光とトリチウム水蒸気が出ているのが確認できるはずである。

20151127日の東京の濃霧も太平洋側が乾燥する季節に何処から水蒸気が来たかを考えるとあまりにも恐ろしい連想を誘うものである。

東京濃霧 2015年11月27日

また、以下の湿度もあまりに不可思議である。

石巻 湿度 2015年11月26日

日本のマスコミは黙りを決め込んでいるが、放射性水蒸気(トリチウム水蒸気)が滞留していると考えるのがどう考えても一番自然である。

以前も紹介したが、今秋、福島県宅地建物取引業協会が東京電力を訪れ、約25億円の損害補償を申し入れている。来年以降、不動産への原発被害がいよいよ顕在化し、今後は周辺地域、都市圏への波及が警戒される事態となっている。このことを以下の数字がよく物語っている:現在、東京23区の賃貸マンション空室率の上昇が止まらない。既に千代田区36%、中央区28%、目黒区27%となっている。日本政府が放射能汚染を頑なに隠蔽する一番大きな理由は、首都圏の不動産価格を下げたくないからである。都市圏の地価は10%の毀損で100兆円近い評価損失となる。これだけで信用創造機能は不全に陥ってしまう。農林水産業や事業損失に加え不動産の賠償が加わるとなれば、脆弱な日本の財政など一瞬で破綻することは明らかだろう。そのために官民上げて情報統制に狂奔し、被害実態を隠蔽し、富裕層が資産処分の時間を稼ぎ、クライシスを先送りしている。

 

また、下記の避難基準を見ていただきたい。以前のレポートでも指摘したが、民主党の菅直人政権時代、福島県という地方自冶体を残すために採用されたのが下記の基準である。

この背景は船橋洋一氏の「カウントダウン・メルトダウン」に詳細に描かれている。

チェルノブイリより4倍も高いフクシマの避難基準

「ブッラクアジア」という著書がある人気ブロガー鈴木傾城氏が少々古いが適確な指摘をしているので紹介する。以下。

 

「放射能に汚染される首都圏で暮らして、人々が騒がない理由」 2013-10-29

 

東京はまったく福島の原発事故の影響がないと言われているが、これは完全なるデマだ。

日本政府は全国の環境放射能水準調査を発表しているが、東京は全国で3番目に放射能が高い地域となっている。放射性セシウムは、これを見ると東京で6.6メガベクレルも検出されているのが見て取れる。(http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/9000/8041/24/195_Jul_0830_0905.pdf

日本政府は往々にして調査結果を低めに測定するが、それでも東京が汚染されているのは隠せない。放射能は流行と違って、人が存在を忘れたからと言って無力になるわけではない。知らないうちに首都圏の人間はどんどん内部被曝していくことになるのだ。そもそも、首都圏の人間は2011年3月の中旬から後半にかけて、3600ベクレルもの内部被曝をしたのだ。

よく分からないのであれば、このように言えば分かるだろうか。東京は、チェルノブイリの数百倍、数千倍もの放射能がそのときに舞っていた。このとき、東京を脱出していた人は正しいことをしていたのである。

 

放射能のせいであることは徹底して無視される

日本では、2011年3月に福島第一原発が爆発してからというもの、行政もメディアも、まったくアテにならないことが明るみになった。政府も当てにならない。民主党は史上最悪の政権だったが、この政権が倒れて自民党政権に戻っても、原発の扱いについてはいまだ現状は変わっていない。小泉元首相のように、脱原発に動き出す政治家も見られるようになったが、安倍首相はそうではない。

もう日本では原発が存在できないことは状況的に見れば明らかなのだが、それが普通の人に理解できるようになるのは、実際に内部被曝を起因とする夥しい病人や死者が顕在化してからだ。

 

それはまず、統計として現れる

2011年以降から癌による死者が20万人30万人の単位で増え始めたのが隠せなくなってから、やっと日本政府は内部被曝が深刻であることを認めることになる。それまでは、情報封鎖・隠蔽・矮小・安全デマを繰り広げて、あなたの体調不良や健康被害が放射能のせいであることは徹底して無視されるのは言うまでもない。つまり、私たちが楽観的になって暮らしていたら、内部被曝させられるがままになるということだ。

危機感を感じて、状況を注視しておかなければならない。特に子供を持つ母親は、用心に用心を重ねて情報を収集していないと、子供が悲劇に遭う。母親に危機感がなければ、子供が不幸になる。

