311から6年、何がわかってきたのか

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2月 252017

6年前の事故により破損した福島第一原子力発電所の第二号機格納容器内の放射線レベルは、今まで専門化が解説していたより格段に高い530SV/hにまで達していることを東京電力は、20172月に明らかにしました。この530SV/hは、人が近くにいれば1分足らずで死に至る放射線量です。

二号機内格納容器の中の散乱するデブリの様子も画像公開され、福島第一廃炉の困難さを強く印象付けています。この公開写真を見ていると、小嶋稔東京大学名誉教授<地球惑星科学>が書いていた文章を思い出さずにはいられません。

「福島原発事故は放射性物質の流出で環境へ甚大な災害をもたらした。さらに私を含む同位体地球科学者を専攻する者の多くは、福島第一原子力発電所一号炉のメルトダウンした核燃料が再臨界を起こし、大規模な核分裂反応を起こすのでは、との危惧を払拭し切れない。もしそのような事態になれば、東日本が壊滅するとの菅元首相の警告が現実のものになってしまう。~(略)~過去2年、放射射能汚染の議論・報道がマスコミを賑わしている反面、さらに深刻な再臨界の議論が専門家の間ですら皆無に近い。しかし、19729月フランス原子力庁が発表したガボン共和国(アフリカ)での「オクロ天然原子炉」発見は、再臨界は原子炉内に限らず自然界でも起きる事を証明した。福島第一原発一号炉のメルトダウンしたウラン核燃料が現在どのような状態なのか、よくわかっていない。しかし、メルトダウンの現状は、きわめて厳格なコントロール下で正常運転の原子炉より、「オクロ天然原子炉」の「火元」になったオクロ・ウラン鉱床の状態に近い可能性も否定できない。」(岩波書店 「図書」2013/7号)

また、日本のマスコミが詳細には取り上げなかった「ゴールドシュミット地球国際会議2016」(20166月末に開催)で九州大学など国際研究チームが発表した研究成果について、フランスのルモンド(201676日電子版)は詳報し、国際社会に大きな波紋を投げかけています。その記事のタイトルは、「フクシマの事故は東京まで、放射性セシウムの「ビー玉」を拡散(*2011315日に拡散した)」というものです。「それはフクシマでの核惨事の特殊性をさらに際立たせ、環境および健康への影響に関する研究のあり方を変えるものだ」「このような現象は、1986年の「チェルノブイリ」事故時にも観察されていない」とし、「ビー玉」化した放射性セシウムは、人間の体内で水によって流されず、それだけ体外排出されにくいものになって、より長期間、体の中に留まり、その分、内部被曝を持続させるのではないかという懸念を指摘しています。また、オーストラリアABC放送のインタビュー(2016524日放送)では、東電の増田尚宏氏(東電福島第一廃炉推進カンパニー最高責任者)がコンクリートやその他金属が混じった溶融した核燃料は、約600トンあり、それを取り出す技術が現在、開発されていないことを明言しています。

2015年ノーベル文学賞を受賞したベラルーシの作家、スベトラーナ・アレクシエービッチさんが「私たちはチェルノブイリ破局への、想像力、類推、言葉、経験の体験を持ち合わせていなかったのです」(「トーチレポート2016」序文)と語っています。現実を直視し、その事実が起こし得る未来を想像し、言葉にする、行動する勇気が今、求められています。

