元外交官 原田 武夫氏のコラムより       11月1日

*なかなか興味深い指摘です。

「「GE事件」について考える」

今回の一件に関する大手メディアの報道(とりわけ放送メディアの報道)に触れていて、気付くことが一つある。それは、どういうわけか、守屋氏への「仲介役」であったに過ぎない日本ミライズ、あるいは山田洋行だけがスポットライトを浴び、最新型輸送機CXのエンジン納入をめぐり、最終的な「取引相手」であるはずのGE(ゼネラル・エレクトリック社)にはあまり注目を寄せていないかのような報道が続いていることである。

実はこうした傾向は、日本の大手メディアについてだけ言えることではない。この問題について、最終的には「取引相手」としてのGEへと飛び火することが十分想定されるにもかかわらず、当の米国の主要メディアは、現段階において、あたかも日本国内で完結するかのような報道に終始している(たとえば10月30日付ワシントン・ポスト)。

だが、何といおうと、日本ミライズ、あるいは山田洋行の涙ぐましい「努力」によって、結果として防衛庁(防衛省)との商行為を成立させることができたのは、GEなのである。この一連のストーリーに、GEが全く関与していなかったと言い切るのは、常識的に考えて、つらいものがあると考えざるを得ない。

ところが、公開メディアのみならず、公開情報インテリジェンスにおいていわゆる「grey literature」と呼ばれる、一部の関係者のみに流布される情報ルート(この場合は、日米間のロビイストのルート)においても、不思議とこの案件そのもの、あるいはGEの関与について取り沙汰されている気配が今もって無い。これはおかしい。明らかにおかしい。

事の真相はともかく、構造として疑惑のターゲットとされている取引における一方当事者であるのがGEである以上、今回の疑惑全体を「GE事件」とここでは呼ぶことにしたいと思う。これまで長きにわたって日米関係に携わってきた関係者からすれば、そう呼ぶことに「違和感」はないはずなのだろうが、それでも上記のとおり、そのように呼ぶ気配は彼らの間で見受けられない。



以上を踏まえた時、今後の展開として考えられるのは、次の二つのパターンだ。

第一は、GEは本当にこうした「仲介役」たちの暗躍について知らなかったというパターン。そのことについて、真っとうな弁明がすでに日米関係に携わるディープ・スロートたちに対してGE側から流されているため、納得ずくめで「GE事件」とは呼んでいないという場合だ。

第二は、むしろ逆に、これから「飛び火」するどころか、「大火事」になることが日米関係に携わるディープ・スロートたちにとっては明らかであるだけに、息を潜ませ、「その時」をじっと待っているというパターンである。

さて、いったい、どちらの展開になるのだろうか?

<予期されていた「第2のロッキード事件」>

IISIAとしては、以上の二つのパターンの内、第2のラインで現実がこれから進展していく可能性が高いと分析している。その理由は以下のとおりである:

1)米国勢は来年12月の大統領選挙を経て、政権交代となることに向け、徐々に共和党から民主党への漸次的政権移譲のプロセスに入りつつある。そのことは、今年の早々から明らかであり、今現在、日米関係にまつわり起きていることの「全て」がその文脈でとらえられるべきである。

2)ここでとりわけ思い出されるべきは、ビル・クリントン政権(クリントン政権Iと呼ぶ)の対日姿勢が(少なくとも初期において)「友好的」ではなく、むしろ「攻撃的」であったということである。貿易赤字問題しかり、北朝鮮問題しかり、あるいは円高問題しかり、政権発足当初の93年から95年頃まで生じた出来事のすべてにおいて、米国は日本の「梯子」を外し、「無視」し、あるいは「容赦ない攻撃」に終始した。

3)民主党政権(クリントン政権II)が再来年早々から成立するのであれば、徐々にヒトもカネも、そして政策も、クリントン政権Iの際と同じような巡り合わせへと並び変えられていくはずである。そうなる以上、ブッシュ政権(息子・第2期目)の後半、とりわけ2007年に入ってからは「日本封じ込め」を推進し、あるいは日本における「反米感情」をかえってあおるような態度に米国側が終始するようになるのは明らかであった。

4)その際、カギとなるのは、(とりわけ日本の)マスメディアの論調である。多くの日本人にとって、日米関係が抽象的な存在であり、目に見えないものである以上、たとえばテレビ画面でコメンテーターたちがそれについて何と語るかが、日本の対米世論に決定的な影響を与える。マスメディアの住人たちならば、誰しもが既に感じていたことであろうが、実は2005年の後半頃より、「2007年の冬以降」をターゲットとして、こうした反米論調への転換を日本の大手メディア各社が画策していることは明らかであった。

もちろん、メディアといえども、「火のないところに煙をたてる」わけにはいかない。したがって、2007年の遅くとも秋には、日米関係における「信頼感」を根底から覆すような出来事が、意図的に発生させられ、大きな波紋を呼んでいくことが想定されたのである。