 

基本的に、日本の組織は誰も責任を取らない

20121225日、茨城県取手市の小中学校の心臓検診で、「要精密検査」と診断された児童が急増しているケースが東京新聞によって報道された。「QT延長症候群」の疑いがあるというものだったが、この「QT延長症候群」とは、突然死を招くものである。

子供の突然死を引き起こすような「危険な診断結果」が原発爆発後に増えているのだが、それがなぜかほとんど問題視されていない。この記事はすでに消されているので、「73人が要精密検査、取手市内24校心臓検診」と検索してみてほしい。いくつかのサイトで記事が読めるはずだ。

日本の水面下で起きている危険な出来事を、日本人はまるで他人事のように「知らないふり」で乗り切ろうとしている。放射性物質は体内に蓄積する。セシウムは筋肉に蓄積し、ストロンチウムは骨に蓄積するのだ。

だから、これから白血病も、甲状腺障害も、心臓障害も、ありとあらゆる病気が激増していくことになり、やがてはそれが統計となって私たちの目に触れることになる。

しかし、当事者として重要なのは統計ではない。私たち自身の健康であり、家族の健康であり、子供たちの健康である。

親はもう公的機関もマスコミも信用できないことは、肝に命じておくべきだ。

なにしろ、日本の組織は誰も責任を取らないのだ。福島第一原発が爆発してから、どうなったのか調べてみればいい。

「プルトニウムは飲んでも大丈夫」の東大教授も、「ただちに影響がない」の政治家も、「飛び散った放射能は東電の所有物ではない」の東京電力も、誰ひとりとして刑務所に行っていない。数千万人に巨大な影響を与えた大惨事だというのに、当事者は誰ひとり罪にならない。あまりにも信じがたいが、これは事実である。私たちは今、誰も責任を取らない国で暮らしている。

 

負債は企業にも個人にも致命傷になり得る

だから、私たちは、常に危機感を常に持っていなければ大変なことになる。首都圏は現在、日本で3番目に放射能汚染のひどい場所であることを自覚しなければならない。

このままでは、自分が犠牲になるか、自分の家族が犠牲になるか、子供たちが犠牲になる。何しろ、今でも放射能は静かに堆積しているのだ。

東日本や首都圏は、今後は放射性物質の累積で人間が住めない地域になる可能性もあると考えた方がいい。長期的に見ると「棄てられる地」なのだ。

それなのに、なぜ騒ぎにならないのか。

それは、誰もが東日本に「関わり」を持っているからだ。

人々はそこで暮らし、生活し、仕事をして、不動産を持っている。放射能汚染で騒げば、不動産の資産価値が下がるのは分かりきっている。この世の中で、誰が進んで損することをするだろうか。

放射能は中国の大気汚染とは違い、目に見えず、臭いもしない。だから、騒がなければ資産価値は守られる。必死の思いで不動産ローンを返し終わったら放射能汚染地帯になっていて人が暮らせなくなっていたとなると、何のための人生だったのかということになる。放射能に汚染されていく土地で暮らして人々が騒がない理由は、まさにここにある。巻き込まれている人は誰もが絶対に放射能の問題など認めない。資産価値を守るためには、「放射能は人体に良い」とさえ言い出すだろう。それが人間なのだ。

逆に言えば、自分の身を守り、家族の身を守るためには、何が隠されようとしているのかを把握し、自分がしっかりと防衛に努めるしかないのだ。

子供たちを内部被曝から守ろうとする母親は、孤独な戦いを強いられることになる。(引用終わり)

最後に元スイス大使村田光平氏のホームページから川上直哉氏の「原子力災害の第二段階を前にして」という驚くべき情報満載の文章を紹介するので、是非、読んでいただきたい。

 

「原子力災害の第二段階」を前にして   20151111日  東北ヘルプ事務局長 川上直哉(牧師・神学博士)

<川上直哉 略歴>

1973年、北海道に牧師の息子として生まれる。神学博士(立教大学)・日本基督教団正教師。宮城県教誨師(日本基督教団東北教区から派遣)、宮城県宗教法人連絡協議会常任幹事(日本基督教団東北教区宮城中地区から派遣)、仙台白百合カトリック研究所研究員、仙台キリスト教連合被災支援ネットワーク (NPO法人「東北ヘルプ」)事務局長、食品放射能計測プロジェクト運営委員長、東北大学「実践宗教学」寄附講座運営員長、世界食料デー仙台大会実行委員長(20154月現在)