*東愛知新聞に投稿したものです。

IT時代の光と影

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2月 232017

スマホがないと暮らせない人も増えているのではないでしょうか。

現在では端末機がなくなれば、仕事自体ができない人もいるでしょうし、多くの人が愛用しているグーグルのような検索エンジンがなくなれば、情報のインプット量は圧倒的に減ってしまうことも間違いないでしょう。また、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)がなくなれば、集客力が落ちて仕事ができない人も多くいるのではないでしょうか。多くの人が使うこれら(FacebookTwitterLINEiPhoneInstagramMacAmazonGoogleYou Tube)のサービスサーバーは、ほとんど米国にあります。つまり、私たちが上記サービスで使う個人データは、すべて米国にあるサーバーで管理されています。つまり、ITツールを持っている時点で、どういう人と仲が良くて、何に興味があって、どんな情報を収集して、どんな情報を発信し、何を買っていて、どんな評価を下しているのかなど、全てが完全に管理されている状態になっているということです。このIT時代の影の部分を「プラートン」でアカデミー監督賞を受賞したオリバー・ストーン監督が最新映画「スノーデン」で、実話に基づいてわかりやすく描いています。この映画を見れば、テロ対策、安全のためにという美名の下にメール、チャット、ビデオ通話、ネット検索履歴、携帯電話などの通話など、世界中のあらゆる通信経路を通過する情報のすべてを米国のNSA(国家安全保障局)が掌握しようとしていることが、具体的な仕組みとともに映像で理解することができます。この映画の主人公スノーデンは、2009年から2年間、日本にも滞在し、米空軍横田基地内にあるNSAで、コンピュータ会社デルの社員として信号諜報と防諜の仕事をしていました。彼の証言を裏付けるように2015年夏には、内部告発メディアのウィキーリークスは、NSAが少なくとも第一次安倍内閣時から内閣府、経済産業省、財務省、日銀、同職員の自宅、三菱商事の天然ガス部門、三井物産の石油部門などの計35回線の電話を盗聴していた「ターゲット・トウキョウ」という内部文書を暴露しています。元々、米国では1980年代からコンピュータへの侵入で軍の指揮システムや電力、交通、金融、工場の制御などに混乱が起きる危険が指摘される一方で、それを攻撃に使うことが論議されていました。2015年には「サイバー軍」が誕生し、MSA(国家安全保障局)本部と同じフォート・ミードに置かれ、現在、NSAは情報能力とサイバー攻撃力を備えるまでになっています。

問題は、日本は米国の監視システムの対象、被害者でありながら、米国に要請された特定秘密保護法等によって、米国の世界監視体制の協力者として、多くの国民が知らないうちに日本人の通信データを無自覚なまま米国に提供していることにあります。普通に考えれば、多くの国民は、「自分も監視されている、どこで何を見られているかわからない、丸裸にされている」状況を望んでいるとはとても思えません。現在、自動車や家電などすべてのモノがインターネットにつながる「IoT」の時代が喧伝されていますが、ネットに接続する機器が増えれば、サイバー攻撃の標的も増えることになります。

強い光の反対側には強い影ができるのは自然の摂理ですが、私たちは便利さを得る代わりに知らないうちに個人情報を提供し、あまりに便利な生活が突然遮断されるリスクの上で、仕事をし、暮らしています。IT時代の光と影をしっかり、認識することが求められています。

*東愛知新聞に投稿したものです。

あまりに文学的な日本の安全保障

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2月 202017

「霞ヶ関文学」なる言葉をご存じでしょうか。この霞ヶ関文学は、当初は日本語を正確に定義して書くという、行政官僚に本来求められる当然の技量に過ぎないものでしたが、法律や大臣の国会答弁の文章を明確に書き過ぎると、自分たちの裁量権が狭められたり、官僚が何よりも重んじる省益を損なう内容になる場合に、本来の趣旨とは異なる目的で頻繁に使われるようになったものです。そして法案や大臣の国会答弁で使われる単語や表現の意味が、私たちの一般常識とは、かけ離れたものになってしまったわけです。たとえば、「完全民営化」と「完全に民営化」とが、霞ヶ関文学では全く別のことを意味しています。「完全民営化」は、株式と経営がともに民間企業に譲渡される文字通りの民営化を指しますが、「完全に民営化」になると、法律上3パターンほどあり得る民営化のどれか一つを「完全に」実現すればいいという意味になります。また、霞ヶ関文学では、人数は変わっていなくても「削減」という言葉を使うことができます。1000人の人間がいたとして、そのうち、100人を辞めさせ、新たに100人を採用した場合でも「削減」と言うことができるのです。また、単語の後に「等」をつけることで、事実上何でも入れられるようにしてしまう手法もよく知られた常套手段です。ところで、霞ヶ関文学には、これから私たち国民が注視しなければならない翻訳部門もあります。たとえば、集団自衛権行使の閣議決定後の日米新ガイドライン(2015年)においては、作為的翻訳が何箇所も指摘されていますが、一つ、例をあげるなら、「The Self-Defense Forces will have primary responsibility for conducting —–operations —to defend Japan.」の日本語訳は、「自衛隊は、日本を防衛するため—–作戦を主体的に実施する」となっていますが、本来の意味は「日本を防衛する作戦をするための主たる責任は自衛隊が持つ」ということでしょう。また、「(Cross-Domain Operations)The United States Armed Forces may conduct operations involving the use of strike power—-」の日本語訳は「(領域横断的な作戦で)米軍は、自衛隊を支援し及び補完するため、打撃力の使用を伴う作戦を実施することができる」とありますが、どう考えても「実施する可能性がある」の意味に捉えるのが正解だと思われます。意図的に外務官僚は、米軍が日本防衛に加わる印象を強めようとしています。先日も尖閣諸島については、日米安全保障条約第5条が適用されるとマティス国防長官が明言したというニュースをNHKが速報テロップで流しました。たしかに日米安保条約第5条には、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」と書いてあります。しかしながら、戦争宣言の権限は大統領にはなく、議会にあります。したがって日米安保条約は「米国議会が承諾したら戦争します」と言っているに過ぎません。さらに泥沼になったベトナム戦争の反省から制定された「戦争権限法」(1973年)という法律があります。米国議会が宣戦布告をしないで米軍の司令官として大統領が軍隊を投入した時には、最長でも60日で撤退しなければならない旨が明記されています。(戦争権限法第1544条 (b)項)当然、このことは国会でも議論されていますが、「米国議会が(安保条約の)履行を妨げる措置をとるということは考えがたいというふうに私ども(日本政府)は思っております。」(平成23519日、安全保障委員会における松本剛明防衛庁長官の答弁)というように政府の願望が述べられているに過ぎません。このように日本の安全保障は、あまりに文学的な願望によって成立しています。文学の世界に耽溺するのではなく、現実に向き合うことが今、求められています。