5)その際、日本の世論で反米感情の標的となるスケープゴートが、仕掛ける側の米側にも必要となってくる。この観点から見た時、2007年初夏頃より明らかとなってきたのが、クリントン政権IIに向け、国防総省をはじめとする米国政府自身が、M&Aの連続によって巨大化した大企業ではなく、むしろヴェンチャーや中小企業などのシード(種)とでもいえる企業群へと発注先を大幅にシフトし始めたという事情であった。

そのことは裏を返せば、米政府、さらには共和・民主両党の上部構造として、米国における本当の意味での統治を担う閥族集団としての「奥の院」たちからすれば、「大企業」は用済みだということを意味している。

6)このように考えてくると、スコープに入ってくるのが一つには、ボーイング、さらにはGEといった航空産業なのである。これまで破竹の勢いで世界中のマーケットを席捲してきた両社であるが、ここにきてやや調子が悪いのは否めない。その結果、ドル箱である日本マーケットで果敢に行動することになるのであろうが、それがかえって「焦り」をよび、脇が甘くなる危険性があった。

逆に米国において仕掛ける側からすれば、この手のコングロマリットであればあるほど、「倒れた」時の影響力は大きく、技ありということになる。しかも、この仕掛けの目的はあくまでも日本における「反米感情」の醸成にある。そうである以上、日本人の記憶に未だに留まっている「日米を股にかけた疑獄事件」の二の舞であるかのような演出がなされるセクターで仕掛けが発動されるのが、もっとも効果的であるはずなのだ。

字数と内容の関係上、ここではすべてを明らかに出来ないのが残念だが、いずれにせよ、さらなる詳細な分析をも踏まえ、IISIAは5月27日の段階で「第2のロッキード事件が、2007年秋の段階で生じる可能性がある」との見方を公表した次第である。

果たして「GE事件」は、日米を股にかけた贈収賄事件としての「第2のロッキード事件」となるのか?今後の展開をじっくりと見据える必要がある。

米国議会の下院にある「歳入委員会(Committee on Ways and Means)」では、来る11月15日に、実に2年ぶりの「日本問題に関する公聴会(Japan Hearing)」を開催するとの情報がある。ところが、その議題は未だ決定されていないのだという。――――不可思議な話だ。

翌16日。福田康夫総理大臣が訪米、ブッシュ大統領との日米首脳会談に臨む。ちなみにワシントンではここにきて、「福田が、米国による『日本外し』に業を煮やしているとの発言を周辺に繰り返している」との噂が流布されつつあるとの情報がある。新任の福田総理を出迎えるワシントンの風は冷たい。

まさに「国家の大事」である。

こうした「潮目」の到来を従前に予想していた「サトい国々」は、早々と大連立政権を組み、万全の態勢を備えている。たとえばメルケル政権(ドイツ)、グーゼンバウアー政権(オーストリア)だ。

米国における政権交代プロセスの中で、その大波に翻弄されず、むしろ流動化する米国から奪えるだけ奪うには、大連立政権で内政上の憂いを無くすのが「正解」なのである。

その限りにおいて、福田康夫総理大臣が小沢一郎・民主党代表と「トップ会談」を行った(10月30日)のは正しい。これを見て、「野党が社民党と共産党だけになる。国民から選択の権利を奪う大連立を志向するのはいかがなものか」(10月30日放送のTBSラジオ「アクセス」における宮崎哲弥氏の発言)などと語るのは、国際情勢とその中における「潮目」の常識を知らぬ、旧タイプの評論家連中だけであろう。

いずれにせよ、舞台の幕はまだ開いたばかりだ。

次に、いったいどんな展開が待っているのか?―――私たち日本人の「潮目」を見極める目が今、試されている。

(私のコメント)

今回のGE事件」もアメリカ企業が仕掛けた汚職事件なのであり、守屋事務次官一人でとてもできることではない。有名なロッキード事件では田中角栄氏がヤリ玉になったが、今度のGE事件ではどう言う展開が待っているのか?

アメリカ国内でも共和党から民主党に政権が変わる時でもあり、軍需産業がそろそろヤリ玉に挙げられる時期かもしれない。

ロッキード事件は米国の言うことを聞かない田中角栄氏を失脚させる為のキッシンジャーによる陰謀だという説が有力だが、今回のGE事件は誰が標的なのだろうか? 自民党の誰であれ事件の全容が明らかになれば自民党にとって大きなダメージとなり、衆院選と重なれば自民党にとって大敗北の原因になりかねない。

もしかすると、アメリカの奥の院は日本に民主党政権を作るために動いているのかもしれない。自民党にはまだ、保守派の国際金融資本の言いなりにならない勢力が残っているから、民主党政権を作ってやりやすいようにするのが狙いだろうか?

日本と同じような立場のドイツは大連立政権を作って憲法を改正してEUを結成して、アメリカの影響を受けないように手を打ってきた。そしてアメリカ離れに成功した。しかし、日本の場合、ドイツと違って小選挙区の比率が高い選挙制度を採用しているので、現実的には自公、民主の大連立は難しい。

日本人が独立自尊の精神を取り戻すのは何時になるのだろうか。

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