 

【要 旨】 

1.定義

 2011 3 11 日に起こった地震と津波によって、東京電力福島第一原子力発電所が爆発事故を起こした。この際起こった被害は、徐々に明らかになった。避難時の不手際などによる悲劇を含めて、これを「原子力災害の第一段階」と呼ぶ。

「原子力災害の第一段階」において、たとえば予防原則に基づいて適切な措置が取られていれば起り得なかった災害が、今、起りつつある。それを「原子力災害の第二段階」と呼ぶ。

2.転機

 「原子力災害の第二段階」が始まる転機は、2015 年秋に認められる。

3.社会的状況

 この 2015 年秋には、「福島安全宣言」に類する動きが活発化してきている。これは、震災以後続いた体制の行き詰まりを示すものとも見える。

4.見通し

 2016 年中には、内外の惨状がある種の「閾値」に達し、原発事故直後に起こったと同様の社会的変動が起こると見通せる。

5.結論

  キリスト教支援団体である我々は、上記の見通しの中で、自らの役割を果たす努力を更に具体的に進める。それは、宗教の領域において可能な努力を尽くすことで、政治・経済・法・報道・学問の各領域で同様の努力が進められることへの刺激となることを志してのことである。そのように各自が「持ち分」を誠実に引き受け始めることによってのみ、未曽有の事態に茫然自失しているこの国の再生が始まると信じている。

 

【本 文】 

 2015年秋は、大量の情報が流れ出た記念すべき時として記録されることだろう。それは「原子力災害の第二段階」の始まりを画するものとしてまとめられる。以下、その報告をまとめ、今後の流れを予測し、支援活動の方針を考える資料とする。

 

1.「原子力災害の第二段階」とは

 2011311日に起こった東日本大震災により、東京電力福島第一原子力発電所1~4号機は爆発事故を起こした。(国会での証言資料によると)セシウム137だけでもヒロシマ型原爆の160倍程度の汚染が引き起こされ、(ある英語文論文によると)セシウム134だけでもチェルノブイリ原発事故の3倍程度の汚染が引き起こされ、(報道された限りにおいて)プルトニウム239だけでも32億ベクレルの汚染が引き起こされた、とされる。(201411月のドイツにおける日本人の研究によると)ヒロシマ型原爆の7万倍のプルトニウムが降下した。避難時の不手際も続発し、多くの悲劇が起こった。また、(NHKの報道によると)東京電力福島第二原発と東北電力女川原発においても、270億~6200億ベクレルの放射性ヨウ素が放出された。これを「原子力災害の第一段階」と呼ぶ。

 その際、ほとんどの地域で安定ヨウ素剤が配布されなかったことに始まり、諸々の「不作為」が続いて現在に至る。たとえば、1986年の原子力災害において、特にその5年目(1990年)の9月に開催された「第一回チェルノブイリ事故の生物学的、放射線医学的観点にかかる国際会議」以降順次定められた「チェルノブイリ基準」に従えば、「移住の義務」を課せられる土壌汚染が無数確認される福島県中通地区においてすら、公的な除染の際に土壌の汚染状況を計測することは、2015年現在、全く検討されていない。その不作為の結果起こってくる悲劇を、「原子力災害の第二段階」と呼ぶ。

 現在、この「第二段階」の始まりが見えていると思われる。

 

2.転機

 「第一段階」から「第二段階」の転機は、小児甲状腺癌の多発が確認されたところに認められる。それは、108日の外国人特派員協会における津田俊秀氏の会見が具体的な契機となる(この会見内容については、既に英語でも報道されている)

 この秋には関東地方での小児甲状腺の異常が報道され、茨木県北茨木市での甲状腺異常が報道された。その後、2011年時点で未成年であった千葉県柏市民173名の内11名が甲状腺癌およびその疑いであることが発表された。柏市の未成年者数はおよそ7万人程度と推定されるので、「11人」という数字は、極めて高い値を示している。

 上記は、2011年の原子力災害が1986年のチェルノブイリ原発による原子力災害の後を追いかけていることを示している。1986年の原子力災害の場合、6年目・7年目にかけて、各種の疾患数が爆発的に増加している。来年6年目を迎えるのが2011年の原子力災害である。各種の疾患数はどうなっているのかを確認することは、意味あることだと思う。