*戦争権限法第1544条 (b)項(合衆国軍隊の使用の停止、例外、延長期間)

報告書が提出された日又は第1543条(a)項(1)に従って提出を求められた日のうちいずれか早い日から60日日以内に、大統領は、提出された(又は提出を求められた)当該報告書に係わる合衆国軍隊の使用をすべて中止しなければならない。ただし、連邦議会が(1)戦争宣言をし、若しくは合衆国軍隊の当該使用に関する特別の授権法を制定する場合、(2)当該60日の期間を立法により延長する場合、又は(3)合衆国に対する武力攻撃のため物理的に集会することができない場合はこの限りではない。当該60日の期間は、大統領が合衆国軍隊の安全に関する不可避な軍事的必要性により、軍隊の迅速な撤退をなし遂げる上で軍隊の継続的使用が必要であると決定し、連邦議会に対し書面で立証する場合には、30日を超えない期間で延長される。

*東愛知新聞に投稿したものです。


構造改革時代の終わり

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2月 082017

2017年は、政治経験のないニューヨークの不動産王である異色のトランプ氏が米国の大統領に就任することで、今までとは全く違う国際政治が展開される可能性が大きくなっています。

 ところで、明治維新から始まる日本の近代150年を30年ごとのスパーンで見ることができるという興味深い指摘があります。大変わかりやすい視点ですので、以下に紹介します。

18651895年が明治維新に功労のあった元勲の時代、18951925年が日本が国際政治の舞台に上がり、いわゆる一等国になっていく時代、19251955年が欧米から導入された官僚制が軍隊を含めて完成した時代、1955年~1985年が保守合同から始まる高度成長時代、そして19852015年が日米構造協議、プラザ合意から始まる構造改革の時代と、言うものです。

 

そして現在、ロシアのプーチン大統領がシリアで勝利したことに象徴されるように国際政治の舞台でさらに存在感を増しています。ご存じのようにプーチン氏は脱グローバリズムの政治家です。また、米国ではグローバリズムからの脱却を選挙で訴えてきたトランプ大統領は、新自由主義、新保守主義に基づく構造改革路線に終止符を打つ政策を掲げて実行しようとしています。昨秋、日本の国会で強行採決騒ぎを起こしたTPP(環太平洋連携協定)もグローバリズムに基づく構造改革路線政策の一つですが、米国のトランプ大統領は就任前にTPPからの離脱を明言しています。

 ところで、元総務大臣だった片山義博氏が「地方行政とTPP」について下記のような根本的な疑問を投げかけていました。

「私は、地方政治を携わった経験もあるので、その立場から言わせてもらいます。地方自冶体の長としては、地元を発展させる為に地元産業を育成して、雇用の創出を図ったりします。その為に優遇措置を採ることもあります。しかし、TPPにはISD条項というものがあり、地方産業を育成する政策が外国企業の競争を妨害すると訴えられる恐れもあります。」

