二十年後の豊橋の姿が見えていますか?

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10月 312016

JAL(日本航空)を見事に再生させた稲盛和夫氏は、次のように語っています。

<「思い」は必ず実現します。物事を成功に導こうとするなら、強い「思い」を持たなければなりません。ただ思うだけでも、「思い」は私たちの人生を作っていきますが、それが潜在意識にまで入っていくような思い方をすれば、その「思い」はもっと実現に近づいていきます。さらにその「思い」をより美しく、純粋なものにしていけば、最も大きなパワーをもって実現していくのです。>

 ところで、太平洋戦争後の1946年、焼け野原の東京で都の都市計画課が、「二十年後の東京」というプロモーション映画を製作していたのをご存じでしょうか。この映画を見て吃驚するのは、焼け野原の東京で私たちの先輩たちは、二十年後の東京の姿をはっきりと思い描いていた事実です。1946年にこのような映画を製作できた背景には、官庁プランナーの枠に収まりきらない都市計画家であった石川栄耀(ひであき)の戦前の一連のプランがあったことが指摘されています。そして、二十年後の東京は、首都高速道路、新幹線が開通し、プロモーション映画で語られた以上の街に変貌しています。

時代の転換点に見事に対応できた事例だと言えましょう。

 さて現在、戦後70年を経て、日本社会も既存のシステムが機能不全に陥る一歩手前の大きな節目を迎えています。たとえば、高齢化と人口減少が世界史上、例のない早さで進む日本においては、現在の年金制度が破綻することは、論理的に考えれば、誰の目にも明らかでしょう。緩やかに高齢化する他の先進国では、年金制度の改定は1520年に一度行えばよいのですが、日本では少なくとも、国勢調査によって人口が確定する5年ごとに大幅な改定を行っています。また、年金の負担側と給付側の関係で考えてみても、米国、英国、フランスなどは将来的に年金を負担する人が7割、もらう人が3割の水準で安定するのに対し、日本は負担する人が5割を切ってしまう計算になります。これは明らかに現役世代の許容範囲を超えるものです。また、ご存じのように2015年の国勢調査では、5年間で日本の人口は約947000人、0.7%、豊橋市でも約2000人、0.5%の人口が減っています。一方、平成23年度の一般会計予算は、国が約924千億円、豊橋市が1178億円、平成28年度が、国が967千億円、豊橋市が1241億円、デフレ下で人口が減少しているにかかわらず、増えています。豊橋市においては平成233月に作成され、平成2712月に改訂された都市計画マスタープランというものがあります。それによれば、2040年の豊橋市の人口は349000人、65歳以上、人口比率は31.6%と予想されています。残念なことですが、このそつが無いマスタープランを読んでも20年後の豊橋市の姿は、全く浮かび上がってきません。なぜでしょうか。それは、東三河、豊橋に対する熱き思いと危機感の無さに起因するように思われます。

いよいよ豊橋市長選です。そこで候補者予定者の方々に問いかけたいと思います。

「二十年後の豊橋の姿が見えていますか?」

*東愛知新聞に投稿したものです。

今、地方議会は機能しているのか

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10月 112016

総務省の発表によれば、日本の人口は昨年101日時点で約12710万人と、5年前と比べ約947000人、率にして0.7%減ったことが分かりました。人口減少による地方の衰退に対応するため、国は2014年には地方経済の再活性化を目指して、「地方創生法」を成立させています。また、予想される人口減に対する施策としてすすめられた平成の大合併も国の大きな支出を得て進められたにもかかわらず、日本創成会議の予想では、消滅可能性自冶体のなかに合併した自冶体が多く含まれているなど、厳しい現実に直面しています。ちなみに日本創成会議が作成した消滅可能性都市一覧のなかに東三河では、新城市(56.5%)、設楽町(76.5%)、東栄町(74.8%)豊根村(60.6%)<*%は、20102040年の若年女性減少率)が含まれています。

今では、議会改革の流れと平成大合併の時代を経て地方議員の数も大幅に減り、随分スリムになりましたが、地方議会が地域の活性化に対して十分にその機能を果たしていないのではないかという見方も、年々大きなものになってきています。本年も複数の辞職者を出した富山市議会のスキャンダルが全国紙でも大きく報道されましたが、その根底には、地方議会が本来の役割を果たしていないのではないか、という大きな不信感があります。いわゆる政務調査費というものは議員の自由研究費ですが、本来は、議会で上程される予算案をはじめとする議案をチェックするため、地域の政策立案のために使われるのが趣旨のはずですが、果たしてすべての経費がそのように使われているでしょうか。

 ところで、昨年行われた「言論NPO」が全国の有識者約6000人を対象にした調査では、「現在の地方議会が地方政治の中で十分な役割を果たしているか」の質問に約6割の58.6%が役割を果たしていないと回答しています。また、「地方議会の果たす役割として重要なことは何か」と、いう質問に対しては、「国会の立法機能に準じる形で地域の課題について条例制定などの政策機能を果たすこと」が、従来から期待されている「予算案や条例案の審議を通じ、首長の提案など自冶体行政を監視すること」の30.3%を大きく上回り、38.2%と最多の回答となっています。地方議会に対する期待の大きさを物語る数字です。しかしながら現実は、東三河の地方議会でも行政側が提出した原案をそのまま通しているのが、ほとんどであり、事実上、議会が持つ予算決定権等を首長に禅譲している状態になっています。ここ数年で、定数削減、本会議のケーブルテレビ中継、委員会質疑の一問一答方式等、表面的な改革は進んできましたが、人口減少のなか、地方の衰退が言われる現在、自冶体が住民の声を反映させる施策を考えていくプロセスを地方議会は、本気で実現し、議会の存在価値を示すことが求められています。

*東愛知新聞に投稿したものです。

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