 実際、日本においては、例えば急性白血病の診療実績が右肩上がりに増えている。ただし、福井県、大阪府、和歌山県、鳥取県、香川県も大幅に上昇していることは注意が必要である。このことは、二つの可能性を示している。一つは、がれきや土砂等の移動による被ばくの拡散という可能性、もう一つは、そもそも2011年の原子力災害の被害は本州全域に影響を与える規模であったという可能性である。201314年のお茶とキノコから行政が確認した放射能の数値を整理すると、静岡県や長野県における汚染の高さがわかる。各地の行政が発表した空間線量の報告を集めてみると、愛知県県境の西側付近で震災前の二倍以上の放射線量を確認している場所があることがわかる。

 1986年の原子力災害の後、甲状腺癌については、子どもよりもむしろ大人の発症数が爆発的に増え、その発生率も永続的に右肩上がりとなることが報告されている。例えば甲状腺単科の専門病院である伊藤病院の外来件数の推移(現在は2014年まで公開・2010年比は微増)に、今後注目することが有益と思われる。

 

3.社会的状態

 しかし、上記のような事態にもかかわらず、社会は反応していない。むしろ、515日には「『福島安全宣言』実行委員会」が組織され、923日には6号線を中高生に清掃させるイベントが行われ、1012日には南相馬市でサーフィンの全国大会が開かれた。他方で、東北ヘルプの「短期保養」支援プロジェクトは2013年から201510月までに560回を超える面談を東北・関東で行い、子どもの健康被害を訴える親たちの声を拾ってきた(報告書「東北ヘルプ「短期保養支援」の面談結果について」および「保養面談報告書」を参照)。この声と、上記の動きと、両者の間にある乖離は激しいものとなっている。

 ただし、上記の「『福島安全宣言』実行委員会」の代表である矢内筆勝氏は「幸福実現党」の総務会長兼出版局長であり、会の事務局所在地は「幸福実現党福島後援会」の住所と同一である。またこの会の顧問には田母神俊雄氏が就任している。予断を敢えて記せば、この運動はむしろ、今後健康被害が隠し切れなくなった時の「トカゲのしっぽ切り」のために、憎悪の対象を明示する作業が行われている、とも見える。

 沖縄・辺野古における基地建設を巡る政府の動きも、また、所謂「アベノミクス」の現状も、現体制の行き詰まりを如実に示しつつある。そうした中で「原子力災害の第二段階」が現在進行している。

 

4.見通し

 以上を踏まえて、今後、大きな社会変動が起こることが予想される。具体的には、数千万人の規模での人々の移動が起こるだろう。その混乱はどのようにして起こるか。上記の情報と、現在東北ヘルプが担っている支援活動、とりわけ562回の面談を行い126世帯(大人299人、子ども307人)の状況を定期的に聞いて得られた情報とを総合すると、以下のような見通しが示され得る。

 

(1)2015年度中に政治的状況が激変する。

 2011年の原子力災害の結果、ある昆虫(ヤマトシジミ)においては、「骨格」に相当する部分の異常が5世代目をピークに増加することが、既に実証されている。2013325日には、福島県飯館村では馬の不審死が相次いでいると、フォトジャーナリストが報道している。また、放射能の強い地域のモミの木に異変が起こっていることを報告する論文(英文)も20152月にされた(なお、この報道においては、2011年の原子力災害の方が1986年の原子力災害よりも深刻な状況にあることが示唆されている)。

 元外務官僚である原田武夫氏は、2015111日公開の「安倍晋三総理大臣への公開書簡」において、同年12月には日本経済に行き詰まりが起こり、そして「福島第一原子力発電所を巡る健康被害の実態」が明らかにされる、としている。この書簡は実名で公開されていることから、注目に値する。経営学の専門家(大学教授)と外交の専門家(元大使)にこの内容についての評価をお願いしたところ、以下のように回答を得た。

 

「興味深い内容であり、出鱈目を述べていると断ずることはできない。外交関係についての記述については、確かな情報源をもっていることがうかがわれる。経済的な記述については、6割方、正しい記述である。ただし、中小企業と組んだビジネスに絡んで議論がなされていることが気になる。また、日銀の量的緩和についての理解については、根拠が示されずに私見が前面に出てきている。中小企業に対する大手銀行員の理解・態度については、現在のトレンドを提示していない。これらの点が、説得力を減じている。」