 このようにTPPは、地方自冶を阻害する側面を持っています。こういった議論は、大手メディアは意図的に避けてきましたが、これから地方活性化を真剣に考えている地方にとっては避けては通れない問題です。

いずれにしろ、上からの構造改革路線の時代が終わり、地域に住む人々の創意工夫、行動の時を迎えています。その背景には、国や地方自冶体の財政状況の大変厳しい状況もあります。その意味で2017年は、「民生自冶」の長い伝統を持つ日本にふさわしい時代の転換点の始まりの年になるのではないでしょうか。いよいよ「民の時代」が始まろうとしています。

 

ISD条項とは、市場参入規制をしたり、国内企業を保護しているとみなした国や自治体に対し、外国投資家が国際投資仲裁機関へ訴える権利を事前に包括的に付与する条項です。

*東愛知新聞に投稿したものです。

トランプ大統領とモノづくり愛知

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1月 242017

1月にトランプ氏が第45代大統領に就任し、約16分間の就任演説を行いましたが、こんな空虚な就任演説は今までなかったというような批判の集中砲火を多くのマスコミから受けています。たとえば、中学校の生徒会長に選ばれた生徒の挨拶と同じレベルの英語だとか、手厳しい批判ばかりです。しかし、トランプ氏は間違いなく、今までとは違う何かをしようとしています。エキセントリックに感じる言葉に惑わされているとその本質を見失うことになります。

 彼の言葉を理解するためには、第二次世界大戦以降の世界経済の変遷を振り返る必要があります。大戦後、すべての技術、お金、金(ゴールド)、インフラがアメリカ合衆国に集中していました。そのため、西側諸国の経済は、米国が共産圏であるソ連に対抗するために豊富な資金、技術を、提供をすることによって離陸し、成長してきました。そして1965年以降、西ドイツ、日本が経済的に頭角をあらわすとともに、米国はベトナム戦争等の巨額の出費もあり、いわゆるドルの垂れ流し状態に陥ります。その結果、起きたのが、1971年のニクソンショックで、彼は金とドルの交換の停止、10%の輸入課徴金の導入等の政策を発表し、第二次世界大戦後の通貨枠組み:ブレトン・ウッズ体制を解体、世界の通貨体制を変動相場制に移行させました。しかし、その後も米国の赤字基調は変わらず、1985年にはプラザ合意による大幅なドルの切り下げという事態に陥りました。貿易黒字を貯めこむ日本は、内需拡大を迫られ、その後、バブル経済が発生しました。65年以降、日米貿易摩擦が発生し、製造業間の調整交渉が日米両政府によって重ねられてきましたが、80年代後半以降、米国はトヨタの負け(製造業)をソロモン(金融業)で取り返す戦略に転換していきます。日本が貯めこんだドルを米国債、株式に投資させることで儲けることにしたわけです。この方式を新興国に当てはめ、始まったのが、現在のグローバル金融です。そして、グローバル金融を支えたのが、IT革命です。つまり、賃金の安い新興国に米国企業が工場を作る投資をし、その製品を米国に輸出させた儲けは、米国の金融機関が吸い上げるという仕組みです。この仕組みを円滑に機能させるためには、米国のルール:新自由主義と新保守主義の思潮から作り出された価値観(ワシントンコンセンサス)をすべての国に受け入れさせる必要があります。これが現在のグローバリズムです。ここで、軍需産業維持のための戦争と価値観の押し付け外交が密接に結びついていくことになります。ルールを押し付けるためには、米軍が世界展開している必要があるということです。しかしながら、2008年のリーマンショックでグローバル金融がうまく、機能しないことが露呈し、異常な中央銀行の金融緩和が始まりましたが、現在、それもすでに限界に達しています。一番のポイントは、湾岸戦争以降、多くのプアホワイトという白人を含むアメリカの若者が戦死しているという事実です。トランプ氏は米国の設立メンバーの子孫でありながら、貧しい生活に甘んじている、星条旗を愛している、息子たちが戦死した人たちに向けて語っていることを私たち日本人は理解する必要があります。彼は、自分を支持する人々に仕事を取り戻すためにもう、海外からモノを買わないと宣言しているのです。考えてみれば戦後、世界経済は、米国がモノを海外から買うことを前提に回ってきました。モノづくり愛知、その基盤を支えてきた東三河もその大きな仕組みのなかで、動いてきました。その意味で、この地方のモノづくりのあり方を真剣に考える時が来ているのは、間違いありません。

*東愛知新聞に投稿したものです。

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