 

 20151026日の報道によると、事故当時、事故現場から20キロ圏内で避難誘導を担当した自衛官など、約三千人の内、38パーセントが、作業中に「1ミリ㏜」以上の被ばくをした。この人々の健康被害が明らかになるというのが、上記原田氏の議論であった。

 川上の周辺に、癌および脳・心臓の血栓を患う人が増えてきている。保養相談においでになった方のお一人のご友人は、都内の幼稚園の経営者の立場で、奇形・体調不良の入園者が増加していることに恐怖を感じ東京を去って九州へ転居した、という。こうした動きが、どこまで広がるか。その流れ次第で、比較的早い段階(年度内)で大きな変化が訪れることになるかもしれない。

 

(2)20163月に社会的状況が反転する。

 「真実を探すブログ」といった個人のブログは、これまで、多くの情報を整理してきた。しかしそこには編集の作業や反証の検討において、不足が多々見られる。これをもって「移住」といった大きな決断ができる人は、決して多くないものと思われる。

 現在、内外から数多くのジャーナリストが原子力被災地を取材している。「国境なき記者団」の某記者から直接聞いたところによると、ジャーナリストにとっては「日付・年数」の数字が重要であるとのこと。つまり、「5年経過したフクシマの3月」といったキャッチコピーを付すことができるまで、今調べていることを発表することをしない(できない)のが、ジャーナリストである。それは経済的な理由による動かしがたい現実である、とのことだった。

 1020日に白血病を発症した廃炉作業員に労災が認定された、というニュースが報道されながらも、116日の共同通信は汚染地帯を中高生に清掃させたことへの批判を「誹謗中傷」と報道した。このように、現状は、各ニュースが突き合わされることなく陳列されている状況にある。これはジャーナリストの作業が顕在化していないことを端的に示していると言えるだろう。

 ということは、現在進められている内外のジャーナリストの調査が世界中で一斉に報道される可能性があるのが、20163月、ということになる。それは、日本の空気を一変させる可能性がある。

 川上は支援の現場で「5年が限度」と感じている母親たちの多くいることを見聞きしている(報告書「東北ヘルプ「短期保養支援」の面談結果について」および「保養面談報告書」を参照)。今年になってから、「離婚してでも」子どもを移住させようという思いが、母親たちの間に強くなっている。夫への絶望がそこに見られる。そうした中で、現在曖昧とされている事柄が整理され提示されたなら、2011311日以降の数週間の間に起こったように、母親たちが一斉に行動を起こすかもしれない。

 

(3)2016年中に国際的環境が厳しさを増す。

 1025日の新聞において、除染で使用した道具が、2012年以来、「一般のごみ」としてコンビニなどに廃棄されていることが報道された。

 20141231日の新聞で、東京電力が、福島第一原子力発電所の解体作業に際し使用していた放射性瓦礫飛散防止剤を10倍に希釈していたことが報じられた。この年の夏までの間、南相馬市の農家から「放射性物質が飛散している」との指摘を受けた日本国政府と東京電力は、一年がかりの調査の結果「三号機から大規模な放射性物質の拡散がなされた」といったん発表したが、すぐにそれは「再計算」によって訂正・撤回され、結局この問題は「飛散の原因は不明」とされていた(経緯のまとめはこちら)。

 20151029日、東京電力は記者会見を開き、格納容器外の場所で最大9.4㏜毎時を計測したと発表した。それは45分で人が死ぬ空間放射線量であるという。つまり、20141231日の報道は、そうした現場の粉塵飛散防止がなされないままに原発周辺のがれき撤去作業が行われた、ということを伝えていることになる。

 上記は、放射性物質による環境被害が継続して拡散している可能性をうかがわせる。国内では、このことへの批判は弱い。しかしこれが国際社会を相手にした場合、どのようになるか。

 米国のFM局のサイトは、20151031日、福島第一原子力発電所事故現場から毎日300トンの汚染水が流出していることを伝え、その影響について詳細に報道した。

 2015925日のNHK国際放送は、2号機の核燃料のほとんどは格納容器の中に残されていないことを、名古屋大学の森島邦弘教授が結論付けたと報じた。また、環境中に核燃料が露出している危険性を、20157月の英語版の日本の新聞は、はっきり指摘している。2011年の事故後、放射性物質の排出量は当初の想定よりもはるかに多く、また、はるかに長期間にわたっていることが、東京大学や九州大学の調査で明らかにされたと、英語で2014年に報じられている。しかし日本でこのような報道は、ほとんどなされない。

 2014 年、米国では、原子力災害に携わる日本の高級官僚が「平気で」放射性物質を拡散させていることを告発する番組が放映され、また、フランスでは、海洋および大気における汚染を検証する番組が放映された。福島県のある地域に住む女性の証言によると、カナダへ書籍その他一般的なものを郵送する際でも、送り元にFukushima の文字を入れると、徹底的な検査を受けて送付先には届かず、それではと、Fukushima を書かずに送ると、そのまま届く、という。これは、世界の危機感を伝える一つの証言である。

 キログラム当たり5万ベクレルを超えるマッシュルームの画像情報が、20151029日に英語のサイトにおいてアップロードされた。1020日には、廃炉作業員の白血病発症に労災が認定されたことも英語で報道された。915日にはポーランド語と英語で福島県内の状況が詳細に報道されている。以前にも、たとえば20124月に、米国で流通する日本産の海苔の放射線量が高いことが米国の環境団体のサイトで報告されていた。今後、こうした情報が五月雨式に出、噂レベルでの関心は強まるだろう。

 日本は海洋法に関する国際連合条約の締結国である。締結国各国は自国の排他的経済水域の環境について管理する権利を有している(56条)。原発事故現場から排出される汚染水についての評価は、各国が主体的に判断するものであって、日本国政府の指示に従うものではない。

 従って次のように結論付けることができる。仮に、2015年度中に健康被害の顕在化が政治的影響をもたらさず、20163月の報道によって社会が変化しなくとも、その両者は国際的な影響(外圧)となって日本に押し寄せることになるだろう。2015115日の Japan Times 紙は、「2020 年オリンピックからの名誉ある撤退」を求める記事を掲載し、すぐ、英語でそれに続く報道がなされている。こうした動きは今後強くなり、2016 年には大きな影響を日本全体に与えるものと思われる。

 

5.結論

 我々はキリスト教に基づく支援団体である。以上の見通しは、我々の支援のためにあえて獲得するものである。

 以上のような見通しの中で痛む魂への配慮こそ、我々の課題である。我々の課題は、政治的変革でも、経済的利益の追求でも、法的正義の確保でも、情報の公開でも、真理の追究でも、治療・衛生でもない。

「魂」の語をもって、「精神(霊)」と「肉体」の総合を指す。全人的な支援を担うために、上記の見通しに従って、以下の支援を行う。

a. 原子力被災者の尊厳を守る。そのために、被災者各位の自己決定のそれぞれを尊重する。あらゆる宗教的立場(キリスト教を含む)・政治的立場(反原発を含む)については、常に中立を旨とする。以上を理解し賛同するチャプレンを派遣し、絶望から人々を保護する。

b. 原子力被災地に留まりたい、留まろう、と志す人に対しては、「減災」のために必要な情報を提供する。具体的には、内部被ばくを避けるための食事レシピや短期保養のための情報や資源を提供し、土壌と食品の放射能計測を行う。

 

c. 原子力被災地から避難したいと志す人に対しては、その避難を支援する。そのために、 

c-1. キリスト教のネットワーク(YMCAYWCA、「友の会(羽仁もと子の系統)」等)に、避難者を保護するための各地の市民活動を、つなげる。このネットワークを活用し、米国黒人奴隷解放運動のために作られた「地下鉄道」の故事に倣い、避難したくてもできない人々のために可能な奉仕を行う。

c-2. 非難希望者が避難のイメージを具体的に描けるように、避難した体験談を提供する。

c-3. 避難希望者が避難の契機をつかめるように、今後の見通しを日々更新しつつ提供する。

 

 以上を実行するために、以下のような体制で支援活動を展開する。

 

(1)本部事務局の維持管理:年額約600万円

 (事務局長1名・職員2名・事務所家賃・自動車維持費・通信費・その他雑費)

 

(2)放射能計測所の維持管理:年額400万円

 (職員2名・計測機器維持管理)

 

(3)支援活動費:年額1000万円

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